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『社会保険の適用拡大』 今、企業の人事担当者が準備すべき事は

こんにちは。
特定社会保険労務士の田中です。

現在、厚生労働省で、週所定労働時間が20~30時間の
労働者社会保険を適用拡大する事が検討されています。
(議事録や配布資料は同省のHPで確認ができます。)


社会保障審議会の特別部会では、昨年9月から議論が開始され、
現在、12回まで開催されています。(2012.3.7時点)

2004年にも同様の検討がなされましたが、パート比率の高い業界等からの強い反発もあり、
実現はされませんでした。

しかし、今回は、適用拡大を前提としたかのような「猶予措置」まで
話し合われており、実現の可能性も否定できません。

結果が判明するまで具体的な対応はできませんが、
現時点で、企業の人事担当者として準備した方が良い事をお知らせします。



※※※※※ 対象者の実態を把握する ※※※※


まずは、約370万人いる対象者の実態を見てみましょう。
ここでは、この件を検討している社会保障審議会の、
短時間労働者への社会保険適用等に関する特別部会」において
配布された資料を基に説明します。(第8回に配布された資料2)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001vgxh-att/2r9852000001vhd1.pdf

対象者数のピークが2つあります。(同資料1ページと2ページの図表より)
まずは、35~49歳の女性です。
多くは、「既婚・子供あり」です。
家庭の主婦がパートに出ている層と考えられます。
世間で多くイメージするパートはこの層でしょう。

もう一つのピークは、60~65歳です。
この年齢層は、男性の数が多い唯一の年齢層です。
おそらくは、60歳定年後に再雇用された従業員で、
老齢年金の満額を受給しつつ、雇用保険高年齢雇用継続給付
受給している層だと考えられます。
実は、男女合わせての人数はこの年齢層が一番多いです。


ここで分かるのは、パートタイマー従業員への社会保険適用拡大では、
2つの異なる属性、「主婦パート」と「再雇用の男性従業員」への
対応が求められることになります。
(ここでは便宜上、前者を「主婦パート」と呼称いたします。)



※※※※※ 具体的な対応は? ※※※※


まず、「主婦パート」層ですが、
少なくとも3つの属性に細分化できます。
パート収入が、「家計の中心になっている人」 
「家計の補助になっている人」
「夫の収入で生活できるが、プラスアルファになっている人」となります。

当然に対策もそれぞれに分けて考える必要があります。

次に、「再雇用の男性従業員」ですが、
この層は、社会保険に加入する事で、
給与の差引支給額が少なくなることに加えて、
年金が支給停止されるため、さらに
最終的な手取り額が少なくなるという二重の問題があります。

中には、それを理由に「給料を上げて欲しい」と、
会社に相談してくる人が出る可能性もあります。



※※※※※ 主婦パートの本音は? ※※※※


さて、ここまで見てくると、企業の対策としては、
「それならば、働く時間を週20時間未満にして、
 社会保険の適用がされないようにしよう。」 と考えるでしょう。
また、「主婦パート自身も厚生年金に入りたくないだろうから、」
という憶測も働くことでしょう。

しかし、主婦パートは本当に厚生年金に入りたくないのでしょうか?
配偶者の扶養家族でいることを一番と考えているのでしょうか?




※※※※※ 主婦パートも厚生年金に入りたがっている!? ※※※※


ここで、興味深いデータをご紹介します。(前記と同じ資料の11ページ)
ここにある2つのグラフから次のことが分かります。

健康保険被扶養者として働いている従業員(つまり週30時間未満)のうち、
  42%は厚生年金に加入したいと考えている。

社会保険の適用拡大が実現したら、主婦パートのうち、20%は働く時間を減らす、
 (つまり適用にならないようにする。)しかし、66%は働く時間を変えなかったり、
  逆に大幅に増やしたり、ということを考えている。
 (つまり6割以上の主婦パートが社会保険に加入することを否定していない。)

もちろん、このデータは、現在の社会保険の適用拡大が検討される数年前のものですし、
回答者も実際に社会保険の適用拡大になったら、
この時の回答と異なる選択をすることも充分考えられますので、
あくまでも参考として考えるべきでしょう。

しかし、著者も長年、社会保険労務士として多くの企業に接する中、
「主婦パートの多くの方は、自ら社会保険には加入せず、
夫の健康保険扶養家族でいたがっている。」 という
印象がありましたので、意外なデータでした。



※※※※※ 会社と主婦パートの考え方がすれ違ってしまう ※※※※


会社としては、前述のように社会保険の適用拡大への対抗策として、
労働時間を短くして、主婦パートは引き続き、社会保険には入れない。
おそらく、これは主婦パートとも利益が一致する所だ。」
と考えていることも多いでしょう。

しかし、データを見ると、主婦パート自身が労働時間を減らすことを
望まないことも考えられ、解決は難しくなりそうです。



※※※※※ 今、企業の人事担当者は何をすべきか ※※※※


現時点では次をご準備されることをお奨めします。

◇ 適用拡大の検討がどうなるかの情報収集(行政の審議会等)

◇ 適用拡大となった場合の法定福利費の試算
  (これは、社会保険に入っていない週20~30時間で働く従業員の総額人件費に、
   13%をかければ、おおまかな金額が把握できます。)7

◇ 適用拡大となった場合、自社のパートタイマーは、社会保険
  加入する意思があるか否かのヒアリング

◇適用を回避するため、パートの勤務時間を減らす替わり、
 パートの人数を増やす場合、地域に新たに自社で働いてくれる労働力が
 どの程度存在するかの調査




この問題は、引き続き、お伝えしていこうと思っています。
よろしくお願いいたします。



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