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【経営者は免責】最高裁判例の教訓!産業医活用方法Q&A⑥

 こんにちは、産業医・労働衛生コンサルタントの朝長健太です。
 従業員の健康問題(従業員主治医の診断書が起因)が企業の経営に直結し、時には社長・役員の辞任、売上減少、株主代表訴訟にまで発展するケースが顕在化しています。また、従業員の健康を第一に守るという目的により、企業ガバナンスの逆転現象が起き、結果的に健康を守りきれなかったという矛盾も生じています。
 健康管理は、ケガからハラスメントまで、対策の範囲が広いです。そこで、企業ガバナンスを経営者主体という本来の形にすることで、会社と経営者を第一に守り、その結果、従業員の健康を守るという目的で、下記の日本規格協会規格(JSA 規格)「JSA-S1025 ヒューマンリソースマネジメント-組織(企業)が⾏う健康管理-職域健康専⾨家の活⽤の指針」を開発しました。
 また、認証機関も立ち上げております。
なお、日本規格協会は、経済産業省による認定産業標準作成機関であり、唯一のマネジメントシステム作成機関です。
 企業主体の健康管理体制の構築について、ぜひJSA-S1025をご活用ください。

 今回は、「【経営者は免責】最高裁判例の教訓!産業医活用方法Q&A⑥」について作成しました。
 企業利益の向上という、精神的・社会的健康を向上させるために、弊社をご活用ください。
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【経営者は免責】最高裁判例の教訓!産業医活用方法Q&A⑥
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 次のコラムについて、大きな反響をいただきありがとうございます。
 裁判所提案で、社長辞任となる時代がいよいよ始まっています。
 もはや、医師と連携していない社長については、裁判所は一定の結論を出したと言えるでしょう。
 医師と連携している社長について、対応の正当性が、次世代の裁判の争点になると考えられます。
 【社長辞任】ハラスメントによる従業員の健康障害について、問い合わせがありましたので、Q&A形式で回答させていただきます。

【社長辞任】ハラスメントによる従業員の健康障害
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-177734/

Q
 経営者が、医師に責任を負わせ、自らの責任を免れた事例をご教示ください。

A
 労使関係に限定されませんが、経営者が専門職(医師)のみに責任を負わせ、組織の上層部や非専門職が責任を免れた事例として、薬害エイズ事件の刑事裁判(務上過失致死被告事件:事件番号平成17(あ)947)があります。

〇 薬害エイズ 業務上過失致死被告事件
 1980年代初頭、日本で薬害エイズ事件という未曽有の悲劇が発生しました。これは、血液が固まりにくい血友病の治療に用いられた、熱処理がされていない非加熱の血液凝固製剤が原因となり、多くの患者がエイズウイルス(HIV)に感染した事件です。
 当時の血友病患者約5,000人のうち、半数近い1,400人以上がHIVに感染し、多くが命を落とすことになりました。この製剤は主に輸入に頼っており、海外ではすでに感染リスクが指摘され始めていた時期でした。
 当時、厚生省薬務局で薬事法を所管する生物製剤課の課長補佐(医系技官・医師)だった松村明仁(あきひと)氏は、海外の情報を基に非加熱製剤を通じたHIV感染のリスクをいち早く察知しました。松村氏は、患者の命を守るため、ウイルスを殺す加熱製剤への緊急切り替えを組織内で強く主張しました。
 しかし、上司である課長や局長らは、「国内でまだ感染例がない」という表向きの理由などにより、松村氏の主張を退け、加熱製剤の承認と導入は約2年間も遅延しました。
 この結果、非加熱製剤の投与により感染者は爆発的に増加し、事件は深刻な社会問題へと発展しました。松村氏は、事件の解明に向け、事実と経験を証言する重要な突破口を開きました。しかし、事件の捜査が進む中で、松村氏は業務上過失致死罪で起訴され、最終的に有罪判決を受けました。
 2008年3月3日、最高裁は松村氏に対し、「一般論として公務員の不作為が服務上の責任や国の賠償責任を超える刑事法上の責任を直ちに生じさせるものではない」と前置きしつつも、松村氏自身が加熱製剤の早期承認を図る方針を示したことを根拠として、「非加熱製剤の継続使用によってエイズを発症させて死亡させる恐れがあることを予見できた」と認定しました。その上で、薬務行政上必要かつ十分な対応を講じるべき義務があったとして、「1986年1月に日本における販売が開始された加熱製剤の十分な供給量を確保することが可能となったにもかかわらず、非加熱製剤の販売中止と回収の指示を怠った責任を免れない」として、業務上過失致死罪(禁固1年、執行猶予2年)を確定させました。
 この事件の結末が示唆するのは、最高裁において刑事責任を問われたのが、「医師」である松村氏や現場の専門家だけであり、上層部の事務官僚や政治家は誰も責任を問われなかったという点です。当然、厚生省の経営者にあたる大臣も責任はありませんでした。
 薬害エイズ事件は、組織全体が責任を回避するために特定の個人(専門家)を「法的な受け皿」として利用した、構造的な責任回避を最高裁が認めた判例となりました。
 薬害エイズ事件では、行政組織の決定に関わった政務家や事務官僚が責任を免れる一方、専門的な立場であった医系技官(医師)のみが刑事責任を追及されるという結果に至りました。これは、健康に関する問題においては、医師が他の職種や役職と比べて絶対的な責任を負うことが司法によって示されたとも言えます。

〇 最高裁判例の教訓
 専門知識を要する領域では、その領域の専門職に最終的な判断責任を負わせることで、トップや非専門職(事務官僚など)が組織的な意思決定の責任から距離を置くことが可能になりました。
 当然、従業員の健康管理に関しても、産業医に判断責任を負わせることで、経営者や担当管理職が、その責任から距離を置くことが可能になったと言えます。
専門家(産業医)を「法的な責任の受け皿」として利用し、組織全体としては責任を免れるという構造的なノウハウを、最高裁判所が事実上認めた判例なのです。
 企業が最高裁判例から学ぶべき教訓は、「誰に責任を負わせるか」ではなく、「誰に専門的な判断を任せ、組織としてその判断をどう生かすか」という点にあります。これは、労働安全衛生法上の責任を合法的に、かつ適切に履行するための戦略となります。

産業医を「合法的な責任の分担者」として活用する
 企業における産業医の役割は、行政における医系技官と類似した専門的かつ法的な責任を担う立場にあります。

① 専門的判断の権威付けと責任の明確化
 産業医は、健康管理に関する専門的な判断を企業に対して意見具申する義務があります。この具申は、企業が負う安全配慮義務履行において、客観的かつ専門的な根拠となります。
 薬害エイズの事例では、医師の松村氏は、危険性について主張していましたが、上司らに退けられたと松村氏側は主張しています。しかし、主張する以外にも、措置を講じる権限を行使しなかったとして有罪が確定しています。
 産業医においては、労働安全衛生法第13条第5項において勧告権が定められています。薬害エイズの類例に倣うならば、産業医の主張が退けられた場合、勧告権を発動する必要があります。
 したがって、企業側は、産業医から「主張を退けられた」と揚げ足を取られないよう、責任問題に関わる点については適切に勧告権を活用するよう、産業医に対し義務付ける(または明確に取り決める)必要があります。
 過重労働面接や休職復職判定などの専門判断を産業医に委ね、その意見を尊重し記録することで、企業は「安全配慮義務を専門家の意見に基づいて適切に果たした」という法的な根拠を確立できます。

② リスク管理の「外部化」
 衛生委員会における専門的な議論や、職場巡視による健康リスクの発見・指導を産業医に担当してもらうことは、経営層や人事労務部門が単独で判断したのではない、専門家による客観的なリスク評価として記録に残ります。
 万が一、健康問題で訴訟等に発展した場合、産業医の作成した記録や意見書は、「企業が専門家の指導を仰ぎ、適切な対策を講じた」という重要な法的証拠となり、経営層の個人責任を合法的に回避し、企業としての「善管注意義務」を果たしたことの証明となります。

産業医の活用:「責任を分担し、リスクを回避する戦略パートナー」
 企業が薬害エイズの最高裁判例による教訓を活かすとは、産業医の意見を形式的に聞くだけでなく、その意見を経営判断に反映させ、記録を残すことに尽きます。
 産業医を単なる法令上の義務としてではなく、「健康リスク管理の専門家」として、そして「経営層の法的責任を分担し、企業の安全配慮義務を合法的に履行する戦略パートナー」として活用することこそが、現代企業が「合法的に責任をマネジメントする」ための重要なノウハウです。
 薬害エイズという多くの犠牲が生まれた悲劇的事件ですが、ここで得られた教訓をもとに、産業医を戦略的に活用することこそが、企業の社会的信用を守り、真の労務リスクの回避につながります

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JSA-S1025 ヒューマンリソースマネジメント-組織(企業)が⾏う健康管理-職域健康専⾨家の活⽤の指針

JSA-S1025ページ
https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=JSA-S1025%3A2025

JSA-S1025紹介
https://webdesk.jsa.or.jp/pdf/jsa/pdf_jsa_372.pdf

【JSA-S1025】開発の解説
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-177724/

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