相談の広場
製造業です。工場内には通常チャイムを鳴らし、時間を知らせておりますが、残業の時に限って終了時間よりも早く更衣室に行って着替える社員がいるようです。他の社員はチャイムが鳴るまでそれぞれの現場で作業をしているのですが、この女子社員だけ、(しかも2時間残業のときに限って)チャイムが鳴るよりも早めに更衣室で着替え、残業時間が過ぎてから打刻をするため、「ずるい」と言う周囲の声が聞こえてきています(本人は気付いていないようです)。会社としては、チャイムが鳴るまで作業に当たるように、とルール付けしたいのですが、裁判では着替えも拘束時間として賃金支払の対象となる判例があると聞いたことがあります。社員間で認識が違うと不公平に繋がるため、統一したいのですが、どう線引きしたらよいでしょうか。
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2つの問題がありますね。
ひとつは、着替えの時間は労働時間なのかそうではないのかという判断の問題
もうひとつは、着替えの時間に対する解釈が従業員間でばらつきがあるために生じる不公平感の問題。
これを切り分けて考えたほうが考えやすいので、分けて考えます。
●着替えの時間は労働時間なのか?
まず着替えは労働時間に含まれるのかそうではないのかの問題についてお話します。
この場合、制服着用が義務化されているのかどうなのか、制服の必然性の度合いで判断が変わってきます。
たとえば、工事現場の安全装備、たとえばヘルメット着用とかそのたもろもろ。
この場合は、作業の前提として制服着用が必須ですので、着替えは労働時間と考えるのが当然です。
逆に、たとえば、一応制服はあるけれど、その制服着用が必ずしも義務化されていないとか、
あるいは制服姿での通勤を認めているとかの場合においては、着替えの時間は労働時間と考えなくてもいい場合がでてきます。
この場合、重要になってくるのが、着替えが就業規則でどう位置づけされているか、です。
「始業時刻から作業を開始できること」「制服の着替えをする場合には終業時刻後にすること」というような記載があれば
着替えの時間は労働時間と考えなくてもいい可能性が高まります。
ご注意いただきたいのは、「制服の着替えは、終業時刻後にすること」ではないということです。
「制服の着替えをする場合には終業時刻後にすること」です。違い、おわかりになりますね?
制服の着替えの必然性を弱めている表記にしています。
さらにいうなら、制服着用そのもの自体を任意として、華美でなければ制服を着用しなくてもかまわない、という管理方法に
変えるという考え方もあります。こうやっても、意外と制服を活用する人は多いのです。
その理由は、服をを選択しなくていいのでラクだからという理由と、
制服は会社の貸与になるので、自分の被服が痛まなくてすむからという理由と
周囲が制服だと自分も制服でいたほうが安心できるという理由からです。
貴社における制服の必然性の度合いを振り返って確認するといいかもしれません。
たとえば制服廃止にしてしまえば、制服にかかる経費も抑制できるし、今回のような問題もなくなります。
着替えの時間は労働時間なのかそうではないのかという判断の問題の結論は、
当社における制服着用の必然性がどうなのかの度合いによって変わってくる、ということと、
就業規則での記載の仕方によって着替えを終業後の時間に求める会社の正当性の度合いが変わってくる、ということです。
●着替時間の解釈相違で生じる不公平感をどう処理する?
この解決方法は、前問と連動します。
つまり、当社において、着替えの時間は労働時間とするのかしないのか。
これをまずはっきりさせます。
労働時間であるとするならば、問題の彼女、以外の人全員に「実は着替えも労働時間なんだよ」と伝達する必要があります。
これで不公平感の問題は解決します。
労働時間でないとするならば、問題の彼女に「労働時間じゃないから着替えは業後にしてね」とやさしく説得します。
これで不公平感の問題は解決します。
●結論
ただひとり、着替えを業務時間中に行ってしまう彼女が悪いのではなく、
着替え時間が業務時間なのかそうではないのかを明確にしていなかった会社の労務管理が悪いのです。
現状では彼女を罰することは、おそらくできないでしょう。また、するべきでもないでしょう。
会社がやるべきことは
着替え時間を労働時間とするかしないかの意思をまず早急に決定し、
その意思を就業規則などに記載し、かつ全員にその会社の考え方を伝達して、意思統一を図ります。
そしてその意思に沿った労務管理の運用を行います。
●参考 ある会社の実例
類似の事件が持ち上がったときに、その会社の役員間では、制服を廃止する方向でいこうと結論しました。
ただし、念のため、従業員の意思を聞こうと。
すると従業員の意思としては、制服着用が義務化されてなくても制服を着用したいので、
のこせるものなら制服は残してほしいという結果でした。
会社は従業員の意見をを尊重して「制服の着用は任意とする。ただし希望者には従来どおり無償で制服を貸与する」ことになりました。
そのため、着替え時間は明らかに業務時間外の事象であるとが周知され、この問題の解決を見ることになりました。
ご参考になれば幸いです。
GENERALAFFAIRSさん こんにちは
ひであき33 さんご意見には反論となりますが、最高裁判決では、着替えの時間も労働時間に該当するとの見方をみとめ、賃金の支払いを命じる判決があります。
労働時間が終了し、着替えに要する時間も労働時間として容認されるとしています。
業種間で差異はありませんが、労働時間開始前に衣服の取り換え、集合してからの本日の労務内容に開示、終了10分程度前に整理整頓等を行っています。
これは、労使協定での容認を求めておくことも必要でしょう。
つまりは「安全整理整頓」を全員で行うことでしょう
着替え(更衣時間)も労働時間(最高裁上告棄却判決)
>http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/kigaejikannsaikousaihannketu.htm
作業の準備や着替え、後片付けの時間は労働時間に入るの?
http://www.a-i-s.co.jp/_src/products/Outsourcing/Working%20hours/Working%20hours_4.htm
横から失礼します。
あとから参考にする方に誤解がないように補足させていただきます。
> url先の最高裁を読む限り
> 「就業規則で制服着用が義務付けされているならば、着替えは労働時間」であると言っているだけで「どんな場合も着替えが労働時間になる」と言っているわけではないようです。
参照URL先の概略は、以下のとおりであり、
労働基準法上の労働時間は、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう。
労働者が就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができる。
当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労働基準法上の労働時間に該当すると解される。
すなわち、
「使用者の指揮命令下に置かれていれば、労働時間であり、使用者から義務付けられた行為をなす場合は労働時間に該当する」
ということであり、
以下にあるように
労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。
「就業規則での定めにより決定されるものではない」と明示されています。
> 私の意見は
> 着替えの要望を会社がどのように位置づけているか次第で労働時間かどうか変わってくる
> ということを細かく説明しているだけで、
> 最高裁の判例に違背する内容のものではありません。
こちらは、ひであき33さんの仰るとおりだと思います。
安全のために義務付けていたり、余儀なくされている場合は、使用者の指揮命令下に置かれていると判断され、労働時間になってしまいます。
そこで、制服着用を任意にすれば、労働時間にはならないという解釈できます。
ただし、就業規則などにはよらないので、「余儀なくされている場合」という解釈が問題になると思います。例えば、就業規則に着用任意とあっても実際には全員着用しているなどの場合であるとか、制服着用前提での記述などがあった場合が想定されます。
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