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セクハラによる解雇と懲戒処分の選択

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石下雅樹法律・特許事務所 第37号 2009-11-25
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1 今回の判例  セクハラによる解雇と懲戒処分の選択
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H21.04.24 東京地裁判決

 大阪にあるメーカーであるA社の東京支店長(取締役兼務)B氏が、複数の女子社員に
対して慰安旅行中の宴会の席で肩を抱いたり自分の膝にすわらせようとしたり、「胸が大
きいな」と発言して胸を測るそぶりをしたり、「ワンピースの中が見えそうだ。この中で
誰がタイプか答えなかったら、犯すぞ」と言うなどの発言を繰り返していました。そのた
め、A社は、セクシャルハラスメント行為によりB氏を懲戒解雇としました。

 この懲戒解雇処分を不服とした元支店長が、懲戒解雇権利の濫用であり無効であると
して従業員としての地位確認の裁判を起こしたのがこの訴訟です。


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2 判決の概要
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【結論】解雇無効


【理由】

 裁判所は、懲戒解雇は会社の解雇権の濫用であり無効であるとしました。
 
 裁判所は、B氏の言動については、女性を侮べつする違法なセクハラであり、懲戒の対
象となる行為であることは明らかで相当に悪質であるとしつつ、強制わいせつ的とまでは
いえないこと、懲戒解雇に関しては、これまでB氏に対して何らの指導や処分をしてこな
かったのに労働者にとって極刑である懲戒解雇を直ちに選択するのは重きに失すると判断
しました。
            
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3 解説
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懲戒解雇に至るプロセスも重要】

この判断のポイントは、B氏のセクハラ的言動に対し、会社が、全く注意や処分をしてこ
なかったと認定されたことにあります。

もっとも、裁判所が、コンプライアンスを重視して厳しく対応しようとする会社の姿勢は
十分首肯できる、などと述べており、裁判所としても相当に悩んだようです。筆者として
も、会社が、コンプライアンスの観点、再発防止の観点、再発時の会社の責任(使用者
任を問われることもある)、軽い処分を課した場合のB氏の改善の見込などを考え、懲戒
解雇という選択をしたことについては、重すぎると断定できるのか疑問なしとはいえませ
ん。またこの判決は控訴されているようですので、控訴裁判所が別の判断を下す可能性も
あるでしょう。

 ただし、一般論としては、懲戒解雇の有効性(無効とはされないこと)の判断の要素に
は、当該従業員の行為に対し、会社が懲戒解雇に至るまでに、いかなる措置(注意、他の
軽い処分)を取ってきたか、これに対して当該従業員がどのような対応を取ってきたのか
が含まれることは事実です。

 従業員に対する懲戒解雇の有効性(正確には解雇権の濫用の有無)については、裁判所
は、行為の動機、態様、結果、従前の勤務成績、他の懲戒処分選択の可能性、過去の処分
例との均衡、解雇という重い措置が同人に与える影響等を総合考慮して、個々の事案ごと
に判断しています。すなわち、簡単にいえば当該違反行為・情状と、懲戒処分の間にバラ
ンスが取れていることが必要であるわけです。

 横領のような刑法に触れるような違法行為、その会社にとって遵守すべき重要な業法に
明らかに違反する重大な行為などであれば、1回目の行為から懲戒解雇にすることは許さ
れると判断されることが多いでしょうが、就業規則に違反するもののこれらに至らない行
為の場合、会社としては難しい判断を強いられることになります。この場合には、最初か
懲戒解雇とするか、あるいは、厳重注意・減給処分・出勤停止処分といった処置を行い
、さらに態度が改まらない場合に解雇とする、という段階的方法を取るべきか、慎重に考
えるべきでしょう。場合によっては早い段階で弁護士と相談しつつ、法的判断を踏まえた
対応が求められるかもしれません。

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