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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
弁護士
法人クラフトマン 第115号 2013-12-10
(旧 石下雅樹法律・
特許事務所)
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弊所取扱分野紹介(
契約書作成・
契約書チェック・英文
契約)
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1 今回の判例 不公正な取引方法と
損害賠償
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
東京高裁 平成25年8月30日判決
コンビニエンスストアのフランチャイズチェーンを運営するA社
は、同社が販売を推奨する弁当などのデイリー商品のいわゆる見切
り販売(販売期限が迫った商品の値引販売)を行っている等の加盟
店に対して、見切り販売の取りやめを余儀なくさせていました。ま
た、当該チェーンシステムのもとでは、廃棄商品の原価の全額が加
盟店の負担となっていました。
このようなA社の行為に対し、
公正取引委員会は、加盟店が自ら
の合理的な経営判断に基づきデイリー商品の原価相当額の負担を軽
減する機会を失わせていると判断し、「優越的地位の濫用」を理由
とした排除措置命令を発しました。
本件は、当該排除措置命令を受け、A社チェーンの加盟店を経営
する加盟店Bらが、A社に対して独占禁止法25条に基づいて損害
賠償を求めたというものです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2 裁判所の判断
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
裁判所は、A社の言動が、加盟店に対し、見切り販売の実施に関
する経営上の判断に影響を及ぼす事実上の強制となっており、加盟
店による商品の価格決定権の行使を妨げ、見切り販売の取りやめを
余儀なくさせたと判断し、
損害賠償責任を肯定しました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3 解説
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(1)独占禁止法25条による
損害賠償責任の特色
独禁法25条は、いわゆる無過失
損害賠償の規定を設けています。
つまり、独占禁止法に違反する行為(一部を除く)を行った場合に
は、被害者に対して
損害賠償責任を負い、当該
損害賠償責任は、故
意又は過失がなかったことを証明しても免れられないというもので
す。
ただし、同条に基づく
損害賠償請求は、当該違反行為に対する排
除措置命令や審決が確定してからでないとできないこととされてい
ます(独禁法26条1項)。
つまり、独禁法25条は、行政処分の確定を前提に、被害者が損
害賠償請求をしやすくする規定といえます。
(2)他の
損害賠償の手続との比較
他者の独禁法違反行為に対する
損害賠償請求の方法としては、独
禁法25条に基づく
損害賠償請求のほか、
不法行為一般について定
めた
民法709条の規定に基づく方法もあります。
それぞれの方法には一長一短がありますので、現実に
損害賠償請
求を行うことを検討する場合には、それぞれのメリット・デメリッ
トを踏まえ、手続を選択することがよいと思われます。
もちろん、具体的なアクションの際には、弁護士に依頼すること
になるでしょうから、詳細は弁護士において検討するものと思われ
ますが、およそこのような手段があるという基礎知識・アウトライ
ンを知っているだけでも、弁護士の説明がより理解しやすくなり、
スムーズな相談ができる一助となると考えられます。
■ 独禁法25条に基づく請求
<メリット>
・違反行為の立証のみで足り、故意・過失の有無を問わない
という点で立証の負担が少ない。
・違反行為の立証についても、排除措置命令や審決が確定し
ているため、立証の負担は小さい。
・
公正取引委員会から、一定の資料の提供を受けることがで
きる。
<デメリット>
・
損害賠償請求が、当該違反行為に対する排除措置命令や審
決が確定した後しかできないため、権利行使の開始に時間
を要する(当該違反行為から数年後となる場合もある)。
・公取委が事件として取り上げない場合や、審査開始後も不
問に付された場合、又は口頭注意・警告にとどまった場合
には、請求ができない。
・第一審の管轄は東京
高等裁判所であり、他の裁判所には管
轄権がない。
■
不法行為(
民法709条)に基づく請求
<メリット>
・当該違反行為に対する
公正取引委員会の排除措置命令等が
なくても
損害賠償請求が可能であるため、権利行使が早期
に可能。
・公取委が事件として取り上げなくとも、提訴可能。
・東京高裁に限らず、より便宜・近い
地方裁判所に提訴が可
能。
<デメリット>
・違反行為の立証が必要であり、手間と労力がかかる。また
公正取引委員会に比べ調査能力に限界があるため、立証で
きない場合もある。
・違反行為の立証に加え、加害者側の故意・過失の立証が必
要であり、この点でも負担が少なくない。
・
公正取引委員会から、資料の提供を受ける機会がないか、
入手できたとしてもごく限られたものとなる。
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本マガジンの無断複製、転載はご遠慮ください。
ただし、本マガジンの内容を社内研修用資料等に使用したいといっ
たお申出については、弊所を出典として明示するなどの条件で、原
則として無償でお受けしています。この場合、遠慮なく下記のアド
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【編集発行】
弁護士
法人クラフトマン (旧 石下雅樹法律・
特許事務所)
横浜主事務所
〒221-0835 横浜市神奈川区鶴屋町3-32-14 新港ビル4階
クラフトマン法律事務所
TEL 045-276-1394(代表) 045-620-0794 FAX 045-276-1470
新宿オフィス
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(1)独占禁止法25条による損害賠償責任の特色
独禁法25条は、いわゆる無過失損害賠償の規定を設けています。
つまり、独占禁止法に違反する行為(一部を除く)を行った場合に
は、被害者に対して損害賠償責任を負い、当該損害賠償責任は、故
意又は過失がなかったことを証明しても免れられないというもので
す。
ただし、同条に基づく損害賠償請求は、当該違反行為に対する排
除措置命令や審決が確定してからでないとできないこととされてい
ます(独禁法26条1項)。
つまり、独禁法25条は、行政処分の確定を前提に、被害者が損
害賠償請求をしやすくする規定といえます。
(2)他の損害賠償の手続との比較
他者の独禁法違反行為に対する損害賠償請求の方法としては、独
禁法25条に基づく損害賠償請求のほか、不法行為一般について定
めた民法709条の規定に基づく方法もあります。
それぞれの方法には一長一短がありますので、現実に損害賠償請
求を行うことを検討する場合には、それぞれのメリット・デメリッ
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という点で立証の負担が少ない。
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には、請求ができない。
・第一審の管轄は東京高等裁判所であり、他の裁判所には管
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■ 不法行為(民法709条)に基づく請求
<メリット>
・当該違反行為に対する公正取引委員会の排除措置命令等が
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に可能。
・公取委が事件として取り上げなくとも、提訴可能。
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・違反行為の立証が必要であり、手間と労力がかかる。また
公正取引委員会に比べ調査能力に限界があるため、立証で
きない場合もある。
・違反行為の立証に加え、加害者側の故意・過失の立証が必
要であり、この点でも負担が少なくない。
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