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秘密保持誓約書の保管期間

著者 Kamakura さん

最終更新日:2015年10月10日 12:05

ご教授願います。

採用時、あるいは退職時に「秘密保持誓約書」を取り付けることはよくあることと思います。

退職後も秘密保持を誓約させる場合、期間は無制限になると思われますが、それに伴い誓約書の保管期間も無制限(永久保管)となるのでしょうか。
あるいは一般の雇用契約書と同様3年でよろしいのでしょうか。

よろしくお願いいたします。

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Re: 秘密保持誓約書の保管期間

お疲れさんです

内部監査資料として、採用後の社員および役員などへの山王資料として提示しています。

退職した従業員の営業機密保持義務
来月、当社の従業員Aが退職することになりました。当社としては、Aがこの先、当社の保有する営業機密、ノウハウ等の情報を流出させてしまわないか危惧しています。当社としてどのような方法を取ることが可能でしょうか。

従業員との労働契約が継続している場合の対応
会社が有する営業機密や技術上の秘密、ノウハウ等(以下「営業機密等」といいます)については、それが一般的な知識や経験といったものを超える程度に秘密性を有しているものであれば、従業員は第三者にむやみにそれを流出させてはならないという義務を負います。
労働契約契約関係が長期間継続し、契約当事者間に高度の信頼関係が必要とされるものであり、会社と従業員は、本来の義務である役務の提供や給与の支払いなどに加えて、相手方の利益に配慮し誠実に行動しなければならないという付随的義務を相互に負うと解されるからです。

従業員は、そうした労働契約に付随する配慮・誠実義務の一環として、会社の営業機密等を守る義務を負うものであり、会社は、そのような義務に違反した従業員に対して、債務履行に基づく損害賠償請求(民法415条)をすることが可能です。

2 秘密保持の特約による対応
従業員が会社を退職した場合、会社と従業員との間の労働契約関係は終了するので、会社から従業員に対して労働契約に付随する配慮・誠実義務違反を根拠として損害賠償請求を行うことは困難です。

しかし、会社と従業員との間の労働契約が終了した後も、退職した従業員が営業機密等を何の制限もなく利用できるのであれば、会社として大きな不利益を被ることが想定されますので、会社と退職する従業員との間で秘密保持の特約を取り交わしておくことが行われています。

従業員退職後も秘密保持義務を負うとの特約は、労働契約終了時に個別的な特約としてできるのはもちろんのこと、就業規則に盛り込むことで、労働契約の一内容とする-ことも可能です。

会社は、退職した従業員が秘密保持の特約に違反して会社の営業機密等を漏洩した場合、当該特約違反を理由として債務履行に基づく損害賠償請求や(民法415条)、漏洩行為の差止請求をすることができます。

また、特約の中で機密情報の範囲を明示したり損害賠償の予約額を定めたりすれば、万が一問題が起こった場合に、請求を容易にすることができます。
ただし、秘密保持の特約により退職した従業員に課される義務が、あまりに必要性・合理性を欠く場合、そのような特約は公序良俗に違反するものとして無効とされることがあります(民法90条)。

ここでいう「公序良俗違反」とは、その契約等の効力を認めることが社会的に見て余りに妥当性を欠く場合をいいます。たとえば秘密保持のためと称して何ら条件も付けないまま同業種への再就職を全面禁止するような場合や、損害賠償予約額を実際に生じる損害額からかけ離れた金額に設定するような場合、このような特約は職業選択の自由(憲法22条1項)や財産権(憲法29条1項)を過度に制限する可能性があるため、公序良俗違反により無効とされる可能性が高いと考えられます。

不法行為、不正競争防止法による対応
また、上記のような秘密保持の特約を取り交わしていない場合であっても、退職した従業員が会社の技術上・営業上の秘密を利用して会社に損害を与えれば、会社は民法上の不法行為民法709条)を根拠として損害賠償を請求することが可能な場合があります。

もっとも、会社の側で損害賠償請求に必要な要件を全て立証することは必ずしも容易ではありません。
侵害された会社の利益がそもそも法律上保護に値するものといえるか、保護に値するとして退職した従業員にどのような行為があれば利益侵害があったと言えるか、利益侵害によって会社にどの程度の金額の損害が発生したのか等、会社としては多岐に亘る立証が必要となります。

そこで、会社側が利用しやすい法律として、不正競争防止法があります。
不正競争防止法(以下「法」といいます)は、秘密として管理されている生産方法や販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって公然と知られていないものを「営業秘密」と定義したうえで(法2条6項)、退職した従業員が会社から示された営業秘密を「不正の競業その他の不正の利益を得る目的」又は「その保有者に損害を加える目的」を持って使用したり第三者に開示したりする行為は不正行為になると定めています(法2条1項7号)。

そして、そのような不正行為をした者に対して差止め(法3条1項)や損害賠償(法4条)、侵害行為を組成した物(機密情報の記載された文書やデータ等)の廃棄または侵害行為に供した設備(営業秘密を利用するための装置等)の除却(法3条2項)などの措置を定めており、一方で損害額についての推定規定を置き(法5条)、不正を行ったとされる者に行為の具体的態様を明示する義務を負わせる(法6条)など、会社側の立証負担の軽減を定めています。

4 本件の場合
当社としては、Aとの間で秘密保持の特約を取り交わしておけば、将来Aが当社の営業機密等を漏洩した場合に、特約に基づいて差止請求損害賠償請求をすることが可能です。

特約がない場合でも、当社として、前述のとおり不法行為または不正競争防止法に基づく損害賠償請求等の余地はありますが、従業員退職後も営業機密等を守る義務があることを自覚させるという紛争予防の見地からも、秘密保持の特約を取り交わしておくことが望ましいでしょう。

保管期間ですが、
過去の判例を見ますと、競業行為禁止の特約が認められる期間は3年が上限のようです。 つまり、3年を超えるような競業避止義務を課すことは不合理(公序良俗違反)であり許されない、ということです。

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