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発がん性物質への対応

 こんにちは、産業医・労働衛生コンサルタントの朝長健太です。
 産業医として化学工場、営業事務所、IT企業で勤務し、厚生労働省において労働行政に携わり、臨床医として治療を行った複数の健康管理の視点で情報発信をしております。
http://hatarakikatakaikaku.com/
 今回は、「発がん性物質への対応」コラムを作成しました。
 労働衛生の取組を行うことで、従業員に培われる「技術」「経験」「人間関係」等の財産を、企業が安定して享受するためにご活用ください。

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発がん性物質への対応
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 「発がん性物資」が時折メディアで騒がれることがありますが、労働法令においては、発がん性物質(放射線等エネルギーも含む)に対する考え方は概ね固まっています。
 発がんした場合からの時系列を遡って段階的に示します。

○発がんによる裁判
 発がん性物質による発がんが、発生した場合、事業者に法令違反が認められる場合は、民事訴訟を起こされる可能性があります。
 多くは安全配慮義務違反で敗訴することから、事業者としては労働安全衛生法令を遵守するとともに、「危険予知」と「危険回避」を、安全衛生委員会等の調査審議を経て対応することが必要になります。
 特に、労災認定がされている場合は事業者側が不利になるため、そもそも発がん性物質による発がんが発生しないように対応することが重要です。

○発がんによる労災補償
 業務で発がん性物質により被ばくしたことでがんになったと考えられる方は、労災保険を請求する権利があります。
 労災保険は所管している国が対応します。本人、事業者、その他関係者から情報を収集し、原則、労災認定基準(※)に照らし合わせて評価することになります。発がん性物質による発がんは、被ばくから数十年経過して発症するものも多く、記録が残っていない場合、評価は非常に困難なものになります。事業者は、法令に基づき適切な記録を残しておくことが重要です。
 事業者への影響は、労災保険のメリット性を活用している場合、ほとんどは保険料率が増え、間接的に労働者に対する補償を行うことになります。
※ 発がん性物質に被ばくしていない人に比べて、そのがんの発症率が2倍以上となるばく露量が労災認定の基準量になります。なお、発症率について科学的知見が固まっていない場合は、現在2倍未満のリスクであっても労災認定の考え方を示し、労災認定を行っている事例があります。

○発がん前の対策
 発がん性物質による発がんは、発がん性物質に身体が接触しなければ発生することはありません。
 従って、労働安全衛生の考え方では、以下の順で対策をすることが求められています。特に、健康診断は対策としては最後のセーフティネットであり、健康診断だけ行っている場合は不適切な対応といえます。
1.発がん性物質の使用を中止、有害性が低いものへの転換等
2.発がん性物質の発散防止、密封化等
3.発がん性物質の拡散防止(局所排気装置等)
4.発がん性物質を薄める(全体換気等)
5.発がん性物質の体内吸収を防ぐ(保護具の使用等)
6.健康診断の活用
 また、以上の対策については、生産性の向上と同時に考える必要があります。対策が現場の業務工程を増やすことがないかを、衛生委員会等を通して調査審議する必要があります。さらに、法令に基づいた記録を残しておくことが、発がんがあった場合に、発がん性物質による発がんではないことを証明するためには重要です。

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