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ぷろこんエッセイ 第83号 ハートボイルド・コンサルティング

■□■■■□■□■□ ぷろこんエッセイ ■□■□■□■■□■
現役コンサルタントによるワイルド・コンサルティング・エッセイ
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓第83号 ハートボイルド・コンサルティング
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業務改革系のコンサルティング・プロジェクトでなくてはならないものは、
メンバーの「ハートボイルド」である。しかしハートボイルドがありすぎても、
ろくなプロジェクトにはならない。
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ハートボイルド(念のためハードボイルドではない)とは、「燃えたつ心」ぐらい
の意味でいいだろう。窮地や不合理から脱するための業務改革には不可欠
な要素である。

お客さまの会社にとっては、それをやらねばならない理由がある。だから改革
の仕事には昨日までをリセットできて、しかも今日から燃える人材、つまり
燃えたつ心がある人材をあてるはずだ。顧客自身がまず「ハートボイルド」で
なくては改革などできない。

一方コンサルタントの仕事は、自分を燃やすのではなく、お客さまを燃やす
ことである。

自分が先に燃えさかって、お客さまを燃やせない自分の力量を棚上げして、
燃えないお客が悪いと言いのけるプロジェクト・リーダーを何人も見てきた。
かく言う自分もいくつかのプロジェクトではそうだった。自戒の意味をこめて、
これを「自分ハートボイルド」と名づけよう。

コンサルタントは人の弱みを突く卑しい存在なので、自分ハートボイルドに
なりがちだ。たとえばこういうものだ。

・そのプロジェクトで自分の名を上げたい
・そのプロジェクトは自分のキャリアになる
・そのプロジェクトをオレにやらせれば、アサインされたメンバーより良く
やれる
・いま身体が空いているから、そのプロジェクトに参加する(と金になる。
自分の専門外であるが)

これらは皆、安っぽい「自分ハートボイルド」の心のあり方である。唾棄すべき
だ。コンサルタントが目指すべきなのは、言うまでもなく「顧客ハートボイルド」
である。お客さまを揺らし、燃やし、動かす。それに尽きる。

しかし、コンサルタントが「顧客ハートボイルド」に徹することがいかに難しい
か、それが今回のテーマだ。顧客ハートボイルドが自分ハートボイルドに
堕してしまう「10の現象リスト」を作成した。

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現象その1:信念をもってしまう。

信念ほどコンサルティングに邪魔なものはない。信念というモノは、いつなん
時でも外に飛び出て、自慢しようと待ち構えている性質のものだ。信念は
企画書作成からプロジェクト運営まですべてに影響する厄介モノである。
フィルターをかけずにお客さんを見ることを妨げ、現場を見ないでも報告書が
書き上げられる原動力となる。

ところが、たいていのコンサルタントは、たいていのゴミ箱に入りきらないほど
の信念を持っている。信念リストをパソコンのファイルに几帳面に整理して
いる、膨大な信念の電磁記録を持つコンサルタントも多い。検索しないと
出てこないような信念などゴミよりも価値が無い。余計な信念を持たず、
お客さんの信念こそ揺らす。それがこの仕事の唯一の信念であろう。

現象その2:契約時の企画書を金科玉条のように信奉する。

企画書はプロジェクトの途中で、何度も見直すことが肝心である。教育研修
の教材をつくるといったような定型請負作業なら別だが、請け負う前の想像力
だけで作成した企画書が、最後まで効力を発揮するプロジェクトはほとんど
ない。プロジェクトの発注部門が現場のほんとうの問題を知らないからでも
ある。ところが、成果物と契約書にしばられて、企画書をまっとうすることが
プロジェクトだと錯覚してしまうことがある。

コンサルティング・プロジェクトの本質は「ウォーリーを探せ」である。赤白の
縞々シャツを着た、ほんとうの原因や課題は現場や社長室に埋もれている。
これを探し当てるのがこの仕事だ。ウォーリーを探してさらし者にするため、
企画書は何度でも書き換えよう。

現象その3:たくさんのウォーリーを探しあててしまう。

ほんとうの根源的な原因はひとつかふたつのはずなのに、お宅には800個
も課題がありますと、多ければ多いほど良いようなことを言ってしまう。そして
あれもこれも赤白の縞々です、ひとつひとつやらなきゃいかんですね、という
コンサルタントもいる。彼/彼女はおそらく色覚異常である。

正しいアプローチは100みっつである。容疑者が何人いようと、3人の
ウォーリーをしょっぴいてくる。ウォーリーAは「方針課題」、Bは「目標課題」、
Cは「組織課題」という具合に内容にダブりをもたせないのがコツだ。「課題
三兄弟」に絞り込むくせを身につけよう。

現象その4:数字に意味があると思いこんでしまう。

業務改革を請け負うコンサルタントにとって、経営数字自体には何も意味が
ない。何たら回転率や稼働率計算、小難しい価値計算を外部のコンサルが
わざわざ手を染める必要はさらさらない。お客さんの仕事である。むしろ経営
成績なら、なぜその数値になったのか原因を探ることが重要である。目標
数値なら、その数値づくりの根拠を探り、修正/補強する手伝いをすること
こそが大切だ。

こうした作業は、いずれもその会社の財務諸表から読み取ってできることで
はない。数値の低落の原因は現場の至るところに散在しているからだ。
もしも原因が財務にあるとしたら、それは課題ではなく粉飾というべきだろう。

現象その5:分析します、とつい言ってしまう。

雇っているコンサルタントが「課題を分析します」「財務データを分析します」
と言ったら、即座に疑わしい目を向けよう。分析しますとは、通常国会でよく
聞かれる「検討いたします」という言葉の別の言語表現なのである。

分析の原意は「細かく分解する」という意味であって、森の課題も樹木の課題
も、ことごとく枝葉や葉緑素に分解してしまおう、というのである。分解だけして
もウォーリーのピースが散乱するだけである。正しい表現は「分析した後、
課題を再合成(分析の反対語)します」、である。しかし再合成してもウォー
リーが最初の場所で同じ服を着ているようでは、コンサルタントとしては失格
である。

現象その6:真面目なセッション運営をしてしまう。

理想的なセッションとは寄席であり掛け合い漫才である。テレビ番組笑点の
大喜利のような運営ができれば達人の域である。コンサルタントのセッション
に参加したことのない読者には「はぁ?」と思われるだろうが、コンサルには
真面目な人が多いので、セッションはえてして無味乾燥で、証人喚問のように
なりがちである。「貴社の現状の業務プロセスを教えてください」なんて質問に
誰が興味を持つのだろうか?

それよりお客さんの会社のおかしな業務プロセスを教えてもらって、それを
肴にして笑いをとる。笑いのあるセッション運営ができて、同時に課題も絞り
こむ、これで一人前である。

現象その7:お客さまと同じ時計を持ってしまう。

お客さまに「今は10時ですよね」と問いかけられて、「ええ10時です」と
オウムがえしに答えてしまう症状である。正しくは「御社は世の中からは
10分以上遅れての10時です」、あるいは「ええ今は10時です。しかし
お客さんはアナログの10時で、世の中一般の10時はすでにデジタルです」
と答えるべきであろう。

お客さまの実情を知りすぎると、コンサルタントといえどもつい芸者衆と化して
しまうのである。ましてお客さんのプロジェクトメンバー方が自分より高い時計
をはめているとなると、オレはなぜこんなヤクザな商売を安月給でやっている
んだろう?という疑念にもとらわれてしまう。

現象その8:写経提言をまとめてしまう。

経営の教科書を筆写して原稿や提言をまとめることをわたしは「写経」と呼ん
でいる。お経を書き写して会得するという、あれだ。経営の教科書に書いて
あるぐらいだから、たいていは至極真っ当で間違っていない。間違っては
いないが、眠くなるほど当たり前な内容である。当たり前だから誰が聞いても
正しいが、その提言はまず実行されない。それが写経提言である。写経なの
に出典も書かないという提言も横行している。それならばいっそのこと、「お宅
の会社は南無阿弥陀仏だ」と言い切った方がウケルだろう。

現象その9:感謝状をもらってしまう。

コンサルタントたるもの、お客さんから感謝状をもらうようではダメだ。どうして
ももらってしまったときは、その場で破り捨てるぐらいの気迫が欲しい。われ
われにはトロフィーは必要ない、これはお客さんのプロジェクトメンバーに
渡してくれと呟いて、ガンマンが銃口からあがる硝煙をふっと吹くように去って
いく。これがコンサルタントの美学である。リピート案件も(表立っては)欲しが
ってはならない。かくいうわたしは感謝状なるものをもらったことが無いので、
羨んでいるだけという説もある。

現象その10:名刺に「コンサルタント」と刷った最初の日のことを忘れてしまう。

私事だが、わたしは最近「クリエイティブ・マネジメント・コンサルタント」と
名刺で名乗っている。普通は「マネジメント・コンサルタント」なのだが、アタマ
のひとひねりが案外ウケている。だから(少し恥ずかしいが)そのままにして
いる。クリエイティブ、ようするに写経はしないゾ、経験だけでモノを言わない
ゾ、新鮮な提案をするゾ、という気合である。

顧客を燃やし、動かすというのが目標であれば、「エンジン・コンサルタント」と
いうネーミングもありうるが、わたしは自動車業界専属ではない。人を動かす
なら「人事コンサルタント」でいいかというと、「ひとごとコンサルタント」とも
読めてよろしくない。「シニア・コンサルタント」となると経験を積んで偉いんだ
という匂いがして鼻につくし、もっと高齢化社会になったら、それこそシルバー
生活相談員になってしまう。

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かように「顧客ハートボイルド」を貫くことは難しい。顧客を揺らそうとして、
すぐ自分が揺れてしまう。何に向かって心を燃え立たせるか、いつもそれを
問い続けるのが、この仕事の核心である。

2005年8月8日発行
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発行者 郷わいるど (郷 好文)
連絡先 gowild@gol.com 
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