相談の広場
自己都合による退職する社員に、会社より貸付金があります。給与支給日に、残金を一括徴収し、残りの金額を本人に支給したいのですが、借用書には、退職時に一括返済の一文を入れていません。この場合、一括徴収は可能でしょうか。
本人は分割を希望していますが、返済の目途は不明です。
給与支給額>返済額
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法律の専門家ではありませんので、参考程度にお聴きください。
金銭の貸付には貸付の際に以下のような取り決めを行っていること思います。
1.貸付金額
2.返済期日
3.貸付利息
4.返済方法
このうちの返済期日までの期間を「期限の利益」といい、借主はこの期日以前に全額返済を完了させる義務はありません(返済方法は守らねばなりませんが)。
ところが借主が社員ではなくなったときには全額を返済してもらう必要がありますから、借用書には以下の一文を入れることになります。
一、次の場合は期限の利益を失い、直ちに債務の支払いを請求されても異議ありません。
1.他の債務のため強制執行・破産の申し立てを受けたとき。
2.××株式会社の社員でなくなったとき。
これにより退職時に残高を一括返済してもらうことが可能になるわけです。社内融資の目的はあくまでも自社社員の福利厚生を目的としたものである以上、社員でなくなれば融資の目的を失うわけですから一括返済は当然のことと考えます。
しかしながら借用書に上記の一文がなければ、借主にしてみれば期限の利益が依然として存在するという解釈が成り立つことになります。
また、最後の給与から残りの返済額を差し引くのは労働基準法の給与の全額払い原則に違反する可能性があることと、給与から控除できる項目の制限の問題もありますので安易に行うべきではないと考えます(現金による返済が望ましい)。
一度本人と話し合ったうえで一括返済が難しければ、法律の専門家に相談されることをお勧めします。
トライジンジさん こんにちは
お話の社員への貸付問題、多発しています。
退職金も労働基準法(労基法)上の賃金ですから、労基法の賃金の支払に関する原則の一つである全額払いの原則(労基法24条)の適用があります。
従って、従業員貸付の貸付金と退職金とを相殺するためには、労基法24条に定める労使協定があることが必要になります。
また、相殺するためには、双方の債権について期限が到来していなければなりませんので、会社と従業員との貸付契約において、退職時に期限の利益を喪失し(退職時に残金全額を返済する)、返済は退職金と相殺する旨の約定を締結しておく必要があります。
ご質問の労使協定がなき場合ですが、
判例は、その場合でも労働者の同意を得てなされた相殺で、その同意が労働者の自由意思に基づくものと認められるような事情がある場合に、相殺を認めています。
以下は、有名な判例ですので参考にして下さい。
日新製鋼事件(最高裁判例平成2年11月26日)
使用者が労働者の同意を得て相殺により賃金を控除することは、右同意が労働者の自由意思に基づいてなされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときには、本条の全額払いの原則に違反しない。労働者が会社や銀行等から住宅資金の貸付けを受けるに当たり、退職時には退職金等から融資残債務を一括返済し、銀行等への返済については会社に対して返済手続を委任する約定をし、会社がこれに基づいて、自己貸付金の残金一括返済請求権、及び右委任に基づく銀行等の貸付金の残金一括返済のための返済費用前払請求権(民法649条)をもって退職金債権等と相殺した場合に、返済の手続等を労働者が自発的に依頼し、右貸付が低利かつ相当長期の分割弁済を予定しており、その利子の一部を会社が負担するような措置がとられているときには、労働者の相殺の同意はその自由意思に基づくものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在したものといえる。
ご質問から判断しますと、本人から分割返済との申し入れがありますから、その返済方法、および返済期日、返済不能になった場合の善意の第三者等報告を求めておくことでしょう。
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