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【レジュメ編】 行政法(その9〔2〕)

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     ★★★ 新・行政書士試験 一発合格! Vol. ’06-29 ★★
           【レジュメ編】 行政法(その9〔2〕)

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■■■ 行政事件訴訟法 ■■■
■■■ 取消訴訟(その2)
■■■ 消費者契約法の一部改正
■■■ 行政書士試験委員の選任
■■■ 平成18年度行政書士試験の実施
■■■ お願い
■■■ 編集後記

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

■■■ 行政事件訴訟法 ■■■
■■■ 取消訴訟(その2)
■ 取消しの理由の制限
第十条 取消訴訟においては、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消
しを求めることができない。
2 処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴え
とを提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理
由として取消しを求めることができない。

(1)自己の法律上の利益に関係のない違法
・取消訴訟において主張できる違法理由は、自己の権利利益にかかわる違法に限られ、
 自己の法律上の利益に関係のない違法(客観違法)を取消理由とすることができな
 い。
→ 自己の法律上の利益に関係のない違法を理由とする場合には、請求は却下される。

●● 最高裁判例「新潟-小松-ソウル間の定期航空運送事業免許処分取消(新潟空港
   事件)」(民集第43巻2号56頁)
【理由】
上告人の右違法事由の主張がいずれも自己の法律上の利益に関係のない違法をいうもの
であることは明らかである。そうすると、本件請求は、上告人が本件各免許の取消しを
訴求する原告適格を有するとしても、行政事件訴訟法一〇条一項によりその主張自体失
当として棄却を免れないことになる。

(2)原処分主義
・ある処分を不服として審査請求をしたところ棄却裁決が出された場合に、これを不服
 とする者が取消訴訟を提起するにあたって、もとの処分(原処分)の取消を求めるの
 か、棄却裁決の取消を求めるのかに関し、前者によるべきとする規定。
→ 「棄却」なので、却下裁決は含まれない。
・双方の取消訴訟が提起できる場合に、裁決の取消訴訟を提起した場合、違法理由とし
 て主張することができるのは、裁決手続きに瑕疵があるなど裁決固有の瑕疵に限ら
 れ、原処分の違法性については主張することができない(原処分主義)。
・個別の法律により、裁決の取消訴訟のみ提起することができる場合には、適用されな
 い(裁決主義)。

●● 最高裁判例「懲戒処分取消」(民集第41巻3号309頁)
【理由】
懲戒処分につき人事院の修正裁決があつた場合に、それにより懲戒権者の行つた懲戒
分(以下「原処分」という。)が一体として取り消されて消滅し、人事院において新た
な内容の懲戒処分をしたものと解するのは相当でなく、修正裁決は、原処分を行つた懲
戒権者の懲戒権の発動に関する意思決定を承認し、これに基づく原処分の存在を前提と
したうえで、原処分の法律効果の内容を一定の限度のものに変更する効果を生ぜしめる
にすぎないものであり、これにより、原処分は、当初から修正裁決による修正どおりの
法律効果を伴う懲戒処分として存在していたものとみなされることになるものと解すべ
きである。

■ 被告適格等
第十一条 処分又は裁決をした行政庁(処分又は裁決があつた後に当該行政庁の権限が
他の行政庁に承継されたときは、当該他の行政庁。以下同じ。)が国又は公共団体に所
属する場合には、取消訴訟は、次の各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号
に定める者を被告として提起しなければならない。
一 処分の取消しの訴え 当該処分をした行政庁の所属する国又は公共団体
二 裁決の取消しの訴え 当該裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体
2 処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属しない場合には、取消訴訟は、
当該行政庁を被告として提起しなければならない。
3 前二項の規定により被告とすべき国若しくは公共団体又は行政庁がない場合には、
取消訴訟は、当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体を被告として提起
しなければならない。
4 第一項又は前項の規定により国又は公共団体を被告として取消訴訟を提起する場合
には、訴状には、民事訴訟の例により記載すべき事項のほか、次の各号に掲げる訴えの
区分に応じてそれぞれ当該各号に定める行政庁を記載するものとする。
一 処分の取消しの訴え 当該処分をした行政庁
二 裁決の取消しの訴え 当該処分をした行政庁
5 第一項又は第三項の規定により国又は公共団体を被告として取消訴訟が提起された
場合には、被告は、遅滞なく、裁判所に対し、前項各号に掲げる訴えの区分に応じてそ
れぞれ当該各号に定める行政庁を明らかにしなければならない。
6 処分又は裁決をした行政庁は、当該処分又は裁決に係る第一項の規定による国又は
公共団体を被告とする訴訟について、裁判上の一切の行為をする権限を有する。

(1)原則
・取消訴訟において、原則として被告は「国又は公共団体」(行政主体主義)。
→ 被告が基本的に国ないし公共団体に一元化されたことで、原告にとっては、被告を
  特定するための負担や被告を誤った場合のリスクが飛躍的に軽減されることになっ
  た(平成16年改正前は、行政庁が被告であった。)。
・ 訴状においては、行政庁を特定して記載することが必要とされる(11条4項)
 が、便宜的に要求されるにとどまる。
・この条文は、他の抗告訴訟(38条1項)、客観訴訟としての民衆訴訟、機関訴訟に
 も準用される。

(2)例外
(ア)個別法で被告が行政庁となっている場合:例 特許法179条
(イ)法人が行政庁となる場合(2項)
・例:都道府県知事が行政書士または行政書士法人に対して行う懲戒(14条、14条の
 2)
(ウ)被告とすべき行政庁等がない場合(3項)

(3)記載(4項)
・原告が記載しなければならないのは、「当該処分をした行政庁」または「当該裁決を
 した行政庁」である。
→ 「当該処分をする権限を有する行政庁」「当該裁決をする権限を有する行政庁」で
  はない。

(4)国と行政庁の関係
・行政庁は訴訟の当事者ではないが、所掌事務について実定法上定められた任務を遂行
 する責任を負うとともに、取消判決の拘束力など判決の影響を直接受ける立場にある
 (33条1項・2項)。
→ 行政庁自身にも裁判上の行為を行う権限を与えてその活動を許すことが、訴訟手続
  の円滑な進行を図り、迅速かつ充実した審理を実現することになる。
→ 6項の訴訟追行権を与えた。

■ 管轄
第十二条 取消訴訟は、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所又は処分若しくは
裁決をした行政庁の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。
2 土地の収用、鉱業権の設定その他不動産又は特定の場所に係る処分又は裁決につい
ての取消訴訟は、その不動産又は場所の所在地の裁判所にも、提起することができる。
3 取消訴訟は、当該処分又は裁決に関し事案の処理に当たつた下級行政機関の所在地
の裁判所にも、提起することができる。
4 国又は独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独
立行政法人若しくは別表に掲げる法人を被告とする取消訴訟は、原告の普通裁判籍の所
在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所(次項において「特定管轄裁
判所」という。)にも、提起することができる。
5 前項の規定により特定管轄裁判所に同項の取消訴訟が提起された場合であつて、他
の裁判所に事実上及び法律上同一の原因に基づいてされた処分又は裁決に係る抗告訴
が係属している場合においては、当該特定管轄裁判所は、当事者の住所又は所在地、尋
問を受けるべき証人の住所、争点又は証拠の共通性その他の事情を考慮して、相当と認
めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部について、当該他の裁判所
又は第一項から第三項までに定める裁判所に移送することができる。

(1)原則的管轄裁判所
・原則的管轄裁判所は、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所又は処分・裁決を
 した行政庁の所在地を管轄する裁判所
・被告が国の場合、国の普通裁判籍は「訴訟について国を代表する官庁の所在地」であ
 り(民事訴訟法4条6項)、これは法務省であることから(国の利害に関係のある訴
 訟についての法務大臣の権限等に関する法律1条)、東京地方裁判所となる。

(2)附加的特別管轄
・土地の収用、鉱業権の設定その他不動産又は特定の場所に係る処分又は裁決について
 の取消訴訟は、その不動産又は場所の所在地の裁判所(2項)、処分又は裁決に関し
 事案の処理に当たった下級行政機関の所在地の裁判所にも提起することができる(3
 項)。

●● 最高裁判例「移送申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件」
   (民集55巻1号149頁)
【要旨】
行政事件訴訟法12条3項にいう「事案の処理に当たつた下級行政機関」とは,当該処
分又は裁決に関し事案の処理そのものに実質的に関与した下級行政機関をいう。

(3)特定管轄裁判所(4項・5項)
・1項から3項によってもなお原告にとって身近な場所で裁判を起こすことが困難であ
 る場合がありうることに配慮し、他方、行政事件の扱いには専門的見地を要すること
 も多く、担当する裁判所をある程度集中させることが合理的であることから、高裁所
 在地の地方裁判所に管轄権を認めることとされた。
・特定管轄裁判所を認めると、当事者が複数の場合は原告ごとに異なる裁判所に訴訟提
 起される可能性があるが、他の裁判所に事実上および法律上同一の原因に基づいてさ
 れた処分又は裁決に係る抗告訴訟が係属している場合においては、訴訟の全部又は一
 部を移送することができる。

■ 関連請求に係る訴訟の移送
第十三条 取消訴訟と次の各号の一に該当する請求(以下「関連請求」という。)に係
る訴訟とが各別の裁判所に係属する場合において、相当と認めるときは、関連請求に係
る訴訟の係属する裁判所は、申立てにより又は職権で、その訴訟を取消訴訟の係属する
裁判所に移送することができる。ただし、取消訴訟又は関連請求に係る訴訟の係属する
裁判所が高等裁判所であるときは、この限りでない。
一 当該処分又は裁決に関連する原状回復又は損害賠償の請求
二 当該処分とともに一個の手続を構成する他の処分の取消しの請求
三 当該処分に係る裁決の取消しの請求
四 当該裁決に係る処分の取消しの請求
五 当該処分又は裁決の取消しを求める他の請求
六 その他当該処分又は裁決の取消しの請求と関連する請求

(1)関連請求
・関連性を有する事件は、争点、証拠が共通するのでなるべく一つの裁判所においてま
 とめて審理するのが合理的であり、訴訟経済に資する。
→ 移送(13条)、請求の併合(16条、18条、19条)、共同訴訟(17条)に
  ついて定めている。

(2)関連請求の移送
・移送の方向が、取消訴訟の係属する裁判所に関連請求に係る訴訟を移送することは認
 められているが、その逆は認められていない。
・12条5項:抗告訴訟の管轄裁判所の拡大に伴い、特定管轄裁判所から他の裁判所に
 訴訟を移送する場合についての規定
→ 関連請求に当たらない場合でも移送が認められる場合がある。

■ 出訴期間
第十四条 取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したと
きは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
2 取消訴訟は、処分又は裁決の日から一年を経過したときは、提起することができな
い。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
3 処分又は裁決につき審査請求をすることができる場合又は行政庁が誤つて審査請求
をすることができる旨を教示した場合において、審査請求があつたときは、処分又は裁
決に係る取消訴訟は、その審査請求をした者については、前二項の規定にかかわらず、
これに対する裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したとき又は当該裁決の日
から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるとき
は、この限りでない。

(1)知った日、正当な理由、1年の期間制限(1項:主観的出訴期間・2項:客観的
   出訴期間)
・知った日:処分があったことを現実に知った日のこと。関連書類が住所地に送達され
 るなど、社会通念上処分があったことを知り得べき状態に置かれたときは、知ったも
 のと推定される。
・従前は「不変期間」とされていた(平成16年改正で変更)。「正当な理由」があると
 きには、出訴期間経過後であっても、訴訟を提起することができる。

●● 最高裁判例「農業用宅地買収計画並に裁決取消請求」(民集第6巻10号103
   8頁)
【要旨】
自作農創設特別措置法第四七条の二にいう「当事者がその処分のあつたことを知つた
日」とは、当事者が書類の交付、口頭の告知その他の方法により処分を現実に知つた日
を指すのであつて、抽象的な知り得べかりし日を意味するものではない。
【理由】
尤も処分を記載した書類が当事者の住所に送達される等のことがあつて、社会通念上処
分のあつたことを当事者の知り得べき状態に置かれたときは、反証のない限り、その処
分のあつたことを知つたものと推定することはできる。

(2)審査請求した場合の出訴期間(3項)
・「これに対する裁決」:不適法な審査請求に対する却下裁決を含まない。
・裁決があつたことを知つた日から6ヵ月(主観的出訴期間)を経過したとき又は当該
 裁決の日から1年(客観的出訴期間)

●● 最高裁判例「課税処分取消請求」(民集30巻4号541頁)
【要旨】
課税処分に対する異議申立につき税務署長がした決定の取消を求める訴の出訴期間は、
右課税処分に対する審査請求につき裁決があつた場合においても、異議申立についての
決定があつたことを知つた日又は決定の日から起算すべきである。

●● 最高裁判例「転任処分取消」(民集第35巻1号98頁)
【要旨】
不利益処分についての不服申立てに関する規則(昭和二六年名古屋市人事委員会規則第
七号)一五条の定める再審の請求は、行政事件訴訟法一四条四項にいう審査請求にあた
る。

■ 被告を誤った訴えの救済
第十五条 取消訴訟において、原告が故意又は重大な過失によらないで被告とすべき者
を誤つたときは、裁判所は、原告の申立てにより、決定をもつて、被告を変更すること
を許すことができる。
2 前項の決定は、書面でするものとし、その正本を新たな被告に送達しなければなら
ない。
3 第一項の決定があつたときは、出訴期間の遵守については、新たな被告に対する訴
えは、最初に訴えを提起した時に提起されたものとみなす。
4 第一項の決定があつたときは、従前の被告に対しては、訴えの取下げがあつたもの
とみなす。
5 第一項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
6 第一項の申立てを却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
7 上訴審において第一項の決定をしたときは、裁判所は、その訴訟を管轄裁判所に移
送しなければならない。

・被告の変更は、職権ではできない。原告の申立てが必要。また、この変更は、上訴審
 で行うこともできる。
→ 再度被告の変更を申立てることもできる。
→ 被告の変更許可が決定されると、従前の被告に対しては、訴えの取下げがあつたこ
  とになる(4項)。この場合、相手方の同意は不要(民事訴訟では必要)、
→ 一方、新たな被告に対して改めて訴訟が提起されたことになる(3項)。
・変更前の被告も、変更後の被告も、ともに不服申立てはできない(5項)。

■ 請求の客観的併合
第十六条 取消訴訟には、関連請求に係る訴えを併合することができる。
2 前項の規定により訴えを併合する場合において、取消訴訟の第一審裁判所が高等裁
判所であるときは、関連請求に係る訴えの被告の同意を得なければならない。被告が異
議を述べないで、本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたとき
は、同意したものとみなす。

(1)客観的併合:1人の原告が1人の被告に対して数個の請求をする場合
(2)16条は、訴えの提起をした当初からの併合(原始的併合)について定めてい
   る。
(3)平成16年改正により、取消訴訟の被告が国又は公共団体とされたため、新設さ
   れた義務付け訴訟や差止訴訟との併合、当事者訴訟、原状回復、損害賠償請求に
   ついても客観的併合が可能となった。

■ 共同訴訟
第十七条 数人は、その数人の請求又はその数人に対する請求が処分又は裁決の取消し
の請求と関連請求とである場合に限り、共同訴訟人として訴え、又は訴えられることが
できる。
2 前項の場合には、前条第二項の規定を準用する。

(1)複数の原告が請求をする場合または複数の被告に対して請求をする場合であって
   も、それが取消訴訟の関連請求であるときは、請求を併合して訴えを提起した
   り、提起されたりすることができ(原始的主観的併合)、複数の原告又は被告を
   「共同訴訟人」という。
(2) 16条2項の準用がある。

■ 第三者による請求の追加的併合
第十八条 第三者は、取消訴訟の口頭弁論の終結に至るまで、その訴訟の当事者の一方
を被告として、関連請求に係る訴えをこれに併合して提起することができる。この場合
において、当該取消訴訟が高等裁判所に係属しているときは、第十六条第二項の規定を
準用する。

(1)関連請求について第三者による「追加的主観的併合」を認めるものであり、第三
   者の訴訟参加の一態様である。

■ 原告による請求の追加的併合
第十九条 原告は、取消訴訟の口頭弁論の終結に至るまで、関連請求に係る訴えをこれ
に併合して提起することができる。この場合において、当該取消訴訟が高等裁判所に係
属しているときは、第十六条第二項の規定を準用する。
2 前項の規定は、取消訴訟について民事訴訟法 (平成八年法律第百九号)第百四十
三条 の規定の例によることを妨げない。

第二十条 前条第一項前段の規定により、処分の取消しの訴えをその処分についての審
査請求を棄却した裁決の取消しの訴えに併合して提起する場合には、同項後段において
準用する第十六条第二項の規定にかかわらず、処分の取消しの訴えの被告の同意を得る
ことを要せず、また、その提起があつたときは、出訴期間の遵守については、処分の取
消しの訴えは、裁決の取消しの訴えを提起した時に提起されたものとみなす。

(1)関連請求である限り、取消訴訟の被告に対するものを併合してもよいし(追加的
   客観的併合)、被告を異にする訴えを併合することもあり得る(追加的主観的併
   合)。
(2)訴えの変更は妨げられない。
(3)処分の取消の訴えを、その処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴
   えに併合して提起する場合には、特に要件が緩和されている(20条)。

■ 国又は公共団体に対する請求への訴えの変更
第二十一条 裁判所は、取消訴訟の目的たる請求を当該処分又は裁決に係る事務の帰属
する国又は公共団体に対する損害賠償その他の請求に変更することが相当であると認め
るときは、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、原告の申立てに
より、決定をもつて、訴えの変更を許すことができる。
2 前項の決定には、第十五条第二項の規定を準用する。
3 裁判所は、第一項の規定により訴えの変更を許す決定をするには、あらかじめ、当
事者及び損害賠償その他の請求に係る訴えの被告の意見をきかなければならない。
4 訴えの変更を許す決定に対しては、即時抗告をすることができる。
5 訴えの変更を許さない決定に対しては、不服を申し立てることができない。

(1)訴えの変更に係る民事訴訟法143条の要件を緩和した上で、訴訟手続が行政事
   件訴訟から民事訴訟に変更され、被告が変更される場合であっても訴えの変更を
   認めた。
→ 訴えの変更は、同種の訴訟手続間でのみ認められるのが、民事訴訟の原則であり、
  一定の要件の下に、その例外を定めた。

(2)追加的併合との差異
・旧請求である取消訴訟が適法であることは要件ではない。
・「関連請求」(19条1項)でなくとも、「請求の基礎」(1項)が同じであればよい。
・旧請求の被告の同意は不要である(追加的併合の場合には7条による民事訴訟法261
 条2項により、同意が必要)。

■ 第三者の訴訟参加
第二十二条 裁判所は、訴訟の結果により権利を害される第三者があるときは、当事者
若しくはその第三者の申立てにより又は職権で、決定をもつて、その第三者を訴訟に参
加させることができる。
2 裁判所は、前項の決定をするには、あらかじめ、当事者及び第三者の意見をきかな
ければならない。
3 第一項の申立てをした第三者は、その申立てを却下する決定に対して即時抗告をす
ることができる。
4 第一項の規定により訴訟に参加した第三者については、民事訴訟法第四十条第一項
から第三項までの規定を準用する。
5 第一項の規定により第三者が参加の申立てをした場合には、民事訴訟法第四十五条
第三項及び第四項の規定を準用する。

(1) 二重効果的行政処分
・取消訴訟が第三者に対して効果をもちうることにも配慮して(32条1項)、「訴訟
 の結果により権利を害される第三者」について訴訟参加を認めている。
・関係者が訴訟に参加することは公益に資する側面があることから、訴訟参加は申立に
 よるだけではなく、職権によっても認められる。
→ ただし、裁判所は、訴訟により自己の権利利益を害されるものを職権で訴訟に参加
  させるべき義務はない。

(2)意見をきく相手方
・当事者の一方から申立て:他方の当事者
・第三者から申立て:双方の当事者
・職権による場合:双方の当事者と第三者

(3) 訴訟の結果により権利を害される第三者
・処分の取消判決が出された場合に生ずる第三者効(32条1項)が及ぶ第三者を含む
 ことはもとより、取消判決の拘束力によって行政庁が判決の趣旨に従った措置をとる
 結果として何らかの権利利益が侵害される第三者を含む。
→ 「訴訟の結果について利害関係を有する第三者」よりも狭い。

(4) 訴訟参加人の地位
・共同訴訟的補助参加:民事訴訟の必要的共同訴訟人に関する規定を準用し(4項)、
 当事者と訴訟参加人の関係については、そのいずれかの訴訟行為は全員の利益におい
 てのみ効力を生ずる一方、相手方当事者の訴訟行為が当事者・訴訟参加人双方に効力
 を生じる。

(5)本条は、抗告訴訟、処分・裁決の取消または無効確認を求める民衆訴訟・機関訴
   訟に準用されている(38条1項、43条1項・2項)。

■ 行政庁の訴訟参加
第二十三条 裁判所は、処分又は裁決をした行政庁以外の行政庁を訴訟に参加させるこ
とが必要であると認めるときは、当事者若しくはその行政庁の申立てにより又は職権
で、決定をもつて、その行政庁を訴訟に参加させることができる。
2 裁判所は、前項の決定をするには、あらかじめ、当事者及び当該行政庁の意見をき
かなければならない。
3 第一項の規定により訴訟に参加した行政庁については、民事訴訟法第四十五条第一
項 及び第二項の規定を準用する。

(1)関係する行政庁に対しても訴訟参加を認め、審理を充実させる趣旨。
→ 原処分主義を採っているので、原処分を行った処分庁(処分又は裁決をした行政
  庁)は参加させる必要はない。
(2)原告には、行政庁の参加を拒否する権利はない。
→ 原告が反対しても、裁判所が参加を必要であると認めれば、参加を許可できる。
(3)訴訟参加が認められた行政庁は、基本的には、訴訟についての一切の訴訟行為
   をすることができる(3項)。

■ 釈明処分の特則
第二十三条の二 裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、必要があると認めるときは、
次に掲げる処分をすることができる。
一 被告である国若しくは公共団体に所属する行政庁又は被告である行政庁に対し、処
分又は裁決の内容、処分又は裁決の根拠となる法令の条項、処分又は裁決の原因となる
事実その他処分又は裁決の理由を明らかにする資料(次項に規定する審査請求に係る事
件の記録を除く。)であつて当該行政庁が保有するものの全部又は一部の提出を求める
こと。
二 前号に規定する行政庁以外の行政庁に対し、同号に規定する資料であつて当該行政
庁が保有するものの全部又は一部の送付を嘱託すること。
2 裁判所は、処分についての審査請求に対する裁決を経た後に取消訴訟の提起があつ
たときは、次に掲げる処分をすることができる。
一 被告である国若しくは公共団体に所属する行政庁又は被告である行政庁に対し、当
審査請求に係る事件の記録であつて当該行政庁が保有するものの全部又は一部の提出
を求めること。
二 前号に規定する行政庁以外の行政庁に対し、同号に規定する事件の記録であつて当
該行政庁が保有するものの全部又は一部の送付を嘱託すること。

(1) 釈明処分:訴訟関係を明瞭にするために裁判所が行う処分
・民事訴訟法151条
裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、次に掲げる処分をすることができる。
一 当事者本人又はその法定代理人に対し、口頭弁論の期日に出頭することを命ずるこ
と。
二 口頭弁論の期日において、当事者のため事務を処理し、又は補助する者で裁判所が
相当と認めるものに陳述をさせること。
三 訴訟書類又は訴訟において引用した文書その他の物件で当事者の所持するものを提
出させること。
四 当事者又は第三者の提出した文書その他の物件を裁判所に留め置くこと。
五 検証をし、又は鑑定を命ずること。
六 調査を嘱託すること。
2 前項に規定する検証、鑑定及び調査の嘱託については、証拠調べに関する規定を準
用する。
・行政事件訴訟法7条により、取消訴訟に準用される。

(2)特則の内容
(ア)処分・裁決に関連する資料の提出を求めること
(イ)資料の送付の嘱託:被告以外の行政庁に対する嘱託

(2) 資料の提出を拒むことができる場合
・ 一般的には行政庁には、釈明処分に対する協力義務がある。
・個々の資料の提出に際する判断の基準としては、訴訟が証拠調べ段階になると認めら
 れる文書提出命令制度における文書提出義務の例外に関する規定(民事訴訟法220
 条4号イ~ホ)、情報公開制度における不開示情報(情報公開法5条、独立行政法人
 情報公開法5条)、聴聞手続における文書等閲覧拒否に関する行政手続法18条1
 項、審査請求手続における書類閲覧の拒否について定める行政不服審査法33条2項
 等がある。

(3) 準用
・無効確認訴訟(38条3項)、当事者訴訟(41条1項)、民衆訴訟・機関訴訟(4
 3条1項・43条2項による38条3項の準用・43条3項)、争点訴訟(45条4
 項)に準用される。
・不作為の違法確認訴訟、義務付け訴訟、差止訴訟は、その性質上準用はない(38条
 1項、4項)。

■ 職権証拠調べ
第二十四条 裁判所は、必要があると認めるときは、職権で、証拠調べをすることがで
きる。ただし、その証拠調べの結果について、当事者の意見をきかなければならない。

(1)この条文は全ての行政事件訴訟に準用されている(38条1項・41条1項・4
3条)が、現状ではほとんど活用されていない。


■■■ 消費者契約法の一部改正
この6月7日に、消費者契約法の一部改正法が公布されました。施行は、公布の日から
起算して一年を経過した日である平成19年6月7日です(一部改正法附則第1項)。

この改正のポイントは、「適格消費者団体」は、事業者等が不特定かつ多数の消費者に
対して、消費者契約法に規定する不適切な勧誘行為(4条)又は消費者契約の条項を無
効にする行為(8条~10 条)を現に行い又は行うおそれがあるときは、当該行為の差
止請求をすることができることになって点にあります(12条)。これを「消費者団体訴
訟」といいます。

これまで、個々の被害を受けた消費者は事後的措置(契約取消し等)で救済されても、そ
の以外のまだ被害を被っていない消費者は、同様の被害を受ける可能性がありました。
そこで、被害が広がる前に、事業者による不当な勧誘行為・契約条項の使用を差し止め
る必要があったものの、直接被害を受けていない消費者には差止請求権は認められない
という問題がありました。

そこで、不特定多数の消費者の利益を擁護するために、内閣総理大臣が認定した「適格
消費者団体」に差止請求権が認められ、消費者契約法に違反する事業者の不当な行為に
対して行使することができるようになります。

むろん、今年(および、おそらく来年の)の行政書士試験の対象に含まれることはない
と思われますが、こうした新しい法律や改正法および法的概念の登場は、街の法律家で
ある行政書士として、当然に知っておくべきことです。

詳しくは、内閣府のつぎのURLをご覧ください。
 http://www.consumer.go.jp/seisaku/cao/soken/index.html


■■■ 行政書士試験委員の選任
財団法人行政書士試験研究センターから、平成18年度行政書士試験委員名簿のとおり選
任した旨の発表がありました。 http://gyosei-shiken.or.jp/18year/18meibo.html

私の経験からは、あまり試験委員対策については煩わされる必要はなく、したがって、
試験委員の著作をわざわざ買って、特別な対策を講じる必要はないと思います。たと
え、行政書士試験で1問か2問、そうした書作からの出題があったにせよ、基本に忠実
に取組んでいる限り、容易に解けるはずです。また、そのために費やす時間は膨大なも
のになる筈であり、決して効率的な受験対策にはならないと考えられます。また、私の
場合には、特に何もしませんでした。

どうしても気になる場合には、答練や公開模試を通じて、試験委員の関心分野を中心
に、それまで使ってきた参考書等により(多少)集中してやれば、それで十分だと思い
ます。あくまでも基本に忠実に勉強することが、何よりの受験対策であり、かつ、行政
書士の開業を見据えたものになります。


■■■ 平成18年度行政書士試験の実施
同様に、財団法人行政書士試験研究センターから、「行政書士試験の施行に関する定め
(平成11年12月16日自治省告示第250号)」の平成17年9月30日の改正を踏
まえて、平成18年度行政書士試験の実施については7月第2週に公示する旨が発表され
ました。
 http://gyosei-shiken.or.jp/

ただ、大変残念なことに、平成18年度行政書士試験の「商法」の出題に係る法令につい
ては、「行政書士試験の施行に関する定め」に基づき、平成18年4月1日現在施行され
ている法令に関して出題するものとされました。

しかしながら、この告示を杓子定規に適用して、既に効力のない法律を行政書士試験の
対象にすることは、大変に残念なことです。世間一般の方々は、行政書士試験をどのよ
うに感じるでしょうか。司法試験では会社法が対象になっており、こうした時代がかっ
行政書士試験を実施することで、行政書士の価値が下がらないことを祈るのみです。

受験生の皆さんは大変だと思いますが、商法を全面的に捨てることはできませんので、
頑張って頂くしかないようです。ただ、合格すれば、既に効力を失った法律を対象科目
とした世にも珍しい試験に合格したと誇れることだけは間違いありません。


■■■ お願い  
継続して発刊するためには読者の皆様のご支援が何よりの活力になります。ご意見、ア
ドバイス、ご批判その他何でも結構です。内容、頻度、対象の追加や変更等について
も、どうぞ何なりと e-mail@ohta-shoshi.com までお寄せください。

質問は、このメールマガジンの趣旨の範囲内のものであれば、大歓迎です。ただし、多
少時間を要する場合があります。


■■■ 編集後記 
今回から行政事件訴訟法です。内容は訴訟手続法なので、これまでの行政法とはやや異
なったものですが、行政手続法行政不服審査法と同様に、しっかりと得点すべき科目
です。

以下、国家賠償法、損失補償法、情報公開法と続く予定です。これで行政法は終わりま
す。そして、残る大きな科目は、(旧)商法と地方自治法になります。

なお、行政法では、行政手続法行政不服審査法と行政事件訴訟法の「横」比較をしっ
かり行っておくことが重要です。こうした基礎力の養成を経ないまま、(答練や公開模
試等も含めて)行政書士試験を受験することは、時間の無駄であり、大変に危険です。

かなりのところまで受験勉強は進んできています。先ずは、大きく、かつ、基本を押さ
えることが先決です。そのうえで、具体的な受験対策等を、答練や公開模試を通じて、
講じていくことなります。ただし、これらは9月以降で、十分に間に合います。今の段
階で、無理してまで答練や公開模試に挑戦することは、時間の無駄に終わる可能性が高
いと思われます。


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 マガジンタイトル:新・行政書士試験 一発合格!
 発行者:行政書士 太田誠   東京都行政書士会所属(府中支部)
 発行者Web:http://www.ohta-shoshi.com
 発行者メールアドレス:e-mail@ohta-shoshi.com
 発行協力「まぐまぐ」:http://www.mag2.com/
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