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退職金の減額

今年は流行語の当たり年だそうです。
「アベノミクス」、「今でしょ!」、「じぇじぇじぇ!」という大賞候補の三強に加え、
最近は、7月からスタートしたドラマの中で、主人公が言う決めゼリフ
「やられたらやり返す。倍返しだ!」が急速に注目を集めています。
このドラマは、日曜日の夜9時からTBS系で放送されている(残念乍ら、9/22に終わってしまいましたが)
池井戸潤さん原作の「半沢直樹」です。
銀行を舞台に正義のためなら上司とだって徹底的に戦う。「やられたらやり返す。倍返しだ」
という主演・堺雅人演ずる半沢直樹の決めゼリフが、日頃「やられてもやり返せない」で鬱憤が溜まっている
サラリーマンにはとても痛快に見えるからでしょう。

このドラマの面白さのひとつに、劇中に何度も飛び出る言葉があります。
「部下の手柄は上司のもの。上司の失敗は部下の責任」や「銀行は晴れた日に傘を貸して、雨の日に取り上げる」
などの一面の真実があるものの随分誇張されている言葉が、実に軽妙に、そして、実にいやらしく飛び交います。
そして、半沢直樹はどんなに窮地に立たされても、這いつくばって耐え、この言葉を絞り出します。
「人の善意は信じますが、やられたらやり返す! 倍返しだ!、それが私の流儀なんで」。
日々の仕事への徒労感、言いたいけど言えない上司への恨み、誰にも相談できない悩みで一杯いっぱいに
なっているサラリーマンにとって、これほど胸がすく思いの仮想世界はないでしょう。
ストレス発散には最適のドラマなのです! 

でも、これは飽くまでもドラマの世界での話です。実社会で、本当に徹底的に上司と闘ったら倍返しどころか、
「倍付け」の片道切符で島流しされちゃうかもしれません。
だから現実のサラリーマンは、半沢直樹みたいにカッコ良くは生きられないんです。
原作者の池井戸潤さんも、
「いろいろな理由で反論できなかった理不尽な経験はだれにでもある。それを半沢直樹が晴らしてくれて
すっとする。けどサラリーマンは決して真似をしてはいけない」と、釘をさしています。
 ドラマを見ている人たちは、現実の世界では、正義は勝たないことが多いのを知っています。
だから、日ごろ貯まった鬱憤や不満を劇中の半沢直樹に託して、自分は「我慢ガマン」と翌日の月曜日には
気を引締めて勤めに出るんです。

 ところが、このドラマが余りにも人気化したためか、「倍返し」という言葉だけを悪用というか、
あまりにもアホ過ぎる誤用をしている人が増えているそうです。
某誌によると、「先日、都内の中堅商社で、冷凍食品の販売納期を間違えた社員が、上司からその間違いを指摘されるや
“あなたがチェックしないからだ”と反論し、まるで自分が正論でも吐いているかのような態度で、
“部下の手柄は上司のもの。上司の失敗は部下の責任”と捨て台詞を吐いてその場を去った。」のだそうです。
これは余りにもトホホなダメ社員の例ですが、よく考えるとこういうダメ社員は「“倍返し”気取りの今どきの若いもん」
に限らず、昔からサラリーマン社会には多かれ少なかれ居たのもしれません。

パワハラ」や「セクハラ」も、もちろん本当だったら大問題ですが、最近、特に「パワハラ」が社会で騒がれるに連れ、
自分のミスは棚に上げ、上司にミスを注意されようものなら、直ぐに「パワハラ」だと騒ぎ立てる困った「輩」が
増えているそうです。
そんな中、更に「倍返し」が、こんなに持て囃されると、自分のミスは
「さて置いてしまって」、上司への「倍返し」だけを標榜する「トホホな社員」が増えないかと余計な心配をしています。

さて、
前回の「「最低賃金」と「定額残業代」」についての話、如何でしたでしょうか。
今回は、「退職金の減額」についての話をします。

──────────◆ 目 次 ◆──────────────
○ 「退職金の減額」
───────────────────────────────
給与規程には欠勤時の減額規定があるものの退職金規程には減額規定を設けていなかった
会社で、欠勤が多い社員が自己都合退職した場合,給与と賞与は規定に従って減額支給
していたので、同様に退職金についても減額支給してもよいかとの問題が発生しました。
この場合、退職金規程に減額規定がなければ退職金を減額することはできないと解されますので、
注意が必要です。
退職金制度は法律上設けることを義務付けられたものではありませんから,仮に退職金制度が
なくても問題になることはありません。
ただし,就業規則などによって,退職金の支給条件などが明確に定められている場合には,
退職金は単なる恩恵的な給付ではなく,労働基準法上の賃金に該当することになります。
従って、会社が、社員に退職金規程により退職金を支給していれば、退職金も同法上の賃金
に該当することになります。
また、退職金制度に関しては,「退職手当の定めをする場合においては,適用される労働者の範囲,
退職手当の決定,計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項」を就業規則
記載しなければならないと法で定められています。

そして,退職金の不支給または減額事由を設ける場合,これは上記の「退職手当の決定,計算及び
支払の方法」に関する事項に該当しますので,就業規則に記載しなければなりません。
従って,退職金規程の支給条件を満たす者に対して退職金を支給しなかったり,減額規定がないにも
かかわらず退職金額を減額して支給したりすることは,賃金の支払いについて定めた同法24条違反
となります。

裁判例(東北ツアーズ協同組合事件,平11.2.23東京地判)でも,懲戒解雇した者への退職金
不支給としたケースにおいて,懲戒解雇における退職金の不支給の規定がなく,
さらに,そのような場合には退職金を支給しないという事実たる慣習も成立していなかったとして,
退職金の支払いを命じられたものがあります。
同事件では,「懲戒解雇された従業員には退職金を支給しないという内容の付款を設けるのであれば,
そのような内容の付款を予め就業規則において定めるべきである。」とされています。

然し,退職金規程に不支給・減額条項を定めることは可能なものの,不支給・減額条項があるからといって,
どんな場合でも退職金の不支給・減額が認められるというわけではありません。
裁判例では,「退職金の全額を失わせるに足りる懲戒解雇の事由とは,労働者に永年の勤続の功を抹消して
しまうほどの不信があったことを要し,労基法第20条但書の即時解雇の事由より更に厳格に解すべきである」
(橋元運輸事件,昭47.4.28名古屋地判),「退職金の全額を失わせるような懲戒解雇事由とは,労働者
過去の労働に対する評価を全て抹消してしまう程の著しい不信行為があった場合でなければならない」
(トヨタ工業事件,平6.6.28東京地判)などとされているからです。

尚,退職金の減額については,一部は退職金が支給されることから,全額不支給の場合ほどの事由は
求められず,その行為の程度と減額の程度から判断されることになります。
いずれにせよ,退職金規程に減額規定がなければ,退職金を減額して支払うことはできません。

なお,退職金の計算方法は労使間で自由に決定することができますから,例えば,退職金規程の
定めにおいて,在職中の出勤率等によって退職金額の支給率などに差を設けることは問題ありません。


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