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通勤定期の現物支給

◆事例:通勤定期の現物支給

 現在、電車通勤従業員通勤費の代わりに定期券現物を直接渡しています。
今後事務量軽減のため定期代相当額を支給するつもりですが、定期を買うのが
面倒だし不利益になるとの反論もあり躊躇しています。今のまま続けた方がい
いのでしょうか。

◇回答----------------------------------------------------------------
 定期券の現物支給には重大な問題が潜んでいます。早急に現物支給について
労働協約の有無を確認して下さい。協約がない場合は通勤費として支給しな
ければなりません。もちろん不利益変更とはなりません。

■解説----------------------------------------------------------------
 古い会社に散見されますが、会社が通勤定期を購入し従業員に渡すことがあ
ります。元々は会社が全ての面倒を見るということに端を発したものでしょう
が、背景には従業員が申告と異なる経路で通勤し、定期代をチョロまかすのを
防ぐ狙いもあるようです。

 通勤に要する費用も、労働の対価として事業主から労働者に支払われるもの
であるため基準法上の賃金になります。当然、通貨払いの原則の適用を受けま
す。この例外として、法令または労働協約に定めのある場合は、いわゆる現物
支給も可能となっています。

 通勤費を定期券で渡す場合は、この例外規定に沿うこととなるため、労働協
約が必要です。労働協約は会社と労働組合とが協定したものです。よく勘違い
しやすいのが「労働者の過半数を代表する者との協定」です。賃金控除や36
協定は過半数代表との協定でOKですが、労働協約はこれではダメです。組織
化された労働組合との協定が絶対条件です。労働組合がない会社では労働協約
の締結のしようがありません。

 もし、どうしても労働協約が必要なら従業員労働組合を結成してもらうし
かありません。ただ、ヘタに作られると会社としては面倒になるし、かと言っ
て会社がリードして結成させることは不当労働行為になる恐れもあります。こ
のあたりはそのスジの専門家に意見を仰ぐべきです。

 労働協約がないか労働組合そのものがないのに定期券の現物支給(その他の
現物支給も同じです)をしている場合は、早急に給与合算とするよう取り扱い
を変更しましょう。従業員が定期券を買いに行くのが面倒という理由は不利益
変更にはなりません。併せて、もし今まで1ヶ月定期を渡していたのであれば、
最長期間(鉄道では通常6ヶ月)の定期代を支給することも差し支えありませ
ん。一人当たりのコストダウンは僅かとはいえ、1割程度圧縮できるはずです。
本人の購入頻度も少なくて済むので、買うのが面倒との反論にもなり得ます。

 なお、労働協約が締結されている場合は会社が一方的に変更はできません。
労働協約は会社と労働組合が対等な立場に立って取り決めたものなので、就業
規則を超える強力な定めになります。変更したい場合は改めて話し合いの場を
設け、交渉していくこととなります。
 参考までに、労働協約は特定の労働組合と締結されるものであり、原則とし
て傘下の労働組合員に適用されます。複数の労働組合があり、一方としか協約
がない場合は、協約のない労働組合員への現物支給はできません。但し、事業
場の労働者の4分の3以上を占める労働組合と協定がある場合は除きます。


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