• HOME
  • コラムの泉

コラムの泉

このエントリーをはてなブックマークに追加

専門家が発信する最新トピックスをご紹介(投稿ガイドはこちら

【社長辞任】裁判所の決定の異例な点Q&A②

 こんにちは、産業医・労働衛生コンサルタントの朝長健太です。
 従業員の健康問題(従業員主治医の診断書が起因)が企業の経営に直結し、時には社長・役員の辞任、売上減少、株主代表訴訟にまで発展するケースが顕在化しています。また、従業員の健康を第一に守るという目的により、企業ガバナンスの逆転現象が起き、結果的に健康を守りきれなかったという矛盾も生じています。
 健康管理は、ケガからハラスメントまで、対策の範囲が広いです。そこで、企業ガバナンスを経営者主体という本来の形にすることで、会社と経営者を第一に守り、その結果、従業員の健康を守るという目的で、下記の日本規格協会規格(JSA 規格)「JSA-S1025 ヒューマンリソースマネジメント-組織(企業)が⾏う健康管理-職域健康専⾨家の活⽤の指針」を開発しました。
 また、認証機関も立ち上げております。
なお、日本規格協会は、経済産業省による認定産業標準作成機関であり、唯一のマネジメントシステム作成機関です。
 企業主体の健康管理体制の構築について、ぜひJSA-S1025をご活用ください。

 今回は、「【社長辞任】裁判所の決定の異例な点Q&A②」について作成しました。
 企業利益の向上という、精神的・社会的健康を向上させるために、弊社をご活用ください。
========================
【社長辞任】裁判所の決定の異例な点Q&A②
========================
 次のコラムについて、大きな反響をいただきありがとうございます。
 裁判所提案で、社長辞任となる時代がいよいよ始まっています。
 もはや、医師と連携していない社長については、裁判所は一定の結論を出したと言えるでしょう。
 医師と連携している社長について、対応の正当性が、次世代の裁判の争点になると考えられます。
 【社長辞任】ハラスメントによる従業員の健康障害について、問い合わせがありましたので、Q&A形式で回答させていただきます。

【社長辞任】ハラスメントによる従業員の健康障害
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-177734/

Q
 東京地裁が下した「調停に代わる決定」は、従来の賠償決定と比べてどのような点で異例的だったと言えますか?

A
 ハラスメント・過重労働を原因として、企業の責任が問われた判例には、次のものがあります。

①メイコウアドヴァンス事件(東京地裁 平成12年12月15日判決)
事案の概要: 会社役員によるパワハラ、暴行、退職強要などの不法行為により、従業員が自殺に至った事案です。
【判決のポイント】
パワハラと自殺との間に相当因果関係を認めました。
・会社およびパワハラを行った役員に対し、逸失利益慰謝料など約5,400万円の連帯賠償を命じました。
・ハラスメント行為を行った者だけでなく、使用者責任に基づき会社全体の責任を認めています。

②金属加工・人材派遣会社(名古屋地裁 平成26年1月15日判決)
事案の概要: 金属加工及び人材派遣会社で働く従業員が、代表取締役から激しい暴言・暴行を受け、自殺した事案です。
【判決のポイント】
・暴言・暴行が不法行為に当たるとし、会社に対し合計約5,947万円の損害賠償を認めました。
・ハラスメントの加害者が代表取締役自身であった場合でも、安全配慮義務違反に基づく会社の責任が厳しく問われることを示しています。

③ 静岡県警警部補 自殺事案(過重労働) (最高裁 令和7年3月7日判決)
事案の概要:警察官の過重労働による精神疾患発症と自殺について、静岡県に高額賠償を命じた判例です。
【判決のポイント】
・月80時間を超える時間外労働が継続するなど、過重な業務の実態を認定。
・県の安全配慮義務違反を認め、遺族への約1億円の賠償を命じました。
・ハラスメントと直接関係しなくても、過重労働の放置という体制の不備が重大な責任につながることを示しています。

 ①~③の判例は、組織側に賠償を求めています。東京地方裁判所が下した「調停に代わる決定」との違いは、ハラスメントによる死亡災害に対する『企業のトップの責任』と『再発防止の姿勢』を従来の金銭賠償以上に強く問うた点にあります。
 従来の労災やハラスメントを原因とする損害賠償訴訟では、主に会社と加害者である上司に対する金銭賠償(慰謝料逸失利益)の支払いが中心でした。
 しかし、この決定では、賠償金(1億5千万円)の支払いに加えて、当時の社長が3カ月以内に辞任するという事項が盛り込まれました。
 死亡災害という重大な結果に対し、金銭的な責任だけでなく、組織のトップである経営者個人の進退という形で監督責任・経営責任を明確に問うた点が異例です。
 さらに、社長交代を促すことは、組織の風土や体制を根本から変革し、ハラスメントの再発防止に本格的に取り組むという会社の姿勢を、外部(社会や遺族)に示す強いメッセージとなりました。

産業医による背景の考察
 裁判所が異例の決定を行った背景として、企業側が勝訴している事例が蓄積されている背景があると考えられます。
 労働災害において、企業側が負けた判例は、多く公表されています。
 一方、企業が勝訴した場合、公表を忌避するのは、ほとんどが企業側になります。産業医として経験した次のような理由がありました

労働災害発生したことを公表したくないため
 勝訴の判例を示すことは、労働災害が発生したことを公表することになるため、株主対応のリスクも含め、可能な限り目立たないようにしておきたい。
②イメージダウンを避けるため
 裁判上は企業に責任が無くても、人道的には労災を発生させた一定の責任はある。従って、勝訴を公表することが、顧客や取引先のイメージダウンにつながることを避けたい。
③本人・家族の次の一手を避けたい
 勝訴を公表することで、本人や家族が事件に対する印象を悪化させ、控訴等の手続きを進める可能性があるため、勝訴の結果に基づいて速やかに事件を収束させたい。

 このような理由で、公表はされないが、裁判所においては企業側が適切に安全配慮義務を果たした判例が蓄積されていると考えられます。
 もしそうであるなら、裁判所としては適切に対応している社長がいるのに、なぜ、この社長は安全配慮義務を果たしていなかったのかと、印象を受けることが考えられます。
 産業医の職責として、業務上知り得た情報を公開することはできませんが、適切に安全配慮義務を果たしている社長は多くいます。また、その社長は、適切に産業医を選任し、対策を行っています。そういった公表されていない事実に基づいて、異例の決定がなされたと考えられます。

========================
JSA-S1025 ヒューマンリソースマネジメント-組織(企業)が⾏う健康管理-職域健康専⾨家の活⽤の指針

JSA-S1025ページ
https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=JSA-S1025%3A2025

JSA-S1025紹介
https://webdesk.jsa.or.jp/pdf/jsa/pdf_jsa_372.pdf

【JSA-S1025】開発の解説
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-177724/

絞り込み検索!

現在22,952コラム

カテゴリ

労務管理

税務経理

企業法務

その他

≪表示順≫

※ハイライトされているキーワードをクリックすると、絞込みが解除されます。
※リセットを押すと、すべての絞り込みが解除されます。

スポンサーリンク

経営ノウハウの泉より最新記事

スポンサーリンク

労働実務事例集

労働新聞社 監修提供

法解釈から実務処理までのQ&Aを分類収録

注目のコラム

注目の相談スレッド

スポンサーリンク

PAGE TOP