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募集株式の有利発行と取締役の責任

■Vol.330(通算569)/2014-2-3号:毎週月曜日配信           
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■■■知って得する! 1分間で読める~税務・労務・法務の知恵袋
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■■■   【募集株式の有利発行と取締役の責任】
□□■                 週刊(毎週月曜日発行)
■■■                 http://www.c3-c.jp
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      募集株式の有利発行と取締役の責任
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取締役株主総会特別決議を経ないで、第三者に対して特に
有利な払込金額で募集株式の発行を行った場合、取締役はどの
ような責任を負うのでしょうか。


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● 募集株式発行の手続
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非公開会社においては、株主割当て以外の方法で募集株式の発
行を行う場合、株主総会特別決議によらなければなりません。
会社法199条2項・309条2項5号)公開会社において
は、株主割当て以外の方法による有利発行の場合を除き、取締
役会の決議でこれを行うことになる(会社法201条1項)の
で、株主割当て以外の方法による有利発行の場合には、株主
会の特別決議によらなければなりません。

つまり、株主割当て以外の方法で募集株式の発行を行う場合、
払込金額が株式を引き受ける者に特に有利な金額であれば、公
開会社であるか非公開会社であるかを問わず、株主総会の特別
決議によらなければならない(いわゆる有利発行)とされてい
ます。


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● 「特に有利な払込金額」の判断
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「特に有利な金額」との関係で公正な価額とは何かが問題と
なります。

市場価額がある場合には、会社の資金調達の必要性をみたす
という要請と既存株主の利益保護とを均衡させるという観点
より、一般的には「新株の発行により企画される資金調達の
目的が達せられる限度で旧株主にとり最も有利な価格」と
されますが、「公正発行価額は、発行価額決定前の当該会社
の株式価格、右株価の騰落習性、売買出来高の実績、会社の
資産状態、収益状態、配当状況、発行済株式数、新たに発行
される株式数、株式市況の動向、これらから予測される新株
の消化可能性等の諸事情を総合し、旧株主の利益と会社が有
利な資本調達を実現するという利益との調和の中に求められ
るべきものである」として、新株の消化可能性も考慮に入れ
られます。

市場価格のない株式の公正な価額は、類似業種比準価額方式
配当還元方式により判断されることが多いと思われます。


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● 違法な有利発行を行った場合の取締役の責任
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取締役株主総会特別決議を経ることなく、第三者に対して
特に有利な払込金額で募集株式の発行(すなわち、違法な有利
発行)を行った場合の取締役の責任については、以下のとおり、
株主代表訴訟によって取締役の会社に対する損害賠償責任を追
及するべきであるとする立場と、取締役株主に対して直接損
害を与えたことによる損害賠償責任を負うとして、株主は直接
損害の賠償責任を追及することができるとする立場と、取締役
がなすべきであった行為が何かによって直接損害の請求または
間接損害の請求のいずれかを選択することができるとする立場
とがあります。

裁判例は、結論的に、株主による代表訴訟と直接請求のいず
れの請求も、理論的にはおおむね許容していると考えられて
います。


(1)違法な有利発行により会社に損害が生じており、株主
   は会社に損害が発生したこと(公正な価額により同じ
   数だけ株式を発行していれば会社に入るはずであった
   資金が実際の払込金額が低いためにその差額分だけ
   減少したこと)により間接的な損害を被るので、代表
   訴訟により会社に対する取締役の任務懈怠による損害
   賠償責任を追及すべきものとする見解。(間接損害説)

(2)違法な有利発行により会社に損害が生じるわけではなく、
   むしろ株主は、自己個人が既存株式の希釈化による直接
   損害(従前は支配株主であった者が募集株式の発行に
   よりその地位を失ったことによる損害あるいは株式価値
   の希薄化による株価の低下による損害)を被ったから、
   取締役の第三者に対する責任(会社法429条1項)の
   規定により、株主に対する取締役の故意又は重大な過失
   による直接損害の賠償責任を請求することができると
   する見解。(直接損害説)

(3)違法な有利発行が同時に取締役の支配権維持・確保を
   主要な目的とするなど不公正な発行である場合には、
   取締役の「なすべき行為」は、当該募集株式の発行を
   しないことであったので、株主の被った損害は直接
   損害であるが、会社に損害が生じたという請求を退ける
   べきではなく、違法な有利発行が不公正発行を伴わない
   場合には、取締役の「なすべき行為」は、(a)現実に
   発行された株式と同数の株式を公正な払込金額で発行
   することなのか、(b)現実に調達した資金額と同額の
   資金を、実際の発行数より少ない株式の発行により調達
   することなのかが特定できないので、違法な有利発行が
   不公正発行であると否とを問わず、株主はその選択に
   より、取締役の責任を代表訴訟によって追及することも、
   また直接請求によって追及することも認められるべき
   であるとする見解。

なお、取締役の会社に対する責任と株主に対する責任の併存を
認める場合、両責任の関係が問題となり、諸説がありますが、
会社の請求権と株主の請求権はいわゆる不真正連帯債権の関係
に立ち、取締役が一方の責任の全部又は一部を履行すれば、そ
れに応じて他方の請求権も消滅ないし縮減すると考えられます。

また、取締役と通謀して著しく不公正な価額で株式を引き受け
た者は、会社に対し、公正な払込金額と実際の払込金額との差
額を支払う義務を負うとされています(会社法212条1項1号)
が、この通謀引受人の会社に対する責任は、取締役の会社に対
する責任との関係で不真正連帯債務の関係に立つと解され、さ
らに、取締役株主に対する責任との関係については、諸説が
ありますが、不真正連帯債権の関係に立つと考えられます。


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● 損害賠償すべき損害の額
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・直接損害

 株主が直接損害を被ったとして取締役に対して直接に損害賠
 償請求をする場合の損害額は、「本来なすべきでない新株の
 発行がなかったならば、維持していたであろう株式の従前の
 時価と、有利発行による株価の計算上の低下との差額」「違
 法な新株発行直前の株式価値と有利な発行価額による株式価
 値の低下との差額」ということになると考えられます。



・間接損害

 違法な有利発行により会社に損害が生じており、株主は会社
 に損害が発生したことにより間接的な損害を被るとして、代
 表訴訟により取締役の任務懈怠による損害賠償責任を追及す
 る場合の会社の損害は、取締役が実際に発行した株式数と同
 数の株式を公正な払込金額で発行した場合に増加するはずで
 あったのに増加しなかった会社財産(消極的損害ないし逸失
 利益)ということになると考えられます。


     (弁護士 緒方義行  http://www.fuso-godo.jp/


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