■Vol.39(通算 Vol.174) 2008-6-18 毎週水曜日配信
■■■―――――――――――――――――――――――――――――――
□□■ 経営に生かせる
人事・
労務・法律の知識
■■■ ― 経営者、起業準備の方必見です!―
□□■
■■■ 「権利の消滅」と「権利の保存」1
□□■
■■■ 週刊(毎週水曜日発行)
□□■
http://www.o-bamc.com
■■■―――――――――――――――――――――――――――――――
弁護士の緒方義行です。
今回は、「権利の消滅」と「権利の保存」というテーマを取り扱ってみます。
権利というものは、どうやって消滅してしまうのか?
消滅しないようにするためには、何をすればいいのか?
・・・というテーマを2回の掲載でお届けします。
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
「権利の消滅」と「権利の保存」1
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
「権利の消滅」というのは、典型的なものとして、
時効(
消滅時効)によっ
て権利が消滅してしまうことを想定しています。
「権利の保存」というのは、権利が消滅してしまわないように
時効を中断し
たりして権利を守ることを想定しています。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++
「
時効(
消滅時効)」
+++++++++++++++++++++++++++++++++++
「
時効」には、「
取得時効」と「
消滅時効」があります。
「
取得時効」というのは、他人の物を一定期間占有すること等によりその所
有権等を取得するというものです。
「
消滅時効」というのは、
債権などの権利を一定期間行使しないでいると、
権利自体が消滅してしまうというものです。
どちらの
時効も、これを主張すること(「援用」といいます。)が必要にな
ります。
消滅時効には、これにかかる権利とかからない権利があります。
消滅時効にかかる権利は、「
債権」と「
債権又は
所有権以外の権利」(地上
権・永小作権・地役権など)です。
所有権や
所有権に基づく権利などは
消滅時効にかかりません。
権利の種類によって、
消滅時効の期間は異なります。
債権は、一般に、10年(商行為から生じた
債権は5年)で
消滅時効にかか
ります。
もっと短期間の
時効期間を定めた
債権もあります。
たとえば、医師の治療費は3年、
請負代金
債権も3年、弁護士の
報酬は2年、
宿泊代金や飲食代金は1年などと定められています。よく、飲み屋のツケは
1年で消えるなどと言われます。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++
「
消滅時効」と「権利の保存」―「
時効の中断」
+++++++++++++++++++++++++++++++++++
消滅時効は、単に時間が経てば消えてしまうというのではなく、権利の不行
使という事実状態が続くことが必要です。
時効期間内に権利が行使されてし
まえば
時効は完成しません。
そこで、
民法は、
債権者が、権利を行使したときには、それまでに進行した
時効期間は全く効力を失ってしまって、振り出しに戻るという制度を設けま
した。これを「
時効の中断」といいます。
それでは、何をすれば、
時効は中断するのでしょうか?
民法は、次の3つを定めています。
1)「請求」・・・訴えの提起(裁判上の請求)など
*「
催告」とは違うことに注意!
「請求」と言えるためには、何らかの形で裁判所が関与する手続が必要です。
単に、
弁済しろと請求書を送ったり、
内容証明郵便を送ったりすることは
「
催告」と呼ばれ、それ自体には完全な中断の効力はありません。
「
催告」は、6カ月以内に裁判上の請求その他の裁判所の関与する手続を行
なわなければ中断の効力を生じません。しかも、
催告を繰り返しても、この
6ヵ月の期間を延ばすことはできません。
2)「差押・仮差押又は仮処分」・・・
強制執行や権利の保全手続のこと
3)「承認」・・・
債務者が
債務を認めること
+++++++++++++++++++++++++++++++++++
「除斥期間」
+++++++++++++++++++++++++++++++++++
消滅時効と似ているのが「除斥期間」というものです。
これは、純然たる「権利行使期間」であって、一定の期間内に権利の行使を
しないと権利が消滅するというものです。
時効と違って、1「援用」は不要(当事者が主張しなくても、裁判所は職権
で権利の消滅を判断できる。)で、2「中断」もなく、その期間内に「権利
行使」をしなければ当然に権利が消滅するとされています。
法律が権利行使の期間を定めている場合に、それが「
消滅時効」なのか「除
斥期間」なのかは、判断が難しいことがありますが、例えば、次のような例
があります。
(1)
不法行為に基づく
損害賠償請求権は
不法行為の時から20年を経過す
ると消滅するとされていますが、この20年の期間は除斥期間である
と考えられています。
(2)売買により購入した物に「隠れた
瑕疵」があるときは、買主は、売主
に対して
売買契約の解除や
損害賠償を請求することができますが、こ
の
損害賠償請求権は、買主が事実を知ったときから1年以内に請求し
なければ消滅するとされています。この1年の期間も除斥期間である
と考えられています。
・・・次回は、引き続き「除斥期間」と「権利の保存」をお送りします。
(弁護士 緒方 義行)
URL
http://www.fuso-godo.jp/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆本メルマガへの意見、質問、感想、ご相談など
→
info@c3-c.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
C Cubeでは、税務、
会計だけでは解決しないさまざまのことを、
「人」の問題として考えています。
何か足らないとお思いの方は、弊社のホームページにヒントがある
かもしれません。
ホームページはこちら ⇒
http://www.c3-c.jp
■Vol.39(通算 Vol.174) 2008-6-18 毎週水曜日配信
■■■―――――――――――――――――――――――――――――――
□□■ 経営に生かせる人事・労務・法律の知識
■■■ ― 経営者、起業準備の方必見です!―
□□■
■■■ 「権利の消滅」と「権利の保存」1
□□■
■■■ 週刊(毎週水曜日発行)
□□■
http://www.o-bamc.com
■■■―――――――――――――――――――――――――――――――
弁護士の緒方義行です。
今回は、「権利の消滅」と「権利の保存」というテーマを取り扱ってみます。
権利というものは、どうやって消滅してしまうのか?
消滅しないようにするためには、何をすればいいのか?
・・・というテーマを2回の掲載でお届けします。
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
「権利の消滅」と「権利の保存」1
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
「権利の消滅」というのは、典型的なものとして、時効(消滅時効)によっ
て権利が消滅してしまうことを想定しています。
「権利の保存」というのは、権利が消滅してしまわないように時効を中断し
たりして権利を守ることを想定しています。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++
「時効(消滅時効)」
+++++++++++++++++++++++++++++++++++
「時効」には、「取得時効」と「消滅時効」があります。
「取得時効」というのは、他人の物を一定期間占有すること等によりその所
有権等を取得するというものです。
「消滅時効」というのは、債権などの権利を一定期間行使しないでいると、
権利自体が消滅してしまうというものです。
どちらの時効も、これを主張すること(「援用」といいます。)が必要にな
ります。
消滅時効には、これにかかる権利とかからない権利があります。
消滅時効にかかる権利は、「債権」と「債権又は所有権以外の権利」(地上
権・永小作権・地役権など)です。
所有権や所有権に基づく権利などは消滅時効にかかりません。
権利の種類によって、消滅時効の期間は異なります。
債権は、一般に、10年(商行為から生じた債権は5年)で消滅時効にかか
ります。
もっと短期間の時効期間を定めた債権もあります。
たとえば、医師の治療費は3年、請負代金債権も3年、弁護士の報酬は2年、
宿泊代金や飲食代金は1年などと定められています。よく、飲み屋のツケは
1年で消えるなどと言われます。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++
「消滅時効」と「権利の保存」―「時効の中断」
+++++++++++++++++++++++++++++++++++
消滅時効は、単に時間が経てば消えてしまうというのではなく、権利の不行
使という事実状態が続くことが必要です。時効期間内に権利が行使されてし
まえば時効は完成しません。
そこで、民法は、債権者が、権利を行使したときには、それまでに進行した
時効期間は全く効力を失ってしまって、振り出しに戻るという制度を設けま
した。これを「時効の中断」といいます。
それでは、何をすれば、時効は中断するのでしょうか?
民法は、次の3つを定めています。
1)「請求」・・・訴えの提起(裁判上の請求)など
*「催告」とは違うことに注意!
「請求」と言えるためには、何らかの形で裁判所が関与する手続が必要です。
単に、弁済しろと請求書を送ったり、内容証明郵便を送ったりすることは
「催告」と呼ばれ、それ自体には完全な中断の効力はありません。
「催告」は、6カ月以内に裁判上の請求その他の裁判所の関与する手続を行
なわなければ中断の効力を生じません。しかも、催告を繰り返しても、この
6ヵ月の期間を延ばすことはできません。
2)「差押・仮差押又は仮処分」・・・強制執行や権利の保全手続のこと
3)「承認」・・・債務者が債務を認めること
+++++++++++++++++++++++++++++++++++
「除斥期間」
+++++++++++++++++++++++++++++++++++
消滅時効と似ているのが「除斥期間」というものです。
これは、純然たる「権利行使期間」であって、一定の期間内に権利の行使を
しないと権利が消滅するというものです。
時効と違って、1「援用」は不要(当事者が主張しなくても、裁判所は職権
で権利の消滅を判断できる。)で、2「中断」もなく、その期間内に「権利
行使」をしなければ当然に権利が消滅するとされています。
法律が権利行使の期間を定めている場合に、それが「消滅時効」なのか「除
斥期間」なのかは、判断が難しいことがありますが、例えば、次のような例
があります。
(1)不法行為に基づく損害賠償請求権は不法行為の時から20年を経過す
ると消滅するとされていますが、この20年の期間は除斥期間である
と考えられています。
(2)売買により購入した物に「隠れた瑕疵」があるときは、買主は、売主
に対して売買契約の解除や損害賠償を請求することができますが、こ
の損害賠償請求権は、買主が事実を知ったときから1年以内に請求し
なければ消滅するとされています。この1年の期間も除斥期間である
と考えられています。
・・・次回は、引き続き「除斥期間」と「権利の保存」をお送りします。
(弁護士 緒方 義行)
URL
http://www.fuso-godo.jp/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆本メルマガへの意見、質問、感想、ご相談など
→
info@c3-c.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
C Cubeでは、税務、会計だけでは解決しないさまざまのことを、
「人」の問題として考えています。
何か足らないとお思いの方は、弊社のホームページにヒントがある
かもしれません。
ホームページはこちら ⇒
http://www.c3-c.jp