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弁護士
法人クラフトマン 第273号 2024-10-22
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顧問料)についての詳細
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1 今回の事例 職種限定合意と配転命令(1)
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最高裁令和6年4月26日判決
社会福祉
法人であるAは、溶接ができる機械技術者を募集していたところ、種々の技能資格を有するB氏を
雇用しました。そしてB氏は、福祉用具の改造・製作、技術開発を行う主任技術者として、福祉用具の改造・製作サービスを営む福祉用具センター(Aが運営)にて勤務しました。
ところが福祉用具を改造する需要が激減し、
総務課に欠員が出たため、AはB氏を
総務課に配転しました。これに対し、B氏は、当該配転命令がAとB氏の間の職種眼定合意に反するものであり違法であるなどとして
損害賠償等を求め提訴しました。
裁判所は、
労働者と
使用者(会社)との間に職種や業務内容を限定する旨の合意がある場合には、
使用者(会社)は、当該
労働者に対し、同意なしに当該合意に反する配転を命ずる権限を有しないとして、高裁判決を破棄しました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2 解説
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(1)職種限定社員に対する配転命令権の有無
従来、日本の企業は、終身
雇用又は長期
雇用を想定し、
従業員を、職種や勤務地を限定せずに
採用した上で、包括的な配転命令権に基づき、広範囲の配転を行うことが一般的でした。
この点、職種や勤務地を限定する
労働契約においては、企業の配転命令権は制限されることになります。それでも今回のケースの高裁の判断や過去の裁判例のように、特段の事情がある場合には会社側に一定の配転命令権があることを前提に配転命令の適法性を判断したものがありました。
しかし、今回、最高裁は、職種や勤務地を限定する
労働契約においては、そもそも配転命令権がないと判断しました。
(2)当該職種を廃止せざるを得ないとき
もっとも、企業が置かれる環境は時代とともに変わります。今回のように、職種限定の
労働契約がある
従業員が在籍している状況で、その職種を廃止せざるを得ない事業状況となり、
雇用維持のために当該
従業員を
配置転換せざるを得なくなります。しかし、最高裁の今回の判断を適用すると、会社としては配転命令権自体がないことになり、対応に困ることにもなります。
したがって、会社として、本人の同意なしに一方的に配転命令を出すことにはリスクが伴うことになります。それで、対象となる
従業員に対して、
雇用維持のための配転がやむを得ないことについて丁寧な説明を重ねたり待遇面での調整を図ったりすることで、同意を取り付ける努力をすることが、これまでにもまして重要であり、かつ必要となると思われます。
他方、会社が同意を得る努力をしたものの本人からの同意を得られなかった場合には、配転命令権がない以上、最終的に
解雇を検討せざるを得ないかもしれません。この場合は、いわゆる
整理解雇として適法か否かを検討することになりますが、その際には、会社が行った
解雇回避の努力の一つとして、同意取得のための説明等の努力をいかに丁寧に行ったかが一つの重要な考慮要素となると思われます。
また、今回の最高裁の判断と、2024年4月から施行されている
改正労働基準法施行規則に伴う「
労働条件明示義務」との関係についても慎重な配慮が必要となりますが、この点については次稿にて取り上げたいと思います。
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3 弊所ウェブサイト紹介~労働法 ポイント解説
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弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。
例えば本稿のテーマに関連した労働法については
https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/roumu/index/
において解説しています。必要に応じてぜひご活用ください。
なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイトにおいて解説に加えることを希望される項目がありましたら、メールでご一報くだされば幸いです。
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本稿の無断複製、転載はご遠慮ください。
ただし、本稿の内容を社内研修用資料等に使用したいといったお申
出については、弊所を出典として明示するなどの条件で、原則とし
て無償でお受けしています。この場合、遠慮なく下記のアドレス宛、
メールでお申出ください。
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【執筆・編集・発行】
弁護士・弁理士 石下雅樹(いしおろし まさき)
電話 050-5490-7836(東京横浜共通)
東京事務所
〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1-12-1 渋谷マークシティW22階
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1 今回の事例 職種限定合意と配転命令(1)
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最高裁令和6年4月26日判決
社会福祉法人であるAは、溶接ができる機械技術者を募集していたところ、種々の技能資格を有するB氏を雇用しました。そしてB氏は、福祉用具の改造・製作、技術開発を行う主任技術者として、福祉用具の改造・製作サービスを営む福祉用具センター(Aが運営)にて勤務しました。
ところが福祉用具を改造する需要が激減し、総務課に欠員が出たため、AはB氏を総務課に配転しました。これに対し、B氏は、当該配転命令がAとB氏の間の職種眼定合意に反するものであり違法であるなどとして損害賠償等を求め提訴しました。
裁判所は、労働者と使用者(会社)との間に職種や業務内容を限定する旨の合意がある場合には、使用者(会社)は、当該労働者に対し、同意なしに当該合意に反する配転を命ずる権限を有しないとして、高裁判決を破棄しました。
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2 解説
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(1)職種限定社員に対する配転命令権の有無
従来、日本の企業は、終身雇用又は長期雇用を想定し、従業員を、職種や勤務地を限定せずに採用した上で、包括的な配転命令権に基づき、広範囲の配転を行うことが一般的でした。
この点、職種や勤務地を限定する労働契約においては、企業の配転命令権は制限されることになります。それでも今回のケースの高裁の判断や過去の裁判例のように、特段の事情がある場合には会社側に一定の配転命令権があることを前提に配転命令の適法性を判断したものがありました。
しかし、今回、最高裁は、職種や勤務地を限定する労働契約においては、そもそも配転命令権がないと判断しました。
(2)当該職種を廃止せざるを得ないとき
もっとも、企業が置かれる環境は時代とともに変わります。今回のように、職種限定の労働契約がある従業員が在籍している状況で、その職種を廃止せざるを得ない事業状況となり、雇用維持のために当該従業員を配置転換せざるを得なくなります。しかし、最高裁の今回の判断を適用すると、会社としては配転命令権自体がないことになり、対応に困ることにもなります。
したがって、会社として、本人の同意なしに一方的に配転命令を出すことにはリスクが伴うことになります。それで、対象となる従業員に対して、雇用維持のための配転がやむを得ないことについて丁寧な説明を重ねたり待遇面での調整を図ったりすることで、同意を取り付ける努力をすることが、これまでにもまして重要であり、かつ必要となると思われます。
他方、会社が同意を得る努力をしたものの本人からの同意を得られなかった場合には、配転命令権がない以上、最終的に解雇を検討せざるを得ないかもしれません。この場合は、いわゆる整理解雇として適法か否かを検討することになりますが、その際には、会社が行った解雇回避の努力の一つとして、同意取得のための説明等の努力をいかに丁寧に行ったかが一つの重要な考慮要素となると思われます。
また、今回の最高裁の判断と、2024年4月から施行されている改正労働基準法施行規則に伴う「労働条件明示義務」との関係についても慎重な配慮が必要となりますが、この点については次稿にて取り上げたいと思います。
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