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賃下げと就業規則の不利益変更

賃下げ就業規則不利益変更

 長引く不況もあってか、従来の右肩上がりの賃金体系を廃止する事例が増え
ています。会社の利益が出ない以上、経営者からすれば当然の策ではあります
が、うかつに行うのはご法度。「就業規則不利益変更」という問題がありま
す。

 不利益変更を超簡単に言えば「今まで受けることができた利益が受けられな
くなる」ということ。この問題は法理として判例で確立しています。
 ところがこの考え方を押し通すと、就業規則は条件の良くなる方向にしか改
定できなくなってしまいますね。もちろん賃下げなんてもってのほか。

 よく勘違いしているのが、定昇廃止のケース。賃下げじゃないから不利益に
ならないと思っているケースがあるようです。でも、今までのような賃上げを
受けられる利益がなくなるので、やはり不利益変更となってしまいます。従業
員をうまく勘違いさせる戦術で行くのなら構いませんがね。

 だからといって、さすがにお堅い裁判所でも全ての不利益変更がダメという
わけではありません。至極当たり前のことですが。

 就業規則は企業と労働者契約内容となっているので、新たに規則を作成し
たり変更することによって、既得の労働者の権利を奪ったり、労働者に不利益
な条件を一方的に課することは原則として許されません。ところが、就業規則
の性質は労働条件を集合的に、かつ統一的、画一的に決定することが建前であ
るため、不利益変更であってもこれが合理的なものであるなら、個々の労働者
の同意がなくても拘束性があるとされています。(S43.132.15最高裁)

 要は、不利益変更が合理的ならOKということ。じゃ、何が合理的かと言う
と、かなり荒っぽい表現ですが、変更の必要性があって、しかも不利益の程度
が小さいかどうかということです。
 賃下げに限らず、労働時間休日退職金福利厚生の面でもこの考え方が
当てはまります。但し具体的には個別に違ってくるので、これだ!という表現
はできません。

 ちなみに卑近な例を一つ。
 今後、定年を65歳とする動きが予想されますが、今のまま賃金を支払い続け
たら会社は大変なことになります。その意味で、定年間近の人の賃金を何らか
の形で抑えることは会社の経営上、必要性があると言えます。(厳密には特定
層へのしわ寄せは問題あるんですが、長くなるので省略します)

 では、その額をいくらにするか。これは難題です。いくらまでなら不利益の
程度が小さいかは、その会社の賃金レベルによっても異なるし、個人別にも様
々な事情があります。
 ただ、幸いというか、定年延長が絡む場合の賃下げは比較的やりやすい方で
す。判例を厳密に踏襲するなら別ですが、賃下げは不利益であっても、定年
延びることは労働者にとって大きな利益となります。両方合わせたらチャラと
いうこと。

 このような場合は、賃金とか定年とかを別個に論ずるのでなく、少なくとも
総体としての労働条件は以前と同じであるとのスタンスで進める方がベターで
す。もちろん内部としては、賃下げ額と定年延長によって得られる収入額との
シミュレーションは必要です。
 定年延長とならない場合でも、考え方は同じです。不利益に見合う何らかの
利益を鼻先にぶら下げることで、マイナスイメージを弱める戦術です。

 はっきり言えばここら辺は力関係。組織力のある労組があるなら、早めに交
渉し合意を取り付けることです。万全を期すなら、多少の紛糾覚悟で労使の検
委員会等を設置し、答申の形で会社が受けるのがベスト。労組がない場合は、
手数はかかりますが従業員への説明を尽くすべきです。


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