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コラムの泉

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陳腐化した製造ノウハウ

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇vol.305-2015.09.28
      
   ☆☆☆ Weekly Accounting Journal ☆☆☆

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
こんにちは、エキスパーツリンクの紺野です。日本の会計基準は、今、IFRS
で揺れ動いています。一方で税制も改正されており、上場会社及び上場準備会
社の決算・経理実務は今後も引き続き、目まぐるしく変化していきます。これ
らのエッセンスを、上場会社及び上場準備会社の経理担当者の皆さん向けに、
出来る限り分かりやすくお伝えします。何らかの「気づき」をご提供すること
が出来れば幸いです。仕事の合間に軽くどうぞ!

文中意見にわたる部分は私どもの私見にもとづきます。このメールマガジン
の情報をもとに実務に適用される場合には、監査法人さんや顧問税理士さん等
にご確認ください。もちろん、エキスパーツリンクでもまずは無料で検討させ
ていただきます。

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◆◇今週のCONTENTS◆◇
1.[税務]期末在庫を増やすと利益が増える陳腐化した製造ノウハウからはロ
イヤルティを取らなくていいのか?
2.[最新J-GAAP]繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針の公開草案座談
会等
3.[NEWS]企業の内部留保に課税案が再浮上?
4.[税務]多国籍企業の過度な節税に国際ルール
5.[NEWS]税理士懲戒増加中
6.[編集後記]

===================================
1.[税務]陳腐化した製造ノウハウからはロイヤルティを取らなくていいの
か?
===================================
我が社は国内の自社工場で保有していた古い生産設備をベトナムの子会社に売
却しました。生産設備と同様、その製造に係るノウハウも国内ではすでに陳腐
しているので、ベトナムの子会社からはロイヤルティを受け取っていません。
ロイヤルティを取らないことで移転価格上の問題は生じないでしょうか。

日本では陳腐化している技術であっても、製造技術やノウハウの価値は市場や
経済環境によって変わるため、その価値も変わります。

海外に移転されたノウハウ(無形資産)は、親会社にとっては陳腐化していて
も、ベトナムの市場ではそれを活用して収益をあげることができるかもしれま
せん。例えば、同じ製品であっても日本のように高いスペックを必要としない
製品であれば、新興国において高収益に結び付く可能性があるかもしれません。
このような場合、ベトナム子会社が現地国における同業の第三者より営業利益
率が高くなるのであれば、移転価格上、その収益の要因(超過収益)は何かと
いうことになります。

ベトナムの子会社が親会社の受託製造業者であり、独自に営業活動も研究開発
を行っていないということであれば、超過収益の源泉は子会社の努力によるも
のではなく、親会社の無形資産に起因すると言えます。子会社の持つ機能・リ
スクによりますが、親会社が陳腐化したと考えていても、移転価格税制上はロ
イヤルティを徴収する必要性が高いと考えられます。

===================================
2.[最新J-GAAP]繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針の公開草案座談
会等
===================================

ASBJのホームページに「季刊 会計基準」第50号の”特集1「繰延税金資産
の回収可能性に関する適用指針」の公開草案の公表を受けて”が掲載されてい
ます。

https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/jnlpickup/feature/20150925/20150925.jsp

簡単に一部おさらいしておきます。

[内容]
内容は多岐にわたりますので詳細には省略しますが、基本的に繰延税金資産
多く計上できるようになる傾向があるはずです。

例えば、分類4については、

「翌期の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づいて、翌期の一時差異
等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積る場合、当該繰延税金資
産は回収可能性があるものとする。」

ここまでは、従来とほとんど変わらないのですが、
「上記にかかわらず、重要な税務上の欠損金が生じた原因、中長期計画、過
去における中長期計画の達成状況、過去(3 年)及び当期の課税所得又は税
務上の欠損金の推移等を勘案して、

将来において 5 年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じる
ことが合理的に説明できるときは(分類 2)に該当するものとして取り扱う。

将来においておおむね 3 年から 5 年程度は一時差異等加減算前課税所得が
生じることが合理的に説明できるときは(分類 3)に該当するものとして
取り扱う。」

とされています。つまり、重要な繰越欠損金があるので一旦分類4に分類され
ますが、分類2や分類3に昇格することもありうるということになります。

[適用時期]
(強制適用)
平成 28 年 4 月 1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から
適用する。

(早期適用)
平成 28 年 3 月 31 日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係
連結財務諸表及び個別財務諸表から適用できる。

早期適用には以下の固有の取扱いがあります。
・早期適用した年度の期首に遡って適用する。
・早期適用した連結会計年度及び事業年度の翌年度に係る四半期連結財務諸表
及び四半期個別財務諸表においては、早期適用した連結会計年度及び事業年
度の四半期連結財務諸表及び四半期個別財務諸表について本適用指針を当該
年度の期首に遡って適用する。

遡及適用については、
・過去の期間の連結財務諸表及び個別財務諸表に遡及適用を認めない。
・本適用指針の適用初年度においては、当該年度の期首時点で新たな会計方針
を適用した場合の繰延税金資産及び繰延税金負債の額と、前年度末の繰延税
資産及び繰延税金負債の額との差額を、適用初年度の期首の利益剰余金
に加減する。

とされています。

現行委員会報告のもとで回収可能性が低く見積もられているのではないかとの
懸念をお持ちの企業さんは是非ご検討ください。

===================================
3.[NEWS]企業の内部留保に課税案が再浮上?
===================================

日経ビジネスの記事からです。
企業の「内部留保」に課税する案が再浮上しているようです。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/238117/092400007/?P=1

いまや300兆円。

財務省が9月1日に発表した2014年度の法人企業統計によると、金融・保険業
を除く全産業の期末の利益剰余金は354兆3774億円と1年前に比べて26兆4218
億円も増えたそうです。率にして8%。

最大の要因は企業が稼ぐ利益自体が大きく増えたこと。

2014年度の純利益は41兆3101億円で10%増えたとのこと。
これに対して、配当は16兆8833億円と17%増えていますが、これでも全然少な
いようです。

配当に回した割合は41%ですが、リーマンショック前の配当額のピークは2006
年度で、利益の58%が配当にまわっていたそうです。

この内部留保が賃金の上昇に結びついていません。

2014年度の従業員給与の総額は127兆円と前年度に比べれば2.1%増えているも
のの、直近のピークだった2011年度の130兆円に比べると低いです。

一方で設備投資も増えていないです。

従業員ひとり当たりの有形固定資産額である労働装備率は1081万円と前の年
度より低下しています。ここ10年にわたって、ほぼ同じ水準だそうで、これ
は企業が減価償却の範囲でしか設備投資をしていないということになります
ね。

なんで給料や設備投資が増えないのか?

景気回復がどれだけ続くか分からない中で、そうやすやすと賃上げに応じら
れない。設備投資にしても規制改革が進まないなかで、なかなか参入してい
くことはできないということです。

それで、内部留保課税が浮上したというわけです。

海外大手ヘッジファンドの幹部が安倍内閣の幹部を訪問した際に、「企業に
内部留保を吐き出させるために、内部留保課税をしてはどうか」と提案され
たとのことです。

と、まあ、このような記事ですが、なかなか簡単に課税できないですよね。法
人税率を下げたばかりで留保金課税を打ち出すというわけにいかないでしょう
し。しかし、確かに内部留保が増えているのにこれが給料や設備投資に回らな
いようでは意味がありません。この好循環をつくり出せなければアベノミクス
は大企業優先という批判を受けてもしかたないということになってしまいます。

===================================
4.[税務]多国籍企業の過度な節税に国際ルール
===================================
いわゆるBEPS(税源浸食と利益移転)の話です。

OECDの租税委員会は、9月22日、多国籍企業の行き過ぎた節税策を防ぐため、
先進国や新興国など46か国が導入する国際ルールを固めました。事務レベルで
の最終報告がまとめられたようです。11月のG20で正式合意される見通しです。

http://www.asahi.com/articles/ASH9N55LQH9NUTIL00H.html?ref=rss

紹介されている対策は、以下の3つですね。

第一に、特許やブランドなどの知的財産権を低税率国の子会社に移し、子会社
がロイヤルティー(権利使用料)を得ることで、法人税率が高い国の親会社か
ら子会社に所得を移す手法への対策として、

「移した時の譲渡額と、しばらくたってからの評価額に25~30%以上の差
が一定期間あれば課税できる。」

ということにします。スタバやアップルが行っているやり方に対する対応です
ね。

第二に、「アマゾンなどネット通販会社やコンピューターソフト会社が進出先
の国で倉庫などしか持たず、進出先の所得が本国の本社に流れ、進出先の国が
課税できない問題にも対処する。例えば倉庫が親会社のビジネスの重要な部分
を補う拠点と認められれば、進出先の国も課税できるルールにする。」そうで
す。

つまり、「倉庫もPEとする」こともあるということになります。

これにより、例えば、日本はアマゾンが国内で得た利益に課税できるようです。

もう一つは、「多国籍企業には、進出先の国ごとの経済活動や節税計画を税務
当局に提出することも義務づける。」というものです。

各国の税制に対する強制力はないようですが、注意が必要ですね。

===================================
5.[NEWS]税理士懲戒増加中
===================================
「脱税を指南したり、無資格者に税理士の名義を貸したりして、懲戒処分を受
ける税理士税理士法人が急増している。」
とのことです。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG18H9A_R20C15A9CC1000/

2014年度の懲戒処分は計59件で、3年連続で過去最多。10年前の約3倍とのこ
とです。1998年は1件だけだったそうです。

顧客獲得競争激化
→顧客先の要求を断りきれない
→脱税行為の相談にのったり、虚偽の税務書類の作成に加担する

という流れのようです。

これに伴い、国税庁の「税理士専門官」も増加しているようです。

確かに非常に低い価格で顧問を引き受ける税理士は多く、過当競争なんでしょ
うね。これがモラル低下をもたらしているとしたら、どんだけ弱い立場なんだ
となげかわしく感じるとともに、もう少し規制等で税理士も守れないものかと
も思ってしまいます。

まあ、どこの業界も価格競争はあるわけですから、それに負けない強さを持た
なければいけませんね。

===================================
6.[編集後記]
===================================
毎朝、うさぎに餌をやるのは私の役目です。
私は毎日だいたい同じような時間に起きてごそごそと活動を始めるのですが、
うさぎのほうも気配を感じているようです。一定の時間になってもケージにか
けてある布をとらないでいると、「いるんでしょ!」って感じで、ケージの扉
をどんどん、とたたきだします。この音がですね。面白いことに朝は控えめな
音量なんです。昼や夜に、餌をねだったり、ケージの外に出してほしいときは、
もうすごい勢いでドンドン!「早く早く!」って感じなんですが、朝の音は、
朝でまだ子供たちも寝静まっているせいか、やや、おさえた音量です。布をと
ってやると、私が餌の準備をしているのがわかるし、朝ですから、もう扉をた
たいたりしません。おとなしく待っています。面白いな。と思っています。

公認会計士紺野良一事務所のHPを作りましたので、是非ご覧ください。

トップページ
http://kaishaho-kansa.com/
個人会計士による会社法監査
http://kaishaho-kansa.com/audit/personal/

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*発行人: エキスパーツリンク
 公認会計士税理士・公認内部監査人(CIA) 紺野良一
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