こんにちは。特定社会保険労務士の田中です。
就業規則の規定ひとつで、会社が損害を受けることもあります。
この「就業規則の勘所」では、良く見られる「就業規則の落とし穴」をご紹介します。
ぜひ、自社の就業規則をご確認ください。
【 トラブル発生! 】
従業員数200名の中堅企業であるA社は、有給休暇を1年に1回、4月1日に付与している。
A社は、新卒を毎年4月1日付けで4~5人採用するほか、
1年に2~3人の中途採用も行っている。
中途採用は、通年で行っているため、人によって入社月がまちまちとなっている。
なお、A社では、労働基準法を下回らないように、中途採用社員への有給休暇は、
入社して6ヶ月後に法定通りに10日、その後に到来する4月1日には、11日を付与している。
この付与方法であれば適法だが、入社月によって、有給休暇の付与日数に不公平感が生じてしまう。
例えば、10月1日に入社した人は、入社6ヶ月後が、翌年4月1日となる。
この日は、A社の有休付与日なので、この日に10日を付与される。
一方、9月1日に入社した人は、入社6ヶ月後の翌年3月1日に、法定通り10日を付与される。そして、わずかその1ヶ月後に、就業規則に基づいて11日が付与される。
つまり、入社のタイミングが1ヶ月異なるだけで、4月1日時点で、
10月入社の人は10日の有給休暇がある一方、
9月入社の人は21日の有給休暇があることになる。
これに対して中途入社の社員から、「不公平ではないか。」という声が上がったので、
A社の総務部門では対策を考えることにした。
【 ポイント 】
有給休暇を法定通りに付与すると、入社日のタイミングによる不公平感は避けられません。
そのため、次のいくつかの付与方法が考えられます。
(1)1年に1回の付与日を設ける。(今回の事例のパターン)
(2)6ヶ月ごとに1回の付与日を設ける。(1年に2回の付与日)
(3)3ヶ月ごと(または4ヶ月ごと)に1回の付与日を設ける。(1年に3または4回の付与日)
(4)入社日の属する月の6ヶ月後の初日を、付与日とする。(1年に12回の付与日)
(5)入社日から6ヶ月後を付与日とする。(1年に365回の付与日)
上記のうち、(5)は入社のタイミングによる不公平感はありませんが、管理に手間がかかります。
(1)から(4)になるにつれ、付与するタイミングが増えますので、不公平感が減るかわり、
手間が増えます。このバランスを考え、付与の方法を判断する必要があります。
(なお、給与計算ソフトや、表計算ソフトの活用によって、事務負担の軽減は可能になります。)
【 アクション 】
A社では、就業規則を改定して、
『入社日を起算日として、6ヶ月継続勤務後に有給休暇を付与する』ことにしました。
(前述のポイントでの(5)の方法です。)
管理としては、煩雑な方法ですが、
・多くの人が4月1日入社であり、実際には付与タイミングはそれほど多様化しない。
・給与計算ソフトを活用することにより、管理の負担が減る、
という理由で、この付与方法としました。
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仕事もタイミングが重要です。就業規則の変更もその内容によっては、
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社会保険労務士 田中事務所 田中理文
自らが、従業員を雇用する創業経営者だから出来るアドバイスをしています。
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☆☆☆☆☆ 『就業規則の勘所』シリーズ ☆☆☆☆☆
その1 『パートタイマーや契約社員用の就業規則も作りましょう』
http://www.soumunomori.com/column/article/atc-153786/
その2 『身元保証には期限が有ります。必要に応じて更新しましょう。』
http://www.soumunomori.com/column/article/atc-154137/
その3 『試用期間について、免除・短縮・延長の規定を検討しましょう。』
http://www.soumunomori.com/column/article/atc-154342/
その4 『柔軟な人員配置ができるように、配置転換を規定しましょう。』
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その5 『服務規律は、時流に合わせて、常に見直しましょう。』
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その6 『勤務時間中のネット閲覧・私用メールの対策をたてましょう。』
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