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【レジュメ編】 地方自治法(その5)

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     ★★★ 新・行政書士試験 一発合格! Vol. ’06-41 ★★★
           【レジュメ編】 地方自治法(その5)

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■■■ 地方自治法 ■■■
■■■ 国地方係争処理委員会
■■■ 自治紛争処理委員
■■■ お願い ■■■
■■■ 編集後記 ■■■

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

■■■ 地方自治法 ■■■
今回の地方自治法でも、行政法(行政不服審査法や行政事件訴訟法)、個人情報保護法
との「横」比較を行うことが理解につながります。それぞれの事項の異同をしっかり理
解することで、確実に高得点を狙うことが可能になります。どうか行政不服審査法、行
政事件訴訟法、個人情報保護法の復習を兼ねて「横」比較を徹底してください。

■■■ 国地方係争処理委員会
★ 情報公開・個人情報保護審査会設置法に定められた情報公開・個人情報保護審査会
  との異同を確認してください。

■ 組織上の位置づけ
普通地方公共団体に対する国の関与の適正を確保するために、両者間に生じた係争が事
実上の力関係により不透明に処理されることを避け、公正・中立な立場で係争を審査す
る機関により処理されることが望ましく、また、司法審査に移行する前に行政レベルで
係争のスクリーニングを行うことが望まれることから、総務省に、国地方係争処理委員
会が設置された(250条の7第1項)。

■ 権限
250条の7第2項 委員会は、普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与のうち
国の行政機関が行うもの(以下「国の関与」という。)に関する審査の申出につき、こ
の法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理する。

(1)国地方係争処理委員会は、勧告権限を有する国家行政組織法上の8条機関であ
   る。
(*)国家行政組織法第8条  国の行政機関には、法律の定める所掌事務の範囲内
   で、法律又は政令の定めるところにより、重要事項に関する調査審議、不服審査
   その他学識経験を有する者等の合議により処理することが適当な事務をつかさど
   らせるための合議制の機関を置くことができる。
(2)国地方係争処理委員会の勧告があったときは、当該勧告を受けた国の行政庁は、
   当該勧告に示された期間内に、当該勧告に即して必要な措置を講ずるとともに、
   その旨を委員会に通知しなければならない(250条の18)。
(3)国地方係争処理委員会の勧告を受けた国の行政庁が当該勧告に示された期間内に
   措置を講じないときは、普通地方公共団体の長その他の執行機関は訴訟を提起で
   きる。このため、委員会の勧告はかなりの実効性を持つ(251条の5第1項4
   号)。

■ 委員
(1)5人の委員で組織される。委員は非常勤だが、そのうち2人以内は常勤とするこ
   とができる(250条の8)。
(2)委員は、優れた見識を有する者のうちから、両議院の同意を得て、総務大臣が任
   命する(250条の9第1項)。
(3)委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の
   解散のために両議院の同意を得ることができないときは、総務大臣は、有資格者
   のうちから、委員を任命することができる。この場合、任命後最初の国会におい
   て両議院の事後の承認を得なければならず、それが得られないときは、総務大臣
   は、直ちにその委員を罷免しなければならない(250条の9第3項、第4項)。
(4)委員の政治的中立性を確保することが重要であるため、委員の任命については、
   そのうち3人以上が同一の政党その他の政治団体に属することとなってはならな
   い(250条の9第2項)。
(5)委員は、在任中、政党その他の政治団体の役員となり、または積極的に政治運動
   をしてはならない(250条の9第14項)。
(6)委員は、職務上知りえた秘密を漏らしてはならず、その職を退いた後も、守秘義
   務を負う(250条の9第13項)。
(7)常勤の委員は、在任中、総務大臣の許可がある場合を除き、報酬を得て他の職務
   に従事し、または営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行っ
   てはならない(250条の9第15項)。
(8)委員は、自己に直接利害関係のある事件については、その議事に参与することは
   できない(250条の9第16項)。
(9)委員の任期は3年であるが、再任は認められている(250条の9第6項)。委員の
   任期が満了したときは、当該委員は、後任者が任命されるまで引き続きその職務
   を行う(250条の9第6項)。
(10)委員が公正中立に職務を執行することを保障するために、その身分を保証する必
   要がある。このため、罷免事由は、以下の5つに限定され、これ以外の場合はそ
   の意に反して罷免されることはない(250条の9第12項)。罷免者は総務大臣であ
   るが、(イ)(ウ)(オ)の場合は両議院の同意を得る必要がある。
(ア)破産宣告を受け、または禁錮以上の刑に処せられた委員(250条の9第8項)
(イ)委員のうち何人も属していなかった同一の政党その他の政治団体に新たに三人以
   上の委員が属するに至った場合において、これらの者のうち二人を超える員数の
   委員(250条の9第9項第1号)
(ウ)委員のうち一人が既に属している政党その他の政治団体に新たに二人以上の委員
   が属するに至った場合において、これらの者のうち一人を超える員数の委員
   (250条の9第9項2号)
(エ)委員のうち二人が既に属している政党その他の政治団体に新たに属するに至った
   委員(250条の9第10項)
(オ)総務大臣が、心身の故障のため職務の執行ができないと認める委員、又は職務上
   の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める委員(250条の9第11
   項)
(11)委員の任命が国会の同意を要する人事であるため、委員は特別職となり(国家公
   務員法2条3項9号)、一般職の職員の給与に関する法律は適用されないため、
   委員の給与は、別に法律で定める(250条の9第17項)。

■ 委員長(250条の10)
委員会に、委員長を置き、委員の互選によりこれを定める。
2 委員長は、会務を総理し、委員会を代表する。
3 委員長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理
る。

■ 会議(250条の11)
委員会は、委員長が招集する。
2 委員会は、委員長及び二人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をする
ことができない。
3 委員会の議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決す
るところによる。

■ 審査手続(250条の13)
【1】国の関与に対する審査の申出
(1)普通地方公共団体の長その他の執行機関は、その担任する事務に関する国の関与
   のうち是正の要求、許可の拒否その他の処分その他公権力の行使に当たるものに
   不服があるときは、委員会に対し、当該国の関与を行った国の行政庁を相手方と
   して、文書で、審査の申出をすることができる(1項)。
(2)但し、代執行手続における指示(245条の8第2項)、代執行(245条の8第8
   項)は、審査の対象から除外されている。
(3)関与の定義から、地方公共団体が私人と同じ立場で当該行為の名あて人となるも
   の(「固有の資格」によらないもの)が除かれている(245条)。そのため、こ
   の場合には、私人の場合と同様、行政不服審査法によって争うことになり、国地
   方係争処理委員会に審査の申出をすることはできない。
(4)国の関与のうち是正の要求、許可の拒否その他の処分その他公権力の行使に当た
   るものに対する審査の申出は、国の関与があった日から30日以内にしなければな
   らない。なお、天災その他止むを得ない理由があるときは、この限りではない
   (4項)。ただし、やむを得ない理由がやんだ日から1週間以内にしなければな
   らない(5項)。
★ 行政事件訴訟法の取消訴訟の出訴期間(14条、38条)と比べて、相当期間が短くな
  っている。
(5)審査の申出にかかる文書を郵便で提出した場合には、期間の計算については、郵
   送に要した日数は算入しない(6項)。
(6)普通地方公共団体の長その他の執行機関は、その担任する事務に関する国の不作
   為(国の行政庁が、申請等が行われた場合において、相当の期間内に何らかの国
   の関与のうち許可その他の処分その他公権力の行使に当たるものをすべきにかか
   わらず、これをしないこと)に不服があるときは、委員会に対し、当該国の不作
   為に係る国の行政庁を相手方として、文書で、審査の申出をすることができる
   (2項)。この場合には、審査の申出の期間制限は設けられていない。
(7)普通地方公共団体の長その他の執行機関は、その担任する事務に関する当該普通
   地方公共団体の法令に基づく協議の申出が国の行政庁に対して行われた場合で、
   当該協議に係る当該普通地方公共団体の義務を果たしたと認めるにもかかわらず
   当該協議が調わないときは、委員会に対し、当該協議の相手方である国の行政庁
   を相手方として、文書で、審査の申出をすることができる(3項)。この場合に
   も、審査の申出の期間制限は設けられていない。
★ 審査の申出の対象となるのは、国の関与のうち処分その他公権力の行使にあたるも
  の、不作為および協議の3つである。
(8)普通地方公共団体の長その他の執行機関は、審査の申出をしようとするときは、
   相手方となるべき国の行政庁に対し、その旨をあらかじめ通知しなければならな
   い(7項)。

【2】審査および勧告(250条の14)
(1)国の関与のうち是正の要求、許可の拒否その他の処分その他公権力の行使に当た
   るものに対する審査の申出については、国地方係争処理委員会の審査権の範囲
   は、自治事務の場合と法定受託事務の場合とで異なる。
→ 自治事務の場合は、国の関与が違法か否かのみならず、普通地方公共団体の自主性
  及び自立性を尊重する観点から不当でないかについても審査できる(1項)が、法
  定受託事務の場合には、適法性の審査のみが可能である(2項)。
(2)審査の結果、違法性(自治事務、法定受託事務)、不当性(自治事務)がないと
   認めるときは、国地方係争処理委員会は、理由を付してその旨を当該審査の申出
   をした普通地方公共団体の長その他の執行機関および当該国の行政庁に通知する
   とともにこれを公表しなければならない。
   逆に、審査の結果、違法性(自治事務、法定受託事務)、不当性(自治事務)が
   あると認めるときは、当該国の行政庁に対し、理由を付し、かつ、期間を示し
   て、必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、当該勧告の内容を当該普通
   地方公共団体の長その他の執行機関に通知し、かつ、これを公表しなければなら
   ない(1項、2項)。
(3)不作為および協議に対する審査の申出の場合も、理由提示、当事者への通知、公
   表が行われることは共通しており、不作為の場合には、審査の申出に理由がある
   と認めるときは、勧告も行われる(3項、4項)。
(4)いずれの場合の審査および勧告も、申出があった日から90日以内に行わなければ
   ならない(5項)。

【3】関係行政機関の参加(250条の15)
(1)委員会は、関係行政機関を審査の手続に参加させる必要があると認めるときは、
   国の関与に関する審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関、相
   手方である国の行政庁若しくは当該関係行政機関の申立てにより又は職権で、当
   該関係行政機関を審査の手続に参加させることができる。
(2)委員会は、前項の規定により関係行政機関を審査の手続に参加させるときは、あ
   らかじめ、当該国の関与に関する審査の申出をした普通地方公共団体の長その他
   の執行機関及び相手方である国の行政庁並びに当該関係行政機関の意見を聴かな
   ければならない。

【4】証拠調べ(250条の16)
(1)国の関与に関する審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関、相
   手方である国の行政庁若しくは参加を認められた関係行政機関は、証拠の提出お
   よび陳述の機会が保障されている(2項)。
(2)これらの者は、証拠調べの申立てをすることもできる。証拠調べは、国地方係争
   処理委員会の職権でも行うことができる (1項)。
(3)証拠調べの方法は、(ア)適当と認める者に、参考人としてその知っている事実を
   陳述させ、又は鑑定を求めること、(イ)書類その他の物件の所持人に対し、そ
   の物件の提出を求め、又はその提出された物件を留め置くこと、(ウ)必要な場
   所につき検証をすること、(エ)国の関与に関する審査の申出をした普通地方公
   共団体の長その他の執行機関、相手方である国の行政庁若しくは参加行政機関又
   はこれらの職員を審尋することである(1項1号~4号)。
★ 証拠調べは、行政不服審査法の場合に準じた内容になっている。

【5】調停(250条の19)
(1)委員会は、国の関与に関する審査の申出があつた場合において、相当であると認
   めるときは、職権により、調停案を作成して、これを当該国の関与に関する審査
   の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関及び相手方である国の行政
   庁に示し、その受諾を勧告するとともに、理由を付してその要旨を公表すること
   ができる。
(2)調停案に係る調停は、調停案を示された普通地方公共団体の長その他の執行機関
   及び国の行政庁から、これを受諾した旨を記載した文書が委員会に提出されたと
   きに成立する。この場合、委員会は、直ちにその旨及び調停の要旨を公表すると
   ともに、当該普通地方公共団体の長その他の執行機関及び国の行政庁にその旨を
   通知しなければならない。

【6】国の関与に関する審査の申出の取下げ (250条の17)
(1)国の関与に関する審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関は、
   審査の結果の通知若しくは勧告があるまで又は調停が成立するまでは、いつでも
   当該国の関与に関する審査の申出を取り下げることができる(1項)。
(2)この取下げは、文書でしなければならない(2項)。

【7】勧告に対する国の行政庁の措置等
(1)国地方係争処理委員会の勧告を受けた国の行政庁は、当該勧告に示された期間内
   に、当該勧告に即して必要な措置を講ずるとともに、その旨を委員会に通知しな
   ければならない。国地方係争処理委員会は、当該通知に係る事項を当該勧告に係
   る審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関に通知し、かつ、こ
   れを公表しなければならない(250条の18第1項)。
(2)国地方係争処理委員会は、勧告を受けた国の行政庁に対し、当該勧告に即して講
   じた措置についての説明を求めることができる(250条の18第2項)。
(3)国地方係争処理委員会の審査および勧告ならびに調停に関し必要な事項は、地方
   自治法に規定するもののほか、政令で定めることとされている(250条の20)。

■■ 普通地方公共団体に対する国の関与に関する訴訟
■ 訴訟提起が可能な場合
(1)訴訟を提起するためには、国地方係争処理委員会への審査の申出を前置しなけれ
   ばならない。
(2)国の関与に関する審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関は、
   (ア)国地方係争処理委員会の審査の結果又は勧告に不服があるとき、(イ)国
   地方係争処理委員会の勧告に対する行政庁の措置に不服があるとき、(ウ)当該
   審査の申出をした日から90日を経過しても、国地方係争処理委員会が審査又は勧
   告を行わないとき、(エ)国の行政庁が国地方係争処理委員会の勧告に対する措
   置を講じないとき、のいずれかに該当するときは、高等裁判所に対し、当該審査
   の申出の相手方となった国の行政庁を被告として、違法な国の関与の取消訴訟ま
   たは不作為の違法確認訴訟を提起することができる(250条の5第1項)。

■ 訴訟手続
(1)上記の訴訟は、「法律上の争訟」(裁判所法3条)ではなく、機関訴訟(行政事
   件訴訟法6条)として位置づけられている。
(2)したがって、国の行政庁の関与の取り消しを求める訴訟については、原則として
   取消訴訟に関する規定が準用されることになり(行政事件訴訟法43条1項)、国
   の行政庁の不作為の違法確認を求める訴訟については、原則として当事者訴訟に
   関する規定が準用されることになる(同条3項)。いずれの場合も、行政庁の訴
   訟参加(同23条)、職権証拠調べ(同24条)の規定等が準用される。
(3)当該普通地方公共団体の区域を管轄する高等裁判所の専属管轄である(250条の5
   第3項)。
(4)出訴期間は、次の通りである(251条の5第2項)。
(ア)国地方係争処理委員会の審査の結果又は勧告に不服があるとき:国地方係争処理
   委員会の審査の結果又は勧告の内容の通知があった日から30日以内
(イ)国地方係争処理委員会の勧告に対する行政庁の措置に不服があるとき:国の行政
   庁の措置についての国地方係争処理委員会の通知があった日から30日以内
(ウ)当該審査の申出をした日から90日を経過しても、国地方係争処理委員会が審査又
   は勧告を行わないとき:当該申出をした日から90日を経過した日から30日以内
(エ)国の行政庁が国地方係争処理委員会の勧告に対する措置を講じないとき:国地方
   係争処理委員会の勧告に示された期間を経過した日から30日以内
(5)原告は、訴えを提起したときは、直ちに、文書により、その旨を被告に通知する
   とともに、当該高等裁判所に対し、その通知をした日時、場所及び方法を通知し
   なければならない(251条の5第4項)。
(6)当該高等裁判所は、訴えが提起されたときは、速やかに口頭弁論の期日を指定
   し、当事者を呼び出さなければならず、その期日は訴えの提起があった日から1
   5日以内とする(251条の5第5項)。
(7)高等裁判所の判決に対する上告の期間は、一週間とされている(251条の5第6
   項)。
(8)その他、主張及び証拠の申出の時期の制限その他審理の促進に関し必要な事項
   は、最高裁判所規則で定める (251条の5第11項)。


■■■ 自治紛争処理委員
★ 国地方係争処理委員会の委員と自治紛争処理委員の「横」比較も重要です。

251条 自治紛争処理委員は、この法律の定めるところにより、普通地方公共団体相
互の間又は普通地方公共団体の機関相互の間の紛争の調停、普通地方公共団体に対する
国又は都道府県の関与のうち都道府県の機関が行うもの(「都道府県の関与」とい
う。)に関する審査及びこの法律の規定による審査請求再審査請求、審査の申立て又
は審決の申請に係る審理を処理する。

■ 自治紛争処理委員の組織
(1)自治紛争処理委員は、3人とし、事件ごとに、優れた識見を有する者のうちか
   ら、総務大臣又は都道府県知事がそれぞれ任命する。この場合、総務大臣又は都
   道府県知事は、あらかじめ当該事件に関係のある事務を担任する各大臣又は都道
   府県の委員会若しくは委員に協議する(251条2項)。
(2)総務大臣又は都道府県知事は、自治紛争処理委員が当該事件に直接利害関係を有
   することとなったときは、当該自治紛争処理委員を罷免しなければならない
   (251条4項)。
(3)3人の自治紛争処理委員は相互に独立しており、合議制機関ではないが、調停
   の作成及びその要旨の公表についての決定、調停の打切りについての決定並びに
   事件の要点及び調停の経過の公表についての決定等の重要事項の決定について
   は、自治紛争処理委員の合議による(251条の2第10項、251条の3第15項)。

■ 自治紛争処理委員の紛争調停制度
(1)普通地方公共団体相互の間又は普通地方公共団体の機関相互の間に紛争があると
   きは、この法律に特別の定めがあるものを除くほか、都道府県又は都道府県の機
   関が当事者となる場合には総務大臣、その他の場合には都道府県知事は、当事者
   の文書による申請に基づき又は職権により、紛争の解決のため、自治紛争処理委
   員を任命し、その調停に付することができる(251条の2第1項)。
(2)事者の申請に基づき開始された調停では、当事者は、総務大臣又は都道府県知事
   の同意を得て、当該申請を取り下げることができ(251条の2第2項)、この取
   り下げがあると、自治紛争処理委員はその職を失う(251条3項1号)。
(3)自治紛争処理委員は、調停案を作成するため必要があると認めるときは、合議に
   より、当事者及び関係人の出頭及び陳述を求め、又は当事者及び関係人並びに紛
   争に係る事件に関係のある者に対し、紛争の調停のため必要な記録の提出を求め
   ることができる(251条の2第9項、第10項)。
(4)自治紛争処理委員は、合議により、調停案を作成して、これを当事者に示し、そ
   の受諾を勧告するとともに、理由を付してその要旨を公表することができる
   (251条の2第3項、第10項)。この場合、自治紛争処理委員は、調停案の写し
   を添えてその旨及び調停の経過を総務大臣又は都道府県知事に報告しなければな
   らない(251条の2第4項)。
(5)自治紛争処理委員は、調停による解決の見込みがないと認めるときは、合議によ
   り、総務大臣又は都道府県知事の同意を得て、調停を打ち切り、事件の要点及び
   調停の経過を公表することができる(251条の2第5項、10項)。この場合に
   は、調停を打ち切った旨を当事者に通知しなければならず(251条の2第6
   項)、当該通知をしたときに、自治紛争処理委員はその職を失う(251条3項2
   号)。
(6)調停は、当事者のすべてから、調停案を受諾した旨を記載した文書が総務大臣又
   は都道府県知事に提出されたときに成立する(251条の2第7項)。この場合、
   総務大臣又は都道府県知事は、当事者から文書の提出があった旨を自治紛争処理
   委員に通知し(251条の2第8項)、直ちに調停が成立した旨及び調停の要旨を
   公表するとともに、当事者に調停が成立した旨を通知しなければならない(251
   条の2第7項)。当該通知がされたときに、自治紛争処理委員はその職を失う
   (251条3項3号)。

■ 自治紛争処理委員による審査請求等の審理制度
(1)総務大臣は都道府県の事務に関し、都道府県知事は市町村の事務に関し、地方自
   治法の規定による(ア)審査請求(法定受託事務にかかる処分または不作為に対
   する審査請求を除く。)、(イ)再審査請求(条例による事務処理の特例制度に
   より市町村が処理することとされた事務のうち法定受託事務に係る市町村長の処
   分についての審査請求の裁決に不服がある者が行う再審査請求を除く。)、
   (ウ)審査の申立て又は(エ)審決の申請があった場合において、審査請求、再
   審査請求、審査の申立て若しくは審決の申請をした者から要求があったとき、又
   は特に必要があると認めるときは、自治紛争処理委員を任命し、その審理を経た
   上、審査請求若しくは再審査請求に対する裁決をし、審査の申立てに対する裁決
   若しくは裁定をし、又は審決をする (255条の5)。  

■ 自治紛争処理委員による審査の申出の審査および勧告制度
(1)自治紛争処理委員による審査は、基本的に国地方係争処理委員会による審査に準
   じたものになっている。
(2)審査の対象は、(ア)都道府県の関与のうち是正の要求、許可の拒否その他の処
   分その他公権力の行使に当たるもの(代執行手続に係るものを除く)、(イ)都
   道府県の不作為、(ウ)都道府県との協議である(251条の3第1項)。
(3)審査の申出をすることができるのは、市町村長その他の市町村の執行機関であ
   り、都道府県の行政庁側からの申出は認められていない。
(4)市町村長その他の市町村の執行機関は、都道府県の関与に不服がある場合、総務
   大臣に対して文書により、自治紛争処理委員の審査に付することを求める旨の申
   出を行うことができる。この申出を受けた総務大臣は、速やかに自治紛争処理委
   員を任命し、当該申出にかかる事件をその審査に付さなければならない。自治紛
   争処理委員は、職権により調停を行うこともできる。
(5)自治紛争処理委員による勧告の要件および効果は、国地方係争処理委員会の場合
   と同様である(251条の3第5項から第7項)。
(6)審査の結果または勧告の内容は自治紛争処理委員から総務大臣に報告され(251
   条の3第8項)、総務大臣は、勧告を受けた行政庁に対して、勧告に即して講じ
   た措置について説明を求めることができる(251条の3第10項)。

■ 訴訟の提起
(1)自治紛争処理委員による審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機
   関は、(ア)自治紛争処理委員の審査の結果又は勧告に不服があるとき、(イ)
   勧告に対する都道府県の行政庁の措置に不服があるとき、(ウ)当該審査の申出
   をした日から90日を経過しても、自治紛争処理委員が審査又は勧告を行わないと
   き、(エ)都道府県の行政庁が勧告を受けた措置を講じないとき、のいずれかに
   該当するときは、当該市町村の区域を管轄する高等裁判所に対し、当該審査の申
   出の相手方となった都道府県の行政庁(被告とすべき行政庁がないときは都道府
   県)を被告として、訴訟を提起し、違法な都道府県の関与の取消しまたは不作為
   の違法確認を求めることができる(252条1項)。この訴訟も機関訴訟である。


■■■ お願い ■■■ 
継続して発刊するためには読者の皆様のご支援が何よりの活力になります。ご意見、ア
ドバイス、ご批判その他何でも結構です。内容、頻度、対象の追加や変更等について
も、どうぞ何なりと e-mail@ohta-shoshi.com までお寄せください。

質問は、このメールマガジンの趣旨の範囲内のものであれば、大歓迎です。ただし、多
少時間を要する場合があります。


■■■ 編集後記 ■■■
いよいよ夏の陣も終わり、9月に入りました。残暑厳しい折、如何お過ごしでしょう
か。繰り返しになりますが、今年から試験日が約3週間延びましたので、まだ必ずしも
十分な成果が得られていない場合であっても、この9月上旬を(追加的な)充電期間に
充てることができます。ぜひ有効活用を図って下さい。

冒頭でも申し上げましたが、地方自治法では、憲法、行政法(行政手続法、行政不服審
査法や行政事件訴訟法)、個人情報保護法等との「横」比較を行うことが理解につなが
ります。それぞれの事項の異同をしっかり理解することで、地方自治法の学習のみなら
ず、憲法等の復習をしっかりと行うことになるので、それぞれの法令科目で確実に高得
点を狙うことが十分に可能になります。どうか、「今のうちに」(この点も、同時に大
事なポイントです。行政書士試験の直前期の総仕上げやおさらいにも活用できま
す。)、「横」比較を徹底してください。

今回で地方自治法が終わります。次回は商法会社法)の予定です。


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 マガジンタイトル:新・行政書士試験 一発合格!
 発行者:行政書士 太田誠   東京都行政書士会所属(府中支部)
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