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雇用保険の適用漏れ

◆事例:雇用保険の適用漏れ

 定年退職する従業員の手続き準備をしていたところ、雇用保険の取得届が漏
れていたことが判明しました。職安へ相談しましたが、遡及適用は2年間まで
とのことです。本人が失業給付を受ける際に被る不利益は、どのように処理し
たらよいでしょうか。

◇回答----------------------------------------------------------------
 会社のミスによる届出漏れであれば、その背景等も含めて陳謝しなければな
りません。その上で、本来受給できる日数、金額との差額は、会社が補填する
ことを提案してみて下さい。
 補填額は失業状況により変動があり得ますが、受給期間が満了するまでは致
し方ありません。
 なお、過去の雇用保険料については時効となり、返還請求はできません。

■解説----------------------------------------------------------------
 定年に限らず、退職者が発生する段階になって、雇用保険の取得漏れが判明
するケースが意外と多いようです。一人の担当者がずっと事務を行っていたな
らともかく、長い期間には入れ替わっていることが多いため、今の担当者は青
ざめてしまいます。

 慌てて職安へ相談に行っても「遡及適用は2年までです」と冷たくあしらわ
れ、その間の勤務表や賃金台帳、遡及願や顛末書までも持参して、ようやく認
めてもらうのが精一杯。
 保険料はきちんと納めたのになぜ?という疑問もありますが、現行の雇用
険法では被保険者期間の遡及は2年までしか認められないのが実情です。(法第
14条3項2号、第22条4項)
 もし、保険料を納めていなかった場合は、2年分を追加して納めねばなりま
せん。本人が「雇用保険なんぞもらう気ないから保険料返してくれ」と言った
としても(無理ですが)2年以前の保険料は時効となります。(徴収法第41条)

 取得届漏れによる影響は、雇用期間が比較的短い従業員だったら損得は少な
いですが、定年等の長期在籍者の場合は大きな問題となります。
 通常、定年退職者は在籍20年以上あるので、雇用保険所定給付日数は150日
あります。一方、定年直前に遡及適用した場合、被保険者期間も2年前後なので
給付日数は90日と、約2ヶ月分の差が生じます。もしこれが、定年でなく解雇で
あったりすると、その差はさらに増えることとなります。

 これは会社が行うべき届出をしていなかったための不利益となるため、あえ
て言うなら不法行為となり、会社が賠償しなければならないこととなります。
 しかし、失業給付は様々な状況変化が生じます。定年退職後、すぐに再就職
できれば失業給付なしということもあるため、賠償すべき額を事前に確定する
ことは不可能です。
 もちろん、会社が差額を全額支払ってチョンとすることもできなくはないで
すが、ケースバイケースです。

 会社の事務作業は大変ですが、本人から失業給付の状況を随時報告してもら
い、最終的に確定した時点で差額を補填するという契約を締結する方法もあり
ます。文案の工夫は必要ですが、法的には和解と同じになります。

 但し、この方法を採るには実際と本来のシミュレーションを行わねばならず、
雇用保険に関するかなりの知識が必要となってきます。短期の再就職があった
だけでも複雑化します。一番怖いのは訓練校への入校絡みのケース。訓練延長
給付となったはずだと主張されるととんでもない日数になります。希望者全て
が訓練校に入れるわけではないので判断が分かれるところです。

 結局は本人との話し合い次第。誠心誠意で対応し、ここまでは会社で面倒見
ますということを明確に示し、安心して退職してもらうことが肝心です。
 少なくとも、うかつな対応は禁物。退職後の従業員ほど怖い存在はありませ
ん。喧嘩別れすれば、あることないこと言いふらし、行政にタレ込んだりと、
抑えようがないだけに解決が困難になります。このあたりは専門家の援助を求
めた方が早くて確実、安上がりです。特に、私のような、昔失業給付を支払っ
ていた立場だった人なら。あんまりいるはずないか。


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