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どうなる?労働契約法(2)~採用内定と内定取消(2)

「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」、「今後の労働時間制度に関する研究会」報告に沿って、現行法制や判例、そして研究会の報告と厚労省案を見ていこうというシリーズ、第2回目は、前回に引き続き採用内定に関する問題を見ていきます。


(4)中途採用の場合

中途採用では、業務経験のある人を採用します。
その経験や知識、ノウハウを評価して採用を決めます。

とは言っても、やはり「内定」は内定。
解約権留保付労働契約が成立しているという点は、基本的には同じです。

ただ、この点は新卒ほど厳密に考えなくてもいいようです。
判例でも、内定取消に対して、転職までの期間の賃金相当分と精神的苦痛に対する慰謝料の支払いを命じたものがあります。
逆に言うと、慰謝料等を支払えば良しとさているのです。
「内定取消は無効」とまではされていません。

しかしながら、内定取消をすると、それが紛争につながり、慰謝料の支払いを命じられる可能性は十分あるわけです。
中途採用と言えども、内定の取消はよほどのことがない限りやるべきではないでしょう。

(5)判例を見る

「前職での「悪い噂」を理由とする採用内定の取り消しは違法」
(オプトエレクトロニクス事件・東京地裁判決(平16 6 23))
<事件の概要>
1)原告は, 人材バンク会社を通じ, 被告会社の入社試験を受け, 採用内定。入社予定日は7月1日。
2)ところが被告会社は,前社での「悪い噂」を理由に採用内定を留保、噂に関する前社の釈明書を出すよう原告に求めた。
3)原告は前社に依頼して「悪い噂」が事実無根であるとの釈明文書を作成してもらい, 被告会社に提出した。しかし, 被告会社は, 本件内定通知を保留するとの態度を崩さず, 契約の始期である同年7月1日が到来しても,原告に自宅待機を命じたうえ, 「社長がもう一度面接すると言っているので, さらにあなた自身の釈明文書を提出するよう」指示した。
4)原告は, 指示どおり釈明文書を作成し, 同年7月3日, 会社に提出し, 同日, 社長らの再面接を受けた。社長らは, 再面接の席上,原告に対し, 再び原告を会社の従業員として雇用する旨約束した。
5)ところが, 被告会社は, 同年7月9日になって,再び原告に対し, 本件採用内定を取り消すとの主張を始め, 同月10日付けで本件採用内定を取り消すとの通知をした。
6)原告は, 再度, 就職活動をし, 同年9月16日, 別の会社に入社し, 現在も同社に勤務している。
7)原告が被告会社に対し,採用内定取り消しには合理的理由がなく無効であり, 労働契約は成立していたとして,約2 カ月分の未払い給与と, 精神的損害を被ったとして, 300万円の慰謝料の支払いを求めた。

<判決>
「悪い噂」は伝聞にすぎず, 被告会社はその真偽を確かめもしていないとし, 結局, 採用内定取り消しは解約権の濫用だとして, 原告の請求を認容(慰謝料は100万円) した。

この「噂」は、原告が転職前に勤めていた会社の社員からの情報だったようです。
しかし、その情報というのも、伝聞情報に過ぎず、はなはだ怪しいものだったとか。
前社から「噂は真実ではない」という釈明書も出ています。
さらに再面接までしたのですから、それでなおかつ内定取消というのは、「合理性なし」と判断されるのも当然でしょう。

また、被告会社がこうした措置をとった理由のひとつに、社員からのクレームがあったということです。
会社の労務管理は大丈夫なのかな?と感じてしまうのですが…

(6)労働契約法制では(研究会報告より)

採用内定期間中は、労基法第20条(解雇予告)の規定を除外する。

◆研究会
労働基準法第20 条の解雇の予告については、現在、採用内定期間中においても適用があることとされているが、試の使用期間中の者については14 日を超えて引き続き使用されるまでは同条の適用がないとされていることとの均衡がとれていない。また、採用内定期間中は労務の提供や賃金の支払がなく、採用内定が取り消される場合には、採用内定者が少しでも早くこれを知ることができるようにすることが最も重要である。したがって、採用内定期間中については労働基準法第20 条の適用を除外し、採用内定者が少しでも早い時期から求職活動ができるようにすることが適当である。」

採用内定取消について、留保解約権の行使が権利濫用にあたらない要件を法律で明らかにする。

◆研究会
採用内定取消について、一般的な解雇権とは別個の留保解約権が認められるには、それを行使する事由(留保解約事由)が採用内定者に対して書面で明示されていることが必要とすべきである。すなわち、採用内定に際して留保解約権の存在とその事由が書面で明示されている場合には、当該留保解約事由が解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当と認められるときに限り、その事由に基づきなされた留保解約権の行使は、権利の濫用には当たらず有効であることを法律で明らかにすることが適当である。」

ここは、判例でほぼ確立したといって言い法理を、明文法にするという趣旨です。
「客観的に合理的と認められ社会通念上相当と認められる」基準がどのようなものになるのかが、ポイントです。

採用内定当時に使用者が知っていた事由または知ることができた事由による内定取り消しは無効とする。

◆研究会
「書面で明示された留保解約事由以外の理由による採用内定取消が行われ
た場合には、通常の解雇権と同様の判断がなされるべきこと(特別な留保解約権は認められないこと)についても、併せて指針等により明らかにすることが適当である。」

これも、判例でほぼ確立したといって言い法理を、明文法にするという趣旨です。

採用内定、内定取り消しについては、これまでは判例が判断基準となっていました。
労働契約法によって判断基準が明文化されると、予測可能性が高くなるというメリットがある反面、縛られる部分も増えてくると思われます。


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