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★★★ 新・
行政書士試験 一発合格! Vol. ’06-42 ★★★
【レジュメ編】
行政手続オンライン化法
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■■■
行政手続オンライン化法 ■■■
■■■ お願い ■■■
■■■ 編集後記 ■■■
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■■■
行政手続オンライン化法 ■■■
今回は、「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律」(通称「行政手続
オンライン化法」)を取上げます。
■■「平成17 年度における行政手続オンライン化等の状況」
先月、
総務省が公表した「平成17 年度における行政手続オンライン化等の状況」によ
れば、国の行政機関が扱う申請・届出等手続のうち、オンライン化の対象とされている
手続は14,257 種類あり、そのうち13,719 種類(96%)の手続について、オンラインに
よることが可能となっています。また、国の行政機関に対する全申請・届出等手続件数
は8億3,056 万件で、そのうちオンラインを利用したものは9,364 万件(11.3%)とな
っています。
一方、地方公共団体の場合には、それぞれ5,843種類、5,727種類(98%)、3億6,900万
件、4,162万件(11.3%)となっています。
また、「IT 新改革戦略」では、「世界一便利で効率的な電子行政」の目標の一つとして
「国・地方公共団体に対する申請・届出等手続におけるオンライン利用率を2010 年度ま
でに50%以上を達成する」こととしています。
■
行政書士業務への影響
このことは、
行政書士も、この
行政手続オンライン化法を熟知しなければならない(し
なければならなくなってきている)ことを意味しています。これにより、従来のように
分厚い書面を準備し、これを行政機関の担当窓口に持参する必要がなくなりますが、こ
れにより、業務のスピードアップと同時に、効率化、即ち、コストダウンが求められる
ことになりそうです。また、顧客が自らオンラインで申請・届出等を行うことができる
機会が増えることになるため、
行政書士の取扱業務量に影響が生じる可能性もありま
す。
■
行政書士試験対策
ところで、この
行政手続オンライン化法を理解するには、
行政手続法等の理解が前提に
なっています。したがって、今回は、
行政手続法の復習や再チェック(特に、行政手続
法を前提としたオンライン化手続のチェック)も兼ねて、そして、
行政書士開業後の実
務も想定して、
行政手続オンライン化法を勉強してください。
★
総務省の「平成17 年度における行政手続オンライン化等の状況」については、
http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/pdf/060811_3.pdf をご覧ください。
■■
行政手続オンライン化法の内容
■ 概要
行政手続のオンライン化に関する法律は、「行政手続等における情報通信の技術の利用
に関する法律」(
行政手続オンライン化法)および「行政手続等における情報通信の技
術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」から構成されてい
ます。そして、通則法(
行政手続オンライン化法)と整備法という構成になっていま
す。なお、施行は平成15年2月3日です。
■ 通則法
行政手続オンライン化法は、既存の法令を改正することなく、個別の法令で書面等を意
味する規定が設けられていても、行政機関に対する手続等のオンライン化を可能にする
通則法です。
法令の改正が行われる場合には、関連する法令を一括して改正する法令(一括法)が制
定されますが(例えば、「
会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」)、行
政手続等のオンライン化に関しては、通則法である
行政手続オンライン化法が制定され
ました。
ただし、
行政手続オンライン化法だけでは必ずしも十分な対応ができないため、「行政
手続等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関
する法律」も、同時に制定されています。これにより、約70の
個別法が改正されていま
す。
■ 目的
第一条 この法律は、行政機関等に係る申請、届出その他の手続等に関し、電子情報処
理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により行うことができる
ようにするための共通する事項を定めることにより、国民の利便性の向上を図るととも
に、行政運営の簡素化及び効率化に資することを目的とする。
・
行政手続法の定める基本原則は、
行政手続オンライン化法に基づきオンラインで行わ
れる場合にも適用される。
・「行政機関等に係る申請、届出その他の手続等」:行政機関等に対する申請、届出等
に加えて、行政機関等が行う処分や縦覧等も含まれ、さらに、
電磁的記録の作成も含
まれる。
→ ファックスによる送付、磁気ディスクやCD-ROMによる交付等は含まれない。
■ 定義
(1)法令:法律及び法律に基づく命令をいう。
・
行政手続法では、条例及び地方公共団体の執行機関の規則(規程を含む。)も含まれ
る。
・地方公共団体やその機関の手続であっても、その根拠が法令であれば、行政手続オン
ライン化法の適用対象になる。
→ 根拠法規が条例及び規則・規程である場合には、適用対象にはならない。
(2)行政機関等:内閣、法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(内閣官房、内閣法
制局等)、内閣の所轄の下に置かれる機関、宮内庁、地方公共団体又はその機関
(議会を除く。)、独立行政
法人、地方独立行政
法人等
・
行政手続法と比べて、内閣、地方公共団体、独立行政
法人、地方独立行政
法人等が含
まれていて、範囲が広い。
(3)書面等:書面、書類、文書、謄本、抄本、正本、副本、複本その他文字、図形等
人の知覚によって認識することができる情報が記載された紙その他の有体物をい
う。
・
電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができ
ない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるもの)
(2条5号)は含まれない。
・法令で「書面等」の文言が使用されていない場合には、
電磁的記録として作成するこ
とが可能である。一方、法令で「書面等」の文言が使用されている場合、この「書面
等」に
電磁的記録が含まれると解することはできない(そのために、行政手続オンラ
イン化法が新しく制定された。)。
→ 申請等(2条6号)、処分通知等(7号)、縦覧等(8号)又は作成等(9号)の
手続等(10号)が法令に基づき書面等で行われる旨が規定されている場合には、行
政手続オンライン化法により、オンラインで手続等をすることができることにな
る。
・謄本:文書の原本と同一の文字、符号等を使用して完全に謄写した書面(戸籍謄本
等)。
・抄本:原本の一部のみを文書の原本と同一の文字、符号等を使用して謄写した書面
(住民票抄本等)。
・正本:原本の効力を証するために作成される書面(正本は謄本の一種である。)(判
決書正本等。原本は裁判所に保管される。)。
(4)申請等:申請、届出その他の法令の規定に基づき行政機関等に対して行われる通
知(訴訟手続その他の裁判所における手続並びに
刑事事件及び政令で定める犯則
事件に関する法令の規定に基づく手続(次号から第九号までにおいて「裁判手続
等」という。)において行われるものを除く。)をいう。
・情報ではなく、物を提出する行為は含まれない。
〔
行政手続法2条〕
・申請(3号):法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らか
の利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行
為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。
・届出(7号):行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除
く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待
する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているも
のを含む。)をいう。
(5)処分通知等:処分(行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。)の
通知その他の法令の規定に基づき行政機関等が行う通知(不特定の者に対して行
うもの及び裁判手続等において行うものを除く。)をいう。
・情報ではなく、物を送付する行為は含まれない。
〔
行政手続法2条2号〕
・処分:行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。
(6)作成等:法令の規定に基づき行政機関等が書面等又は
電磁的記録を作成し又は保
存すること(裁判手続等において行うものを除く。)をいう。
(7)手続等:申請等(→3条)、処分通知等(→4条)、縦覧等(→5条)又は作成
等(→6条)をいう。
・
行政手続法の対象とする手続は、申請に対する処分、不利益処分、意見公募、行政指
導、届出に限られている。
■ 電子情報処理組織による申請等
第三条 行政機関等は、申請等のうち当該申請等に関する他の法令の規定により書面等
により行うこととしているものについては、当該法令の規定にかかわらず、主務省令で
定めるところにより、電子情報処理組織(行政機関等の使用に係る電子計算機(入出力
装置を含む。以下同じ。)と申請等をする者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線
で接続した電子情報処理組織をいう。)を使用して行わせることができる。
2 前項の規定により行われた申請等については、当該申請等を書面等により行うもの
として規定した申請等に関する法令の規定に規定する書面等により行われたものとみな
して、当該申請等に関する法令の規定を適用する。
3 第一項の規定により行われた申請等は、同項の行政機関等の使用に係る電子計算機
に備えられたファイルへの記録がされた時に当該行政機関等に到達したものとみなす。
4 第一項の場合において、行政機関等は、当該申請等に関する他の法令の規定により
署名等をすることとしているものについては、当該法令の規定にかかわらず、氏名又は
名称を明らかにする措置であって主務省令で定めるものをもって当該署名等に代えさせ
ることができる。
(1)「行政機関等は、・・・行わせることができる。」(1項):オンライン化によ
る手続は、国民の権利ではなく、行政機関等に裁量権がある。
・「書面等により行う」(1項):書面や口頭で行う場合のほか、
電磁的記録を物理的
に提出する場合等も含む。
(2)書面みなし規定(2項)
オンラインによる申請等であっても、書面によって行われたものとみなして、提出に関
する懈怠や
罰則等が適用される(書面による場合と違いがない。)。
(3)到達時期:行政機関等の電子計算機に備えられたファイルに記録された時
〔
行政手続法〕
・申請に対する審査、応答(7条):行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅
滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がな
いこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請をすることができる期間内
にされたものであることその他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない
申請については、速やかに、申請をした者(以下「申請者」という。)に対し相当の
期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否
しなければならない。
→ 形式的要件を充たさない申請であっても、行政庁は、申請が到達した時に審査義務
が発生する(物理的に到達した時をいい、受付印の有無を問わない。)。
→ オンラインで申請等を行い、添付書類を別途送付する場合でも、申請等の到達時期
は、オンラインでの申請等が到達した時になる(添付書類の到達が期限を徒過して
も、申請等は期限内にされたことになる。)。
・届出(37条):届出が届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添
付されていることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合
は、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したと
きに、当該届出をすべき手続上の義務が
履行されたものとする。
(4)電子署名等(4項)
個々の法令で定められた署名等についても、書面に代えて
電磁的記録を作成した場合に
は、電子署名等で署名等に代替させることができる。
■ 電子情報処理組織による処分通知等
第四条 行政機関等は、処分通知等のうち当該処分通知等に関する他の法令の規定によ
り書面等により行うこととしているものについては、当該法令の規定にかかわらず、主
務省令で定めるところにより、電子情報処理組織(行政機関等の使用に係る電子計算機
と処分通知等を受ける者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報
処理組織をいう。)を使用して行うことができる。
2 前項の規定により行われた処分通知等については、当該処分通知等を書面等により
行うものとして規定した処分通知等に関する法令の規定に規定する書面等により行われ
たものとみなして、当該処分通知等に関する法令の規定を適用する。
3 第一項の規定により行われた処分通知等は、同項の処分通知等を受ける者の使用に
係る電子計算機に備えられたファイルへの記録がされた時に当該処分通知等を受ける者
に到達したものとみなす。
4 第一項の場合において、行政機関等は、当該処分通知等に関する他の法令の規定に
より署名等をすることとしているものについては、当該法令の規定にかかわらず、氏名
又は名称を明らかにする措置であって主務省令で定めるものをもって当該署名等に代え
ることができる。
(1)処分通知等をオンラインで行う場合、相手方の事前の同意は必要ない。
・「行政機関等は、・・・行うことができる。」:行政機関等の裁量が認められている
(相手方は、オンラインではなく、書面によるべきことを要求できない。一方、相手
方がオンラインによることを要求した場合でも、行政機関等は書面によることができ
る。)。
(2)書面みなし規定(2項)
オンラインによる処分通知等であっても、書面によって行われたものとみなして、処分
通知に関する懈怠や
罰則等が適用される(書面による場合と違いがない。)。
(3)到達主義(3項)
・到達時期:処分通知等を受ける者の電子計算機に備えられたファイルへの記録がされ
た時
→
行政手続法では、行政庁の処分に関する通知の効力発生時期についての明文の規定
はないが、原則として到達主義によるものと考えられている。
(4)電子署名等(4項)
個々の法令で定められた署名等についても、書面に代えて
電磁的記録を作成した場合に
は、電子署名等で署名等に代替させることができる。
■
電磁的記録による縦覧等
第五条 行政機関等は、縦覧等のうち当該縦覧等に関する他の法令の規定により書面等
により行うこととしているもの(申請等に基づくものを除く。)については、当該法令
の規定にかかわらず、主務省令で定めるところにより、書面等の縦覧等に代えて当該書
面等に係る
電磁的記録に記録されている事項又は当該事項を記載した書類の縦覧等を行
うことができる。
2 前項の規定により行われた縦覧等については、当該縦覧等を書面等により行うもの
として規定した縦覧等に関する法令の規定に規定する書面等により行われたものとみな
して、当該縦覧等に関する法令の規定を適用する。
(1)縦覧等:法令の規定に基づき行政機関等が書面等又は
電磁的記録に記録されてい
る事項を縦覧又は閲覧に供すること(裁判手続等において行うものを除く。)を
いう(2条8号)。
→ 官報、行政機関等の掲示板での公示、刊行物による公表は含まれない。
・「申請等に基づくものを除く。」(1項):閲覧を申請する行為は、申請等(2条6
号)に該当し、3条の規定が適用され、閲覧させる行為は、処分通知等(2条7
号)に該当し、4条の規定が適用されるため。
(2)書面みなし規定(2項)
オンラインによる縦覧等であっても、書面によって行われたものとみなして、縦覧に関
する懈怠や
罰則等が適用される(書面による場合と違いがない。)。
■
電磁的記録による作成等
第六条 行政機関等は、作成等のうち当該作成等に関する他の法令の規定により書面等
により行うこととしているものについては、当該法令の規定にかかわらず、主務省令で
定めるところにより、書面等の作成等に代えて当該書面等に係る
電磁的記録の作成等を
行うことができる。
2 前項の規定により行われた作成等については、当該作成等を書面等により行うもの
として規定した作成等に関する法令の規定に規定する書面等により行われたものとみな
して、当該作成等に関する法令の規定を適用する。
3 第一項の場合において、行政機関等は、当該作成等に関する他の法令の規定により
署名等をすることとしているものについては、当該法令の規定にかかわらず、氏名又は
名称を明らかにする措置であって主務省令で定めるものをもって当該署名等に代えるこ
とができる。
(1)書面みなし規定(2項)
電磁的記録の作成等であっても、書面による場合と違いがない。
(2)電子署名等(3項)
個々の法令で定められた署名等についても、書面に代えて
電磁的記録を作成した場合に
は、電子署名等で署名等に代替させることができる。
■
適用除外
第七条 別表の上欄に掲げる法律の同表の中欄に掲げる規定に基づく手続等について
は、それぞれ同表の下欄に定めるこの法律の規定は、適用しない。
・
適用除外の基本的な考え方
(ア)申請等、処分通知等に現物の提示等が必要である場合
(例)地方自治法に定める直接請求(本人が自署した署名簿の提出が必要であるた
め)、
外国人登録(
外国人登録証の提示義務を負っているため)、署名簿の縦覧
(イ)申請等、処分通知等に出頭等対面によることが必要である場合
(例)旅券の申請手続き(成りすまし防止のため)、運転免許の申請
■ 国の手続等に係る情報システムの整備等
第八条 国は、行政機関等に係る手続等における情報通信の技術の利用の推進を図るた
め、情報システムの整備その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
2 国は、前項の措置を講ずるに当たっては、情報通信の技術の利用における安全性及
び信頼性を確保するよう努めなければならない。
3 国は、行政機関等に係る手続等における情報通信の技術の利用の推進に当たって
は、当該手続等の簡素化又は合理化を図るよう努めなければならない。
■ 地方公共団体の手続に係る情報通信の技術の利用の推進等
第九条 地方公共団体は、地方公共団体に係る申請、届出その他の手続における情報通
信の技術の利用の推進を図るため、この法律の趣旨にのっとり、当該手続に係る情報シ
ステムの整備及び条例又は規則に基づく手続について必要な措置を講ずることその他の
必要な施策の実施に努めなければならない。
2 国は、地方公共団体が実施する前項の施策を支援するため、情報の提供その他の必
要な措置を講ずるよう努めなければならない。
・地方自治尊重の観点から、
行政手続オンライン化法は、法律及び法律に基づく命令
(2条1号)に基づく手続を対象としている。
→ 条例や規則に基づく手続は、
行政手続オンライン化法の対象外である。
・「この法律の趣旨にのっとり」:地方公共団体の策定する条例や規則は、行政手続オ
ンライン化法と同じ内容のものでなければならない。
〔
行政手続法46条〕
地方公共団体は、第三条第三項において第二章から前章までの規定を適用しないことと
された処分、行政指導及び届出並びに命令等を定める行為に関する手続について、この
法律の規定の趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため
必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
・地方公共団体における行政手続条例等の制定状況ですが、都道府県・政令指定都市は
、すでに平成8年8月時点で全団体が制定済みであり、市区町村(政令指定都市を除
く)の制定割合は99.4%となっています。詳しくは、
総務省のつぎの報道資料を
ご覧ください。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060213_1.html
■ 手続等に係る電子情報処理組織の使用に関する状況の公表
第十条 行政機関等(第二条第二号ハに掲げるもの並びに同号ホに掲げる者及びその者
の長(次条において「地方公共団体等」という。)を除く。)は、少なくとも毎年度一
回、当該行政機関等が電子情報処理組織を使用して行わせ又は行うことができる申請等
及び処分通知等その他この法律の規定による情報通信の技術の利用に関する状況につい
て、インターネットの利用その他の方法により公表するものとする。
2
総務大臣は、少なくとも毎年度一回、前項の規定により公表された事項を取りまと
め、その概要について、インターネットの利用その他の方法により公表するものとす
る。
・冒頭で紹介した
総務省の「平成17 年度における行政手続オンライン化等の状況」
も、この規定に基づくものです。
■■
行政手続法との比較
■ 申請に対する処分 ■
■ 審査基準
行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている
機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかなけれ
ばならない(5条3項)。
・「書面等」が使用されていないので、
行政手続オンライン化法は適用されない。
→ インターネットで開示することもできるが、「その他の適当な方法」で公にしてあ
れば、それで足りる。
■ 標準処理期間
行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要
すべき標準的な期間(法令により当該行政庁と異なる機関が当該申請の提出先とされて
いる場合は、併せて、当該申請が当該提出先とされている機関の事務所に到達してから
当該行政庁の事務所に到達するまでに通常要すべき標準的な期間)を定めるよう努める
とともに、これを定めたときは、これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所
における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない(6条)。
・「書面等」が使用されていないので、
行政手続オンライン化法は適用されない。
→ インターネットで開示することもできるが、「その他の適当な方法」で公にしてあ
れば、それで足りる。
■ 申請に対する審査、応答
行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなけれ
ばならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付され
ていること、申請をすることができる期間内にされたものであることその他の法令に定
められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請をした者
(以下「申請者」という。)に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当
該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない(7条)。
・「書面等」が使用されていないので、
行政手続オンライン化法は適用されない。
→ 補正は、書面でも、口頭でも、オンラインでも可能である。
■ 理由の提示
第八条 行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請
者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令に定められ
た許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確
に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又
は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときに
これを示せば足りる。
2 前項本文に規定する処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなけ
ればならない。
・オンラインで拒否処分を行う場合も、書面等またはオンラインで理由を示さなければ
ならない(条文上は、いずれでも可能だが、常識的にはオンラインで行うべきであ
る。)。
■ 不利益処分 ■
■ 処分基準
行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない(12
条1項)。
・「書面等」が使用されていないので、
行政手続オンライン化法は適用されない。
■ 不利益処分の理由の提示
第十四条 行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該
不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべ
き差し迫った必要がある場合は、この限りでない。
2 行政庁は、前項ただし書の場合においては、当該名あて人の所在が判明しなくなっ
たときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き、処分後相
当の期間内に、同項の理由を示さなければならない。
3 不利益処分を書面でするときは、前二項の理由は、書面により示さなければならな
い。
・不利益処分をオンラインで行う場合、理由を口頭で示すことはできない(条文上は、
書面等またはオンラインのいずれでも可能だが、常識的にはオンラインで行うべきで
ある。)。
■ 聴聞 ■
■ 聴聞の通知の方式
第十五条 行政庁は、聴聞を行うに当たっては、聴聞を行うべき期日までに相当な期間
をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、次に掲げる事項を書面により通
知しなければならない。
一 予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項
二 不利益処分の原因となる事実
三 聴聞の期日及び場所
四 聴聞に関する事務を所掌する組織の名称及び所在地
3 行政庁は、不利益処分の名あて人となるべき者の所在が判明しない場合において
は、第一項の規定による通知を、その者の氏名、同項第三号及び第四号に掲げる事項並
びに当該行政庁が同項各号に掲げる事項を記載した書面をいつでもその者に交付する旨
を当該行政庁の事務所の掲示場に掲示することによって行うことができる。この場合に
おいては、掲示を始めた日から二週間を経過したときに、当該通知がその者に到達した
ものとみなす。
・聴聞の通知(1項)はオンラインで行うことができる。
・
公示送達(3項)は、縦覧等(
行政手続オンライン化法2条8号)に該当しないの
で、オンラインで
公示送達を行うことはできない。
■
代理人
第十六条
3
代理人の資格は、書面で証明しなければならない。
4
代理人がその資格を失ったときは、当該
代理人を選任した当事者は、書面でその旨
を行政庁に届け出なければならない。
・
代理人の資格の届出、
資格喪失の届出は、申請等(
行政手続オンライン化法2条6
号)に該当するので、オンラインによることができる。
■ 文書等の閲覧
当事者及び当該不利益処分がされた場合に自己の利益を害されることとなる参加人(以
下この条及び第二十四条第三項において「当事者等」という。)は、聴聞の通知があっ
た時から聴聞が終結する時までの間、行政庁に対し、当該事案についてした調査の結果
に係る調書その他の当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めること
ができる。この場合において、行政庁は、第三者の利益を害するおそれがあるときその
他正当な理由があるときでなければ、その閲覧を拒むことができない(18条1項)。
・「当該不利益処分の原因となる事実を証する資料」は「書面等」に限定されていな
い。
→ 「
電磁的記録による作成等」(
行政手続オンライン化法6条1項)の適用はない
が、
電磁的記録による資料の作成は可能である。
・「資料の閲覧を求めることができる」に過ぎず、「書面等」が使用されていないの
で、
行政手続オンライン化法は適用されない(ただし、
行政手続法上禁止されていな
いので、オンラインで閲覧を求めることもできる。)。
■ 聴聞調書及び報告書
第二十四条 主宰者は、聴聞の審理の経過を記載した調書を作成し、当該調書におい
て、不利益処分の原因となる事実に対する当事者及び参加人の陳述の要旨を明らかにし
ておかなければならない。
3 主宰者は、聴聞の終結後速やかに、不利益処分の原因となる事実に対する当事者等
の主張に理由があるかどうかについての意見を記載した報告書を作成し、第一項の調書
とともに行政庁に提出しなければならない。
・聴聞調書及び報告書の作成は、「作成等」(
行政手続オンライン化法2条9号)に該
当するので、
電磁的記録の作成ができる(同6条1項)。
■ 行政指導 ■
■ 行政指導の方式
第三十五条
2 行政指導が口頭でされた場合において、その相手方から前項に規定する事項を記載
した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障が
ない限り、これを交付しなければならない。
・行政機関による書面の交付:「処分通知等」(
行政手続オンライン化法2条7号)に
該当するので、
行政手続オンライン化法が適用される。
★ ポイント ★
(1)個別の法令で「書面等」に限定されている場合には、
適用除外(7条)に該当す
る場合および当該個別の法令に別段の規程がある場合を除き、行政手続オンライ
ン化法が適用され、「書面等」に代えて、オンラインによる手続等を行うことが
できる。
(2)個別の法令で「書面等」と規定されていない場合には、
行政手続オンライン化法
は適用されないが、オンラインでの手続等が禁止されているわけではない。
■■■ お願い ■■■
継続して発刊するためには読者の皆様のご支援が何よりの活力になります。ご意見、ア
ドバイス、ご批判その他何でも結構です。内容、頻度、対象の追加や変更等について
も、どうぞ何なりと
e-mail@ohta-shoshi.com までお寄せください。
質問は、このメールマガジンの趣旨の範囲内のものであれば、大歓迎です。ただし、多
少時間を要する場合があります。
■■■ 編集後記 ■■■
今回は
商法(
会社法)の予定でしたが、歯痛等の個人的事情がいろいろ重なって、行政
書士の実務とも(特に、今後)無関係ではない
行政手続オンライン化法を取上げること
にしました。多少なりとも、
行政手続法の復習になったでしょうか。
この夏は、東京都
行政書士会の「ADR入門講座」に参加しました。来年4月1日から
施行されることになった「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」に対応する
ものですが、ご承知のとおり、
行政書士は来年4月1日からは民間紛争解決手続(同法
2条1号)には参加できません。当面は、参入できる時に備えて必要な準備をしっかり
しておくしかありません。
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マガジンタイトル:新・
行政書士試験 一発合格!
発行者:
行政書士 太田誠 東京都
行政書士会所属(府中支部)
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