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採用内定の取り消し

◆事例:採用内定の取り消し

 当社では来年4月の採用予定者がおり、内定も出しています。
 ところが最近、受注が急減し、新卒者を入れる余裕がなくなってしまいまし
た。
 既に出した内定を取り消すことはできますか?

◇回答----------------------------------------------------------------
 一般的に、内定通知を出すことによって労働契約が成立したとされます。内
定を取り消すためには客観的、合理的理由が必要で、厳しい要件がつきます。
 但し、採用予定者が取り消しに応じてくれれば可能です。

■解説----------------------------------------------------------------
 採用内定は、実際の入社前に従業員をいち早く確保するため、いわばツバを
つけておく制度ですね。従って、内定期間は通常の労働契約を締結するまでの
待機期間と言えますが、多くは卒業等を条件とする誓約書の提出等が行われて
います。

 採用内定の法的解釈は、募集(労働契約申し込みの誘引)に対し応募(労働
契約の申し込み)があり、これに対する採用内定通知(=申し込みに対する承
諾)及び誓約書の提出の段階で労働契約は有効に成立することとされます
(最高裁S54.7.20)。
 通常の労働契約との違いは、就労の始まる時期が学校卒業後であり、それま
での期間については一定の内定取消事由に該当したときにだけ当該内定を解除
できるところです。

 内定取消事由は一般に誓約書等に記載されていますが、これに該当すれば直
ちに取り消しできるわけではありませんので注意が必要です。法的には労働契
約そのものが成立しているので、取り消すには既に在籍している従業員を解雇
するのと同等の合理的な理由が必要となってきます。

 ところで行政解釈では、内定取消は解雇予告(労基法20条)の適用があると
され、30日前に予告するか30日分の平均賃金を支払えば解雇(この場合は内定
取消)できることになりますが、判例上では上のように解雇に厳重な制限がか
けられています。合理的事由がない解雇は、解雇権の乱用とされてしまいます。

 この事例の場合、受注が急減し経営が芳しくない、といった理由では合理性
があるとは判断されない可能性が強いです。あらゆる努力をしたが、これ以上
は既存の従業員を解雇するしかないといった緊迫した状況でないとなかなか認
められません。もちろん合理性の是非は個別の判断が必要なので、一概には言
えませんが。


 どうしても内定は取り消したい、でも裁判みたいな面倒事は嫌だという場合
労働契約の撤回を申し込む方法があります。労働契約に限らず、通常の契約
いずれか一方が申し出て、相手が合意すれば解除することができるからです。
 従ってこの場合、いきなり内定の取消通知を出すのでなく、「既に成立した
労働契約内定通知)を取り消したいので応じてもらえないか?」と、やんわ
りと申し込みを行ってみます。

 まずは電話等で切り出した後、可能な限り幹部が出向いて、会社の状況と内
定取消の回避への努力経過、今後の見込み等を切々と語り、もし入社したとし
ても非常に厳しい環境に飛び込むことになる旨を説明してみます。状況により
慰謝料的な要素も考えておくとベターです。

 考慮期間を置いた後、本人の意思を確認し受諾してもらえれば、その内容の
契約書(いつ付けの採用内定は合意により取り消した旨)を取り交わしておき
ます。
 ただし、交渉は相手次第。特に親の影響が大きいので、どうしても拒否され
た場合は致し方ありません。家庭環境等まで考慮して慎重に実行することが大
切です。

 また、目的を果たしたとしても会社のウワサとして広まることは確実で、取
引先の耳に入れば信用問題にもなりかねないので、この点の覚悟や対策も必要

です。

 また、全く別な方法として、会社の恥になる内定取消はせずに普通に入社さ
せ、その直後に退職してもらう手段もありますが、少しでも内定取消の話が出
たら使えません。きわどい方法なので今回は控えておきます。


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