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建物賃借人の原状回復義務

■Vol.5  2007-10-10 毎週水曜日配信                   
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□□■    経営に生かせる人事労務・法律の知識 
■■■  ― 経営者、起業準備の方必見です!―
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■■■      「建物賃借人の原状回復義務」
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 夫婦喧嘩は、犬も食わないとよく言いますが、喧嘩のきっかけは、洗面所
 の使い方から、ゴミの捨て方、etc...たわいもないことが多いようです。
 
 友人同士の喧嘩では、距離を置くことで、自然に修復するか、友情の消滅
 になりますが、夫婦間の諍いは、時には物騒な話になることも。

 いずれにしても、現状回復するなら早目が良いようです。

 さて、今回は建物賃借人の現状回復義務についてです。

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
      「建物賃借人の原状回復義務」
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
弁護士の緒方義行です。

今回は、建物賃貸借契約の終了時に問題になる建物賃借人の原状回復義務に
ついてです。

建物賃貸借契約が終了した後に、敷金保証金の返還にあたって、賃借人の
原状回復義務の有無や範囲などをめぐって争いになることがよくあります。
今回は、建物賃借人に原状回復義務があるのか、その内容や範囲はどのよう
なものかについて見ておこうと思います。

 
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1 原状回復義務の有無
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  まず、大前提として、「賃借人に原状回復義務があるのか」です。
契約書に書いてあることが多いので問題になることは少ないですが、実は法
律の条文には直接的には書いていないことなのです。
この点、最高裁判所の判決をはじめとして、判例は、「賃借人は、賃貸借契
約が終了した場合には、賃借物件を原状に回復して賃貸人に返還する義務が
ある」としています。
つまり、契約書に書いてあろうとなかろうと、賃借人には原状回復義務があ
ります。

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2 原状回復義務の内容
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  それでは、この原状回復義務とはどのようなものなのでしょうか。
  まず、一般的に、賃借人が賃借物件に付属させた物がある場合、その付
属物が賃借物件の通常の使用収益を妨げているときは、賃借人には、これを
収去する義務があると理解されています。
  問題となるのは、「損耗・毀損部分の補修義務は、どの程度まであるの
か」です。具体的には、「損耗・毀損部分の補修費用のうち、賃借人が負担
しなければならないのは、どの範囲のものか」という形で問題になります。


 (1)通常損耗について

  建物の損耗・毀損には、賃借人が通常の使用をするだけでも発生するも
のと通常の使用をするだけでは発生しないものがあります。
賃貸借契約により定められ又は社会通念上通常の方法により目的物の使用収
益をしている限り、原則として「返還時の状態」で返還すれば足り、通常損
耗について原状回復義務はありません。


(2)賃借人の義務違反による損耗・毀損について

  賃借人には、善管注意義務をもって賃借物件を保管する保管義務があり、
また、契約又は目的物の用法に従って使用収益する用法遵守義務があります。
これらに違反した使用によって生じた損耗・毀損を復旧することは、原状回
復義務に含まれることになり、これを復旧しないで賃借物件を返還した場合
には、賃貸人は賃借人に損害賠償として補修費用相当額を請求することがで
きます。そして、それは普通、敷金相殺されます。
  
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3 原状回復義務の程度
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  通常損耗を超える損耗・毀損であるとして原状回復義務の対象となった
としても、どの程度の補修・交換をする義務があるのでしょうか。原状回復
義務の程度の問題は、補修・交換の範囲の問題、負担すべき補修・交換費用
の額の問題になります。これについては、基本的には、補修・交換工事が最
低限可能な施工単位に基づく補修・交換費用相当分が負担の対象となると考
えられています。
 
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4 通常損耗についての原状回復特約(通常損耗補修特約)の成否について
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  建物賃貸借契約契約書に「賃借人は建物明け渡し時に建物を契約締結
時の原状に回復しなければならない」とか、「賃借人は賃借建物を明け渡す
ときは、畳の表替え、襖の張替、クロスの張替、クリーニング費用を負担す
る」といった条項が書いてあることがあります。
  このような特約が通常損耗についても原状回復義務を定めたものである
かどうかが争われることもあります。
  最高裁判所の判例は、少なくとも、賃借人が補修費用を負担することに
なる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、
仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、
賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められる
など、その旨の特約が明確に合意されていることが必要であるとして、ちょ
っとやそっとでは合意の成立を認めていません。

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5 通常損耗についての原状回復特約(通常損耗補修特約)の効力について
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  最高裁判所の判例に見られるように、通常損耗についても原状回復義務
があるという合意の成立が認められるためには、かなり厳格な要件を満たす
場合に限られるということになりますが、仮にそのような合意の成立が認め
られる場合であっても、さらに、その契約条項が消費者契約法10条(信義
則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効とする)により無効と
されたり、公序良俗違反として無効とされることもありますので、注意が必
要です。



                    (弁護士 緒方 義行)
                 URL http://www.fuso-godo.jp/


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