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中小企業M&A準備金制度

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          ~得する税務・会計情報~         第383号
           
           【税理士法人-優和-】   https://www.yu-wa.jp  
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           中小企業M&A準備金制度


 令和3年度税制改正で創設された「中小企業事業再編投資損失準備金制度
」は、株式譲渡により多額の費用がかかるM&A実施年度に,取得した株式
等に見込まれる株価下落の損失に備えるため一定額を損金算入できる制度で
す。

 令和3年6月9日成立の改正産業競争力強化法等の施行日である令和3年
8月2日から令和6年3月31日までに経営力向上計画の認定を受けた中小
企業者が適用できます。

 M&A実施年度の税負担を軽くし、デューデリジェンス等の買収費用をま
かない、M&A後の株式等の価格の低落による損失に備えるための趣旨から
創設されました。

 中小企業の非効率性が議論され、中小企業の集約化を意図し、活況となっ
ているM&A市場ににおいて、M&Aにおける買手へのへのインセンティブ
を与え、中小企業の効率化と雇用の確保を意図していると思われます。

 株式譲渡でのM&Aの場合、買収金額は、概ね子会社株式等の資産として
貸借対照表に計上され、費用損失処理はできません。M&Aを計画実施する
時期は、企業業績や財務体質が良好の時が多いのが通例かと思います。そこ
でM&Aによる成長戦略をとって、その結果、計画通り順調にいけばよいの
ですが、計画通りにいかず、先々本体の親会社の事業の足許もぐらついてき
た、などと考えると、優良な中小企業においてでも、M&Aのリスクに二の
足を踏んでしまうでしょう。

 M&A後として考えられるのは、子会社として存続、グループ再編、親会
社との合併、解散清算、他へ売却等とありますが、失敗となる場合には、概
ね後年に多額の損失が具現化するも、株式評価減はじめ、その税務上の損金
算入に苦慮することも想定されます。

 そのようなリスクや心配を税制面で平準化し、法人税等の繰延を措置した
ものとなっています。あくまで税の繰延であるので、準備金取崩による益金
算入に注意が必要です。

1.適用できる法人
 青色申告書を提出する資本金の額等が1億円以下の中小企業者で、適用除
 外事業者(過去3年間平均所得15億円超)は除く。

2.対象株式又は出資(以下、特定法人の株式等とする)
 取得価額10億円以下で、中小企業等経営強化法の認定経営力向上計画に
 従って購入し、事業年度終了の日まで引き続き保有するもの。
 ・事業譲渡、合併株式交換等は対象とならない。
 ・株式等を取得した結果、発行済株式数、出資口数又は出資価額の50%
  以上となるような株式等の取得が対象となる。
 ・経営力向上計画以前に取得した株式等は対象とならない。
 ・グループ内での組織再編や親族内での株式等の取得は対象とならない。
 ・外国法人は対象から除かれる。

3.税務申告時までの流れ
 イ.M&Aの相手先決定後、主務大臣へ経営力向上計画の申請・認定を行う。
 ロ.M&A実施。
 ハ.M&Aの報告を主務大臣に行い、確認書の交付を受ける。
 ニ.経営力向上計画の申請書の写し、認定書の写し及び確認書の写しを税務
   申告時に添付する。
 ・ M&Aのスケジュールと併せた早めの申請・認定準備が肝要。

4.損金算入限度額
 株式等の取得価額の70%を限度として、任意の積立ができる。

5.損金経理
 中小企業事業再編投資損失準備金を積み立てることが必要で、準備金方式
 又は剰余金処分方式による。
 ・株式を取得した事業年度に限る。

6.申告処理
 損金算入に関する申告の記載をし、かつ明細書の添付(別表12(2))
 が必要。

7.積立金取崩と益金算入
 積立事業年度終了日の翌日から5年(据置期間)経過後、5年間で均等に
 取崩し、益金算入しなければならない。
 据置期間中に一定の事由が生じた場合には、該当事業年度で一定額を取崩
 し、益金算入しなければならない。
 一定の事由
 ・中小企業等経営強化法の認定取消。
 ・特定法人の株式等の全部又は一部を有しないこととなる。
 ・合併による合併法人への特定法人の株式等の移転。
 ・特定法人の解散(当該法人合併法人とする適格合併により解散した場
  合を除く)
 ・特定法人の株式等について帳簿価額を減額
 ・取得法人の解散
 ・取得法人青色申告取消
 ・上記に関わらず、中小企業事業再編投資損失準備金の金額を取り崩した
  場合

参考等
租税特別措置法第55条の2
・中小企業庁 「中小企業の経営資源集約化に資する税制Q&A」(令和3年
 9月17日時点)




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