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「内定」「内内定」の法的位置づけ

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平成18年6月15日 第32号
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人事のブレーン社会保険労務士レポート
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目次

1.「内定」「内内定」の法的位置づけ

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1.「内定」「内内定」の法的位置づけ

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<1> はじめに

 新規学卒者の募集活動も本格的に始まり内定に関するご相談を良く受ける。
内内定であるから、取り消しは出来るのかという問題から始まり、内定とはそ
もそもどの様なものであるのかを明らかにしたい。

<2>内定とは

(1)内定

内定とは、「採用日より労働の権利及び義務が発生する」という事前の合意で
ある。
合意がなされた時点から採用日までを内定期間として考える。

(2)内定の法的位置づけ

内定取り消しについての相談が多いが、それにはまず内定の法的位置づけを明
らかにしなければならない。

内定については、森尾電機事件(東京高判昭47.3.31労民21巻6号1
550頁)二審の判決以来、学説が確立され、その後大日本印刷事件(最二小
判 昭54.7.20 労民33巻5号582頁)「内定通知が会社への労働
契約申し込みに対する承諾であり、誓約書の提出と相まって大学卒業直後を労
契約の始期とする誓約書記載の内定取り消し事由に基づく解約権を留保した
労働契約が成立したとされた事例」、電電公社近畿電報局事件(最二小判 昭
55.5.30判時968号114頁)「採用通知は、労働契約申し込みに対
する承諾であり、内定者と会社との間には、採用内定の一様態として、労働契
約の成立を採用通知に明示された期日とする労働契約が成立したと解するのが
相当であるとされた事例」の最高裁判例により確立された。

その学説とは以下の通りである。(労働法第七版補正版 菅野和夫 弘文社 
124頁)

企業による募集は労働契約の申し込みの誘引であり、これに応募(受験申込書
・必要書類の提出)または採用試験の受験は労働者による契約の申し込みであ
る。そして、採用内定(決定)通知の発信が、使用者による契約の承諾であり、
これによって試用労働契約あるいは見習社員契約が成立する。ただしこの契約
は、始期付きであり、かつ解約権留保付きである。すなはち、採用内定通知
または誓約書に記載されている採用内定取り消し事由が生じた場合は解約でき
る旨の合意が含まれており、また卒業できなかった場合も当然に解約できるも
のでる。

企業の募集に対して、労働者が応募したことが労働契約の申し込みであり、こ
れに対する企業からの採用内定通知は、労働契約申し込みの承諾であり、これ
により両者間に労働契約が成立するということである。

<3>採用内定取り消し

(1)内定取り消しの法的考察

前述の学説及び最高裁判例により、内定通知により解約権留保付き労働契約
成立しているとの立場から、内定の取り消しということは解雇ということであ
り、解雇権濫用法理に準じた取り扱い、すなはち「使用者の解雇権の行使も、
それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することが出来
ない場合には、権利の濫用として無効になる(日本食塩事件 最二小昭50.
4.25民集29巻4号456頁)」に沿って考えていかなければならない。

内定の取り消しについては、内定後に判明した事情、留年落第、健康、提出書
類の虚偽記載、思想・信条・労働組合活動、非違行為、内定者の見込み違いに
よる定員超過、経営状況の悪化に分けて検討していきたい。

(2) 内定後に判明した事情、非違行為

内定後に判明した事情について、仮に当該事情に採用内定取り消しについて客
観的、合理的事情が存在したとしても、内定時に既に明かであり、使用者がこ
れを知っていた若しくは知りうる立場にあった場合には、これをもって採用
定を取り消すことは出来ないとされている。

非違行為についても、内定時に知っていたかどうかである。
内定通知を発した前の非違行為であっても、当時知らなかったことであれば、
内定取り消し事由になるとされている。

(3)留年・落第、健康

当然留年、落第であれば内定取り消し事由になる。
また、健康を害した場合にも、期日に労務の提供が出来ないという点で内定取
り消し事由になると考えられるが、内定通知書の内定取り消し事由に当該理由
を記載しておくことにこしたことはない。

(4)提出書類の虚偽記載、思想・信条・労働組合

提出書類の虚偽記載については、虚偽が労務の提供に支障を及ぼすものかどう
かの検討を要する。
思想・信条・労働組合については、内定通知を発した後は解雇とみなされるの
で、これを理由に内定の取り消しは出来ない。

(5)経営状態の悪化

経営状態の悪化については、整理解雇の要素(要件)と照らし合わせて考えて
いく必要があるが、この場合にも整理解雇の4要素を要件と見るか、要素と見
るかで違ってくるわけであり、近年の傾向から判断すると、4要素とみて良い
と考えるが、現に採用されている常勤社員や短時間社員等々の人員削減状態を
勘案して進めていくべきであろう。

正社員としての内定者と、期間の定めのある臨時社員とでは、臨時社員の方を
先に整理解雇すべきであるとの考えもあり、個別に検討が必要であろう。

<4> 内内定

内内定とは、「内定するよという約束、予約」と考えられている。
しかし、実務上内内定を考えると、就職協定や当該協定廃止後の倫理憲章によ
採用内定が10月1日とされている関係で生じている問題であり、内内定取
り消しの実務については、このような我が国の採用慣行を考えると内定取り消
しと同様に考えるべきである。

では、本質的意味である内内定とはどの様なものか検討したい。

面接時に採用があたかも決定したような雰囲気を伝えたりした場合がこの内内
定にあたると考えられる。

この場合、内内定の取り消しには「契約締結城の過失」という考え方が用いら
れ、形式上まだ契約は成立していないが、契約締結過程上で一方の当事者に信
義則に反するような行為があり、相手方が損害を被った場合、契約が締結され
ていなくても、一種の契約責任を認める理論である。

この場合、内内定の通知をしたことにより、他社への就業の機会が奪われた等
の機会損失に対しての賠償責任が生じ、内定取り消しのように解雇という取り
扱いはなされない。

<5>解雇予告の適用

労働基準法第20条の解雇予告の問題はどの様に考えるべきか。
同法第21条第4号により試用期間のものは、14日以内の解雇では、解雇予
告が必要ないとされており、同条文との関係から内定取り消しについて解雇予
告は必要ないと考えられる。

<6>まとめ

今回は、内定についてお話ししたが、新規学卒者の内定取り消しでは、学生の
両親が会社に乗り込んでくるケースも少なくなく、内定取り消しについてはし
っかりとした対応が求められる。

中小・中堅企業の場合、学生が大手企業の滑り止めに内定通知を受けるケース
があり、どうしてもその会社に入りたい学生が選考に漏れるケースも考えられ
る。
また、人員計画の観点から滑る止めの学生に対していつまでも入社誓約書の提
出を待っていることは得策ではない。
内定通知を出す前に、最終的に就業の意思を確認し、その後通知を発しても遅
くはない。
雇用環境が良くなったとはいえ、個別労使紛争は増加の一途をたどっている。
本稿を参考に慎重な対応をされたい。

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発行者 山本経営労務事務所 (URL http://www.yamamoto-roumu.co.jp/
編集責任者 社会保険労務士 山本 法史
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