厚生労働省から出されている「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル」や今年1月14日に追加公表された「
労使協定イメージ」の協定は、全ての条件を協定内で完結させようとしているため、そのままでは使えない代物になっています。
特に、旧特定派遣から移行した会社の多くは、正社員派遣のケースが多く、協定作成に難儀しているようなので、
賃金規程で給与を支払う事例を想定した協定例を公開します。
当局の確認を受けたものではありませんが、少なくとも要求事項は程度の差はあれ記載していると言えるはずです。
なお、前提条件として、
・協定対象の職種は別表記載の職種に限定。(書き分け次第で全員対象へもなり得ます。)
・
退職金制度を
採用する場合又は合算方式で6%上乗せとする場合の何れも対応可能ですが、適宜(書き)部分を入れ替えて下さい。また、
通勤手当は実費の場合のみ想定しています。
・主な内容は、比較対象となる一般
賃金は別表で職種別に明示しますが、個別の
賃金は
賃金規程を援用し、別表の一般
賃金を保証する旨としています。(派遣の最賃方式)
これで、法30条の4の記載事項は網羅するはずです。
その考察として、協定において
賃金決定の方法をどのレベルまで記載するかについては、局長
通達10ページ以降に記載がありますが、具体的な額まで必要かについては、Q&A第一弾の問1-6で、「
労働者の
賃金額のほか一般
賃金も記載が必要」とありますが、同じく問1-7で「別規程の旨定めても可」とされているので、結果的には一般
賃金の具体額の記載は必要だが、個別の
賃金額は別規程を援用することで足りるものと考えられます。
以下、最低限の事項を記載した
労使協定例です。
派遣法第30条の4第1項の規定に基づく
労使協定(例)
株式会社甲と甲の
労働者代表である乙は、派遣法第30条の4第1項に関し次の通り協定する。
(対象となる派遣
労働者の範囲)
第1条 本協定は、
派遣先で別表記載の職種に従事する
従業員(以下「対象
従業員」という)に適用する。
2 対象
従業員については、
派遣先が変更される可能性が高いことから、中長期的なキャリア形成を行い、所得の不安定化を防ぐ観点から本協定の対象とする。
3 甲は対象
従業員について、本人の同意及び一つの
労働契約期間中に、特段の事情がない限り本協定の適用は除外しないものとする。
第2条 対象
従業員の
賃金の種類及び支給は、
就業規則(又は)
賃金規程に基づくものとする。
(比較対象
賃金)
第3条 対象
従業員の
基本給、手当及び
賞与等の比較対象となる「同種の業務に従事する一般の
労働者の平均的な
賃金の額」は、次の各号に掲げる条件を満たした別表の通りとする。
(1) 比較対象となる同種の業務に従事する一般の
労働者の職種は「令和元年7月8日職発0708第2号」(以下「局長
通達」という)に定める別添2の職種の内、本協定の別表に相当する職種とする。
(2)
通勤手当は実費支給とし、比較対象となる
賃金とはしない。
(3) 地域調整については、局長
通達別添3の都道府県別の地域指数により調整する。(必要により使い分け理由を明記)
第4条 対象
従業員の
基本給、手当及び
賞与等
賃金の額は、第2条の通り
賃金規程により算出し、基準となる年数ランクは個別に協議して決定するが、これを局長
通達で示す方法で時給に換算した額は、別表の額と同額以上となることを保証する。
なお、時給への換算における
賞与の額は、原則として対象
従業員の個別支給額による。(又は、対象
従業員本人がB評価としての額or直近年度の対象
従業員全ての平均支給額or当該
賞与の対象
従業員全ての平均見込み額or標準的な対象
従業員の支給額)
(評価と
賃金改定)
第5条 能力向上等の確認のため、毎年1回定期評価を行い、その結果に基づき
賃金改定を行うものとする。
但し、
賞与にあっては短期的な成果の確認であることから毎年2回の評価とする。
(所定外
賃金)
第6条 対象
従業員の所定外
賃金は第2条の通りとする。
(
通勤手当)
第7条 対象
従業員の
通勤手当は、
通勤に要する実費に相当する
費用を支給する。
(
退職金)
第8条
退職金は制度としては規定しないが、その前払いに相当する額として、別表に定める額は
基本給、手当及び
賞与の額の6%相当額を上乗せしたものとする。(又は、局長
通達に定める一般
退職金水準以上であることを確保した
退職金規定により支給する。)
(
賞与)
第9条
賞与の支給は半期ごと、
賃金規程に基づき行うこととするが、その評価は
派遣先の協力を得て個別に評価し、支給額を決定する。
第10条 次条に定めるものを除く教育訓練、
福利厚生その他の
賃金以外の待遇については、正規
従業員と同一とし、
就業規則の規定を準用する。
第11条
労働者派遣法第30条の2に規定する教育訓練については、
労働者派遣法に基づき別途定める「教育訓練計画」に基づき、着実に実施する。
(その他)
第12条 本協定に定めのない事項については、別途甲と乙とで誠実に協議する。
(有効期間)
第13条 本協定の有効期間は、令和2年4月1日から令和3年3月31日の1年間とする。
年月日
甲
乙
別表 地域別・職種別保証額(
基本給・
賞与等)←局長
通達で算出される一般
賃金
統計種別 職種 地域/指数 基準値0年 1年 2年 3年 以下略
HW754 ○○作業 茨城県
通達額 1,083 1,256 1,374 1,428 x
0.999 地域調整後 1,082 1,255 1,373 1,427 x
HW771 △△作業 茨城県
通達額 953 1,105 1,209 1,257 x
0.999 地域調整後 953 1,104 1,208 1,256 x
HW105 □□運用 東京都
通達額 1,232 1,429 1,563 1,625 x
1.141 地域調整後 1,406 1,631 1,784 1,855 x
※
退職金を6%込みとする場合は、6%分も追加で表示
厚生労働省から出されている「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル」や今年1月14日に追加公表された「労使協定イメージ」の協定は、全ての条件を協定内で完結させようとしているため、そのままでは使えない代物になっています。
特に、旧特定派遣から移行した会社の多くは、正社員派遣のケースが多く、協定作成に難儀しているようなので、賃金規程で給与を支払う事例を想定した協定例を公開します。
当局の確認を受けたものではありませんが、少なくとも要求事項は程度の差はあれ記載していると言えるはずです。
なお、前提条件として、
・協定対象の職種は別表記載の職種に限定。(書き分け次第で全員対象へもなり得ます。)
・退職金制度を採用する場合又は合算方式で6%上乗せとする場合の何れも対応可能ですが、適宜(書き)部分を入れ替えて下さい。また、通勤手当は実費の場合のみ想定しています。
・主な内容は、比較対象となる一般賃金は別表で職種別に明示しますが、個別の賃金は賃金規程を援用し、別表の一般賃金を保証する旨としています。(派遣の最賃方式)
これで、法30条の4の記載事項は網羅するはずです。
その考察として、協定において賃金決定の方法をどのレベルまで記載するかについては、局長通達10ページ以降に記載がありますが、具体的な額まで必要かについては、Q&A第一弾の問1-6で、「労働者の賃金額のほか一般賃金も記載が必要」とありますが、同じく問1-7で「別規程の旨定めても可」とされているので、結果的には一般賃金の具体額の記載は必要だが、個別の賃金額は別規程を援用することで足りるものと考えられます。
以下、最低限の事項を記載した労使協定例です。
派遣法第30条の4第1項の規定に基づく労使協定(例)
株式会社甲と甲の労働者代表である乙は、派遣法第30条の4第1項に関し次の通り協定する。
(対象となる派遣労働者の範囲)
第1条 本協定は、派遣先で別表記載の職種に従事する従業員(以下「対象従業員」という)に適用する。
2 対象従業員については、派遣先が変更される可能性が高いことから、中長期的なキャリア形成を行い、所得の不安定化を防ぐ観点から本協定の対象とする。
3 甲は対象従業員について、本人の同意及び一つの労働契約期間中に、特段の事情がない限り本協定の適用は除外しないものとする。
第2条 対象従業員の賃金の種類及び支給は、就業規則(又は)賃金規程に基づくものとする。
(比較対象賃金)
第3条 対象従業員の基本給、手当及び賞与等の比較対象となる「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」は、次の各号に掲げる条件を満たした別表の通りとする。
(1) 比較対象となる同種の業務に従事する一般の労働者の職種は「令和元年7月8日職発0708第2号」(以下「局長通達」という)に定める別添2の職種の内、本協定の別表に相当する職種とする。
(2) 通勤手当は実費支給とし、比較対象となる賃金とはしない。
(3) 地域調整については、局長通達別添3の都道府県別の地域指数により調整する。(必要により使い分け理由を明記)
第4条 対象従業員の基本給、手当及び賞与等賃金の額は、第2条の通り賃金規程により算出し、基準となる年数ランクは個別に協議して決定するが、これを局長通達で示す方法で時給に換算した額は、別表の額と同額以上となることを保証する。
なお、時給への換算における賞与の額は、原則として対象従業員の個別支給額による。(又は、対象従業員本人がB評価としての額or直近年度の対象従業員全ての平均支給額or当該賞与の対象従業員全ての平均見込み額or標準的な対象従業員の支給額)
(評価と賃金改定)
第5条 能力向上等の確認のため、毎年1回定期評価を行い、その結果に基づき賃金改定を行うものとする。
但し、賞与にあっては短期的な成果の確認であることから毎年2回の評価とする。
(所定外賃金)
第6条 対象従業員の所定外賃金は第2条の通りとする。
(通勤手当)
第7条 対象従業員の通勤手当は、通勤に要する実費に相当する費用を支給する。
(退職金)
第8条 退職金は制度としては規定しないが、その前払いに相当する額として、別表に定める額は基本給、手当及び賞与の額の6%相当額を上乗せしたものとする。(又は、局長通達に定める一般退職金水準以上であることを確保した退職金規定により支給する。)
(賞与)
第9条 賞与の支給は半期ごと、賃金規程に基づき行うこととするが、その評価は派遣先の協力を得て個別に評価し、支給額を決定する。
第10条 次条に定めるものを除く教育訓練、福利厚生その他の賃金以外の待遇については、正規従業員と同一とし、就業規則の規定を準用する。
第11条 労働者派遣法第30条の2に規定する教育訓練については、労働者派遣法に基づき別途定める「教育訓練計画」に基づき、着実に実施する。
(その他)
第12条 本協定に定めのない事項については、別途甲と乙とで誠実に協議する。
(有効期間)
第13条 本協定の有効期間は、令和2年4月1日から令和3年3月31日の1年間とする。
年月日
甲
乙
別表 地域別・職種別保証額(基本給・賞与等)←局長通達で算出される一般賃金
統計種別 職種 地域/指数 基準値0年 1年 2年 3年 以下略
HW754 ○○作業 茨城県 通達額 1,083 1,256 1,374 1,428 x
0.999 地域調整後 1,082 1,255 1,373 1,427 x
HW771 △△作業 茨城県 通達額 953 1,105 1,209 1,257 x
0.999 地域調整後 953 1,104 1,208 1,256 x
HW105 □□運用 東京都 通達額 1,232 1,429 1,563 1,625 x
1.141 地域調整後 1,406 1,631 1,784 1,855 x
※退職金を6%込みとする場合は、6%分も追加で表示