入社後数年経ち20代後半にもなると、もう新人とはいえません。かといって、課長や部長のような
管理職にはまだほど遠い微妙なポジションです。
そんな世代のサラリーマンにとって、「昇進」という言葉がうれしい響きだったのは、半世紀も
前の時代のことなのでしょうか。最近某調査会社が若手社員を対象に「30代後半になっても、
思った通りに管理職に昇進しなかったらどうしますか?」というアンケート調査を実施したところ、
1位は「昇進には興味がないからどうでもいい」(25.0%)だったそうです。
因みに2位は「仕方がないと割り切る」(23.6%)、3位は「あきらめる」(20.4%)と続き、
4位にようやく「頑張り直す」(15.1%)が登場し、5位は「転職」する(10.1%)という結果で、
昇進に対して、ガツガツした姿勢を見せない昨今の若手サラリーマンの姿勢が浮き彫りとなりました。
続けてその理由も尋ねたところ、管理職になると、(1)「上司から責められ、部下から嫌われる板挟み
ポジション」であること→→何と言ってもコレが一番の出世したくない理由のようでした。
「上からは数字を責められて常にストレスだし、下を見れば部下たちから愚痴をこぼされたり陰口を
叩かれたりしてストレスを感じてしまう。かといって責任ある立場なので逃げ出すわけにも行かない。
こっちは数字出さなきゃと必死なのに、部下たちは危機感が全然足らない上に、業務から外れたところで
下らない揉め事を起こしたりして、そんなときはもう“あぁあぁ!!”と叫びたくもなる」というのです。
でも、今どきはきつくは叱れない。きつく叱れば
パワハラと騒がれてしまうから………。
(2)次になりたくない理由は、管理職になると
残業代が出ないこと→→課長(管理職)になったところで
給料が劇的に上がるわけでもないのに、責任は増えるし、長時間労働しても
残業代は出ないとなると
リスクとリターンが釣り合っていないと思うようです。平社員から課長に昇進したとして年収は倍には
ならないかもしれません。
これを「責任の重さ」「上下からのしかかるストレス」「
残業代なしの長時間労働」などと天秤にかけて、
高いととるか安いととるか。それは各々の価値観によりますが、「安い」「見合わない」と感じる人が
増えているから若手世代の出世欲が減退しているのかもしれません。
でも、出世したくないと思って昇進の道を自ら外れた場合、負の側面があることもしっかりと頭に入れて
おく必要があります。かつての部下だった年下社員が、自分の上司になることもありますし、出世コースを
外れた後悔は、外れた直後ではなく、後々からジワジワと募って来る場合もあります。
年下の上司が増え始めたときや管理職となった同年代の人達との経済格差を感じるようになったときなど……。
しかし、そこで後悔したとしても、一度外れてしまった出世コースに戻るのはとても難しいのです。
後悔し始めた頃にはもうアラフォー。社内の出世は諦めて転職で再起を図ろうとしても、アラフォー人材の
求人はマネジメント経験が問われることも多く、経験が無いと待遇アップどころかむしろ待遇ダウンと
なってしまうケースもあるようです。
仕事観や人生観は人それぞれですから、出世を避けたいとの理由で転職するのも自由です。
ただ、転職に際しては一つ気をつけておくことがあります。
日本企業の
人事制度は、
成果主義へと大きく変わりつつあります。企業は、30代半ば以上の人材を募集する際は、
管理職ポストか高度専門職で求人することが多く、企業が求める高度専門職でもなく、管理職ポストも拒否だと
するとそもそも転職のイス自体が少なくなってしまうのです。望むような責任の無いポストでの転職は
そう簡単ではないようです。
高度経済成長に湧きたっていた頃のサラリーマンには、「上からの指示を下に伝えるだけ」の管理職や
「サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ・・・」の社員もいました。
でも昨今の厳しい
人事制度の下ではそうした人は、生き残り自体が厳しくなってしまうかもしれません。
前回の「
人事労務関連の法改正への対応」についての話は、如何でしたでしょうか。
今回は、「カスハラの放置は企業の責任」についての話をします。
──────────◆ 目 次 ◆──────────────
「カスハラの放置は企業の責任」
昨年12月に公表された連合の調査結果によると、カスタマー・ハラスメントで一番多いのは「暴言」(55.3%)、
次いで「説教など、権威的な態度」(46.7%)だそうです。 この調査は、18歳~65歳の被
雇用者・フリーランスで、
直近3年間で自身もしくは同じ職場の人がカスタマー・ハラスメントを受けたことがある人1,000名に質問を
行ったものです。
人手不足によるサービスの変化・低下やコロナ禍を背景に、カスタマー・ハラスメントの発生件数が増えています。
直近5年間で「発生件数が増えた」との回答が36.9%あったそうです。
カスハラが発生したきっかけとして、勘違いや嫌がらせ、商品・サービスへの不満もありますが、「制度上の不備」
との回答が16.3%あったそうです。制度の不備とは、「不備な制度の放置」でもありますので、会社の責任という面が
強いと思われます。
どのようなきっかけのカスハラでも、それを放置していると会社の
安全配慮義務違反を問われることにつながります。会社は、
従業員の心身の安全を守る必要がありますが、この調査によると、カスハラ対応マニュアルの作成や研修を行っている会社は半数以下のようです。
カスハラにより、
従業員のストレスが高まり心身に不調が発生し業務が行えなくなる、満足な対応が行えない会社の状況を見た他の
従業員が辞めてしまう、そうした情報が広まり人材の
採用ができない、といった悪循環が生まれます。
カスハラを放置しない、発生した場合のサポートを行うことについて、現場任せにせず、カスハラを容認しない方針を会社として対外的に発表する、社内規則を整備する、マニュアルを整備するといった対策について、会社は十分に検討し、実施する必要があるでしょう。
入社後数年経ち20代後半にもなると、もう新人とはいえません。かといって、課長や部長のような
管理職にはまだほど遠い微妙なポジションです。
そんな世代のサラリーマンにとって、「昇進」という言葉がうれしい響きだったのは、半世紀も
前の時代のことなのでしょうか。最近某調査会社が若手社員を対象に「30代後半になっても、
思った通りに管理職に昇進しなかったらどうしますか?」というアンケート調査を実施したところ、
1位は「昇進には興味がないからどうでもいい」(25.0%)だったそうです。
因みに2位は「仕方がないと割り切る」(23.6%)、3位は「あきらめる」(20.4%)と続き、
4位にようやく「頑張り直す」(15.1%)が登場し、5位は「転職」する(10.1%)という結果で、
昇進に対して、ガツガツした姿勢を見せない昨今の若手サラリーマンの姿勢が浮き彫りとなりました。
続けてその理由も尋ねたところ、管理職になると、(1)「上司から責められ、部下から嫌われる板挟み
ポジション」であること→→何と言ってもコレが一番の出世したくない理由のようでした。
「上からは数字を責められて常にストレスだし、下を見れば部下たちから愚痴をこぼされたり陰口を
叩かれたりしてストレスを感じてしまう。かといって責任ある立場なので逃げ出すわけにも行かない。
こっちは数字出さなきゃと必死なのに、部下たちは危機感が全然足らない上に、業務から外れたところで
下らない揉め事を起こしたりして、そんなときはもう“あぁあぁ!!”と叫びたくもなる」というのです。
でも、今どきはきつくは叱れない。きつく叱ればパワハラと騒がれてしまうから………。
(2)次になりたくない理由は、管理職になると残業代が出ないこと→→課長(管理職)になったところで
給料が劇的に上がるわけでもないのに、責任は増えるし、長時間労働しても残業代は出ないとなると
リスクとリターンが釣り合っていないと思うようです。平社員から課長に昇進したとして年収は倍には
ならないかもしれません。
これを「責任の重さ」「上下からのしかかるストレス」「残業代なしの長時間労働」などと天秤にかけて、
高いととるか安いととるか。それは各々の価値観によりますが、「安い」「見合わない」と感じる人が
増えているから若手世代の出世欲が減退しているのかもしれません。
でも、出世したくないと思って昇進の道を自ら外れた場合、負の側面があることもしっかりと頭に入れて
おく必要があります。かつての部下だった年下社員が、自分の上司になることもありますし、出世コースを
外れた後悔は、外れた直後ではなく、後々からジワジワと募って来る場合もあります。
年下の上司が増え始めたときや管理職となった同年代の人達との経済格差を感じるようになったときなど……。
しかし、そこで後悔したとしても、一度外れてしまった出世コースに戻るのはとても難しいのです。
後悔し始めた頃にはもうアラフォー。社内の出世は諦めて転職で再起を図ろうとしても、アラフォー人材の
求人はマネジメント経験が問われることも多く、経験が無いと待遇アップどころかむしろ待遇ダウンと
なってしまうケースもあるようです。
仕事観や人生観は人それぞれですから、出世を避けたいとの理由で転職するのも自由です。
ただ、転職に際しては一つ気をつけておくことがあります。
日本企業の人事制度は、成果主義へと大きく変わりつつあります。企業は、30代半ば以上の人材を募集する際は、
管理職ポストか高度専門職で求人することが多く、企業が求める高度専門職でもなく、管理職ポストも拒否だと
するとそもそも転職のイス自体が少なくなってしまうのです。望むような責任の無いポストでの転職は
そう簡単ではないようです。
高度経済成長に湧きたっていた頃のサラリーマンには、「上からの指示を下に伝えるだけ」の管理職や
「サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ・・・」の社員もいました。
でも昨今の厳しい人事制度の下ではそうした人は、生き残り自体が厳しくなってしまうかもしれません。
前回の「人事労務関連の法改正への対応」についての話は、如何でしたでしょうか。
今回は、「カスハラの放置は企業の責任」についての話をします。
──────────◆ 目 次 ◆──────────────
「カスハラの放置は企業の責任」
昨年12月に公表された連合の調査結果によると、カスタマー・ハラスメントで一番多いのは「暴言」(55.3%)、
次いで「説教など、権威的な態度」(46.7%)だそうです。 この調査は、18歳~65歳の被雇用者・フリーランスで、
直近3年間で自身もしくは同じ職場の人がカスタマー・ハラスメントを受けたことがある人1,000名に質問を
行ったものです。
人手不足によるサービスの変化・低下やコロナ禍を背景に、カスタマー・ハラスメントの発生件数が増えています。
直近5年間で「発生件数が増えた」との回答が36.9%あったそうです。
カスハラが発生したきっかけとして、勘違いや嫌がらせ、商品・サービスへの不満もありますが、「制度上の不備」
との回答が16.3%あったそうです。制度の不備とは、「不備な制度の放置」でもありますので、会社の責任という面が
強いと思われます。
どのようなきっかけのカスハラでも、それを放置していると会社の安全配慮義務違反を問われることにつながります。会社は、従業員の心身の安全を守る必要がありますが、この調査によると、カスハラ対応マニュアルの作成や研修を行っている会社は半数以下のようです。
カスハラにより、従業員のストレスが高まり心身に不調が発生し業務が行えなくなる、満足な対応が行えない会社の状況を見た他の従業員が辞めてしまう、そうした情報が広まり人材の採用ができない、といった悪循環が生まれます。
カスハラを放置しない、発生した場合のサポートを行うことについて、現場任せにせず、カスハラを容認しない方針を会社として対外的に発表する、社内規則を整備する、マニュアルを整備するといった対策について、会社は十分に検討し、実施する必要があるでしょう。