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ライバル会社への再就職禁止条項

◆事例:ライバル会社への再就職禁止条項

 当社の営業マンの一部が退職後、ライバル会社へ再就職することがあるため、
就業規則に「競合他社への再就職禁止」条項を入れようと考えています。さら
に違反者に対しては退職金の返還を求めることも考えていますが、これらを規
定化するにあたり何か問題となる点はありますか。

◇回答----------------------------------------------------------------
 再就職禁止条項は、職業選択の自由との兼ね合いがあるため、その効力は制
限されます。もちろん長期に渡る再就職禁止は無効です。また、この条項は就
業規則だけでなく、雇用契約時又は退職時に特約として本人と書面を取り交わ
しておくべきです。
 さらに退職金は、労働の対価としての性格上、信義則に反する行為があった
等の場合を除いては返還を求めることは困難です。
 同様の効果を狙うには「秘密保持契約」も有効です。会社に実害が発生した
場合、損害賠償を請求することもできます。

■解説----------------------------------------------------------------

 最近は独立志向や帰属意識の希薄化もあり、社内の重要事項を知る従業員
競合他社へ転職してしまうケースが増えています。これを助長するヘッドハン
ティング会社もあるくらいです。
 もちろん、営業上の秘密事項やノウハウが他社へ流出することとなれば、経
営に重大な影響を与えることとなるため、競合他社への再就職禁止は企業防衛
上認められて然るべきものです。

 従業員は、会社に対し職務に専念する義務を負うだけでなく、業務を利用し
て会社の利益を不当に侵害してはならない義務もあります。前者を職務専念義
務、後者を誠実義務や競業禁止義務と呼ぶこともあります。これらの義務は少
なくとも労働契約が継続している限り常に負うこととなります。
 後者については退職後まで義務を負うのかという疑問も生じますが、「業務
を利用して」との理由や不正競争防止法の観点、さらには信義則の観点から雇
用関係終了後といえども存在するとされています。(仙台地判H7.12.22)

 しかしながら、一方では従業員の職業選択や営業の自由との兼ね合いも発生
するため、無制限に禁止することはできません。再就職の際は過去の職務を活
かせる職業に就くのが普通であり、あまりに広範囲に再就職先を制限してしま
うと退職従業員の生活を不当に脅かすことにもなるからです。

 このため多くの判例では、雇用関係終了後の競業禁止義務は「当事者間に特
約があり、かつ合理的な範囲内でのみ認められる」こととされています。毎度
のことながら抽象的で理解しにくいですが、例えば同僚や部下を引き抜いたと
か、顧客情報を全て持ち帰ったとかして顧客を奪い、元の会社の売り上げが明
らかに減少したような場合は競業禁止義務に引っかかることになります。要は、
従業員の背信性と会社のダメージが大きいかどうかです。ただのチンピラ社員
が身体一つでライバル会社に再就職しても、これを防ぐ手だてはないと考えた
方がよいでしょう。
 特に退職金の返還については、退職金そのものが賃金の後払い的性質を持っ
ていることから、よほどのケースでないと返還を求めることは難しいようです。

 また判例では「特約」も必要とされているので、単に就業規則に定めるだけ
では不十分です。採用時または退職時に「競業しない」旨の契約書や誓約書等
を求めることが必要です。その際の競業禁止期間も長期では不当とされる恐れ
があるため、せいぜい2~3年が限度かと思われます。

 競業を禁止する一番の理由は、企業秘密をライバル会社に知られることであ
ろうと思います。顧客情報はもちろんのこと、製品の原価、仕入先、ノウハウ
等、多岐にわたる内容が含まれます。たとえ従業員がライバル会社に行ったと
しても、これらの情報の流出がなければ大きな影響は受けなくて済むはずです。
そのためには秘密保持義務を負わせる方法があります。

 秘密保持義務は労働契約自体にも内在すると考えられていますが、きちんと
特約化することによって明確化され、注意の喚起にもなります。在職中は当然
のこと、退職後もその効果が及びます。義務違反の場合は退職金の返還や損害
賠償について盛り込むことも可能ですが、文面に工夫が必要です。

 万全を期すなら、退職時に改めて「退職後の秘密保持誓約書」なる書面を徴
求するのも効果があります。当然、何が秘密なのかについて極力具体的に例示
をし、秘密の意義や範囲を定めておくことがポイントとなります。
 さらに、ケチくさいですが退職の手続きの際、業務上受け取った名刺類は会
社に返却させることは言うまでもありません。


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