こんにちは。特定社会保険労務士の田中です。
就業規則の規定ひとつで、会社が損害を受けることもあります。
この「就業規則の勘所」では、良く見られる「就業規則の落とし穴」をご紹介します。
ぜひ、自社の就業規則をご確認ください。
【 トラブル発生! 】
食品卸業S社の事務部門は最近、職場規律が緩んでいる。
過度の私語、個人的な関心でのネット徘徊、携帯電話での私用メール、
遅刻しそうになった時タイムカードを同僚に打刻してもらう、
などの問題行動が続出している。
責任者のR課長が席にいる時は、多少はおさまるが、
R課長の指示に素直に従わない従業員もいる。そのため、R課長もやりにくい面が多く、
本来は部下に作成させる資料を自ら作成するなど、部門としての仕事も円滑に進んでいない。
また、複数の他部署から、事務部門の仕事姿勢への不満が出てきている。
R課長は総務部と相談して、事務部門の規律を締めるために、問題言動に対しては、
就業規則の「服務規律違反」を理由に注意する、それでも改まらない場合は、
譴責などの懲戒を行う、という方針を決めた。
しかし、就業規則は創業時に他社のものをコピーしたものであり、
服務規律はわずか5項目しかない簡素なものだった。
そのため、今まさしく問題となっている言動のほとんどは、
禁止事項として規定されておらず、R課長も総務も頭を抱えてしまった…
【 ポイント 】
事例のように、親会社や他社の就業規則や、インターネットで入手した規則例などを、
安易に自社の就業規則としている事が散見されます。
また、法改正などには対応していても、あまり見直しをしないのが、「服務規律」です。
数年に1度は、次の点に注意しながら服務規律を変更することをお奨めします。
①自社の実態に合った服務規律にする。
小売業なのに、製造業向けの文言が入っている。飲食店なのに、衛生関連の規定が少ない。などなど、自社の業態・規模・方針に沿った服務規律にしてください。
②かつて問題になったことを盛り込む。
社歴が長ければ長いほど、労使トラブルの発生件数も多くなります。
それぞれのトラブルから得た教訓や、従業員の問題言動、日常の労務管理などで
困ったことなど必要に応じて服務規律に反映させてください。
③時代に即した内容にする。
セクシャルハラスメント、携帯電話や「スマホ」などの情報機器の持ち込み、
ソーシャルメディアによる機密漏洩対策など、時代の変遷にともない、
新たな課題は常に発生しています。それらへの対応を記載してください。
また、自社を取り巻く業界環境、市場環境なども時の経過とともに変化します。
その結果、陳腐化したり、修正すべき就業規則の条文も出てきますので、
あわせて、見直しをしてください。
【 アクション 】
服務規律がしっかりと規定されていないと、いざという時に懲戒ができなくなります。
また、服務規律に基づいた注意・指導ができず、企業秩序が乱れかねません。
また、就業規則全般に言えますが、従業員への周知をしっかりと行うことが必要です。
就業規則を見直しても、従業員がその内容を知らなければ、意味をなしません。
管理職はもちろん、従業員へも就業規則の説明会を実施することをお奨めします。
その中で服務規律を説明する事は、改めて従業員に
「守るべき事、してはいけない事」を再認識してもらう良いきっかけになるでしょう。
☆☆☆☆☆ 『就業規則の勘所』 ☆☆☆☆☆
その1 『パートタイマーや契約社員用の就業規則も作りましょう』
http://www.soumunomori.com/column/article/atc-153786/
その2 『身元保証には期限が有ります。必要に応じて更新しましょう。』
http://www.soumunomori.com/column/article/atc-154137/
その3 『試用期間について、免除・短縮・延長の規定を検討しましょう。』
http://www.soumunomori.com/column/article/atc-154342/
その4 『柔軟な人員配置ができるように、配置転換を規定しましょう。』
http://www.soumunomori.com/column/article/atc-154622/
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☆☆ 仏つくって魂入れず ☆☆
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http://www.tanakajimusho.biz/pc/contents19.html
社会保険労務士 田中事務所 田中理文
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