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保有株式の廉価売却と取締役の責任

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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
弁護士法人クラフトマン 第120号 2014-02-18
(旧 石下雅樹法律・特許事務所)

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1 今回の判例     保有株式の廉価売却と取締役の責任
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大阪地裁平成25年1月25日判決

 A社は、不動産の賃貸等を業とする会社です。問題となっている
平成18年当時、A社の取締役は、B氏ら3名であり、当時のA社
株主構成は、B氏のほか、3名が株主でした。

 また、A社には子会社C社があり、C社の株式約97万5000
株を保有していました。そして、平成18年、A社は、B氏らの決
定で、保有していたC社株式のうち68万株を、1株100円で、
B氏らが支配する会社の取締役や経理部長など複数名に譲渡しまし
た。

本件は、この株式譲渡に関するB氏らの責任が問題となりました。




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2 裁判所の判断
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裁判所は以下のように判断しました。

● C社株式の適正譲渡価格は、DCF法・配当還元法による算定
価格を加重平均して、1株2556円と認めるのが相当である。

● 本件株式譲渡は、A社の収益の源泉であるC社に対する支配権
をB氏らに移すという個人的利益を図る背任の意図をもって、1
株2556円のC社株式を1株100円で譲渡した廉価売却であ
り、B氏らは、A社に対し、C社に対する支配権を失わせるとい
う重大な損失を与えた。

● 譲渡の判断過程にも判断内容にも著しい不合理が認められるこ
とは明らかであり、B氏らは、取締役としての任務解怠の責任を
免れない。




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3 解説
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(1)取締役の任務懈怠責任・善管注意義務とは

 取締役は、会社から「委任」を受けている立場にあり、会社に対
して、「善良な管理者の注意」をもって職務を負う義務(善管注意
義務)を負っているとされます。

 例えば、以下のような場合に、取締役の権限の行使につき任務懈
怠責任が認められます。
  ・会社法等の法令、定款株主総会の決議に違反する場合
  ・自己若しくは第三者の利益を図る目的、又は会社に損害を与
える目的で行使される場合
  ・通常の経営者を基準として、その判断が著しく不合理であっ
た場合

 そして、本件では、売却の意図が当該取締役に支配権を移すとい
う点にあったこと、会社に重大な損害を与えたこと、判断が著しく
不合理であったという理由から、任務解怠責任が認められたわけで
す。


(2)判断プロセスの記録化の重要性

 さて、本件とは離れた一般論として考えると、ある取締役の判断
や業務が、もっぱら会社の利益のために行ったにもかかわらず、後
になって会社に損害を与えたとして責任の追求を受けることがあり
ます。しかし、本誌で以前書いたとおり、取締役の決定に関する責
任の判断は、「後知恵」の結果論ではなく、「判断時」の状況を前
提とし、不注意で判断の前提たる事実認識で誤ったか、又は、事実
に基づく判断が著しく不合理であった場合に責任が問われます。

 それで、とくに問題となりそうな決定を行う際や会社の大きな利
害に関わる決定をする際、「決定当時」に合理的な方法で情報収集、
調査及び検討を行ったことや、これに基づきどのように合理的な決
定がなされたかということが立証する必要があります。

 したがってこの点、取締役の判断の過程・内容が合理的であった
ということを示すため、取締役会議事録取締役会や経営会議で用
いた会議資料、またその前提としての社内外の調査資料などが重要
な意味を持つことになります。それで、この点について日頃からし
っかりとした資料の準備を怠らないことが、いざという場合にもの
をいうことになるかもしれません(もちろん本件の譲渡が正当化さ
れたか否かとは別問題です)。



(3)取引相場のない株式評価方法

 最後に、本件でも争点の一つとなった、取引相場のない株式評価
方法について簡単に触れます。

 評価方法としては、(1)DCF方式、(2)類似会社比較方式、
(3)純資産方式、(4)配当還元方式、があるといわれています。

 (1)のDCF方式とは、対象企業の将来の収益(キャッシュ・
フロー)を一定の割引率を適用した現在価値を基本とするものです。
(2)の類似会社比較方式は、対象企業と類似した会社を選定し、
種々の計算の上対象企業の株価を求めるものです。(3)は説明す
るまでもありませんが、含み損益を加算したり時価評価するなど、
簿価を修正することもあります。(4)については、株主が将来獲
得することが予測される配当に着目して、株価の算定を行う方式で
す。

 そして、これら株価の算定方法はいずれも一長一短があるため、
多くの裁判例は、複数の評価方法により算出された金額を加重平均
した株価を採用しています。本件についても、DCF法・配当還元
法を、85:15で加重平均しました(もちろんケースによって方
法論は異なります)。




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4 弊所ウェブサイト紹介~会社法会社法) ポイント解説
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弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企
業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。

例えば本稿のテーマに関連した会社法関連の情報については

http://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/kaishahou/index/

において、取締役取締役会といった役員をめぐる諸問題について
実務的観点から解説しています。必要に応じてぜひご活用ください。

なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイト
において解説に加えることを希望される項目がありましたら、メー
ルでご一報くだされば幸いです。

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