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【社長辞任】社内制裁・叱責するなら産業医活用Q&A④

 こんにちは、産業医・労働衛生コンサルタントの朝長健太です。
 従業員の健康問題(従業員主治医の診断書が起因)が企業の経営に直結し、時には社長・役員の辞任、売上減少、株主代表訴訟にまで発展するケースが顕在化しています。また、従業員の健康を第一に守るという目的により、企業ガバナンスの逆転現象が起き、結果的に健康を守りきれなかったという矛盾も生じています。
 健康管理は、ケガからハラスメントまで、対策の範囲が広いです。そこで、企業ガバナンスを経営者主体という本来の形にすることで、会社と経営者を第一に守り、その結果、従業員の健康を守るという目的で、下記の日本規格協会規格(JSA 規格)「JSA-S1025 ヒューマンリソースマネジメント-組織(企業)が⾏う健康管理-職域健康専⾨家の活⽤の指針」を開発しました。
 また、認証機関も立ち上げております。
なお、日本規格協会は、経済産業省による認定産業標準作成機関であり、唯一のマネジメントシステム作成機関です。
 企業主体の健康管理体制の構築について、ぜひJSA-S1025をご活用ください。

 今回は、「【社長辞任】社内制裁・叱責するなら産業医活用Q&A④」について作成しました。
 企業利益の向上という、精神的・社会的健康を向上させるために、弊社をご活用ください。
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【社長辞任】社内制裁・叱責するなら産業医活用Q&A④
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 次のコラムについて、大きな反響をいただきありがとうございます。
 裁判所提案で、社長辞任となる時代がいよいよ始まっています。
 もはや、医師と連携していない社長については、裁判所は一定の結論を出したと言えるでしょう。
 医師と連携している社長について、対応の正当性が、次世代の裁判の争点になると考えられます。
 【社長辞任】ハラスメントによる従業員の健康障害について、問い合わせがありましたので、Q&A形式で回答させていただきます。

【社長辞任】ハラスメントによる従業員の健康障害
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-177734/

Q
 社長が社内制裁の一環として行った叱責やその発言内容に問題があり、従業員が亡くなり、その責任を負って社長が辞任した。しかし、社内制裁の内容によっては1時間程度の叱責を行うことはあるし、その中で暴言や失言と思われる内容が含まれてしまうこともあるだろう。本当に命にかかわるような社内制裁なら、名誉棄損罪や暴行罪が適用されるべきであるが、刑事事件にもなっていない。刑事事件にもなっていないのに、社長が引責辞任するほどの責任を負うなら、日本では業務上の社内制裁・叱責ができなくなってしまう。
 仕事の質が低い従業員を社内制裁・叱責できないなら、経済が萎縮してしまう。

A
 大変熱のこもったご質問ありがとうございます。
 社長辞任の事件によって、「どのような叱責が許されるのか?」が大変混乱していることも、様々な現場から承知しています。

 社長辞任の事件においては、社長は暴言や失言はあったと報道されました。しかし、亡くなったのは精神疾患によるものです。 したがって、精神疾患に対して、適切な対応ができていれば亡くならなかった可能性があります。それについては、前述のコラム等により様々な角度で示させていただいております。

 報道ベースの内容に基づくと、社長の問題は、「約1時間叱責したこと」や「叱責の中に暴言を発したこと」そのものではありません。問題は、それに起因して、医師の診断書を確認し、最悪の事態を危険予知できた可能性があるにも関わらず、専門家(医師)と連携した適切な危険回避が行われていなかったことになります。

〇労働関係法令では、従業員への社内制裁は認められている
 そもそも、労働関係法令では、次の様に、従業員への社内制裁は条件を満たせば認められています。

◇社内制裁に関する規定
 従業員の過失等に対する社内制裁(懲戒処分)として減給を定める場合、労働基準法で、以下の事項を守らなければなりません。 なお、発言内容そのものに対する具体的な規定はありません。
・一回の減給額の制限
 減給の制裁は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超えてはならない。(労働基準法第91条) (一つの問題行為に対して科す減給の額は、この制限内である必要があります。)
・一賃金支払期の総額の制限
 減給の制裁は、総額が一賃金支払期(通常は1ヶ月)における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。(労働基準法第91条) (同一賃金支払期に複数の問題行為があったとしても、その月の減給総額はこの制限内である必要があります。)
就業規則の規定が必要
 懲戒処分を行うためには、あらかじめ就業規則懲戒の種類と内容が定められていること、およびどのような行為が減給の対象となるか(懲戒事由)が定められている必要があります(労働基準法第89条第9号)。就業規則に定めのない懲戒処分はできません。
懲戒権の濫用の禁止
 懲戒処分は、その行為の性質や態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、無効となります(労働契約法第15条)。減給の金額が上記の上限内であっても、処分自体が不当であれば無効となる可能性があります。
・「ノーワーク・ノーペイの原則」との区別
 遅刻や欠勤などにより、労働者が働かなかった時間分の賃金を差し引くことは、一般的に「減給の制裁」には当たらず、働いていない分を支払わないという「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づきます。

〇社内制裁(懲戒権)は法律の枠内で認められる
 企業が従業員懲戒する権利(懲戒権)は、労働契約および就業規則に基づき、企業秩序を維持するために認められているものです。しかし、この権利は無制限ではなく、刑法、民法、そして労働関係法令による様々な制限を受けます。
 労働関係法令では、前述のように減給の限度や懲戒権の濫用禁止など遵守すべき事項が定められています。その枠内で、具体的な懲戒の種類や内容を就業規則で定めることは、経営者の裁量に委ねられています。重要なのは、社内制裁(懲戒権)の行使は、ハラスメント防止義務や安全配慮義務といった企業の責務に反してはならないという点です。

〇業務改善のために合理的な叱責はどんどんするべき
 企業の目的は、利益向上等の業務目標を達成することです。従って、業務改善のために合理的な叱責は行うべきです。 「産業医は、叱責を悪だと考えている。叱責も時には必要だ。」という声を聞いたことがありますが、産業医にどのようなイメージをお持ちかまでは分かりませんが、産業医は医師であるため、医学部で学生のころから徹底的に叱責を受け、研修医でも叱責を受け、患者や家族からも叱責を受けています。 叱責を受けることに関しては、プロといえる職業になります。
 従って、業務改善のために合理的な叱責の価値を、身に染みて経験しています。加えて、社内制裁・叱責が、健康を害する可能性があることも、身を以て経験しています。

〇社内制裁・叱責を行う際の産業医活用
 合理的な叱責かの判断は、発言した者か発言を受けた者かで、異なります。判断基準は、主観的な考えと感じ方に依存しています。従って、合理的な叱責の内容は、法令では定められていません。 法令で定められているのは、発言を受けたものがハラスメントと判断した場合に、企業側が適切に対応することです。 (※詳細は、前述のコラム等)
 主観的情報への対応は、関連する客観的情報の収集、専門家の評価、改善計画の立案、関係者への説明と合意形成、計画の実行・確認・改善になります。この中で、健康が害されているおそれがある場合は、専門家は明確に医師です。 繰り返しになりますが、合理的な社内制裁・叱責は必要です。特に、経済の面で公共の福祉を向上させる観点で、憲法に基づき重要な行為です。
 一方で、社内制裁・叱責により、心身の健康を害するリスクは常にあります。社内制裁・叱責をする場合は、いつでも産業医又は医師を活用できるように、準備しておくことが重要です。
 今までは、労働者保護という雰囲気を理由として、社内制裁を避けることがあった事例を承知しています。しかし、刑事事件にならない叱責で、社長が辞任する時代になりました。これからは社内制裁・叱責を、経営ツールとして合理的に活用することが、経営者スキルの一つとなっていくと考えられます。

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JSA-S1025 ヒューマンリソースマネジメント-組織(企業)が⾏う健康管理-職域健康専⾨家の活⽤の指針

JSA-S1025ページ
https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=JSA-S1025%3A2025

JSA-S1025紹介
https://webdesk.jsa.or.jp/pdf/jsa/pdf_jsa_372.pdf

【JSA-S1025】開発の解説
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-177724/

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