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求人倍率のカラクリ

★求人倍率のカラクリ★

 世間ではボーナス支給の時期になりました。数年ぶりに前年比プラスとか言
ってますが、大手企業だけでしょう。私の知る範囲では、それどころじゃない
と言う社長ばかりですけど。統計上では景気回復基調にあるようですが実感は
感じられませんし、今日の報道では景気判断は弱含みに修正されたようです。
元々良くなっていたのかどうかさえ怪しいですが。

 ちなみに雇用関係の統計で代表的なのが、求人倍率と失業率です。最も良く
知られているのは失業率ですが、正式には「労働力調査」と呼ばれ、総務省統
計局で発表しています。
直近版は→ http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.htm

 今回は、どちらかというと影の存在である求人倍率についてです。

 求人倍率も正式には「一般職業紹介状況」と呼ばれ、毎月職安で取り扱った
求人件数、求職者件数を統計処理し、最終的には求人倍率という形で発表しま
す。
 求人倍率の算式はただの割り算で「求人数÷求職数」です。簡単に言えば、
求職者1人に何件の求人があるかということ。もしこの倍率が高ければ、求人
数>求職数 なので、景気が良いということです。双方が同数なら倍率は丁度
1倍。えり好みしなければ失業者がないということになります。あくまでも理
論上ですが。

 公表される求人倍率には2つの種類があります。新規求人倍率と有効求人倍
率です。
 新規求人倍率の方は、その月に新規に出された求人件数と、新たな求職申込
みを受けた件数がベースとなります。いわば、その月に動きのあったホットな
件数の集計です。

 一方、有効求人倍率の方は、少々異なります。一般的に、求人や求職は新規
に受理した月から翌々月末まで有効(=生きている)とされています。例えば12
月に申し込んだ求人は、2月末まで有効です。従って、12月の新規求人であり、
かつ1月、2月の有効求人でもあるということです。もちろん、途中で決定した
り、取り下げれば除外されますし、雇用保険受給者の有効求職期間は取扱いが
異なります。

 有効求人倍率は、これら有効となっている求人、求職を割り算して求められ
ます。ただ、割り算といっても、そのベースとなる生データは、そのまま使う
わけではありません。

 経済指標や時系列データは、季節の変化に伴う自然要因や慣習、制度等から
の社会的要因を反映しているため、1年を周期として定期的なパターンで変動
を繰り返します。いわば季節的なクセといえるでしょう。このままでは、数値
の動きの要因が掴めないため、季節変動を生データ系列から取り除く必要があ
り、これを季節調整といいます。季節調整をした後の数値は、本来のトレンド
を如実に表すものとなります。

 もちろん公表されている月間の数値や倍率は全て季節調整値となっています。
但し、年計のデータは季節調整を行いません。理論的には各月の合計と、生デ
ータの年計は同じになるからです。
 立ち入りついでに、季節調整の手法は各種ありますが、現在はセンサス局法
X-11という方法です。以前はEPA法でしたが、・・・マニアックな話でした。す
みません。

 いずれにせよ、季節調整のフィルターをかけることにより、これらのデータ
は滑らかな推移をたどることになります。その中でトレンドを掴み、特異な変
化があれば、これらの要因を分析していくことになります。まさに役所と学者
のメシの種です。

 なお、求人倍率は、労働力調査と同時発表で、当該月の翌月月末に近い火曜
日か金曜日、閣議後発表されます。所管は厚生労働省雇用政策課の調査係とい
うセクションで集計しています。ちなみに、これらのデータは、以前は全国の
職安から都道府県経由で紙データが本省へ上がり、そこで手作業兼とても古い
PCで集計していました。今ではオンラインで自動集計になっているはずです。
多分。

 この統計では、数値をなめるようなことはしてません。悪くなってもそれな
りに公表せざるを得ませんが、役所が多少の策を労することはあります。もう
20年も前になりますが、有効求人倍率が0.64倍で半年も動きがなかった時に、
完全失業率が3%になりかけた時期がありました。当時の総理府統計局から連絡
が入り「従来、失業率は小数点1位までの発表だが今月だけ2桁まで公表する
ので宜しく」ということでした。何が何でも3%の大台に乗せたくなかったので
しょう。結果、2.95%との発表でした。セコっ!

 最近の有効求人倍率は順調な推移のように見えますが、牽引役はサービス業
です。ただ、その中身は統計上表れていませんが、大部分は派遣業や業務請負
業かと思われます。念のため最近の新聞折込を調べたところ、広告件数の9割
以上がこれらの業種でした。従業員の作業内容は製造系業務でも、会社の産業
分類上はサービス業なので、このような結果となるのでしょう。面白いことに、
その分、製造業の求人は減少傾向にあります。統計をそのまま鵜呑みにできな
い所以です。

直近の一般職業紹介状況↓
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/ippan/2004/10/index.html
(私が担当していた時と全く同じパターンです。統計の性格上仕方ないか)


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