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フランチャイズと報告義務

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石下雅樹法律・特許事務所 第39号 2009-12-24
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1 今回の判例  フランチャイズと報告義務
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H20.7.4 最高裁判決

今回の訴訟は、セブンイレブン・ジャパンと、同社とのフランチャイズ契約のもとでコン
ビニを経営する複数の加盟店オーナーとの訴訟です。

セブンイレブンは、フランチャイズ契約に基づき、加盟店が仕入れた商品の代金を加盟店
に代わって支払います。そして、このセブンイレブンが支払ったこの仕入代金は、フラン
チャイジー(加盟店)がセブンイレブンに預ける売上金からを差し引かれます。しかし、
セブンイレブンからフランチャイジーに対して、支払代金額、値引の有無、支払日、支払
先等の具体的な支払内容は知らされません。

そこで、一部のフランチャイジーが、加盟店オーナーが一定期間分の、仕入先各3社から
仕入れた商品の決済についての、月単位での支払内容の詳細(支払先、支払日、支払金額
、商品名、単価、個数、仕入値引高の内容)の情報を提供するように求めたところ、セブ
ンイレブンから「契約に報告義務の定めがない」などの理由で拒否されたため、東京地方
裁判所に提訴しました。

これに対し、東京地裁、東京高裁は、フランチャイズ契約には、発注システムによる仕入
代金の支払に関しセブンイレブンからフランチャイジーへの報告について何らの定めもな
かったことを理由に、フランチャイジーの主張するの報告義務はないと判断しました。こ
の判決に対する上告判決が、今回の判決です。


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2 判決の概要
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【結論】セブンイレブンの報告義務を肯定

【理由】

● 仕入商品の売買契約は、フランチャイジーと仕入先との間に成立し、フランチャイジ
ーがセブンイレブンにその代金支払に関する事務を委託するという法律関係にある。した
がって、この委託は、準委任民法656条)の性質を有する。

● フランチャイズ契約には、仕入代金の支払に関する報告につき何らの定めもない。し
かし、コンビニにとって商品の仕入れは、フランチャイジーの経営の根幹を成し、フラン
チャイジーは、自己が支払義務を負う仕入代金の支払を独立した事業者であるセブンイレ
ブンに委託しているから、仕入代金の支払についてその具体的内容を知りたいと考えるの
は当然である。

● セブンイレブンに集約された情報の範囲内で、具体的な支払内容をフランチャイジー
に報告することに大きな困難があるとも考えられない。 

● そうすると、フランチャイズ契約にセブンイレブンによる報告について何らの定めが
ないからといって、委託者であるフランチャイジーから請求があった場合に、準委任の性
質を有する本件委託について、民法の規定する受任者の報告義務(民法656条、645
条)が認められない理由はない。

● 確かに、本件特性(※)のみに注目すると、通常の準委任と比較してセブンイレブン
にとって不利益であり、セブンイレブンのフランチャイジーに対する一方的な援助のよう
にも見える。しかし、セブンイレブンにとっても、オープンアカウントによる決済の方法
を提供することにより、仕入代金の支払に必要な資金を準備できないような者との間でも
フランチャイズ契約を締結して加盟店を増やすことができるという利益があり、また、フ
ランチャイジーがオープンアカウントによる決済の方法を利用して仕入商品を増やせば、
売上げも増えることが見込まれ、ロイアリティを取得するセブンイレブンの利益につなが
る。それで、本件特性(※)があるためにセブンイレブンが報告義務を負わないとはいえ
ない。

(※)セブンイレブンが仕入代金相当額の費用の前払(民法649条)を受けられないこ
と、支出した費用について支出の日以降オープンアカウントによる決済の時までの利息
償還(同法650条)を請求できないこと、仕入代金の支払について報酬請求権(商法
12条)も有しないなど、通常の準委任とは異なる点があり、これを「本件特性」と定義
しています。

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3 解説
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【事実関係の補足】

事実関係をもう少し補足します。

当該フランチャイズ契約には、以下の内容が含まれていました。

(1)セブンイレブンは、フランチャイジーの仕入れを援助するため、信用ある仕入先と
仕入品の推薦をし、加盟店の発注の簡易化、仕入れの効率化を図るための発注システムを
提供する。しかし、フランチャイジーは推薦仕入先から商品を仕入れる必要はないし、セ
ブンイレブンの推薦した商品のみを仕入れる必要もない。

(2)フランチャイジーが推薦仕入先から発注システムによって商品を仕入れた場合は、
フランチャイジーに代わってセブンイレブンが商品の仕入代金を支払い、フランチャイジ
ーとセブンイレブンとの間の決済はオープンアカウントによって行われる。

(3)オープンアカウントとは、フランチャイジーごとに、開業日からフランチャイズ契
約に基づくフランチャイジーとセブンイレブンとの間の一切の債権債務の清算に至るまで
の間の貸借の内容・経過及び加盟店の義務に属する負担を逐次記帳して明らかにし、一括
して借方貸方の各科目を差引計算して決済していく継続的計算関係をいう。

このようなオープンアカウントによる決済はコンビニエンス・ストアのフランチャイズ・
チェーンでは一般的に行われているようです。


【情報格差と情報開示の義務】

 同様の決済システムは、他のフランチャイズ契約にも見られるようですので、この判決
は他のフランチャイズ契約にも影響があると考えられます。

 このフランチャイズ・システムは、本来は、対等の「事業者どうし」が契約する、各自
の自己責任を前提とした対等な関係であるというのが制度の建前です。他方で現実には、
フランチャイザーとフランチャイジーとの間には、圧倒的な「ノウハウの格差」「情報の
格差」があることも事実です。それは、フランチャイジー側が専門的なノウハウ、経験に
乏しい個人商店的経営者であることが多いからです。したがって、フランチャイズシステ
ムのトラブルにおいては、事業者間の紛争の側面もさることながら、事業者・消費者間の
トラブル的な側面も表れることになります。

 そして、ここ近年法律上も進んできているのが、「情報開示」です。情報格差がある当
事者間(多くは力関係の格差も)の取引が関係する多くの分野で、情報を持っている当事
者が情報の乏しい相手に対し、正確な情報を開示することが義務づけられてきています。

 法的には、一個の事業者であるフランチャイジーが、自分の資金で仕入れた自分の商品
の仕入情報を、支払代行者のフランチャイザーに求められるというのは当然ではないか、
と考えますが、他方この仕入情報の開示の義務は、この情報格差から生じる開示義務とも
つながるものと考えられます。

 公正取引委員会も、「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方につい
て(平成14年4月24日公正取引委員会)」において、どのような行為が独占禁止法上
問題となるかについて具体的に明らかにしています。また、中小小売商業振興法において
も、小売商業におけるフランチャイズ・システムにつき、特定の目的のため、同法の対象
となる本部に対して、一定の事項について情報開示・説明義務が課されています。

 フランチャイズ・ビジネスは、フランチャイジーがあってこそ成り立つビジネスでもあ
ります。今後、フランチャイザーにとっても、フランチャイジーに開示すべき・説明すべ
き情報を開示することは、フランチャイジーとの相互信頼の獲得とフランチャイズシステ
ムの発展にとって必要なことではないかと思われます。

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