相談の広場
いつも勉強させていただいております。
社員40名ほどの会社で総務・経理を担当しております。
「払い過ぎた通勤費を返還要求できるか」について教えて下さい。
弊社では1ケ月の定期代を本人の申請(所定の申請書有り)に基づき支払っております。
この度、引越しをした社員の通勤費が引越し前より変更されず、高いまま支給していたことが判明しました。(この社員は会社近くに引越しをした為 毎月5000円ほど定期代が安くなりました)引越しは一昨年であり、既に1年以上経過しています。
払い過ぎた通勤費を何回か分割して戻してもらうよう、本人に話しをしました。
が、当時の総務担当者が 引越しした旨は本人より聞いていたのに申請書を出すよう指示しなかったようでして、本人は「会社側のミス」だから、と拒んでおります。社長は「不正受給だ。全額返還しろ」と怒っており、心証はとても悪くなっております。今後の本人の為にも良い解決策は無いか思案中です。
このような場合、遡及して請求する事は出来ますか。
出来る、出来ない場合の根拠も併せて教えていただけると助かります。
どうぞよろしくご教授ください。
※参考までに弊社の通勤手当の規程を抜粋して掲載させて頂きます。
1)公共交通機関、自家用自動車を利用して通勤する従業員については、通勤手当を支給する。ただし、あらかじめ「通勤方法申請・変更届」を提出し、支給を認められなければならない。
2)通勤経路および方法については、最も経済的、合理的な方法による。
3)公共交通機関を利用する場合の通勤手当については、毎日通勤する者(日雇者を除く)で定期券を購入する者に対し、定期券購入費に相当する金額を1ヶ月ごとに支給する。
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こんにちは。
rinrin18さんのお勤め先では、通勤規程に「報告義務」や「それに違反したときの罰則」を明記されていないのでしょうか?
私の勤め先では、通勤に関する事項に変更があったときの報告義務を課していまして、
「報告義務を怠ったときは、既に支払った通勤手当を返金させることがある。」
「悪意をもって故意に不正な通勤手当の支給を受けたときは、既に支給された通勤手当を返金させるとともに、以後は通勤手当を支給しない。」
という罰則規定もあります。
もしも今現在このような規程がないのならば、設けておいたほうが今後のためになると思います。
次に、ご質問の内容を踏まえ、
(1)会社は過払い分を精算できるのか。
(2)できるとすると、いつまで遡ってどんな方法でできるのか。
(3)「意図的な嘘」「うっかりミス」での相違はあるか。
等について説明します。
(1)について
民法では、払う必要がなかったのに払ってしまった場合、払った人はその金を返してもらうという規定があります(民法第703条・704条の不当利得返還請求権)。
そのため、ご質問の件は過払い分のみ、請求が可能だと思います。
社長さんのお気持ちはわかりますが、通勤手当全額の返還請求は、罰則として規定にうたっていないと難しいのでは・・・と思います。
(2)について
まず、過去何年分まで遡って請求できるのか?ということですが、不当利得返還請求権は過去10年分まで遡ってできます(民法第167条1項)。
ご質問の場合は2年くらいなので大丈夫ですね。
次に返還の方法ですが、本人から現金で返してもらうよりは、今後の給料から過払い分を差し引いて(相殺)、その残額を支払うという方法が一番確実かつ簡単では?
相殺については、前貸し債権との相殺禁止(労働基準法第17条)と賃金全額払いの原則(同法第24条)に反しないのかが問題になりますが、判例では社員の生活に支障を来さない程度の相殺は認められています(最高裁第1小昭和44年12月18日判決、大阪地裁平成12年8月25日判決)。
一括返済・・・というわけにはいかないと思いますので、支払われるはずの通勤手当の額と相殺(過払い分を徴収し終えるまで、通勤手当を支給しない)のがよいのではないでしょうか。
(3)について
心情としてうっかりミスなら許すけれども意図的なら許せないという場合もあると思います。
過払い請求は、うっかりミスか意図的かを問わずどちらでも可能ですが、意図的な場合のみ請求するとして取扱いに差異を設けることもできます。(規程に明記しておかなければダメですが)
さらに、意図的な場合、就業規則の内容如何では「意図的に虚偽の申告を行った」ということで、懲戒事由にあたり、解雇、減給等の処分、詐欺罪の刑事告訴も可能と思います。(そこまでされるおつもりはないのでしょうが、一応知識として)
ご参考になれば幸いです。
まゆり様
丁寧にご回答いただき有難う御座いました。
「報告義務」や「それに違反したときの罰則」は目からウロコでした。今後の為にも、弊社も早速、通勤規程に明記するよう準備していきます。
私の書き方がまずくて混乱をまねき申し訳ございませんでした。
社長が「全額返還」とは過払い分の金額のことです。それも
> 過払い請求は、うっかりミスか意図的かを問わずどちらでも可能です
> 不当利得返還請求権は過去10年分まで遡ってできます(民法第167条1項)
と教えて頂きましたので、これからの本人への交渉が気持ち的にとても楽になりました。
本人の心情も推し量り、社長の怒りも収まる程度の折衷金額を過払い全額とはいかなくても、給与から少しずつでも精算していけるよう話を進めていきます。
とてもとても参考になりました。有難う御座いました。
まゆり様のご投稿のとおり、結果から申し上げますと返還請求は可能です。というか当然の権利です。
不当利得は、善意の場合(交通費が下がったことを知らなかったとき)は民法第703条、悪意の場合(交通費が下がったことを知っていたとき)は第704条適用となります。つまり後者の場合は利息及び損害賠償の支払い義務まで発生します。
当該事務員が、通勤の方法の変更申請を求めなかったとしても悪意が善意になることはありません。
不当利得とは、法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした受益者のことをいいます。つまり、受益していればそれだけで利得となります。
今後の対応ですが、口で言って聞かないのであれば文書で示す方法をとります。
当事務所の場合は、私が作成した回答文書を相手方に提示してもらったり、場合によっては内容証明文書を送達します。これらは、後日争いが派生しないようにするための予防法務でもあります。給料から天引きするにしても、一度”請求”しておいた方がいいでしょう。
いきなり天引きするのと、請求したのに応じなかったため天引きするのとでは裁判官に与える心証も異なります。
(この場合の請求とは、後日の証拠となる内容証明文書でする請求のことです。時効を中断させる目的ではないため、6ヶ月以内に提訴する必要は今のところありません。)
また、刑事的には第246条2項詐欺利得罪となります。刑事告訴もチラつかせることも場合によっては必要です。
お困りのようでしたらお気軽にご相談ください。
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