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■
行政書士津留信康の『身近な法務サポートマガジン』<第155号/2010/2/15>■
1.はじめに
2.「
会社法務編/中小企業・
ベンチャー経営者&
起業予定者のための“
会社法”等のポイント(99)」
3.編集後記
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1.はじめに
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こんにちは。
行政書士の津留信康です。
この冬の宮崎市内は、
4年ぶりに雪が降ったかと思うと、20℃を超す春先の暖かさになり、
そうかと思うと、春一番が吹き荒れ、前日から10℃以上も気温が下がる・・・
といった具合に、なかなか体が順応する余裕を与えてくれません。
お天気には勝てませんが、少々シンドイ毎日です・・・。
それでは、今回も、どうぞ最後までおつきあいください。
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2.「
会社法務編─中小企業・
ベンチャー経営者&
起業予定者のための“
会社法”等のポイント(99)」
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★本稿では、「平成21年度
司法書士試験問題」の解説を通じて、
“
会社法”等に関する理解を深めていただいておりますが、
第10回は、「事業の譲渡および譲受けと
吸収分割の異同」に関する問題です。
※)便宜上、問題文・設問肢の内容を一部変更している場合がありますので、
ご了承ください。
■事業の譲渡および譲受けと
吸収分割の異同に関する次の記述のうち、
誤っているものはどれか。
なお、事業の譲渡または譲受けの相手方およびと
吸収分割承継
株式会社は、
当該事業の譲渡もしくは譲受けをする
株式会社
または
吸収分割株式会社の特別支配会社でないものとする(午前─第33問)。
1.事業の譲渡をする
株式会社は、
当該事業を構成する
債務を事業の譲受けをする
株式会社に移転させるためには、
個別にその
債権者の同意を得なければならないが、
吸収分割株式会社は、
債権者の異議手続を執れば足り、
個別にその
債権者の同意を得ることなく、
吸収分割契約の定めに従って、
債務を
吸収分割承継
株式会社に移転させることができる。
□正解: ○
□解説
事業譲渡は、
会社法上の組織再編行為としては規定されておらず、
当該行為に基づく権利義務の承継は、特定承継としての性質を有することから、
債権者保護手続は不要です(
会社法には、その旨の規定がありません)が、
個別にその
債権者の同意を得る必要があります。
一方、
吸収分割は、
会社法上の組織再編行為として規定されており、
当該行為に基づく権利義務の承継は、包括承継としての性質を有することから、
個別にその
債権者の同意を得ることは不要ですが、
債権者の異議手続を執ることが必要となります(
会社法789条)。
2.他の
株式会社の事業の重要な一部を譲り受けた
株式会社の
株主は、
当該事業の譲受けに反対であったとしても、株式買取請求権を有しないが、
他の
株式会社の事業の重要な一部を
吸収分割により承継した
吸収分割承継
株式会社の
株主は、
当該
吸収分割に反対することにより、株式買取請求権を有することとなる。
□正解: ○
□解説
事業譲渡等(
会社法467条1項1号~4号)をする場合において、
反対
株主は、原則として、事業譲渡等をする
株式会社に対し、
株式買取請求権を有します(同法469条1項本文)が、
当該事業譲渡等に、他の
株式会社の事業の重要な一部を譲受けは、
含まれていません。
一方、
吸収合併等(
吸収合併、
吸収分割又は
株式交換/同法782条1項柱書)
をする場合において、
反対
株主は、存続
株式会社等(
吸収合併存続
株式会社、
吸収分割承継
株式会社又は
株式交換完全親
株式会社/同法794条1項括弧書)
に対し、株式買取請求権を有します(同法797条1項)。
3.子会社は、他の
株式会社の事業の一部を譲り受ける場合には、
当該他の
株式会社の有する親会社の株式を
譲り受けて取得することはしてはならないが、
他の
株式会社の事業の一部を
吸収分割により承継する場合には、
当該他の
株式会社から親会社の株式を承継して取得することができる。
□正解: ○
□解説
子会社は、一定の場合(
会社法135条2項各号)を除いて、
その親会社である
株式会社の株式(親会社株式)
を取得してはなりません(同法同条1項)。
前段の場合は、この一定の場合には該当しないことから、
原則どおり、親会社の株式を譲り受けて取得することはできませんが、
後段の場合は、前述の一定の場合(同法同条2項3号)に該当することから、
親会社の株式を承継して取得することができます。
4.
定款に別段の定めがあるときを除き、
株式会社が事業の重要な一部の譲渡により譲り渡す
資産の帳簿価額が、
その総
資産額として
法務省令で定める方法により算出される額
の5分の1を超えない場合には、当該
株式会社は、
事業の重要な一部の譲渡に反対する
株主の株式買取請求に応じる必要はないが、
吸収分割により
吸収分割承継
株式会社に承継させる
資産の帳簿価額の合計額が、
その総
資産額として
法務省令で定める方法により算出される額
の5分の1を超えない場合でも、当該
吸収分割承継
株式会社は、
吸収分割に反対する
株主の株式買取請求に応じなければならない。
□正解: ×
□解説
事業の重要な一部の譲渡をする場合等、
株式会社が事業譲渡等(
会社法467条1項1号~4号)をする場合において、
反対
株主は、原則として、事業譲渡等をする
株式会社に対し、
株式買取請求権を有します(同法469条1項本文)。
しかし、当該事業の重要な一部の譲渡をする場合において、
当該譲渡により譲り渡す
資産の帳簿価額が、
当該
株式会社の総
資産額として
法務省令(
会社法施行規則134条)で定める方法により
算定される額の5分の1
(これを下回る割合を
定款で定めた場合にあっては、その割合)
を超えない場合(同法467条1項2号括弧書)には、
当該
株式会社は、反対
株主の株式買取請求に応じる必要はありません。
一方、
吸収合併等(
吸収合併、
吸収分割又は
株式交換/同法782条1項柱書)
をする場合において、
反対
株主は、一定の場合を除き、消滅
株式会社等(
吸収合併消滅
株式会社、
吸収分割株式会社、
株式交換完全子会社/同法同条同項各号)に対し、
株式買取請求権を有します(同法785条1項)。
しかし、
吸収分割をする場合において、
吸収分割承継
株式会社に承継させる
資産の帳簿価額の合計額が、
吸収分割株式会社の総
資産額として
法務省令(
会社法施行規則187条1項)で定める方法により
算定される額の5分の1
(これを下回る割合を
吸収分割株式会社の
定款で定めた場合にあっては、
その割合)を超えない場合(同法785条1項2号・784条3項)には、
当該
吸収分割承継
株式会社は、
反対
株主の株式買取請求に応じる必要はありません。
5.
株式会社の事業の全部の譲渡の無効および
吸収分割の無効は、
いずれも、訴えをもってのみ主張することができる。
□正解: ×
□解説
会社法は、会社の組織に関する行為の無効の訴えについて、
一定の行為の無効は、一定の期間内に、
訴えをもってのみ主張することができる旨規定しています(828条1項各号)。
会社の
吸収分割は、
吸収分割の効力が生じた日から6ヶ月以内に、
訴えをもってのみ主張することができる旨
定められています(同条同項9号)が、
会社の事業の全部の譲渡の無効の訴えについては、
同法中にその定めはないことから、
必ずしも、訴えをもって主張することを要しません。
★次号では、
「新設
合併、
新設分割および
株式移転」について、ご紹介する予定です。
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3.編集後記
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★日本
行政書士会連合会は、
2月22日を、「
行政書士記念日」と定めています(※)。
知名度はまだまだですが、TVーCMや新聞広告等も流れますので、
これを機会に、是非、
行政書士をよろしくお願い致します。
※)詳しくは、こちらをどうぞ。
http://n-tsuru.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/post-a4d6.html
■本号は、いかがでしたか?
次号の発行は、2010/3月中旬頃を予定しております。
■編集責任者:
行政書士 津留信康
□津留
行政書士事務所
http://www.n-tsuru.com
□当事務所へのご連絡は、
上記Webサイト・トップページのメールリンクをご利用ください。
■当メルマガの発行は、「まぐまぐ(
http://www.mag2.com/)」を利用しており、
購読の解除は、「
http://www.mag2.com/m/0000106995.html」からできます。
■当メールマガジンの無断転載等を禁じます。
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■行政書士津留信康の『身近な法務サポートマガジン』<第155号/2010/2/15>■
1.はじめに
2.「会社法務編/中小企業・ベンチャー経営者&
起業予定者のための“会社法”等のポイント(99)」
3.編集後記
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1.はじめに
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こんにちは。行政書士の津留信康です。
この冬の宮崎市内は、
4年ぶりに雪が降ったかと思うと、20℃を超す春先の暖かさになり、
そうかと思うと、春一番が吹き荒れ、前日から10℃以上も気温が下がる・・・
といった具合に、なかなか体が順応する余裕を与えてくれません。
お天気には勝てませんが、少々シンドイ毎日です・・・。
それでは、今回も、どうぞ最後までおつきあいください。
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2.「会社法務編─中小企業・ベンチャー経営者&
起業予定者のための“会社法”等のポイント(99)」
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★本稿では、「平成21年度司法書士試験問題」の解説を通じて、
“会社法”等に関する理解を深めていただいておりますが、
第10回は、「事業の譲渡および譲受けと吸収分割の異同」に関する問題です。
※)便宜上、問題文・設問肢の内容を一部変更している場合がありますので、
ご了承ください。
■事業の譲渡および譲受けと吸収分割の異同に関する次の記述のうち、
誤っているものはどれか。
なお、事業の譲渡または譲受けの相手方およびと吸収分割承継株式会社は、
当該事業の譲渡もしくは譲受けをする株式会社
または吸収分割株式会社の特別支配会社でないものとする(午前─第33問)。
1.事業の譲渡をする株式会社は、
当該事業を構成する債務を事業の譲受けをする株式会社に移転させるためには、
個別にその債権者の同意を得なければならないが、
吸収分割株式会社は、債権者の異議手続を執れば足り、
個別にその債権者の同意を得ることなく、
吸収分割契約の定めに従って、
債務を吸収分割承継株式会社に移転させることができる。
□正解: ○
□解説
事業譲渡は、会社法上の組織再編行為としては規定されておらず、
当該行為に基づく権利義務の承継は、特定承継としての性質を有することから、
債権者保護手続は不要です(会社法には、その旨の規定がありません)が、
個別にその債権者の同意を得る必要があります。
一方、吸収分割は、会社法上の組織再編行為として規定されており、
当該行為に基づく権利義務の承継は、包括承継としての性質を有することから、
個別にその債権者の同意を得ることは不要ですが、
債権者の異議手続を執ることが必要となります(会社法789条)。
2.他の株式会社の事業の重要な一部を譲り受けた株式会社の株主は、
当該事業の譲受けに反対であったとしても、株式買取請求権を有しないが、
他の株式会社の事業の重要な一部を
吸収分割により承継した吸収分割承継株式会社の株主は、
当該吸収分割に反対することにより、株式買取請求権を有することとなる。
□正解: ○
□解説
事業譲渡等(会社法467条1項1号~4号)をする場合において、
反対株主は、原則として、事業譲渡等をする株式会社に対し、
株式買取請求権を有します(同法469条1項本文)が、
当該事業譲渡等に、他の株式会社の事業の重要な一部を譲受けは、
含まれていません。
一方、吸収合併等(吸収合併、吸収分割又は株式交換/同法782条1項柱書)
をする場合において、
反対株主は、存続株式会社等(吸収合併存続株式会社、
吸収分割承継株式会社又は株式交換完全親株式会社/同法794条1項括弧書)
に対し、株式買取請求権を有します(同法797条1項)。
3.子会社は、他の株式会社の事業の一部を譲り受ける場合には、
当該他の株式会社の有する親会社の株式を
譲り受けて取得することはしてはならないが、
他の株式会社の事業の一部を吸収分割により承継する場合には、
当該他の株式会社から親会社の株式を承継して取得することができる。
□正解: ○
□解説
子会社は、一定の場合(会社法135条2項各号)を除いて、
その親会社である株式会社の株式(親会社株式)
を取得してはなりません(同法同条1項)。
前段の場合は、この一定の場合には該当しないことから、
原則どおり、親会社の株式を譲り受けて取得することはできませんが、
後段の場合は、前述の一定の場合(同法同条2項3号)に該当することから、
親会社の株式を承継して取得することができます。
4.定款に別段の定めがあるときを除き、
株式会社が事業の重要な一部の譲渡により譲り渡す資産の帳簿価額が、
その総資産額として法務省令で定める方法により算出される額
の5分の1を超えない場合には、当該株式会社は、
事業の重要な一部の譲渡に反対する株主の株式買取請求に応じる必要はないが、
吸収分割により吸収分割承継株式会社に承継させる資産の帳簿価額の合計額が、
その総資産額として法務省令で定める方法により算出される額
の5分の1を超えない場合でも、当該吸収分割承継株式会社は、
吸収分割に反対する株主の株式買取請求に応じなければならない。
□正解: ×
□解説
事業の重要な一部の譲渡をする場合等、
株式会社が事業譲渡等(会社法467条1項1号~4号)をする場合において、
反対株主は、原則として、事業譲渡等をする株式会社に対し、
株式買取請求権を有します(同法469条1項本文)。
しかし、当該事業の重要な一部の譲渡をする場合において、
当該譲渡により譲り渡す資産の帳簿価額が、
当該株式会社の総資産額として
法務省令(会社法施行規則134条)で定める方法により算定される額の5分の1
(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)
を超えない場合(同法467条1項2号括弧書)には、
当該株式会社は、反対株主の株式買取請求に応じる必要はありません。
一方、吸収合併等(吸収合併、吸収分割又は株式交換/同法782条1項柱書)
をする場合において、
反対株主は、一定の場合を除き、消滅株式会社等(吸収合併消滅株式会社、
吸収分割株式会社、株式交換完全子会社/同法同条同項各号)に対し、
株式買取請求権を有します(同法785条1項)。
しかし、吸収分割をする場合において、
吸収分割承継株式会社に承継させる資産の帳簿価額の合計額が、
吸収分割株式会社の総資産額として
法務省令(会社法施行規則187条1項)で定める方法により算定される額の5分の1
(これを下回る割合を吸収分割株式会社の定款で定めた場合にあっては、
その割合)を超えない場合(同法785条1項2号・784条3項)には、
当該吸収分割承継株式会社は、
反対株主の株式買取請求に応じる必要はありません。
5.株式会社の事業の全部の譲渡の無効および吸収分割の無効は、
いずれも、訴えをもってのみ主張することができる。
□正解: ×
□解説
会社法は、会社の組織に関する行為の無効の訴えについて、
一定の行為の無効は、一定の期間内に、
訴えをもってのみ主張することができる旨規定しています(828条1項各号)。
会社の吸収分割は、吸収分割の効力が生じた日から6ヶ月以内に、
訴えをもってのみ主張することができる旨
定められています(同条同項9号)が、
会社の事業の全部の譲渡の無効の訴えについては、
同法中にその定めはないことから、
必ずしも、訴えをもって主張することを要しません。
★次号では、
「新設合併、新設分割および株式移転」について、ご紹介する予定です。
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3.編集後記
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★日本行政書士会連合会は、
2月22日を、「行政書士記念日」と定めています(※)。
知名度はまだまだですが、TVーCMや新聞広告等も流れますので、
これを機会に、是非、行政書士をよろしくお願い致します。
※)詳しくは、こちらをどうぞ。
http://n-tsuru.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/post-a4d6.html
■本号は、いかがでしたか?
次号の発行は、2010/3月中旬頃を予定しております。
■編集責任者:行政書士 津留信康
□津留行政書士事務所
http://www.n-tsuru.com
□当事務所へのご連絡は、
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■当メールマガジンの無断転載等を禁じます。