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弁護士
法人クラフトマン 第199号 2017-06-20
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法律相談ご案内
http://www.ishioroshi.com/btob/soudan_firstb.html
顧問弁護士
契約(
顧問料)についての詳細
http://www.ishioroshi.com/btob/komon_feeb.html
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1 今回の事例
特許実施
契約と
取締役会決議
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
知財高裁平成29年4月12日判決
A社の
取締役であるB氏は、A社を代表してC社との間で、「セ
キュリティ・カメラシステム」に関する開発
委託契約、「画像認証
システム」に関する
特許の実施許諾等を内容とする
契約、「画像認
証システム」に関する開発委託個別
契約を締結しました。
そしてC社は、これらの
契約に基づいて未払いの「
契約金」「契
約一時金」として、合計7億0500万円を請求しました。
なお、前記請求は、A社からC社に対して提起された訴訟にかか
る反訴請求ですが、本稿では反訴請求のみを取り上げます。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2 裁判所の判断
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
裁判所は以下のとおり、本件の
契約は無効であると判断し、C社
の反訴を認めませんでした。
● A社は、年商約30億円に上る会社であったが、毎月の資金繰
りに追われる状況にあり、月に2回、経理部長も交えた資金繰り会
議を開催し、
役員も資金の融通を行うほどであった。
● その中、さしたる事業上の見通しもないままに、A社が売上の
2か月分に相当する5億円もの金額を一括で支払う取引に応じたと
は到底考えにくい。
● C社は、A社が
従業員約200名で年商約30億円規模の株式
会社であることは認識していたから、A社が
取締役会設置会社であ
ることや、これだけの
契約を締結することが
取締役会決議事項に当
たることも知り得た。
● 確かに
契約書にはA社の
代表者印が押印されていたが、
契約交
渉にあたったC社の
取締役は、
取締役B氏としか協議しておらず、
代表取締役のD氏や他の
役員の意思を直接確認していない。記載内
容が極めて簡略で具体的内容が理解し難い
契約書に基づき数億円の
契約金の支払義務を負担することについてA社
取締役会で容易に承
認されるとは通常考え難いことなどから、C社は、A社の
取締役会
決議を経ていないことを知り得たはずである。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3 解説
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(1)
取締役会決議が必要な事項
取締役会が設置されている会社では、
取締役会は、一定の重要事
項について決定しなければならず、その決定を
代表取締役などに委
任することができないと定めています(
会社法362条4項)。一
部を挙げれば、以下のような事項が含まれます。
・重要な財産の処分及び譲り受け
・多額の借財
・支配人その他の
重要な使用人の選任及び
解任
・支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
では、もし
取締役会決議が必要なのに決議がなされないで行われ
た取引の効力はどうなるのでしょうか。この点、裁判例は、取引の
安全を考慮して原則として有効と扱います。しかし、今回の事例の
ように、決議を経ていないことを「知り得た」相手方に対しては無
効を主張できることとされています。
(2)「重要財産の譲受」についての考え方
本件で問題となったのは「重要な財産の処分及び譲り受け」の該
当性でした。この点、「財産の譲受」には、不動産や動産の購入の
ほか、設備投資や知的財産権の譲受も含まれます。またさらに、知
的財産権についての実施権や使用権等の設定を受けること、技術・
ノウハウ等の供与を受けることも含まれるとされています。
この点知的財産やノウハウといった無体物については見過ごされ
やすいかもしれませんので、注意が必要と考えられます。
では、何をもって「重要」と判断されるのでしょうか。この点、
裁判例は、(1)当該財産の価格、(2)会社の総
資産に占める割
合、(3)保有目的、(4)行為の態様、(5)会社における従来
の取扱い等、を総合的に考慮して判断するとしています(最高裁平
成6年1月2日判決)。
(3)実務上の留意点
もっとも、重要財産の判断基準として、「総合的に考慮する」で
は、日々の実務の中で、どんな事項を
取締役に付議べきかを適切に
判断するのは難しいことは容易に想像がつきます。
そのため、多くの企業は、
取締役会規則などによって、一定の数
値上の基準を設けて
取締役会付議事項とするか否かを判断していま
す。
この点例えば、東京弁護士会
会社法部「新・
取締役会ガイドライ
ン」は、財産の処分・譲受についての「重要」該当性の基準として
「会社の
貸借対照表上の総
資産額の1%に相当する額程度」(ただし
無償の寄付などは0.01%、
債務免除は0.1%)を提唱しています。
それで、実務上は、上のような数値も一応の参考にしつつ、自社
の実情や取引の特性に応じてさらに細かくアレンジし、自社の機動
的・スピーディな意思決定とガバナンスのバランスを取れるよう、
規定などにおいて工夫することが望ましいと考えます。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
4 弊所ウェブサイト紹介~
会社法 ポイント解説
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企
業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。
例えば本稿のテーマに関連した
会社法については、
http://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/kaishahou/index/
にあるとおり、
取締役・
取締役会、
株主総会からM&Aまで、
会社法に関する解説が掲載されています。必要に応じてぜひご活用
ください。
なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイト
において解説に加えることを希望される項目がありましたら、メー
ルでご一報くだされば幸いです。
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本稿の無断複製、転載はご遠慮ください。
ただし、本稿の内容を社内研修用資料等に使用したいといったお申
出については、弊所を出典として明示するなどの条件で、原則とし
て無償でお受けしています。この場合、遠慮なく下記のアドレス宛、
メールでお申出ください。
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【執筆・編集・発行】
弁護士・弁理士 石下雅樹(いしおろし まさき)
東京事務所
〒160-0022 東京都千代田区丸の内1-5-1
新丸の内ビルディング11階
弁護士
法人クラフトマン東京国際
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TEL 03-6267-3370 FAX 03-6267-3371
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mailto:
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弊所取扱分野紹介(
契約書作成・
契約書チェック・英文
契約)
http://www.ishioroshi.com/btob/jisseki_keiyakub.html
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1 今回の事例 特許実施契約と取締役会決議
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知財高裁平成29年4月12日判決
A社の取締役であるB氏は、A社を代表してC社との間で、「セ
キュリティ・カメラシステム」に関する開発委託契約、「画像認証
システム」に関する特許の実施許諾等を内容とする契約、「画像認
証システム」に関する開発委託個別契約を締結しました。
そしてC社は、これらの契約に基づいて未払いの「契約金」「契
約一時金」として、合計7億0500万円を請求しました。
なお、前記請求は、A社からC社に対して提起された訴訟にかか
る反訴請求ですが、本稿では反訴請求のみを取り上げます。
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2 裁判所の判断
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裁判所は以下のとおり、本件の契約は無効であると判断し、C社
の反訴を認めませんでした。
● A社は、年商約30億円に上る会社であったが、毎月の資金繰
りに追われる状況にあり、月に2回、経理部長も交えた資金繰り会
議を開催し、役員も資金の融通を行うほどであった。
● その中、さしたる事業上の見通しもないままに、A社が売上の
2か月分に相当する5億円もの金額を一括で支払う取引に応じたと
は到底考えにくい。
● C社は、A社が従業員約200名で年商約30億円規模の株式
会社であることは認識していたから、A社が取締役会設置会社であ
ることや、これだけの契約を締結することが取締役会決議事項に当
たることも知り得た。
● 確かに契約書にはA社の代表者印が押印されていたが、契約交
渉にあたったC社の取締役は、取締役B氏としか協議しておらず、
代表取締役のD氏や他の役員の意思を直接確認していない。記載内
容が極めて簡略で具体的内容が理解し難い契約書に基づき数億円の
契約金の支払義務を負担することについてA社取締役会で容易に承
認されるとは通常考え難いことなどから、C社は、A社の取締役会
決議を経ていないことを知り得たはずである。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3 解説
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(1)取締役会決議が必要な事項
取締役会が設置されている会社では、取締役会は、一定の重要事
項について決定しなければならず、その決定を代表取締役などに委
任することができないと定めています(会社法362条4項)。一
部を挙げれば、以下のような事項が含まれます。
・重要な財産の処分及び譲り受け
・多額の借財
・支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
・支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
では、もし取締役会決議が必要なのに決議がなされないで行われ
た取引の効力はどうなるのでしょうか。この点、裁判例は、取引の
安全を考慮して原則として有効と扱います。しかし、今回の事例の
ように、決議を経ていないことを「知り得た」相手方に対しては無
効を主張できることとされています。
(2)「重要財産の譲受」についての考え方
本件で問題となったのは「重要な財産の処分及び譲り受け」の該
当性でした。この点、「財産の譲受」には、不動産や動産の購入の
ほか、設備投資や知的財産権の譲受も含まれます。またさらに、知
的財産権についての実施権や使用権等の設定を受けること、技術・
ノウハウ等の供与を受けることも含まれるとされています。
この点知的財産やノウハウといった無体物については見過ごされ
やすいかもしれませんので、注意が必要と考えられます。
では、何をもって「重要」と判断されるのでしょうか。この点、
裁判例は、(1)当該財産の価格、(2)会社の総資産に占める割
合、(3)保有目的、(4)行為の態様、(5)会社における従来
の取扱い等、を総合的に考慮して判断するとしています(最高裁平
成6年1月2日判決)。
(3)実務上の留意点
もっとも、重要財産の判断基準として、「総合的に考慮する」で
は、日々の実務の中で、どんな事項を取締役に付議べきかを適切に
判断するのは難しいことは容易に想像がつきます。
そのため、多くの企業は、取締役会規則などによって、一定の数
値上の基準を設けて取締役会付議事項とするか否かを判断していま
す。
この点例えば、東京弁護士会会社法部「新・取締役会ガイドライ
ン」は、財産の処分・譲受についての「重要」該当性の基準として
「会社の貸借対照表上の総資産額の1%に相当する額程度」(ただし
無償の寄付などは0.01%、債務免除は0.1%)を提唱しています。
それで、実務上は、上のような数値も一応の参考にしつつ、自社
の実情や取引の特性に応じてさらに細かくアレンジし、自社の機動
的・スピーディな意思決定とガバナンスのバランスを取れるよう、
規定などにおいて工夫することが望ましいと考えます。
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4 弊所ウェブサイト紹介~会社法 ポイント解説
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弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企
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例えば本稿のテーマに関連した会社法については、
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にあるとおり、取締役・取締役会、株主総会からM&Aまで、
会社法に関する解説が掲載されています。必要に応じてぜひご活用
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なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイト
において解説に加えることを希望される項目がありましたら、メー
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