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経営・
労務管理ビジネス用語の
あれっ! これ、どうだった?!
第51回 営業マンの口ひげは禁止できるか?
<第66号> 平成23年6月20日(月)
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こんにちは!
メルマガ初訪問の皆さま、ありがとうございます。
1週間のご無沙汰でした。
亥年のアラ還、小野寺です。
先日の読売新聞のコラムに次のような記事がありました。
「宮城県南三陸町のオス猫『にゃんすけ』が、飼い主と
3カ月ぶりに再会した・・・夫と妻の、親と子の、むごい別れを
いくつも見てきたあとだけに、たとえ1匹の猫であっても
再会の話題には心なごませるものがある。」と。
今回の大震災で大切な家族はもとより、家族同然に大事に
していたペットと生き別れになった方もかなりいることと
思いますが、こういう記事に、希望を捨てないでと願うばかりです。
さて本論ですが、ある日の会社訪問で、
総務部長と懇談していた際、
部長から、当社の営業マンの一人が口ひげを蓄えるようになった。
取引先からも見苦しいとの苦情もあり、困っている。
注意しても個人の嗜好の問題で規制されるのはおかしいと
言われており、どうしたものかとのことでした。
今回は、この点について考えてみます。
★☆[今日のちょっといい話]★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
●アメリカ・エマソン協会の元会長のサーラ・ワイダー博士が
語っています。(エマソンは19世紀のアメリカを代表する
詩人、思想家、哲学者です)
「英語の『励まし(エンカレッジメント・Encouragement)』という言葉が
持つ文字通りの意味は『心を差し出す』ということです。
さらにエンカレッジのカレッジの言葉には『勇気』という
意味のほかに『心』という意味もあるのです。
すなわち『励まし』とは、人々に強き心を差し出し、与えると
いうことなのです。あるいは、そうした強き心が自分自身の
中にあると感得することも『励まし』となるのです。」と。
「励」の漢字には「万」と「力」が入っています。
相手を思いやる励ましの言葉には、限りない力を与えるのでは
ないでしょうか。
大震災発生から100日を経過しましたが、まだ12万人余が
不自由な避難生活を強いられています。
とにかく、環境に負けずに頑張ってほしいと祈るのみです。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
○ 近年、服装や髪型、髪の色、化粧等に関して
自由な風潮が広がってきています。
これらは時代によってそのコンセンサスは異なるものでしょうが
私の20代の頃は、一般サラリーマンのロングヘアーや
口ひげ等は、ほとんど見当たらず、
例えば、芸術家や特殊業務のような一部の者という
印象が強くありました。
しかし最近では、女性と見間違うような長髪(しかも、
サマになっています)や、格好のいい口ひげやあごひげの
サラリーマンも増えてきています。
○ 一般に、服装や
労働者の外見に関する規制をする目的は、
(1)正しい服装着用による職場秩序の維持。
(2)公共性の高い事業の職員としての公正中立と品位の維持。
(3)識別性、つまり顧客に対し職員であることを識別しやすくする。
(4)顧客等に不快感を与えることの予防。
(5)職務への心構えの醸成。
(6)業務支障の防止、
などからの理由によるものとされています(今野順夫著「
私的自由と
労働契約」)。
◆◆
就業規則の規定例から ◆◆
○ 特に、不特定多数の顧客と毎日のように応接する事業(
例えば、ホテルや金融機関など)では、
顧客に不快な印象を与えないように
就業規則等で、例えば
次のように規定している場合があります。
「第○○条(服装、清潔の維持)
社員は、出退勤に際しては、著しく品位を汚すような
服装をしてはなりません。
2.社員は、就労に際しては、定められた服装で職務に
従事しなければなりません。
3.社員は、頭髪、爪、装飾品その他就労に不適切な身なりで
業務をしてはなりません。」
そして、別にイラスト入りで、具体的に示して規制している
場合もあります。
また、企業によっては、
採用に際して「ひげ、茶髪禁止」を
明示する例や、あるいは、頭髪の色、服装、化粧について
色やイラストでドレスコードを示す企業も出てきています。
(注)ドレスコードとは、ある場所の雰囲気を壊さないように
求められる、ある一定の服装の基準のことです。
これは、基準を明示することによって、トラブルを回避しようと
するためのものとしています。
◆◆ 裁判例(「イースタン・エアポートモータース事件」
から考える ◆◆
○ ところで上記に紹介した規定例では、口ひげについてまで
明確に規定してはいません。
この「ひげ」と
服務内容及び服装規程等が争点となった
裁判例として、ハイヤー乗務員の口ひげの可否が争われた
「イースタン・エアポートモータース事件」(昭55.12.15
東京地裁判決)があります。
その会社の「乗務員勤務要領」には、社員の平素の
身だしなみとして「ひげを剃ること」という一項があり、
会社は、口ひげを蓄えてこれを剃ることを拒否した乗務員を
乗務から外してしまった事案について、
判決は次のように判示しています。
「口ひげは、服装、頭髪等と同様、もともと個人の趣味、
嗜好に属する事柄であり、本来的には各人の自由」としつつも
「企業は、企業の存立と事業の円滑かつ健全な遂行を図り、
職場規律を維持確立するために必要な諸事項を
規則をもって定め、
あるいは時宜に応じて、
従業員に対し具体的な指示・命令を
することができるのであるから、
口ひげ、服装、頭髪等に関しても企業経営上必要な規律を
制定することができる」として、
従業員は、これに沿った
労務提供義務を負うとしています。
○ そして、このケースでは「乗務員勤務要領」を通して、
端正で清潔な服装、頭髪、身だしなみで快適なサービスを
提供する一環として、
「ひげを剃ること」が示されている以上、第一義的には、
不快感を伴う無精ひげや、異様・奇異なひげを剃ることを
指しているのであり、
きちんと整えられた口ひげで乗務することに関しては、
円滑・健全な企業経営が阻害される現実的な危険は
生じないとして、乗務員側が勝訴しました。
つまり、ひげや髪の色等に関する規制に当たっては、
その職種、業態、取引先や顧客との関係などを考慮の上、
労働者の人格権に配慮し、規制すべき業務上の必要性、
合理性、手段の相当性が問われることを踏まえて
規定等のあり方を検討する必要があるものと考えます。
◆◆ ひげを剃らないことを理由に処分できるか ◆◆
○ 口ひげは、いわば身体の一部であり、個人の趣味・嗜好に
属することであるため、本来的には、各人の自由意思に
基づくものと言えます。
しかし、企業経営上で必要な場合は、
最小限かつ合理的な範囲で、服装規程等で規制をすることは
可能であると考えます。
個人の自由といっても、企業に
採用された以降は、
使用者の指揮命令の下にあり、
労働契約によって
信義誠実の原則を踏まえて
労務を
提供する以上、
労働者にとっても
合理的な範囲で規制を受けることは当然のことと言えます。
従って、奇抜な頭髪、服装、化粧、眼鏡、装飾具等の
着用など、非常識な身だしなみが
職場において許容されないのは、周知の通りです。
そこで本件の場合も、営業マンのひげが無精ひげで
不潔感があるとか、奇異な形状をしているような場合には
服務規定なり服装規定等に基づいて、
注意し、指導していく必要があります。
○ 類似の裁判例として、ひげではなく茶髪が争点となった
事例として「
株式会社東谷山家事件」(平9.12.25福岡
地裁小倉支部判決)があります。
これは、トラック運転手の茶髪について「社内秩序を
乱した」などとして、当該運転手を
諭旨解雇した
事案ですが、裁判所は、
「
労働者の髪の色・型、容姿、服装などといった人の人格や
自由に関する事柄について、
企業が企業秩序の維持を名目に
労働者の自由を制限しようと
する場合、その制限行為は無制限に許されるものではなく、
企業の円滑な運営上、必要かつ合理的な範囲にとどまる」
べきであるとしました。
そして、制限の必要性、合理性、手段方法としての
相当性を欠くことがないように特段の配慮が要請されるとして
諭旨解雇処分を無効であると判示したものです。
○ 以上を踏まえると、注意、指導は当然のこととしても、
懲戒処分や配転等は、慎重に行うべきと考えます。
懲戒処分を行うには、
労働契約や
就業規則等に
その根拠が必要となり、さらに
企業秩序のかく乱の程度や同僚等への影響、同種事案に
ついての従前の対応等、
該当性と相当性の原則が求められることになります。
また、配転についても、
労働契約上、就業すべき業務が
特定業務に限定されている場合は困難であり、
そうでない場合でも、業務遂行上の必然的な事由に基づく
配転でなければ、別な問題が発生することもあります。
いずれにしても、頭髪やひげ、服装等に対する捉え方は
時代により異なるものであり、
また、職務内容や業界等によっても変化することも
考慮の上、慎重な対応が求められると考えるものです。(了)
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■■ 編集後記 ■■
きょうも最後までお読みいただきありがとうございます。
3月11日発生の大震災によって、我が国は、多くの尊い
生命を失いました。と同時に、政府の情報開示に関する
不手際の連続で、海外諸国に対しても、
都合の悪い情報を隠す国として「信用」という無形の財産も
失ってしまったように思います。
すなわち、大震災による福島原発の事故が発生して以来、
政府や東京電力は「メルトダウン(燃料棒の溶融)は起こって
いない」と繰り返していたが、それにもかかわらず
原発事故発生から2か月経った5月中旬、福島原発1号機が
地震発生から約5時間後にメルトダウンを起こしていたと
公表したのです。さらに、2号機、3号機でも同様と・・・
これは第二次世界大戦中の大本営発表と同じではないか。
この大本営発表は、都合の良いところだけを伝え、戦局が厳しい、
敗戦が濃厚となるにつれ、都合の悪い部分を意図的に
削除して発表するという方式であった。
そのため、その情報を受ける側でも、「また例の大本営発表だ」として
眉につばをつけて聞いていたといいます。
今回も、放射能の心配はない、とか健康に心配はないとの政府情報も
また、ウソの発表だとして、信用していない国民も多かったようだ。
読売新聞の社説にこうありました。現在、国会会期延長が問題と
なっていますが、
「国会会期延長と菅首相の退陣時期は、切り離して考えるべきで
ある。首相に退陣引き延ばしの口実とさせてはならない。
早期退陣は野党だけでなく・・・身内でさえ求めている。
首相だけが延命に執念を見せているのは異様だ。・・・
一度退陣を口にした首相の下で国政は円滑に進まない。
『人災』を広げるだけではないか。」(6/18朝刊)
『論語』で孔子は語っています。
「自分を正しく律することができない為政者は、人を正しく
導けない。」と。
では、また次号でお会いしましょう。
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