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会社分割と債権者保護手続

■Vol.137(通算378)/2010-4-26号:毎週月曜日配信           
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☆☆☆  会社分割債権者保護手続  ☆☆☆
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会社分割については以前にも取り上げ、そこでも債権者保護手続に重点を
置いて説明しましたが、誤解されている方が多いようですので、今回は、
債権者保護手続だけに焦点を当ててみます。



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● 債権者保護手続が必要な場合-異議を述べることができる債権者がいる場合
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会社分割では、債権者を保護するため、公告および知れている債権者に対する
各別の催告をする必要がありますが、それは債権者の全部または一部が会社
分割について異議を述べることができる場合に限られます(吸収分割における
分割会社について会社法789条2項、承継会社について同799条2項、
新設分割における分割会社について同810条2項、設立会社については
債権者保護手続はない)
そこで、どのような場合に債権者は会社分割について異議を述べることが
できるかを明らかにしておく必要があります。


1.分割会社の場合(吸収分割新設分割に共通)

   分割会社の債権者については、次の(1)(2)の債権者が会社分割
   について異議を述べることができるとされています。
   (吸収分割における分割会社について会社法789条1項2号、
   承継会社について同799条1項2号、新設分割における分割会社
   について同810条1項2号、設立会社については規定なし)

 (1)会社分割後、分割会社に対して債務履行連帯保証債務履行
    請求するとができない分割会社の債権者(2号本文及び前の括弧書き)
    逆にいうと、分割会社の債権者が分割後も分割会社に債務(本来の
    債務または重畳的引受債務)または連帯保証債務履行を請求する
    ことができる場合には、次の(2)の場合を除いて、会社分割
    ついて異議を述べることができないことになります。

    分割会社は承継会社・設立会社から、移転した純資産の額に等しい
    対価を取得するのであり、分割会社の債権者のための責任財産の
    総額は減少しないというのが、その理由です。
    移転した純資産の額に等しい対価を取得しなかった場合には、
    取締役等の第三者に対する責任を追及するほかありません。
    詐害行為取消権を行使できるとする見解もありますが、判例は
    まだありません。

 (2)分割会社が会社分割の対価である株式(持分)の全部または一部を
    効力発生日に株主に分配する場合(全部取得条項付種類株式の取得
    対価または剰余金配当として株主に分配する)には、すべての
    分割会社の債権者(2号後ろの括弧書き)会社法制定前に
    「人的分割」と呼ばれた形ですが、この場合には、分配可能額に
    よる制約が課されず、分割会社の債権者を害する可能性があるから
    です。

2.承継会社の債権者の場合(吸収分割のみ)

   承継会社の債権者は、承継会社に対し、無条件に会社分割について
   異議を述べることができます。(会社法799条1項2号)


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● 債権者保護手続の内容
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債権者保護手続の内容は、公告と知れている債権者(異議を述べることが
できる債権者)に対する各別の催告です。

1.公告の方法

   異議を述べることができる債権者が存在する場合、(1)の官報
   公告は必ずしなければならない。(2)(3)は定款に定め
   (会社法939条1項)のある場合に(1)に加えてこの方法による。
   (会社法789条2項、799条2項、810条2項)

 (1)官報  

 (2)時事に関する日刊新聞紙

 (3)電子公告


2.知れている債権者に対する各別の催告

 (1)官報のみによる公告の場合

    この場合、知れている債権者(異議を述べることができる債権者)
    に対する各別の催告が必要となります。

 (2)官報公告のほか時事に関する日刊新聞紙または電子公告がなされた場合

    この場合、不法行為によって生じた債権者を除き、知れている
    債権者に対する各別の催告は不要となります。(会社法789条3項、
    799条3項、810条3項)

  つまり、不法行為によって生じた債権者が異議を述べることができる
  場合には、その債権者に対しては、官報公告のほか時事に関する日刊
  新聞紙または電子公告がなされた場合でも、各別の催告を省略することは
  できません。

3.公告・催告の効果

 (1)債権者が催告期間内に異議を述べなかったときは、会社分割を承認
    したものとみなされます。(会社法789条4項、799条4項、
    810条4項)

 (2)債権者が催告期間内に異議を述べたときは、異議を述べられた債務
    会社は、その債権者に対し、弁済期が到来しているときは弁済をし、
    弁済期未到来のときは期限の利益を放棄して弁済するか、相当の担保
    提供するか、またはその債権者に弁済を受けさせることを目的として
    信託会社等に相当の財産を信託しなければならなくなります。
    (会社法789条5項、799条5項、810条5項)

    ただし、会社分割をしてもその債権者を害するおそれがないときは、
    これらの弁済等の措置をとる必要はありません。
    (上記各条項のただし書き)
    その場合には、その債権者の異議を無視して、その債権者を害する
    おそれがないことを証する書面を添付して、会社分割登記を申請
    することができます。異議を述べた債権者がこの措置に不満のある
    ときは、「会社分割無効の訴え」(会社法828条1項9号10号)を
    提起することになります。

    その訴えにおいて、債権者を害するおそれがないことの証明責任は
    会社が負担します。


4.公告・催告の懈怠の効果

 (1)分割会社と承継会社・設立会社の両方が責任を負うとの規定

    分割会社の債権者であって、各別の催告が必要であるにもかかわらず
    催告を受けなかった債権者は、分割契約・分割計画で債務者としなかった
    会社に対しても、その会社が分割会社である場合は効力発生日に有して
    いた財産の価額を限度として、その会社が承継会社である場合は承継
    した財産の価額を限度として、債務履行を請求できるとされています。
    (759条2項3項、764条2項3項)

    もっとも、これもその債権者が異議を述べることができる場合に
    限られます。
    先に説明したとおり、分割会社の債権者が分割後も分割会社に債務
    (本来の債務または重畳的引受債務)または連帯保証債務履行
    請求することができる場合には、会社法制定前の「人的分割」になる
    場合を除いて、会社分割について異議を述べることはできませんので、
    そもそも債権者保護手続の対象とされておらず、したがって、その
    債権者に対する各別の催告がなされなくても、この規定の適用はあり
    ません。

 (2)会社分割無効の訴え

    各別の催告が必要であるにもかかわらず、会社が各別の催告を会社が
    懈怠した場合、「会社分割無効の訴え」(会社法828条1項9号10号)
    の対象となります。


  すなわち、各別の催告が必要であるにもかかわらず催告を受けなかった債権者は、
  「分割について承認をしなかった債権者」(会社法828条2項9号10号)は、
  会社分割無効の訴えを提起することができます。
  もっとも、ここでいう「分割について承認をしなかった債権者」についても、
  債権者保護手続において異議を述べることができる者であることが前提と
  されています。(異議を述べることができなければ、そもそも承認をする
  こともできません。)
  したがって、上記のとおり、分割会社の債権者が分割後も分割会社に債務
  (本来の債務または重畳的引受債務)または連帯保証債務履行を請求する
  ことができる場合には、会社法制定前の「人的分割」になる場合を除いて、
  会社分割無効の訴えを提起することができません。


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● 債権者保護手続が不要な場合
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今までの説明の裏返しになりますが、次の場合には、債権者保護手続
(公告と知れている債権者に対する各別の催告)が不要となります。
なお、吸収分割の場合、承継会社においては無条件で債権者保護手続が必要
になりますので注意が必要です。

1.分割会社において債権者保護手続が不要な場合(吸収分割新設分割に共通)

  次の要件をともに満たす場合

 (1)分割会社の債権者のすべてが分割後も分割会社に債務(本来の債務または
    重畳的引受債務)または連帯保証債務履行を請求することができること。

 (2)分割会社が会社分割の対価である株式(持分)の全部または一部を効力
    発生日に株主に分配しないこと。

2.設立会社において(新設分割のみ)

  新設分割の場合、設立会社における債権者保護手続は予定されていません。
  したがって、新設分割の設立会社では債権者保護手続をとる必要はありません。

3.留意点

  そうすると、新設分割の方法で会社分割を行う場合において、分割会社
  について11.の(1)(2)の要件をともに満たす場合には、分割会社に
  ついても設立会社においても、債権者保護手続は必要ではないということに
  なります。

  留意しておかなければならないことは、設立会社が分割会社に交付する
  会社分割の対価と分割会社から設立会社に移転した純資産の額が等価値で
  ある必要があるということです。


         (弁護士 緒方義行  http://www.fuso-godo.jp/



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