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タックスヘイブン税制の改正

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇vol.362-2017.01.08
      
   ☆☆☆ Weekly Accounting Journal ☆☆☆

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
こんにちは、エキスパーツリンクの紺野です。日本の会計基準は、今、IFRS
で揺れ動いています。一方で税制も改正されており、上場会社及び上場準備会
社の決算・経理実務は今後も引き続き、目まぐるしく変化していきます。これ
らのエッセンスを、上場会社及び上場準備会社の経理担当者の皆さん向けに、
出来る限り分かりやすくお伝えします。何らかの「気づき」をご提供すること
が出来れば幸いです。仕事の合間に軽くどうぞ!

文中意見にわたる部分は私どもの私見にもとづきます。このメールマガジン
の情報をもとに実務に適用される場合には、監査法人さんや顧問税理士さん等
にご確認ください。もちろん、エキスパーツリンクでもまずは無料で検討させ
ていただきます。


◆◇今週のCONTENTS◆◇
1.[税務]タックスヘイブン税制の改正
2.[税務]財務省「税に関する18の質問」
3.[税務]加算税制度の見直し
4.[税務]使用地主義と債務者主義
5.[編集後記]


===================================
1.[税務]タックスヘイブン税制の改正
===================================
タックスヘイブン税制の平成29年度の改正を確認しておきたいと思います。

タックスヘイブン対策税制とは、我が国の企業が軽課税国又は地域に設立した
子会社の所得を我が国の親会社の所得に合算して課税するものです。

ちょっと難しくなっておりまして、文章で書くのは困難ですが、トライしてみ
ます。以下のようにまとめてよさそうです。

----------------------------------------------------------------------
租税負担割合30%未満の外国関係会社(1)の株式を10%以上保有している場合に、

○特定の外国関係会社(ペーパーカンパニー、事実上のキャッシュボックス、
ブラックリスト国所在のいずれか)(2)に該当する場合
→【すべての所得を合算】

○上記の特定の外国関係会社に該当しない場合
・租税負担割合(制度適用免除基準)(3)20%以上→【合算なし】
・租税負担割合(制度適用免除基準)20%未満
-経済活動基準(4)満たす→【受動的所得(5)のみ合算】
-経済活動基準満たさない→【すべての所得を合算】
----------------------------------------------------------------------
(1)外国関係会社
 ・外国関係会社とは、その50%超の株式等を内国法人及び居住者が保有して
いる外国法人をいうのですが、いままでは縦列的連鎖関係にある持株割合
を累次乗じて計算した割合(“掛け算方式”)で判定していましたが、
“50%超の連鎖関係の有無”により判定します。
 ・外国法人のおおむね全ての残余財産請求権を保有する場合等も、当該外国
法人を実質に支配しているものとして対象者に加えます。これによりSPC
等でも実質的な支配関係が認められれば課税されるということになります。
・外国関係会社の判定としてのトリガー税率は廃止されます。

(2)特定の外国関係会社
 ・ペーパーカンパニー
  事業所等の固定施設を有さず、かつ、本店所在地国において、その事業の
管理、支配及び運営を自ら行っていないもの

  ※国税当局の当該職員が、これらの要件を満たすことを明らかにする書類
等の提出等を求めた場合において、期限までにその提出等がないときは、
その外国関係会社は、いずれかの要件を満たさないものと推定されます。

 ・事実上のキャッシュボックス
  総資産の額に対する一定の受動的所得の割合が30%を超えるもの(総資産
  額に対する有価証券、貸付金及び無形固定資産等の合計額の割合が50%を
  超える外国関係会社に限る)

 ・ブラックリスト国所在
  租税に関する情報の交換に非協力的な国又は地域として財務大臣が指定す
  る国又は地域に本店等を有する外国関係会社

(3)制度適用免除基準
 ここで改正前のトリガーと同様の判定が維持されています。

(4)経済活動基準
 イ 事業基準
  航空機の貸付けを主たる事業とする外国関係会社のうち、本店所在地国に
  おいてその役員又は使用人が航空機の貸付けを的確に遂行するために通常
  必要と認められる業務の全てに従事していること等の要件を満たすものに
  ついては、事業基準を満たすものとする。

 ロ 実体基準及び管理支配基準
  (省略します。)

 ハ 所在地国基準
  製造業を主たる事業とする外国関係会社のうち、本店所在地国において製
  造における重要な業務を通じて製造に主体的に関与していると認められる
  ものの所在地国基準の判定方法について、所要の整備を行う。

 ニ 非関連者基準
 (イ)非関連者との間で行う取引の対象となる資産役務その他のものが、
   関連者に移転又は提供されることがあらかじめ定まっている場合には、
   その非関連者との間の取引は、関連者との間で行われたものとみなして
   非関連者基準の判定を行う等の見直しを行う。
 (ロ)保険業を主たる事業とする外国関係会社が保険受託者に該当する場合
   における非関連者基準の判定について、その外国関係会社がその外国関
   係会社に係る保険委託者との間で行う取引は関連者取引に該当しないも
   のとする。
 (ハ)航空機の貸付けを主たる事業とする外国関係会社については、非関連
   者基準を適用することとする。

 ホ 経済活動基準を満たすことを明らかにする書類等の提出等がない場合の
   推定
  国税当局の当該職員が内国法人にその外国関係会社が経済活動基準を満た
  すことを明らかにする書類等の提出等を求めた場合において、期限までに
  その提出等がないときは、その外国関係会社は経済活動基準を満たさない
  ものと推定する。

(5)受動的所得
 基本的に従来の資産性所得(利子、配当、使用料など)なのですが、長くなり
 ますのでここでは省略します。詳細はこちらご参照ください。

http://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2017/20161222taikou.pdf

あと、地味に重要なのが、以下です。

(外国関係会社に係る財務諸表等の添付)
 内国法人は、次に掲げる外国関係会社に係る財務諸表等を確定申告書に添付
 しなければならない。
 ・租税負担割合が20%未満の外国関係会社
 ・租税負担割合が30%未満の外国関係会社((2)の特定の外国関係会社に限る)

全世界的に税率引き下げ競争が行われていますので、該当も多くなってきます。
要注意です。

これらの改正は、外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度か
ら適用されます。地方税にも同様の改正がなされ、適用開始時期も同じです。

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2.[税務]財務省「税に関する18の質問」
===================================
財務省は、「税に関する18の質問」というパンフレットを公表しています。

http://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei2811/all.pdf

ここから、平成28年度税収の予算を眺めておきましょう。

所得税 18.0兆円
法人税 12.2兆円
消費税 17.2兆円
相続税 1.9兆円

消費税の税収が所得税の税収に近づきつつありますね。税収計は、平成28年
度予算で、57.6兆円で、平成21年の38.7兆円で底を打った後は順調に伸びてい
ます。バブル絶頂の平成2年は60.1兆円です。未だそこまで戻っていないんで
すね。

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3.[税務]加算税制度の見直し
===================================
平成28年度の税制改正で、加算税制度についての見直しがなされており、改
正後の制度は、平成29年1月1日以後に法定申告期限又は法定納期限(法定申
告期限又は法定納期限とみなされる期限を含みます。「以下法定申告期限等」
といいます。)が到来する国税から適用されます。

http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sonota/kasan.pdf

従来は、税務調査の通知を受けてから、調査による更正を予知する前までにな
された修正申告(期限後申告に係るものを除きます)については、過少申告加算
税は課されなかったのですが、今後は、その申告納税額の5%(期限内申告税額
と50万円のいずれか大きい額を超える部分は10%)の割合を乗じて計算した過
少申告加算税が課されます。

また、期限後申告(その修正申告書を含みます。)についても、調査の通知を受
けてから、調査による更正を予知する前までになされた修正申告については、
その申告納税額の10%(50万円を超える部分は15%)の割合を乗じて計算した金
額に相当する無申告加算税が課されます。

調査による更正予知以後であれば、従来どおり、10%(15%)の過少申告加算税
又は15%(20%)の無申告加算税が課されます。

さらに、短期間に繰り返して、無申告又は仮装・隠ぺいが行われた場合の加算
税の加重措置が導入されています。詳細は上記リンクご参照ください。

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4.[税務]使用地主義と債務者主義
===================================
使用料の源泉税についての使用地主義と債務者主義を整理しておきたいと思い
ます。

日本企業の側から考えます。

まずは、源泉税というものの性格ですが、一般的には、

支払う立場からすれば、源泉されようがされまいが、払う額に変わりはありま
せんが、日本に納める必要があるものはきちんと納めなければなりません。

受取る立場からすれば、源泉されていたとしても外国税額控除がとれれば、税
額をどこに払うかの違いであって、特に払う額に変わりはありません。外国税
額控除がとれない場合には、損金算入でもするしかないのかもしれませんので、
この場合は考慮が必要ですが、とられるものは仕方ありません。租税条約の届
出を出すことによって租税条約を適用すれば、源泉がそもそもなされない場合
や、税率が低くなることがありますので、そういった注意は必要になります。

という前提で、確認しましょう。

日本の国内法では、使用料については、「国内業務に係るもの」とされており、
使用地主義とされています。

一方、我が国が締結した多くの租税条約では、債務者の居住地国を所得源泉地
とする債務者主義がとられています。

通常は使用地と債務者の居住地国は同じなのかなあと思いますが、違う場合も
あります。

租税条約は基本的に国内法に優先します。

例えば、“内国法人が、中近東でのプラント建設を請け負っており、その建設
に必要な技術をイタリアの法人から導入する。”というような場合には、使用
地が中近東ですので、使用地主義の国内法からいえば、日本では課税されない
ようですが、債務者主義の日伊租税条約に従えば、日本で課税されることにな
ります。

https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/gensen/06/03.htm

一方で、租税条約よりも国内法の規定を適用した方が有利になるケースにおい
ては、国内法の規定を優先適用できるというルールがあります。これをプリザ
ベーション・クローズといいます。

それでは、例えば上記のケースで国内法を優先して課税なしとすることができ
るかというと、この部分に関しては、国内法においては、国内源泉所得として
規定する2号所得から12号所得について、租税条約により国内源泉所得とさ
れたものをもってこれに対応する上記各号に掲げる国内源泉所得とみなすとい
う、所得源泉地置換え規定があります。

ですからやはり租税条約に従い債務者主義ということになるわけです。ややこ
しいですね。

===================================
5.[編集後記]
===================================
今年もスタートしましたね。
新年冒頭にうちの代表も所内で申しておりましたが、今年はエキスパーツリン
ク発足からちょうど10年になります。過去を振り返ってみますと、株式会社
キスパーツリンクと税理士法人エキスパーツリンクの連結では、一応右肩上が
りの成長を続けています。ただし、株式会社のほうが当初の勢いを失いつつあ
りますので、今年は、株式会社での活動にも力をいれていきたいと考えていま
す。具体的には、上場会社決算サポート、株価算定などに加え、IPO支援な
ど、積極的にこなし、更なる成長を目指します。
また、一方で公認会計士紺野良一事務所としても会計監査の仕事を増やし、少
しでも皆様のお役に立てるよう精進してまいりたいと思います。
メルマガもコンスタントに、ただ無理はせず、継続しますので、今年もよろし
くお願いいたします!


公認会計士紺野良一事務所のHPも是非ご覧ください。

トップページ
http://kaishaho-kansa.com/
個人会計士による会社法監査
http://kaishaho-kansa.com/audit/personal/

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*発行人: エキスパーツリンク
 公認会計士税理士・公認内部監査人(CIA)inactive 紺野良一
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