札幌市豊平区の
税理士 溝江諭(みぞえさとし)です。
民主党のマニフェストではごく僅かしか触れられていない税制。そこで、より詳しく記載されている民主党の「政策集 INDEX 2009」から税制改正についての政策を見ていきましょう。
『民主党による税制改正』その10 個別間接税改革の推進 1です。
これまでお伝えした内容は以下のとおりです。
1回目・・・「納税者の視点に立った税制へ」という題で、「税制改正過程の抜本改革」「税・
社会保障共通番号の導入」「納税者権利憲章の制定と更正期間の見直し」「
国税不服審判のあり方の見直し」
2回目・・・「
所得税改革の推進」という題で、「所得控除の整理、税額控除、手当等への切り替え」「
給与所得控除の見直し」
3回目・・・「年金課税の見直し」と「
住宅ローン減税等」
4回目・・・「給付付き税額控除制度の導入」、「金融所得課税改革の推進」
5回目・・・「
消費税改革の推進」
6回目・・・「
法人税改革の推進」
7回目・・・「中小企業支援税制」
8回目・・・「
相続税等改革の推進」
9回目・・・「国際連帯税の検討」
1 個別間接税改革の推進
「単一の経済行為に
消費税と2本立ての課税を行うことになる個別間接税は速やかに整理し、間接税は
消費税に一本化すべきです。
一方で、税によって社会に益をもたらす特定の品目の普及や使用を促進したり、社会的コストを生じる特定の品目の普及や使用を抑制したり、あるいはその社会的コストの一部の負担を求めたりすることは、適当であると考えます。このような観点に立って、残存する嗜好品やエネルギーに係わる個別間接税は「グッド減税・バッド課税」の考え方に基づいた課税体系に改めます。」
民主党の主張は以下のとおりです。
1 個別間接税はできるだけ廃止し、一般
消費税に一本化する。
2 個別間接税の対象となっているものでも、社会に益をもたらすものについてはグッド減税の考えで減税の対象とする。
3 社会にコスト増をもたらすものについてはバッド課税の考えで課税体系を改める。
税金の分類方法のひとつに直接税と間接税という分け方があります。直接税は納税義務者が自ら税の負担者(担税者)になることを予定した税であり、間接税は物品やサービスの最終的な購入者が担税者となることを予定した税で、直接税のように納税義務者と担税者が同一であることを予定していません。直接税の代表例としては、
法人税、
所得税、
相続税、
固定資産税などがあり、間接税には、ガソリン税(揮発油税、地方揮発油税)、酒税、たばこ税、自動車
重量税、入湯税、
印紙税、航空機燃料税、石油石炭税、電源開発促進税などの特定の物品やサービスに課税する個別間接税と
消費税、地方
消費税のように消費一般に課税する一般間接税があります(注1)。
国税と
地方税全体の税収に対する割合で見ると、平成21年度予算では直接税は70.9%、間接税は29.1%となっています(注2)。この割合を直間比率といいます。間接税のうち、最大のものは一般間接税である
消費税(
国税4%+
地方税1%)で、全税収の15.0%、間接税の約半分を占めています。
間接税制度の問題点は、①国民に痛みを感じさせない税金であり、それ故、担税者である国民の「税に対する関心度」を低下させる要因となっていること、②担税者が購入する物やサービスの価格に組み込まれ、その分だけ生活費がアップすることです(注3)。この問題点を解消するためには間接税制度はできるだけ少ない方が良いこととなります。民主党は、個別間接税については、「速やかに整理」するとのことですので、この点では歓迎すべきことと言えますが、整理の理由が「単一の経済行為」に対する「
消費税と2本立ての課税」を避けるためとのことです。これでは、間接税が持つ上記二つの問題点のうち、②の一部を解決することにしかなりません。民主主義国家における共通
経費を支えるものが税金ですから、①の問題点を取り上げ、そこから間接税に踏み込んでもらいたいと思いました。残念です。
なお、たくさんある個別間接税のうち、どれを整理するのかについてもいまひとつ明らかではありません。個別間接税のひとつひとつを丁寧に精査し、その課税目的、課税根拠、税額を明らかにし、その情報を開示したうえで、整理してもらいたいものです。また、残すこととなる個別間接税についても、課税目的、課税根拠、税額を定期的に国民に分かりやすく知らせ、その存在意義を定期的に検証できるようにしてもらいたいと思います。
さらに、個別間接税の整理による税収減を他のどのような税収で補うのかという新たな問題にも直面します。上記の政策では、「間接税は
消費税に一本化すべき」となっていますので、素直に読むと税収減を一般
消費税の増税で補うとも読めますが、それでは、「
消費税改革」で述べていた次の点と矛盾するところも出てきます。
「具体的には、現行の税率5%を維持し、税収全額相当分を年金財源に充当します。将来的には、すべての国民に対して一定程度の年金を保障する「最低保障年金」や国民皆保険を
担保する「
医療費」など、最低限のセーフティネットを確実に提供するための財源とします。」
個別間接税の税収減の補填財源としては、この他に例えば、①他の個別間接税で補う、②
所得税や
法人税等の所得課税の税で補う、③
相続税や不動産取得税、
固定資産税などの
資産課税の税で補うなどが考えられますが、いずれにしろ具体的な提案が求められます。
次に、政策にあるグッド減税は、自動車
重量税や自動車取得税におけるエコカー減税(注4)や自動車税、
軽自動車税におけるグリーン化(注5)のことを指しているのでしょう。これらの減税は自民党政権下で既に実施されています。環境対策に貢献できるエコカーの普及促進のため間接税を活用しようとするもので、大いに結構なことです。また、これが内需の拡大にも一役買うことにもなり、環境面だけではなく、経済対策としても一定の効果が期待できますので、今後どのような形で残していくのかを明らかにしてもらいたいものです。
一方、車歴13年超のガソリン車などの自動車税の10%の増税(注5)。これについてはバッド課税のひとつとして認識しているのかも知れませんが、これはやめるべきです。なぜなら、古い車を乗りこなすためには日常の点検整備が必要とされ、貴重な資源から作られた車を大切に使用していることの証ともいえ、褒められることはあっても、罰を与えるべき性質のものではないからです。
その他のバッド課税としては、酒税、たばこ税、ガソリン等の燃料課税などを想定していると思われますが、これらについては次回に改めて見ることにします。
皆さんはどう考えますか?
See you next !
次回は、『民主党による税制改正』 その11 個別間接税改革の推進2 について見ていきます。
その他の『ちょっとためになる情報』は、次のサイトの「お知らせ」と「ブログ」でどうぞ!!
http://www.ksc-kaikei.com/
(注1)
国税・
地方税の内訳(財務省、平成21年度予算)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/001.htm
(注2)直間比率(
総務省)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/pdf/02-08.pdf
(注3)間接税の問題点(KSC
会計事務所のブログ 「『税金』とは? その3 間接税制度」)
http://www.ksc-kaikei.com/blog/index.cgi?no=25
(注4)エコカー減税(KSC
会計事務所のブログ 『環境対策を後押し!エコカー減税と新車購入
補助金制度』)
http://www.ksc-kaikei.com/blog/index.cgi?no=34
(注5)自動車税の10%アップ(北海道の場合)
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sm/zim/tax/car_green.htm
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札幌市豊平区
税理士 溝江 諭 KSC
会計事務所
http://www.ksc-kaikei.com/
札幌学院大学 客員教授 溝江 諭
税務会計論担当
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札幌市豊平区の 税理士 溝江諭(みぞえさとし)です。
民主党のマニフェストではごく僅かしか触れられていない税制。そこで、より詳しく記載されている民主党の「政策集 INDEX 2009」から税制改正についての政策を見ていきましょう。
『民主党による税制改正』その10 個別間接税改革の推進 1です。
これまでお伝えした内容は以下のとおりです。
1回目・・・「納税者の視点に立った税制へ」という題で、「税制改正過程の抜本改革」「税・社会保障共通番号の導入」「納税者権利憲章の制定と更正期間の見直し」「国税不服審判のあり方の見直し」
2回目・・・「所得税改革の推進」という題で、「所得控除の整理、税額控除、手当等への切り替え」「給与所得控除の見直し」
3回目・・・「年金課税の見直し」と「住宅ローン減税等」
4回目・・・「給付付き税額控除制度の導入」、「金融所得課税改革の推進」
5回目・・・「消費税改革の推進」
6回目・・・「法人税改革の推進」
7回目・・・「中小企業支援税制」
8回目・・・「相続税等改革の推進」
9回目・・・「国際連帯税の検討」
1 個別間接税改革の推進
「単一の経済行為に消費税と2本立ての課税を行うことになる個別間接税は速やかに整理し、間接税は消費税に一本化すべきです。
一方で、税によって社会に益をもたらす特定の品目の普及や使用を促進したり、社会的コストを生じる特定の品目の普及や使用を抑制したり、あるいはその社会的コストの一部の負担を求めたりすることは、適当であると考えます。このような観点に立って、残存する嗜好品やエネルギーに係わる個別間接税は「グッド減税・バッド課税」の考え方に基づいた課税体系に改めます。」
民主党の主張は以下のとおりです。
1 個別間接税はできるだけ廃止し、一般消費税に一本化する。
2 個別間接税の対象となっているものでも、社会に益をもたらすものについてはグッド減税の考えで減税の対象とする。
3 社会にコスト増をもたらすものについてはバッド課税の考えで課税体系を改める。
税金の分類方法のひとつに直接税と間接税という分け方があります。直接税は納税義務者が自ら税の負担者(担税者)になることを予定した税であり、間接税は物品やサービスの最終的な購入者が担税者となることを予定した税で、直接税のように納税義務者と担税者が同一であることを予定していません。直接税の代表例としては、法人税、所得税、相続税、固定資産税などがあり、間接税には、ガソリン税(揮発油税、地方揮発油税)、酒税、たばこ税、自動車重量税、入湯税、印紙税、航空機燃料税、石油石炭税、電源開発促進税などの特定の物品やサービスに課税する個別間接税と消費税、地方消費税のように消費一般に課税する一般間接税があります(注1)。 国税と地方税全体の税収に対する割合で見ると、平成21年度予算では直接税は70.9%、間接税は29.1%となっています(注2)。この割合を直間比率といいます。間接税のうち、最大のものは一般間接税である消費税(国税4%+地方税1%)で、全税収の15.0%、間接税の約半分を占めています。
間接税制度の問題点は、①国民に痛みを感じさせない税金であり、それ故、担税者である国民の「税に対する関心度」を低下させる要因となっていること、②担税者が購入する物やサービスの価格に組み込まれ、その分だけ生活費がアップすることです(注3)。この問題点を解消するためには間接税制度はできるだけ少ない方が良いこととなります。民主党は、個別間接税については、「速やかに整理」するとのことですので、この点では歓迎すべきことと言えますが、整理の理由が「単一の経済行為」に対する「消費税と2本立ての課税」を避けるためとのことです。これでは、間接税が持つ上記二つの問題点のうち、②の一部を解決することにしかなりません。民主主義国家における共通経費を支えるものが税金ですから、①の問題点を取り上げ、そこから間接税に踏み込んでもらいたいと思いました。残念です。
なお、たくさんある個別間接税のうち、どれを整理するのかについてもいまひとつ明らかではありません。個別間接税のひとつひとつを丁寧に精査し、その課税目的、課税根拠、税額を明らかにし、その情報を開示したうえで、整理してもらいたいものです。また、残すこととなる個別間接税についても、課税目的、課税根拠、税額を定期的に国民に分かりやすく知らせ、その存在意義を定期的に検証できるようにしてもらいたいと思います。
さらに、個別間接税の整理による税収減を他のどのような税収で補うのかという新たな問題にも直面します。上記の政策では、「間接税は消費税に一本化すべき」となっていますので、素直に読むと税収減を一般消費税の増税で補うとも読めますが、それでは、「消費税改革」で述べていた次の点と矛盾するところも出てきます。
「具体的には、現行の税率5%を維持し、税収全額相当分を年金財源に充当します。将来的には、すべての国民に対して一定程度の年金を保障する「最低保障年金」や国民皆保険を担保する「医療費」など、最低限のセーフティネットを確実に提供するための財源とします。」
個別間接税の税収減の補填財源としては、この他に例えば、①他の個別間接税で補う、②所得税や法人税等の所得課税の税で補う、③相続税や不動産取得税、固定資産税などの資産課税の税で補うなどが考えられますが、いずれにしろ具体的な提案が求められます。
次に、政策にあるグッド減税は、自動車重量税や自動車取得税におけるエコカー減税(注4)や自動車税、軽自動車税におけるグリーン化(注5)のことを指しているのでしょう。これらの減税は自民党政権下で既に実施されています。環境対策に貢献できるエコカーの普及促進のため間接税を活用しようとするもので、大いに結構なことです。また、これが内需の拡大にも一役買うことにもなり、環境面だけではなく、経済対策としても一定の効果が期待できますので、今後どのような形で残していくのかを明らかにしてもらいたいものです。
一方、車歴13年超のガソリン車などの自動車税の10%の増税(注5)。これについてはバッド課税のひとつとして認識しているのかも知れませんが、これはやめるべきです。なぜなら、古い車を乗りこなすためには日常の点検整備が必要とされ、貴重な資源から作られた車を大切に使用していることの証ともいえ、褒められることはあっても、罰を与えるべき性質のものではないからです。
その他のバッド課税としては、酒税、たばこ税、ガソリン等の燃料課税などを想定していると思われますが、これらについては次回に改めて見ることにします。
皆さんはどう考えますか?
See you next !
次回は、『民主党による税制改正』 その11 個別間接税改革の推進2 について見ていきます。
その他の『ちょっとためになる情報』は、次のサイトの「お知らせ」と「ブログ」でどうぞ!!
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(注1)国税・地方税の内訳(財務省、平成21年度予算)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/001.htm
(注2)直間比率(総務省)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/pdf/02-08.pdf
(注3)間接税の問題点(KSC会計事務所のブログ 「『税金』とは? その3 間接税制度」)
http://www.ksc-kaikei.com/blog/index.cgi?no=25
(注4)エコカー減税(KSC会計事務所のブログ 『環境対策を後押し!エコカー減税と新車購入補助金制度』)
http://www.ksc-kaikei.com/blog/index.cgi?no=34
(注5)自動車税の10%アップ(北海道の場合)
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sm/zim/tax/car_green.htm
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札幌市豊平区 税理士 溝江 諭 KSC会計事務所
http://www.ksc-kaikei.com/
札幌学院大学 客員教授 溝江 諭 税務会計論担当
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