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払い過ぎた賃金の回収

◆事例:払い過ぎた賃金の回収

 給与計算時に担当者が誤ったため、本来額より多く支払ってしまいました。
本人に伝えて来月の給与から控除しようと思いますが、構いませんか。

◇回答----------------------------------------------------------------
 誤りが最近の分で、しかも額が少ないものであれば、本人に事前に通告した
上で控除することは可能です。かなり以前の分や過大な額となる場合は、返還
方法を本人と十分相談して決める必要があります。

■解説----------------------------------------------------------------
 よくあるんです、これが。給与支払い担当者なら一度は経験しているかと思
います。残業時間の集計ミスで残業代を払い過ぎたり、月変時などに本給を入
力誤りとかのケースですね。こういう場合は完全に事務方の責任ですが、扶養
手当や通勤手当の申告を本人が怠っていたなんてのも結構あります。

 会社側のミスであれば、事情を本人によく説明して、「来月で調整させてね」
でチョンとなりますが、長期にわたり過払いになっていた場合は面倒なことに
なります。1万2万ならともかく、ン十万になるとそうそう簡単に給引きする
わけにもいきません。この場合、分割での方法を模索することになります。そ
れでも相手が相談に乗ってくれればまだ良い方で、状況によっては会社が半分
かぶるなんて例もバブル時代にはあったようです。お互い内密にという条件で。
不幸ながら私はそういうおいしい事例に当たらなかったけど。

 タチが悪いのが、本人の不申告による手当の過払いの場合です。単に忘れて
いただけなら可愛いのですが、敢えて申告しないまま高額な手当を受け続けよ
うとする確信犯もいます。判明して指摘すると、「そんなの会社でわかるだろ。
それを調べるのが人事部だべ」と平然と言ってのけます。不申告による就業規
則違反で処分を匂わすと慌てて再申告しますけど。

 ところで、いずれの場合でも本人が本来の額を上回って受け取っていたこと
になり、法的には民法上の不当利得となるため、会社には返還請求権がありま
す。
 一方、基準法では「賃金全額払い」の原則があり、法令に定めのある場合や
労組等との控除協定がある場合を除き、賃金は全額支払わなければならないこ
とになっており、おいそれと控除するわけにもいきません。。
 もちろん賃金過払いを給与控除するには、その旨の控除協定を締結してお
けば問題ないのですが、普通みっともなくてこんな協定を結ぶことはありませ
ん。

 ところが、このような賃金控除の協定がない場合でも、「前月分の過払い
賃金を翌月に精算する程度は、賃金それ自体の計算に関するものであり、基
準法第24条の違反とは認められない」(S23.9.14基発第1357号)との行政解釈
があり、条件に合致すれば控除することができます。

 また、最高裁の判例にも、「調整の実を失わない程度に合理的に接着した時
期において、かつ労働者の経済生活の安定を脅かすおそれのない場合なら許さ
れる」というのがあります。

 これらのことを総合的に勘案すれば、過払い後3ヶ月程度の期間内で、その
額が高額でなければ、控除について事前に本人へ通告を行うことにより過払い
分の給与控除を一回で行うことも可能と考えられます。

 これと異なり、数ヶ月もの過払いの場合は控除額も高額になると思われ、一
度に給与から控除することは困難でしょう。労働者の経済生活の安定を脅かす
恐れがあるというのが大きな理由です。このような場合は、別途本人に返還請
求を行い、返還方法を協議して決めた方が安全です。本人が認めれば分割控除
もできなくはありませんが、前記解釈を厳密に考えれば別途返還してもらった
方がいいかも知れません。
 
 なお、退職間際の人では退職金から控除するケースもあるようですが、退職
金も賃金の一種なので考え方は一緒です。
 辞めたら返してもらえないのではないかという心配はごもっともですが。


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