成果主義とは何なのか(10)
成果主義についてのまとめ
(1)導入経過
デフレ経済下で倒産や企業
合併・統合等が進み、もはや
雇用は聖域ではなくなった状況下では、会社存続のための総額人件費圧縮策はやむを得ない措置として受け入れられたといえます。
この際に
賃金制度の中に内包される定昇制度による
賃金原資の増大メカニズム、肥大化した管理職層や世界的に見ても高水準の中高年層の
賃金などが個別
賃金上の問題点としてクローズアップされました。
この解決策として当時徐々に浸透し始めていた年棒制が急速に浸透したのです。年棒制について産業界で支持されたのは今までの増分管理から洗い替え管理となる性格によるところが大きいと思われます。管理職の
賃金見直しから始まった年棒制は一般職にまで進むことになりますが、
成果主義色の強い
賃金体系は定昇概念を払拭あるいは縮小することとなりました。
成果主義のもう一つの特徴は格差の増大ということです。
グローバリゼーションの影響でしょうか。企業競争激化時において企業が生き残るためには、社員間で競争意識を高め業績を向上させるしか道はないという論理で、大きな格差がつく制度が導入されていきました。
(2)問題点
成果主義は人件費コストの削減という緊急対応もありましたが、業績・成果・貢献度の高い人にはより高い
賃金・
報酬を、貢献の低い人にはそれに見合った処遇をという、原則を貫こうというものでもありました。そしてこうした結果が会社をリードするメンバーの
モチベーション向上に繋がり、会社の生産性や業績が向上するのではという期待も抱いているのです。
しかし実際に起こったことは評価制度への大きな不信と厳しい批判でした。洗い替え
賃金と大きな格差この2つを公正に実施し、不満をミニマムに保つには
人事評価の適正さ、公正さが求められますが、残念ながら現在はその評価制度に矛盾が集中しているのも事実です。
(3)今後の方向
今後この評価制度をどうしていくのか。大きな課題と思います。解決の方向としてより精緻な
人事制度の道を選ぶということもあるでしょう。しかし所詮人が人を評価するのです。いくら
人事担当者が精緻な制度を作り上げても、それを運用する現場の
管理監督者がそれを十分に理解し実行できるとは限りません。
私は
目標管理に基づく
人事考課制度はこのままで良いと思います。所詮は人が人を評価することです。これ以上精緻な新しい作業プロセスを設け、管理するための時間と労力をかけるよりも、現在の考課制度や管理能力、組織風土、
モチベーションの要因などを考慮の上で、 “適正な格差”“納得できる
賃金制度”とは何なのかを検討し、
モチベーションを維持・向上できる
人事制度・考課制度へ転換すべきであると考えます。
賃金についてはその性格付けを明確にすべきではないでしょうか。これからの
賃金の性格として、月次給与は安定性、長期性に配慮し適正な刺激性を持たせる。
賞与については業績を考慮・反映させたうえで刺激性を強くし、ローン等の長期的な生活必要部分については最低限の安定性を保つというような
報酬の性格にあわせた考え方が必要と思います。
月次給与は労働の成果を反映する刺激性だけでなく、労働に向けて健康な生活・文化的な生活を送れる基礎的部分という安定性の側面も持ちます。
世代的に見ても、20代〓30代は、結婚や
出産、子育てなど人生の中で長期的な投資を要する時期であり、将来の収入に対する展望がないと、投資に踏み切れなくなるという時期でもあります。また一般的には能力の伸長も著しい時期でもあり、仕事や成果面でも伸張が期待されます。こうした世代には特に
賃金の安定性という要素を加味する必要性が強いと思います。
(4)おわりに
成果主義の
人事賃金制度は、その導入の性急さ故に運用面でつまずき、また仕組みの面でも日本的
雇用システムの中で残すべき大事なもの(安定性、長期展望、人材育成等)を見失い漂流し始めている〓というのがこれまで
成果主義について検討してきた私の実感です。
職種や組織、顧客などさまざまな環境要因があります。そしてそれぞれに
モチベーションの源も異なるはずです。職場での
モチベーションを高めるための
人事施策として最適なものを選択するのがよいのではないでしょうか。
成果主義とは何なのか(10)
成果主義についてのまとめ
(1)導入経過
デフレ経済下で倒産や企業合併・統合等が進み、もはや雇用は聖域ではなくなった状況下では、会社存続のための総額人件費圧縮策はやむを得ない措置として受け入れられたといえます。
この際に賃金制度の中に内包される定昇制度による賃金原資の増大メカニズム、肥大化した管理職層や世界的に見ても高水準の中高年層の賃金などが個別賃金上の問題点としてクローズアップされました。
この解決策として当時徐々に浸透し始めていた年棒制が急速に浸透したのです。年棒制について産業界で支持されたのは今までの増分管理から洗い替え管理となる性格によるところが大きいと思われます。管理職の賃金見直しから始まった年棒制は一般職にまで進むことになりますが、成果主義色の強い賃金体系は定昇概念を払拭あるいは縮小することとなりました。
成果主義のもう一つの特徴は格差の増大ということです。
グローバリゼーションの影響でしょうか。企業競争激化時において企業が生き残るためには、社員間で競争意識を高め業績を向上させるしか道はないという論理で、大きな格差がつく制度が導入されていきました。
(2)問題点
成果主義は人件費コストの削減という緊急対応もありましたが、業績・成果・貢献度の高い人にはより高い賃金・報酬を、貢献の低い人にはそれに見合った処遇をという、原則を貫こうというものでもありました。そしてこうした結果が会社をリードするメンバーのモチベーション向上に繋がり、会社の生産性や業績が向上するのではという期待も抱いているのです。
しかし実際に起こったことは評価制度への大きな不信と厳しい批判でした。洗い替え賃金と大きな格差この2つを公正に実施し、不満をミニマムに保つには人事評価の適正さ、公正さが求められますが、残念ながら現在はその評価制度に矛盾が集中しているのも事実です。
(3)今後の方向
今後この評価制度をどうしていくのか。大きな課題と思います。解決の方向としてより精緻な人事制度の道を選ぶということもあるでしょう。しかし所詮人が人を評価するのです。いくら人事担当者が精緻な制度を作り上げても、それを運用する現場の管理監督者がそれを十分に理解し実行できるとは限りません。
私は目標管理に基づく人事考課制度はこのままで良いと思います。所詮は人が人を評価することです。これ以上精緻な新しい作業プロセスを設け、管理するための時間と労力をかけるよりも、現在の考課制度や管理能力、組織風土、モチベーションの要因などを考慮の上で、 “適正な格差”“納得できる賃金制度”とは何なのかを検討し、モチベーションを維持・向上できる人事制度・考課制度へ転換すべきであると考えます。
賃金についてはその性格付けを明確にすべきではないでしょうか。これからの賃金の性格として、月次給与は安定性、長期性に配慮し適正な刺激性を持たせる。賞与については業績を考慮・反映させたうえで刺激性を強くし、ローン等の長期的な生活必要部分については最低限の安定性を保つというような報酬の性格にあわせた考え方が必要と思います。
月次給与は労働の成果を反映する刺激性だけでなく、労働に向けて健康な生活・文化的な生活を送れる基礎的部分という安定性の側面も持ちます。
世代的に見ても、20代〓30代は、結婚や出産、子育てなど人生の中で長期的な投資を要する時期であり、将来の収入に対する展望がないと、投資に踏み切れなくなるという時期でもあります。また一般的には能力の伸長も著しい時期でもあり、仕事や成果面でも伸張が期待されます。こうした世代には特に賃金の安定性という要素を加味する必要性が強いと思います。
(4)おわりに
成果主義の人事賃金制度は、その導入の性急さ故に運用面でつまずき、また仕組みの面でも日本的雇用システムの中で残すべき大事なもの(安定性、長期展望、人材育成等)を見失い漂流し始めている〓というのがこれまで成果主義について検討してきた私の実感です。
職種や組織、顧客などさまざまな環境要因があります。そしてそれぞれにモチベーションの源も異なるはずです。職場でのモチベーションを高めるための人事施策として最適なものを選択するのがよいのではないでしょうか。