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【レジュメ編】 労働審判制度

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     ★★★ 新・行政書士試験 一発合格! Vol. ’06-24 ★★
           【レジュメ編】 労働審判制度

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■■■ 労働審判制度
■■■ 労働審判
■■■ お願い
■■■ 編集後記

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平成16年5月に公布された労働審判法が、今年4月1日から施行されています。そこ
で、今回は、公益通報者保護法に続き、一般知識対策として、この労働審判法を取上げ
ることにしました。

■■■ 労働審判制度
■ 目的
労働審判制度は、労働契約の存否その他の労働関係に関する個別労働関係民事紛争(個
々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争)を、裁判所で、裁判官と労働関
係に関する専門的な知識経験を有する者で組織する労働審判委員会が、当事者の申立て
により、事件を審理し、調停または労働審判を行って、紛争の実情に即した迅速、適正
かつ実効的な解決を図ることを目的とする(1条)。
★ 民事調停法に定められた民事調停の特別な類型であり、調停と裁判の中間に位置す
  る。
★ 解決方法は、可能であれば調停により、それができない場合には、原則として労働
  審判になる。なお、労働審判の内容に不満がある場合には、当該労働審判について
  異議の申立てができる。適法な異議申立てである場合には、訴訟が自動的に開始さ
  れる(訴訟手続きとも直接リンクしている。)。
★ 日本で事実上初めて法律の職業的専門家以外が参加する司法手続きである(訴訟で
  はないので参審制ではないが、裁判員制度と同じ考え方に基づく。)。
★ 個別労働関係民事紛争が労働審判手続きの対象であるので、集団的労働紛争(事業
  主と労働組合間の紛争等)や事業主を相手方としない事件は対象外になる。
★ 公務員の任用に関する紛争は行政事件になるので、労働審判手続きの対象外になる。
★ 「労働契約の存否その他の労働関係に関する事項」を扱うので、募集や採用は対象
  外になる。ただし、採用内定の取消しは、既に成立した労働契約の解約と考えられ
  るので、対象に含まれる。

■ 管轄
労働審判事件(労働審判手続に係る事件)の管轄は、相手方の住所、事務所等の所在地
を管轄する地方裁判所、個別労働関係民事紛争が生じた労働者が現に就業し若しくは最
後に就業した事業主の事業所の所在地を管轄する地方裁判所、または当事者が合意で定
める地方裁判所である(2条)。

■ 代理
労働審判手続の代理人は、法令により裁判上の行為をすることができる代理人または弁
護士でなければならない。ただし、裁判所は、当事者の権利利益の保護および労働審判
手続の円滑な進行のために必要かつ相当と認めるときは、弁護士でない者を代理人とす
ることを許可することができる(3条)。
★ 本人だけでも、労働審判手続の申立てはできる。
★ 弁護士でない者としては、たとえば、人事部役職者、労務部担当者、労働組合の役
  員や専従者等がある。

■ 労働審判手続の申立て
当事者は、個別労働関係民事紛争の解決を図るため、裁判所に対し、趣旨および理由を
記載した書面で、労働審判手続の申立てをすることができる(5条)。
★ 申立てがあった場合には、相手方の意向にかかわらず、労働審判の手続きは進行す
  る。
★ 労働者であれば制限はない(パートタイマー、派遣労働者、外国人労働者でも申立
  てができる。)。

■ 不適法な申立ての却下
裁判所は、労働審判手続の申立てが不適法であると認めるときは、決定で、その申立て
を却下しなければならない(6条)。

■ 労働審判手続
(1)労働審判手続は、地方裁判所の裁判官の中から指定された労働審判官一人および
   労働審判員二人で組織し、労働審判官が指揮する労働審判委員会で行う(7条、
   8条、13条)。
(2)労働審判委員会は、職権で事実の調査をし、かつ、申立てにより又は職権で、必
   要と認める証拠調べをすることができる。なお、証拠調べについては、民事訴訟
   の例による(17条)。
(3)労働審判手続は、公開しない。ただし、労働審判委員会は、相当と認める者の傍
   聴を許すことができる(16条)。
★ 労働審判官と労働審判員は、対等な立場で合議に参加する。
★ 労働審判手続は、非訟事件であるので(29条)、公開されない。

■ 労働審判
(1)労働審判員は、労働審判法の定めにより、労働審判委員会が行う労働審判手続に
   関与し、中立かつ公正な立場で労働審判事件を処理するために必要な職務を行
   う。なお、労働審判員は、労働関係に関する専門的な知識経験を有する者のうち
   から任命される(9条1項、2項)。
(2)労働審判員は、労働審判事件ごとに、裁判所が指定する(10条1項)。
★ 労働者使用者の立場から、実際に個別労働紛争の処理等に携わった経験があり、
  労使関係の実情や慣行、制度等の知識を有する者のなかから選任される。ただし、
  「中立かつ公正な立場」で必要な職務を行わなければならない
★ 労働審判員は、労働関係に関する専門的な知識経験を有する者で68歳未満のものの
  中から、最高裁判所が任命する。ただし、特に必要がある場合においては、68歳未
  満の者であることを要しない(最高裁「労働審判員規則」1条)。また、その任期
  は2年である(同3条)。

■ 労働審判員の除斥
民事訴訟法第23条(裁判官の除斥)、第25条(除斥又は忌避の裁判)および第26条(訴
訟手続の停止)の規定は、労働審判員の除斥について準用される。

■ 決議等
労働審判委員会の決議は、過半数の意見による。また、労働審判委員会評議は、秘密
とされている(12条)。
★ 労働審判官と労働審判員は、平等に表決権を有する。
★ 決議に至るまでの間、労働審判委員会は、審理の終結に至るまで、労働審判手続の
  期日に調停を行うことができる(最高裁「労働審判員規則」22条1項)。調停が成
  立する可能性がある場合には、これを試みることが前提とされている。

■ 迅速な手続
(1)労働審判委員会は、速やかに、当事者の陳述を聴いて争点および証拠の整理をし
   なければならない(15条1項)。
(2)労働審判手続は、特別の事情がある場合を除き、3回以内の期日で、審理を終結
   しなければならない(15条2項)。
★ 審理期間あるいは各回の間隔(日数)についての規定はないが、月に1回程度で、
  3~4ヵ月程度で終えることが想定されている。なお、「労働審判官は、特別の事
  由がある場合を除き、労働審判手続の申立てがされた日から四十日以内の日に労働
  審判手続の第一回の期日を指定しなければならない」(最高裁「労働審判員規則」
  13条)ので、相当に迅速な解決が図られるように担保されている。
★ 当事者は、早期に主張および証拠の提出をし、労働審判手続の計画的かつ迅速な進
  行に努め、信義に従い誠実に労働審判手続を追行しなければならない(最高裁「労
  働審判規則」2条)。

■ 審理の終結
労働審判委員会は、審理を終結するときは、労働審判手続の期日においてその旨を宣言
しなければならない(19条)。

■ 労働審判(20条)
(1)労働審判委員会は、審理の結果認められる当事者間の権利関係および労働審判
   続の経過を踏まえて、労働審判を行う。
(2)労働審判においては、当事者間の権利関係を確認し、金銭の支払、物の引渡しそ
   の他の財産上の給付を命じ、その他個別労働関係民事紛争の解決をするために相
   当と認める事項を定めることができる。
(3)労働審判は、審判書を作成し、当事者に送達しなければならない。この場合、労
   働審判の効力は、当事者に送達された時に生ずる。
(4)労働審判委員会は、相当と認めるときは、審判書の作成に代えて、すべての当事
   者が出頭する労働審判手続の期日に、労働審判の主文および理由の要旨を口頭で
   告知する方法により、労働審判を行うことができる。この場合、労働審判の効力
   は、告知された時に生ずる。
★ 労働審判手続は、当事者の権利義務関係に関する法律上の争訟(たとえば、解雇が
  法的に有効かどうか)ではないので、権利義務関係を判断するとともに、当事者の
  意向も踏まえた審判(判断)をすることができる(たとえば、労働者が解雇は無効
  であるが、復職でなく、解決金による解決を希望する場合)。
★ 各期日に調停が成立しない場合に、労働審判が行われる。

■ 異議の申立て等(21条)
(1)当事者は、労働審判に対し、審判書の送達又は労働審判の告知を受けた日から2
   週間の不変期間内に、裁判所に異議の申立てをすることができる。
(2)適法な異議の申立てがあったときは、労働審判は、その効力を失い、訴え提起の
   擬制(22条)がなされる。
(3)適法な異議の申立てがないときは、労働審判は、裁判上の和解と同一の効力を有
   する。
★ 確定判決と同一の効力を有するので、その法的効果は強力である(たとえば、執行
  力が付与される。)。
★ 不変期間なので、原則として、裁判所はこの期間を伸長したり、短縮することはで
  きない。

■ 訴え提起の擬制
労働審判に対し適法な異議の申立てがあったときは、当該労働審判手続の申立てがあっ
た時に、当該労働審判事件が係属していた地方裁判所に訴えの提起があったものとみな
される(22条)。
★ 同一の地方裁判所で訴訟が行われ(改めて地方裁判所に訴えを提起する必要はな
  い。)、労働審判で使った証拠は、そのまま裁判に引き継がれる。

■ 労働審判によらない労働審判事件の終了
労働審判委員会は、事案の性質に照らし、労働審判手続を行うことが紛争の迅速かつ適
正な解決のために適当でないと認めるときは、労働審判事件を終了させることができ
る。この場合には、当該労働審判手続の申立てがあった時に、当該労働審判事件が係属
していた地方裁判所に訴えの提起があったものとみなされる(24条)。

■ 事件の記録の閲覧等
当事者および利害関係を疎明した第三者は、裁判所書記官に対し、労働審判事件の記録
の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は労働審判事件に関する事
項の証明書の交付を請求することができる。ただし、秘密保護のため、閲覧等が当事者
に限られる場合もある(26条)。

■ 訴訟手続の中止
労働審判手続の申立てがあった事件について訴訟が係属するときは、受訴裁判所は、労
働審判事件が終了するまで訴訟手続を中止することができる(27条)。

■ 非訟事件手続法および民事調停法の準用
労働審判事件に関しては、非訟事件手続法および民事調停法の規定が準用される(29
条)。また、労働審判手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定められる(30
条)。

■ 罰則
【1】不出頭に対する制裁
労働審判官の呼出しを受けた事件の関係人が正当な理由がなく出頭しないときは、5万
円以下の過料に処せられる(31条)。
【2】措置違反に対する制裁
当事者が正当な理由がなく民事調停法第12条の規定(調停前の措置)による措置に従わ
ないときは、10万円以下の過料に処せられる(32条)。
【3】評議の秘密を漏らす罪
労働審判員又は労働審判員であった者が、正当な理由がなく、評議の経過または労働審
判官もしくは労働審判員の意見もしくはその多少の数を漏らしたときは、30万円以下の
罰金に処せられる(33条)。
【4】人の秘密を漏らす罪
労働審判員または労働審判員であった者が、正当な理由がなく、その職務上取り扱った
ことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、1年以下の懲役又は50万円以下の罰
金に処せられる(34条)。


■■■ 労働審判
労働審判法は、条文の数もわずか34条ですから、全条文を通読することをお勧めします。
ただし、最高裁規則「労働審判規則」や「労働審判員規則」までは必要ありません(こ
れらは最高裁のホームページに掲載されています。)。

法令の検索は、総務省行政管理局が官報に基づき、データ整備している「法令データ提
供システム」が便利です。http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi からどう
ぞ。ただし、施行後直ちに掲載されず(毎月1回程度更新されているようです。)、そ
れまでの間は、未施行法令に掲載されていますので、ご注意下さい。

なお、労働審判法の詳細情報については、つぎの首相官邸のウェブサイトからどうぞ。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/hourei/roudousinpan_s.html


■■■ お願い  
継続して発刊するためには読者の皆様のご支援が何よりの活力になります。ご意見、ア
ドバイス、ご批判その他何でも結構です。内容、頻度、対象の追加や変更等について
も、どうぞ何なりと e-mail@ohta-shoshi.com までお寄せください。

質問は、このメールマガジンの趣旨の範囲内のものであれば、大歓迎です。ただし、多
少時間を要する場合があります。


■■■ 編集後記 
公益通報者保護法と同様に、今年4月1日から施行された労働審判法を取上げました。
法律上は、裁判所が「必要かつ相当」と認めるときには、行政書士代理人になること
ができますが、労働法の分野での知識や経験等が問われることになると思われるので、
実際にはかなり難しそうです。

しかしながら、行政書士は街の法律家として、事業主サイドからも、労働者サイドから
も、この労働審判法について質問を受ける機会がますます増えていくものと思われま
す。そのため、最低限の知識だけは身に付けておくべきではないかと思います。


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 マガジンタイトル:新・行政書士試験 一発合格!
 発行者:行政書士 太田誠   東京都行政書士会所属(府中支部)
 発行者Web:http://www.ohta-shoshi.com
 発行者メールアドレス:e-mail@ohta-shoshi.com
 発行協力「まぐまぐ」:http://www.mag2.com/
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