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行政過程における私人、行政行為の種類 ほか

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     ★★★ 新・行政書士試験 一発合格! Vol. ’06-19 ★★
           【レジュメ編】 行政法(その2)

****************************************

■■■ 行政過程における私人
■■■ 行政行為の種類
■■■ お願い
■■■ 編集後記

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

■■■ 行政過程における私人
■■ 行政過程における私人の行為
申請や届出を行うことで行政過程を開始させたり、不利益処分が行われようとするとき
に自己の立場を防御するために意見を述べたり、他人に対する不利益処分の弔問に参加
する等の行為を行う。

■■ 権利能力:権利の主体となることができる資格
→ 行政法関係においてどのような者が権利能力を有するかは具体的な事例ごとに判断
  しなければならない。

■ 外国人の公務就任権
公職選挙法9条 日本国民で年齢満二十年以上の者は、衆議院議員及び参議院議員の選
挙権を有する。

人事院規則8-18第8条 次の各号のいずれかに該当する者は、採用試験を受けるこ
とができない。
三  日本の国籍を有しない者(第三条第一項第十八号に掲げる採用試験については、
出入国管理及び難民認定法別表第二の上欄の在留資格を有する者及び日本国との平和条
約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法に定める特別永住者
を除く。)
2  前項各号のいずれかに該当する者のほか、外国の国籍を有する者は、第三条第一
項第八号に掲げる採用試験を受けることができない。
★★ 地方公共団体の人事委員会規則や試験要領等で日本国籍を有することを受験資格
   とする旨を定めているものが多いが、その後の動きとして、川崎市等で外国人が
   就任できる職の範囲を広げる動きがみられるようになっている。

●●最高裁判例「管理職選考受験資格確認等請求事件」(民集59巻1号128頁)
【要旨】
(ア)地方公共団体が、公権力の行使に当たる行為を行うことなどを職務とする地方公
   務員の職とこれに昇任するのに必要な職務経験を積むために経るべき職とを包含
   する一体的な管理職の任用制度を構築した上で、日本国民である職員に限って管
   理職に昇任することができることとする措置を執ることは、労働基準法3条、憲
   法14条1項に違反しない。
(イ)東京都が管理職に昇任すれば公権力の行使に当たる行為を行うことなどを職務と
   する地方公務員に就任することがあることを当然の前提として任用管理を行う管
   理職の任用制度を設けていたなど判示の事情の下では、職員が管理職に昇任する
   ための資格要件として日本の国籍を有することを定めた東京都の措置は、労働基
   準法3条、憲法14条1項に違反しない。

■■ 行為能力:法律行為を単独でできる能力
行政法関係では、個別の法律で特例が認められることがある。

国籍法18条 第三条第一項若しくは前条第一項の規定による国籍取得の届出、帰化の
許可の申請、選択の宣言又は国籍離脱の届出は、国籍の取得、選択又は離脱をしようと
する者が十五歳未満であるときは、法定代理人が代つてする。
 
■■ 意思表示瑕疵
行政過程において私人の意思表示瑕疵がある場合に、その効果がどうなるかについ
て、行政手続法には規定がなく、解釈に委ねられている。

■ 錯誤
民法95条 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただ
し、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することがで
きない。
 
●● 最高裁判例「所得税賦課決定取消等請求」(民集18巻8号1762頁)
【要旨】所得税確定申告書の記載内容についての錯誤の主張は、その錯誤が客観的に明
    白かつ重大であつて、所得税法の定めた過誤是正以外の方法による是正を許さ
    ないとすれば納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がある
    場合でなければ、許されないものと解すべきである。

■ 詐欺強迫による意思表示
民法96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2  相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方
がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3  前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗するこ
とができない。

■ 本人の意思に基づかない申請・届出
●● 最高裁判例「国籍関係確認請求」(民集11巻7号1314頁)
【理由】被上告人は日本の国籍を離脱する旨の届出が内務大臣宛になされているのであ
    るが、右届出は、被上告人の父Aが、被上告人不知の間に、しかも旧国籍法施
    行規則三条に反して、父A名義をもつてなされたものであるから、右被上告
    の国籍離脱の届出は無効である、従つてその後右国籍離脱を前提としてなされ
    た被上告人の国籍回復申請並びに之に対し与えられた内務大臣の許可はいづれ
    も無効である。

●● 最高裁判例「道路廃止無効確認請求」(民集26巻6号1236頁)
【要旨】建築基準法四二条一項五号により位置の指定を受けた道路の廃止処分につき、
    敷地の所有者の承諾がなかつたとしても、右所有者において道路が従前よりは
    狭くなる程度のことを承知のうえで廃止申請書添付の図面に押印したという判
    示の事情があるときは、その承諾の欠缺が申請関係書類上明白であるのにこれ
    を看過してされたというような特別の場合を除き、右廃止処分を当然無効とす
    ることはできない。
【理由】本件において適用されるべき基準法関係法令の諸規定に徴すれば、基準法四二
    条一項五号に基づく位置の指定を受けた道路につき道路位置廃止処分をする場
    合における所定の権利者の承諾は、道路位置指定処分をする場合における権利
    者の承諾と異なつて、主として、指定による私権の制限の解除を意味するもの
    であるのみならず、原判決の確定した事実に徴すれば、被上告人および訴外B
    は、その意味を正しく理解していなかつたとはいえ、私道が従前よりは狭くな
    る程度のことを承知のうえで本件道路位置廃止申請書添付の図面に押印したも
    のであることがうかがわれる。それゆえ、被上告人らの承諾を欠く申請に基づ
    いてされた本件処分であつても、その承諾の欠缺が申請関係書類上明白である
    のにこれを看過してされたというような特別の場合を除いて、これを当然に無
    効な処分と解することはできない。

■ 法律による民法原則の修正
立法により、民法の原則が明示的に修正されている例

地方自治法施行令95条 条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印を押した者は、条
例制定又は改廃請求代表者が前条第一項の規定により条例制定又は改廃請求者署名簿を
市町村の選挙管理委員会に提出するまでの間は、条例制定又は改廃請求代表者を通じ
て、当該署名簿の署名及び印を取り消すことができる。

地方自治法74条の3第1項 条例の制定又は改廃の請求者の署名で左に掲げるもの
は、これを無効とする。
一  法令の定める成規の手続によらない署名
二  何人であるかを確認し難い署名
同2項 前条第四項の規定により詐偽又は強迫に基く旨の異議の申出があつた署名で市
町村の選挙管理委員会がその申出を正当であると決定したものは、これを無効とする。

■■ 代理人、代表当事者(総代)、補佐人
■ 代理
申請・届出における代理が認められるか否かは、個別法の問題。→ 代理になじまない
例外的場合(選挙における投票等)を除いて代理は可能と解される。

行政書士法1条の3 行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬
を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務
を行うことが制限されている事項については、この限りでない。
一  前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公
署に提出する手続について代理すること。

■ 代表当事者(総代)・補佐人
行政手続法には、多数当事者手続及び申請・届出における補佐人について明文の規定は
ないが、個別法に規定しているものもある。

公害紛争処理法42条の7第1項 公害に係る被害に関する紛争について共同の利益を
有する多数の者は、その中から、全員のために裁定手続における当事者となる一人又は
数人(以下「代表当事者」という。)を選定することができる。
同42条の8第1項 共同の利益を有する当事者が著しく多数であり、かつ、代表当事
者を選定することが適当であると認められるときは、裁定委員会は、当該共同の利益を
有する当事者に対し、相当の期間を定めて、代表当事者の選定を命ずることができる。

■■ 意思表示の撤回
私人の申請・申込み等を受けて行政行為がなされる場合、行政行為がなされる前であれ
ば、申請・申込み等を撤回することができるのが原則。

●● 最高裁判例「解職処分取消請求」(民集13巻6号846頁)
【要旨】
(ア)公務員退職願の撤回は、免職辞令の交付があるまでは、原則として自由である
   が、辞令交付前においても、これを撤回することが信義に反すると認められるよ
   うな特段の事情がある場合には、撤回は許されないものと解すべきである。
(イ)教育長は、教育委員会補助機関として教育公務員退職願およびその撤回の意
   思表示を受領する権限を有する。


■■■ 行政行為の種類
■ 法律行為的行政行為
・行政庁の効果意思の表示

【1】命令的行政行為
(1)下命:国民に対して一定の作為を命ずる仕組み(消防用設備等の設置義務、給与
   等からの所得税の源泉徴収義務等)
(2)禁止:国民に対して一定の不作為を命ずる仕組み(食品衛生法に違反した場合の
   営業停止、売春禁止等)
→ 一般的禁止を個別に解除するのが「許可」
(*)下命・禁止のうち、特定の者を名あて人とするものは、適用除外に該当する場合
   を除き、「不利益処分」〔行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人とし
   て、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分(行政手続法2条
   4号)〕になる。

(3)免除:一般に課された作為義務(下命)を個別に解除すること
(4)許可:一般に課された不作為義務(禁止)について、行政庁が国民の申請に基づ
   き審査を行い、一定の要件に合致する場合、当該禁止を個別に解除する仕組み
→ 許可を受けた行為であっても、そのことで免責を主張することはできない。当該行
  為について許可を受けていることと、当該行為による結果が、民事上不法行為に該
  当するかは別の問題として扱われる。

(*1)ただし、必ずしも「許可」という名称にはなっていない場合が多い(質屋営業
    の許可、自動車運転の免許、貸金業の登録、建物の建築の確認、警備業の経営
    の認定等)。
(*2)許可には、警察許可(消極的許可)と公益事業許可(積極的許可)がある。

●● 最高裁判例「行政処分取消請求」(民集第29巻4号572頁)
【理由】医薬品は、国民の生命及び健康の保持上の必需品であるとともに、これと至大
    の関係を有するものであるから、不良医薬品の供給(不良調剤を含む。以下同
    じ。)から国民の健康と安全とをまもるために、業務の内容の規制のみなら
    ず、供給業者を一定の資格要件を具備する者に限定し、それ以外の者による開
    業を禁止する許可制を採用したことは、それ自体としては公共の福祉に適合す
    る目的のための必要かつ合理的措置として肯認することができる。
    この薬局の適正配置規制は、主として国民の生命及び健康に対する危険の防止
    という消極的、警察的目的のための規制措置であり、そこで考えられている薬
    局等の過当競争及びその経営の不安定化の防止も、それ自体が目的ではなく、
    あくまでも不良医薬品の供給の防止のための手段であるにすぎないものと認め
    られる。
    しかしながら、薬局の開設等の許可基準の一つとして地域的制限を定めた薬事
    法六条二項、四項(これらを準用する同法二六条二項)は、不良医薬品の供給
    の防止等の目的のために必要かつ合理的な規制を定めたものということができ
    ないから、憲法二二条一項に違反し、無効である。
★ いかなる規制を行うかについて、立法の裁量にすべて委ねられるのではなく、憲法
  の保証する営業の自由との関係から、過剰な規制が違憲となることもある。

【2】形成的行政行為
(1)特許:国民が、一般的には取得できない特別の権利を設定する行為(特許法の特
   許とは別の概念。外国人の帰化、鉱業権設定、認可法人の設立等〔ただし、法令
   上では許可や認可という文言が用いられている。〕)
(2)剥権:特定の権利を剥奪する行為(特許の反対。公務員の免職処分等。)
(3)認可:行政庁が法律行為の内容を審査し、法律行為の効力を補充して、その効力
   を完成させる仕組み

●● 最高裁判例「農地売買契約無効確認等請求」(民集第15巻5号1404頁)
【理由】農地の売買は、公益上の必要にもとづいて、知事の許可を必要とせられている
    のであつて、現実に知事の許可がない以上、農地所有権移転の効力は生じない
    ものであることは農地法三条の規定するところにより明らかである。
★ 農地の売買には都道府県知事または農業委員会の許可が必要であり、この許可は、
  農地の売買という法律行為の効力を完成させるものであるため、「認可」に該当す
  る。先行する許可を得ない売買は、許可を得た後から行われた売買に劣後すること
  になる(売買の効力が生じていないため。)。
★ なお、認可があっても、その前提である法律行為に無効となる事由あるいは取消事
  由がある場合には、認可があっても、当該法律行為は効力を生じない(例えば、農
  地の売買に要素の錯誤があって無効の場合、都道府県知事または農業委員会の許可
  があっても、当該売買は有効にはならない。)。

●● 最高裁判例「船舶海上保険金請求」(民集第24巻13号2187頁)
【要旨】船舶海上保険において、保険業者が主務大臣の認可を受けないで普通保険約款
    を変更し、その約款に基づいて保険契約を締結しても、その変更が保険業者の
    懇意的な目的に出たものでなく、変更された条項が強行法規もしくは公序良俗
    に違反しまたはとくに不合理なものである場合でないかぎり、変更後の約款
    は、保険契約の内容を定めるものとして当事者を拘束する効力を有する。
★ 行政庁の認可のない場合でも、そのことだけでは直ちに無効にはならない。

(4)代理:国民が行うべき行為を行政庁が代わって行う仕組み(収用委員会による土
   地収用の補償額の決定等)

■ 準法律行為的行政行為
・行政庁の判断、認識等の効果意思以外の表示
→ 行政庁の裁量の余地はない(附款を付すことが認められない。)。

(1)確認:行政庁が、特定の事実または法律関係の存否を認定し、外部に表示するこ
   と(建築確認、収用事業の認定、特許法上の特許等)
(2)公証:行政庁が、特定の事実または法律関係の存否を公に証明すること(行政書
   士名簿への登録、選挙管理委員会による選挙人名簿への登録等)

●● 最高裁判例「家賃台帳無効確認請求」(民集第18巻1号113頁)
【理由】市町村長が地代家賃統制令一四条の規定に基づき家賃台帳に家賃の停止統制額
    または認可統制額その他法所定の事項を記入する行為は、借家の家賃に停止統
    制額または認可統制額の存在することおよびその金額等につき、公の権威をも
    つてこれらの事項を証明し、それに公の証拠力を与えるいわゆる公証行為であ
    ることはいうまでもない。
    しかし、それは、元来家賃台帳を市役所または町村役場に備えつけ公衆の閲覧
    に供することによつて右の事項を一般に周知徹底させて統制額を超える契約
    を防止し、あわせて行政庁内部における事務処理の便益に資せんことを目的と
    するに過ぎないものであつて、もとよりその行為によつて新らたに国民の権利
    義務を形成し、或いはその範囲を確認する性質を有するものではない。
★ 公証行為であっても、必ずしも処分性が認められる訳ではない。なお、この地代家
  賃統制令は1986年に廃止されている。

(3)通知:ある一定の事実、処分、意思を特定の国民に知らせること(納税の通知等)
(4)受理:行政庁が、申請、届出等について、その内容の審理、審査をすべきものと
   して公式に受取ること(戸籍に係る届出等)

■ 許認可等に共通する事項
(1)期間・期限:法律で有効期間が定められている場合、期間の定めがない場合、一
   定の場合には定めることができる場合、附款として期限を付すことができる場合等

●● 最高裁判例「テレビジョン放送局の開設に関する予備免許処分・同免許申請棄却
   処分並びにこれが異議申立棄却決定取消請求」(民集第22巻13号3254頁)
【理由】付与された予備免許は、昭和三九年四月三日本免許となつたのち、翌四〇年五
    月三一日をもつて免許期間を満了したが、同年六月一日および同四三年六月一
    日の二回にわたり、これが更新されていることが明らかである。もとより、い
    ずれも再免許であつて、形式上たんなる期間の更新にすぎないものとは異なる
    が、右に「再免許」と称するものも、なお、本件の予備免許および本免許を前
    提とするものであつて、当初の免許期間の満了とともに免許の効力が完全に喪
    失され、再免許において、従前とはまつたく別個無関係に、新たな免許が発効
    し、まつたく新たな免許期間が開始するものと解するのは相当でない。
★ 免許等の期間は、許認可等の内容によっては、更新を前提とした許認可等の条件を
  見直すためのチェックポイントとしての意味を持つにとどまる。

(2)融通性:権利・地位等が譲渡・相続・差押等の対象になるかどうかは、許認可等
   の性質で判断する。
(3)事前手続:許可、特許、認可とも、申請〔法令に基づき、行政庁の許可、認可、
   免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(「許認可等」という。)
   を求める行為(行政手続法2条3号)〕が必要である。

■ 附款
・許認可等の法的効果について、法律で規定された事項以外の内容を付加したもの(行
 政庁の効果意思の制限)
→ 法律上は、条件、期限という文言が用いられる。
→ 法律行為的行政行為には付すことができるが、準法律行為的行政行為には付すこと
  はできない。

【1】行政庁は、法律に規定がある場合には当然に、また、規定がない場合であって
   も、その内容等から附款を付すことができる。
→ 行政庁の裁量権行使の一環であるため、当該行政行為の根拠法の目的、平等原則、
  比例原則に反する附款は認められない。

【2】附款の種類
(1)条件(停止条件、解除条件)
(2)期限(始期、終期)

●● 最高裁判例「行政処分取消請求」(民集第17巻3号435頁)
【要旨】(山形)県教育委員会のした小学校教員の期限付任用も、(イ)同委員会とし
    ては、定年退職の制度がないため、高齢者を罷免し人事の刷新を図るには勧奨
    退職の方法を活用するよりほかなく、この方法の円滑な運用を期するうえに期
    限付任用を行う必要があつたこと、(ロ)本人としても、かかる任用を諒承
    し、再度期間の更新を受けるにあたり年度末には自発的に退職する旨の誓約書
    を差し入れていたこと、(ハ)地方公務員法の職員任用に関する規定の適用を
    みるに至ったのが、再度の更新期間中であつたことを等の事情の下では、地方
    公務員法の右規定施行後においても、違法とはいえない。
★ 期限に関する附款を付すことはできる。

(3)負担:ただし、法律の根拠が必要である(河川敷の使用許可が撤回された場合の
   原状回復等)。
→ 負担に違反しても、当該許認可等の効果は当然には失われない。
(4)撤回権の留保:許認可等が将来撤回されることがあることを予め確認するもの

■ 基準時
●● 最高裁判例「行政処分取消請求」(民集第29巻4号572頁)
【理由】行政処分は原則として処分時の法令に準拠してされるべきものであり、このこ
    とは許可処分においても同様であつて、法令に特段の定めのないかぎり、許可
    申請時の法令によつて許否を決定すべきではなく、許可申請者は、申請によつ
    て申請時の法令により許可を受ける具体的な権利を取得するものではないか
    ら、右のように解したからといつて法律不遡及の原則に反することとなるもの
    ではない。
★ 許認可等の申請時を基準にするのではなく、処分時の法令や事実関係を基準にする
  (なお、この判例は薬局距離制限判決と同一の判決である。)。

■ 届出
・行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であっ
 て、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法
 律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)
 (行政手続法2条7号)

(1)届出が届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添付されてい
   ることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合は、当
   該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したとき
   に、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとみなされる(行政手続法
   37条)。
(2)届出義務違反には罰則の適用がある場合が一般的。


■■ 即時強制
(1)根拠軌範:侵害留保説からしても、根拠軌範が必要。
→ 相手方に義務を課して、その履行の確保を図るものではないので、行政代執行法の
  適用を受けない。
(*)行政代執行法「行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除
   いては、この法律の定めるところによる。」(第1条)
→ 法令のみならず、条例を根拠軌範とすることも可能。
(2)事例
警察官・自衛官による武器の使用、海上保安官による船舶の停止、消防吏員による破壊
消防、入国警備官による収容、精神障害による措置入院・保護入院等
(3)手続的保障
即時強制は、事実上の行為であるため、行政手続法の不利益処分には該当しないことか
ら、同法の保護が受けられない。
(*)不利益処分からは、「事実上の行為及び事実上の行為をするに当たりその範囲、
   時期等を明らかにするために法令上必要とされている手続としての処分」(2条
  4号イ)が除かれている。
→ 行政の緊急措置については、上記最高裁判例「損害賠償」(民集45巻3号164
  頁)を参照のこと。

■ 私人の防御
(1)侵害排除請求権:違法な規制の取消を求める不服申立て行政不服審査法3条1
   項)、行政庁を相手方とする訴訟の提起(行政事件訴訟法3条2項)
(2)損害賠償請求権(国家賠償法1条1項)
(3)損失補償(憲法29条3項)


■■ 補完性の原則
(1)中央省庁等改革の基本方針
国の規制の撤廃又は緩和を進め、国と民間とが分担すべき役割を見直し、及び国と地方
公共団体との役割分担の在り方に即した地方分権を推進し、これに伴い国の事務及び事
業のうち民間又は地方公共団体にゆだねることが可能なものはできる限りこれらにゆだ
ねること等により、国の行政組織並びに事務及び事業を減量し、その運営を効率化する
とともに、国が果たす役割を重点化すること。(中央省庁等改革基本法4条3号)

(2)民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)
この法律は、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用した公共施設等の整備等の促
進を図るための措置を講ずること等により、効率的かつ効果的に社会資本を整備すると
ともに、国民に対する低廉かつ良好なサービスの提供を確保し、もって国民経済の健全
な発展に寄与することを目的とする。(第1条)

●● 最高裁判例「損害賠償等」(民集第43巻12号2078頁)
【理由】独占禁止法二条一項は、事業者とは、商業、工業、金融業その他の事業を行う
    者をいうと規定しており、この事業はなんらかの経済的利益の供給に対応し反
    対給付を反覆継続して受ける経済活動を指し、その主体の法的性格は問うとこ
    ろではないから、地方公共団体も、同法の適用除外規定がない以上、かかる経
    済活動の主体たる関係において事業者に当たると解すべきである。したがっ
    て、地方公共団体がと場料を徴収してと畜場事業を経営する場合には、と畜場
    法による料金認可制度の下においても不当廉売規制を受けるものというべきで
    ある。
★ 地方公共団体も、独占禁止法の適用除外がない以上、経済活動の主体たる関係にお
  いては事業者に当たる。

■■ 公物
(1)公物:国、地方公共団体等の行政主体の使用の用に供される個々の有体物
→ 管理の面からの区分であり、所有とは関係がない(国有私物や私有公物もある。)。
(2)公用物:行政主体自身が使用するもの(庁舎、国立の学校の校舎等)
(3)公共用物:国民一般の利用に供するもの(公園、港湾等)。人工公物と自然公物
   がある。

●● 最高裁判例「土地滅失登記処分取消」(民集第40巻7号1236頁)
【理由】海は、古来より自然の状態のままで一般公衆の共同使用に供されてきたところ
    のいわゆる公共用物であつて、国の直接の公法的支配管理に服し、特定人によ
    る排他的支配の許されないものであるから、そのままの状態においては、所有
    権の客体たる土地に当たらないというべきである。
    私有の陸地が自然現象により海没した場合についても、当該海没地の所有権
    当然に消滅する旨の立法は現行法上存しないから、当該海没地は、人による支
    配利用が可能でありかつ他の海面と区別しての認識が可能である限り、所有権
    の客体たる土地としての性格を失わないものと解するのが相当である。
★ 本件は、徳川幕府から新田開発許可があつた(海面下の)土地の滅失登記処分の取
  消しを求めた事案である。最高裁は、「本件係争地は、昔から海のままの状態にあ
  り、私法上の所有権の客体たる土地に当たるものとはいうことができない。そうす
  ると、本件滅失登記処分は、本件係争地が登記されるべき土地として存在しないと
  いう実体的な法律状態に符合した処分であつて、これを違法ということはできな
  い。」と判示した。

●● 最高裁判例「所有権確認請求、同附帯」(民集第30巻11号1104頁)
【要旨】公共用財産が、長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置され、公共
    用財産としての形態、機能を全く喪失し、その物のうえに他人の平穏かつ公然
    の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されることもなく、もはや
    その物を公共用財産として維持すべき理由がなくなつた場合には、右公共用財
    産について、黙示的に公用が廃止されたものとして、取得時効の成立を妨げな
    い。
★ 本件は、公図上水路として表示されている国有地であつたが、古くから水田、ある
  いは畦畔に作りかえられ、本件田あるいはその畦畔の一部となり、水路としての外
  観を全く喪失していた土地に関する事案である。
★ 黙示の公用廃止があったものとして取得時効の成立を認めたが、公物自体について
  の取得時効を認めた事案ではない。

●● 最高裁判例「村道供用妨害排除請求」(民集第18巻1号1頁)
【要旨】
(ア)村民各自は、村道に対し、他の村民の有する利益ないし自由を侵害しない程度に
   おいて、自己の生活上必須の行動を自由に行いうべき使用の自由権を有する。
(イ)村民の右村道使用の自由権に対して継続的な妨害がなされた場合には、当該村民
   は、右妨害の排除を請求することができる。
★ 自由使用が認められる道路のような公共用物については、民法上の保護が与えられ
  るべきであり、この権利が妨害された場合には、不法行為の問題にもなる。

●● 最高裁判例「借地権確認土地引渡等請求」(民集第28巻1号1頁)
【要旨】都有行政財産である土地について建物所有を目的とし期間の定めなくされた使
    用許可が当該行政財産本来の用途又は目的上の必要に基づき将来に向つて取り
    消されたときは、使用権者は、特別の事情のないかぎり、右取消による土地使
    用権喪失についての補償を求めることはできない。
【理由】都有行政財産たる土地につき使用許可によつて与えられた使用権は、それが期
    間の定めのない場合であれば、当該行政財産本来の用途または目的上の必要を
    生じたときはその時点において原則として消滅すべきである。
    使用権者は、行政財産に右の必要を生じたときは、原則として、地方公共団体
    に対しもはや当該使用権を保有する実質的理由を失うに至るのであつて、補償
    は、行政財産についてその必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有
    する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られる
    というべきである。


■■■ お願い  
継続して発刊するためには読者の皆様のご支援が何よりの活力になります。ご意見、ア
ドバイス、ご批判その他何でも結構です。内容、頻度、対象の追加や変更等について
も、どうぞ何なりと e-mail@ohta-shoshi.com までお寄せください。

質問は、このメールマガジンの趣旨の範囲内のものであれば、大歓迎です。ただし、多
少時間を要する場合があります。


■■■ 編集後記 
今回から行政法です。全部で8回程度を予定し、前半では行政法の総論を取上げ、後半
には、行政手続法および行政不服審査法を中心に取上げる予定です。この行政法は、行
政書士試験ではAランクの科目です。すなわち、90%以上の得点を目指すべき科目であ
り、また、得点源とすべき科目です。

前半の総論部分は、(やや)抽象的な内容ですが、後半部分の基礎となる箇所ですの
で、根気良く対応することがポイントになります。また、それなりの配点がある分野な
ので、どうかご辛抱下さい。

なお、先週は、超多忙を極めたため、レジュメ編はお休みさせて頂きました。問題編の
編集後記にその旨を記載したのですが、必ずしも分かりやすくなかったため、読者の方
々からご照会を頂いてしまいました。誠に申し訳ありませんでした。


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 マガジンタイトル:新・行政書士試験 一発合格!
 発行者:行政書士 太田誠   東京都行政書士会所属(府中支部)
 発行者Web:http://www.ohta-shoshi.com
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