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セクシャルハラスメントに対する懲戒処分に関する考察

平成23年6月15日 第93号
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人事のブレーン社会保険労務士レポート
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目次

1.セクシャルハラスメントに対する懲戒処分に関する考察

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1.セクシャルハラスメントに対する懲戒処分に関する考察

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1.はじめに
とある企業の懲罰委員会の委員を拝命しています。
何件か委員として仕事をしていて、セクシャルハラスメントの問題は論点整理
が必要であるという思いがあり、一緒に委員をやっている友人の弁護士と議論
をしました。

それをまとめたものがこのレポートです。

当然メルマガ用に修正いたしましたが、根幹の部分はかわっていません。
刑法に関する問題も一度しっかりと学んでおくべきと思いまとめてみました。
強姦と強制わいせつに関する記述は表現を控えめにしたつもりですが、内容が
誤って伝わってしまうと大変ですので最低限の記述はしてあります。

セクシャルハラスメントの防止に努めることは当然でありますが、起こってし
まった際の対応について経営者は学んでおく必要があります。

セクシャルハラスメントの類型や内容についてはもう既にお話ししていますの
で、改めてお話は致しませんが、セクシャルハラスメントを行ってしまった従
業員に対してどの様な処罰を与えるべきでしょうか。

・刑法に該当する行為
・刑法に該当しないが常識的にあってはならない行為
・思い込み、勘違いに起因する行為
・道徳上の問題として取り扱うべき行為

この4つに分類をしました。

2.処分にあたり3つの区分に事件を整理して考えましょう

(1)刑法に該当する行為

セクシャルハラスメントとは、性的な言動等により相手の就業環境を悪化させ
ることを言います。

性的な対価を求めたり、臀部や胸部を触ったりという行為やヌード写真やポス
ターの掲示といったことから、卑猥な会話を周りに気を使わずに行うといった
ことです。

まずは性的な対価を求める事案について考えてみましょう。

お互いに納得し、合意の上で性交渉に及ぶ場合には問題はありません。
各々の家庭環境により道徳上の問題や相手方の配偶者に対する民事上の問題は
あります。

しかし刑法犯として処罰されることはありません。

刑法犯として処罰されることがなくても、企業として処分しなければならない
ケースもあります。(4)で詳細をお話しいたします。

しかし相手が抵抗するにもかかわらず通姦行為を行えば刑法第177条の強姦
罪になります。

問題は相手が抵抗しない場合です。
薬物や飲酒により「心神喪失」もしくは「抗拒不能」にさせたり、また、その
様な状態に乗じて通姦行為に及んだ場合には、相手は抵抗していませんが、抵
抗できない状態であったわけで、当然抵抗できる状態であれば抵抗するはずで
す。
ですからこれは刑法178条の準強姦罪に該当します。
準が付いているから軽いわけではなく、刑量が一緒です。
準は強姦にかかるのではなく、準強制強姦と表現したほうがわかりやすいかも
しれません。
強姦の方法が力ずくであったか否かだけの問題であり、犯罪の重大さは変わり
ません。

この抗拒不能の状態ですが、立場の弱い女性。例えばシングルマザーで何とか
必死に働いて生活をしている女性社員に対し、上司が拒否した場合にはその雇
用関係を解除することや不利益に取り扱うこと等を暗ににおわせて性交渉を強
要した場合には準強姦罪になる可能性もあります。

この場合には刑法犯ですから、懲戒解雇相当と判断すべしです。

次に臀部や胸部を触った場合はどうでしょう。
これも刑法第176条及び第178条において強制わいせつ及び準強制わいせ
つとなります。
過失によって触れた場合には罪には問われないので、ここは十分な検証が必要
です。
臀部や胸部を触った不届きな労働者であれば、それが刑法に該当するという事
を十分に理解してもらい処分をするべきです。
複数回行う労働者については懲戒解雇相当と判断できますが、その行為に至る
経緯をしっかりと調査する必要があります。

(2)刑法に該当しないが常識的にあってはならない行為

前述の問題は、セクシャルハラスメントの問題だけではなく、むしろそれを超
えた刑法上の問題です。

しかし、刑法には該当しないが常識的にやってはいけないであろう行為は存在
します。
女性の髪の毛を触る行為や肩をなでる行為等です。

これは常識的に考えれば、いかがわしい意図をもって行ったとみなすことが妥
当であり、いかがわしい意図を持たずに行うという事は考えにくいわけです。
ですから状況を調査したうえで本人を処分すべきです。

処分の内容は、その様態を分析して決定すべきです。

(3)思い込み、勘違いに起因する行為

ここが一番の問題であり、最も多い行為です。
企業として最も防止策に悩まされる分野です。

例えば、あだ名があります。
このあだ名を呼べる関係かどうかを冷静に考えてください。
「あだ名で呼べる関係だ」と思っても相手が「あだ名で呼べる関係ではない」
と思っているかもしれません。
「異性の社員をあだ名で呼ぶことはセクハラである」というのは誤りで、「あ
だ名を呼ぶほど親しい関係か」「その親しい関係を職場で暴露して就業環境に
影響が出ないのか」という2点を考慮すべきです。

2人で食事に行って親しくなることが、業務を進める上で大切だと思い食事に
誘っても、相手は行きたくないかもしれません。

下心があっても無くても、相手がどう思うかが重要なのです。

頑張れという意味で「背中をたたく」ということも同様です。
「肩を揉む」方もいらっしゃいますが、通常異性の肩は揉みません。

部下に対して飲食をともにするように誘う場合にも、そこに思い込みや勘違い
が無いのか検討しなければなりません。

異性と2人で飲食をともにすることはなるべく控え、誰か一人増やして3人で
飲食をすることや、相談等で2人で飲食をする場合には上司に事前に伝えるか、
それが出来ないのであればせめて信頼できる同僚にその旨を話しておくことも
考えてみましょう。

保育園を運営する社会福祉法人の理事をしていますが、保護者と職員はこの様
な行為は慎むべきとなっています。

第三者がみて、親しい関係であると思われてしまうと、依怙贔屓をしていなく
ても、そのように感じられ保育に影響が出てくることを防止するためです。

これは一般企業でも同じです。

特に人事権のある上司は高度な規範意識を持って行動すべきでしょう。

(4)道徳上の問題として取り扱うべき行為

(1)で少しお話ししましたが、具体的な事例で話すと社内の不倫行為はどう
取り扱うべきでしょうか。

社内だけではなく、取引先の社員との不倫も同様です。

特に人事権を持った上司がその当事者である場合にはしっかりと対応すべきで
す。

企業で働く社員は、その職場環境を良いものにする責務を負っています。

不倫という行為は、この環境を悪化させるリスクのある行為です。
また人事権を持った上司が当事者の不倫は、それを知る同僚が公平な人事権
行使が行われているのかという疑問を持つ可能性もあり、企業として当事者か
ら事情を聞くことはやるべきでしょう。

事実であれば、職場転換を検討するべきです。

しかし問題となるケースは、不倫関係が一方の配偶者のばれた場合です。
配偶者にばれた不倫の当事者は、相手が一方的に迫ってきて困った。
いわゆるつきまとい等で迷惑していると主張してくるケースがあります。

企業としてセクシャルハラスメントの防止対策はどうなっているのかが問われ
てしまいます。

しかし、配偶者にことが発覚する前に事情聴取しておけば、会社としてどの様
に考え対処したのかが明らかになります。

配偶者にはばれていないが、不倫関係が破綻した場合に一方の当事者が復縁を
迫る等の行為により、セクシャルハラスメントとして申告してくるケースもあ
ります。

これも同様の考えで、会社が不倫関係を知る立場になったときに事情聴取をす
るべきです。

この様に人事権者の権限行使が公平であると思われるような努力は大切ですし、
関係が発覚した際や破綻した際のトラブルから大きな問題に発展するケースが
非常に多いです。
これは注意すべきであると考えます。

3.まとめ

セクシャルハラスメントを行った加害者にどの様なペナルティーを与えるべき
か。
非常に悩ましい問題でありますが、実際にセクシャルハラスメントのご相談は
非常に多いです。
特に最後にお話しした、不倫関係から発生するトラブルが多いのです。

予防に関する書籍はありますが、発生した場合にどの様に考えて処分をするべ
きかという内容の文書がないので、今回まとめてみました。
ご参考にしてください。

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