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退職金は、一般に長期
雇用を前提とする正社員について設けられています。
本来、
使用者に
退職金の支払義務があるわけではなく、
退職金制度を設ける
か否かは、あくまでも
使用者の自由です。しかし、
就業規則(
退職金規程)
で
退職金についてあらかじめ支払条件を明確に定めていれば、
使用者に
支払義務が生じることになります。このうち、実務的に問題となるのが、
死亡退職金の
受給権者が誰であるかです。
===================================================================
● 生前
退職金の法的性格と
相続財産性
===================================================================
生前
退職金の法的性格については、
【1】
賃金の後払いとする説
【2】
退職者の生活保障とする説
【3】長年の勤続に対する功労報償とする説
がありますが、どの説に立っても、
労働者が
退職後その支給を受ける前に
死亡した場合、
退職金請求権が
相続財産になることに異論はありません。
===================================================================
●
死亡退職金の法的性格と
相続財産性の有無
===================================================================
労働者が在籍中に死亡したときには遺族等に支給される
死亡退職金が
相続
財産に含まれるかどうかは争いのあるところです。
死亡退職金の法的性格について、
【1】未払い
賃金の後払いとする説
は
死亡退職金も生前
退職金と同じく
相続財産に属すると考えるのに対して、
【2】遺族の生活保障とする説
は
死亡退職金請求権を遺族固有の権利であると考えることが多いようです。
===================================================================
●
死亡退職金の
受給権者に関する具体的規定が存在する場合
===================================================================
死亡退職金の
受給権者について、法律(国家
公務員の場合)、条例(地方
公務員の場合)あるいは
退職金規程等の内規(私企業の
従業員の場合)に
具体的な定めがある場合、
受給権者の範囲及び順位は
民法の
相続規定と
異なる場合が多い。
このように
死亡退職金の
受給権者の範囲及び順位について
民法の
相続規定と
異なる規定がある場合、
受給権者はその規程に基づいて自己固有の権利
として
死亡退職金を取得すると解されており、その
相続財産性は否定
されています(最高裁昭和55・11・27判決)。
なお、どのような規定がある場合に
相続財産性が否定されているかに
ついては一概に言うことはできませんが、最高裁判決には、
退職金規程に
死亡退職金は「遺族に支給する」とのみ規定していた学校
法人の職員の
事例で、
民法上の
相続とは別の立場で
受給権者を定めたものであるとして、
死亡退職金の
相続財産性を否定したものがあります
(最高裁昭和60・1・31判決)。
===================================================================
●
死亡退職金の
受給権者に関する具体的規定が存在しない場合
===================================================================
死亡退職金の
受給権者に関する具体的な定めがない場合、
相続財産性を
肯定する説と否定する説とに分かれていますが、最高裁判決には、
退職金
規程のない財団
法人の理事長が死亡した後に理事会が理事長の妻に対して
死亡退職金を支給する旨の決議をして支払われた事例で、この
死亡退職金は
相続という関係を離れて受給者個人に支給されたとして、
相続財産性を
否定したものがあります(最高裁昭和62・3・3判決)。
これは、まず、本人の死亡時において具体的な
退職金請求権が発生して
いたか否かを考えるべきものと思われます。
死亡退職金を
相続財産とする
ためには、死亡
労働者本人が請求権を取得した後に死亡したという論理
構成をとらざるを得ないと思われ、そのような具体的な請求権が発生して
いないとするならば
相続財産とはなり得ないからです。
そして、次に、
死亡退職金の
受給権者に関する具体的な定めがないとしても、
従来の慣行等から具体的な
退職金請求権の発生が認められる場合には、
相続財産性を肯定する余地もありますが、その
受給権者の範囲及び順位が
民法の
相続人のそれと異なるときは、やはり慣行等に基づいて固有の権利
として認められるものであるとして、
相続財産性を否定するべきと思われ
ます。
裁判例の中には、
退職金規程に、
退職金は本人に支給事由が生じたときに
本人に支給するとし、本人が死亡する等して受け取ることができないときは
その遺族に支払うと規定していた学校
法人の職員の事例で、
退職金の受給
権者を「
相続人」とせずに「遺族」としているが、
受給権者の範囲及び
順位について
民法の
相続人のそれと異なる規定は設けられていないこと、
規定文言が本人に
退職金の受給権があることを前提としており、「遺族」
とは
相続人を指すと解されること等を根拠として、
相続財産性を肯定して
いる(しかし、
相続放棄をしているため、
退職金請求権は存在しないとした)
ものがあります(大阪地裁平成22・9・10判決)。
===================================================================
●
就業規則(
退職金規程)の具体的規定のあり方
===================================================================
以上のように、
死亡退職金の
受給権者については実務上特に問題となる
ことが多く、親族間のトラブルに巻き込まれる可能性もあるので、受給
権者についてあらかじめ
退職金規程で範囲及び順位を明確に定めておく
べきと思われます。
実務上は、
遺族補償に関する労基法施行規則(42条~45条)に沿った
内容とする例が多く、それが望ましいと思われます。
たとえば、「
従業員が死亡した場合において、その
退職金は、
労働基準法
施行規則第42条から第45条の定めるところに従って支払う。」という
定め方をします。
(弁護士 緒方義行
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退職金は、一般に長期雇用を前提とする正社員について設けられています。
本来、使用者に退職金の支払義務があるわけではなく、退職金制度を設ける
か否かは、あくまでも使用者の自由です。しかし、就業規則(退職金規程)
で退職金についてあらかじめ支払条件を明確に定めていれば、使用者に
支払義務が生じることになります。このうち、実務的に問題となるのが、
死亡退職金の受給権者が誰であるかです。
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● 生前退職金の法的性格と相続財産性
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生前退職金の法的性格については、
【1】賃金の後払いとする説
【2】退職者の生活保障とする説
【3】長年の勤続に対する功労報償とする説
がありますが、どの説に立っても、労働者が退職後その支給を受ける前に
死亡した場合、退職金請求権が相続財産になることに異論はありません。
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● 死亡退職金の法的性格と相続財産性の有無
===================================================================
労働者が在籍中に死亡したときには遺族等に支給される死亡退職金が相続
財産に含まれるかどうかは争いのあるところです。
死亡退職金の法的性格について、
【1】未払い賃金の後払いとする説
は死亡退職金も生前退職金と同じく相続財産に属すると考えるのに対して、
【2】遺族の生活保障とする説
は死亡退職金請求権を遺族固有の権利であると考えることが多いようです。
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● 死亡退職金の受給権者に関する具体的規定が存在する場合
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死亡退職金の受給権者について、法律(国家公務員の場合)、条例(地方
公務員の場合)あるいは退職金規程等の内規(私企業の従業員の場合)に
具体的な定めがある場合、受給権者の範囲及び順位は民法の相続規定と
異なる場合が多い。
このように死亡退職金の受給権者の範囲及び順位について民法の相続規定と
異なる規定がある場合、受給権者はその規程に基づいて自己固有の権利
として死亡退職金を取得すると解されており、その相続財産性は否定
されています(最高裁昭和55・11・27判決)。
なお、どのような規定がある場合に相続財産性が否定されているかに
ついては一概に言うことはできませんが、最高裁判決には、退職金規程に
死亡退職金は「遺族に支給する」とのみ規定していた学校法人の職員の
事例で、民法上の相続とは別の立場で受給権者を定めたものであるとして、
死亡退職金の相続財産性を否定したものがあります
(最高裁昭和60・1・31判決)。
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● 死亡退職金の受給権者に関する具体的規定が存在しない場合
===================================================================
死亡退職金の受給権者に関する具体的な定めがない場合、相続財産性を
肯定する説と否定する説とに分かれていますが、最高裁判決には、退職金
規程のない財団法人の理事長が死亡した後に理事会が理事長の妻に対して
死亡退職金を支給する旨の決議をして支払われた事例で、この死亡退職金は
相続という関係を離れて受給者個人に支給されたとして、相続財産性を
否定したものがあります(最高裁昭和62・3・3判決)。
これは、まず、本人の死亡時において具体的な退職金請求権が発生して
いたか否かを考えるべきものと思われます。死亡退職金を相続財産とする
ためには、死亡労働者本人が請求権を取得した後に死亡したという論理
構成をとらざるを得ないと思われ、そのような具体的な請求権が発生して
いないとするならば相続財産とはなり得ないからです。
そして、次に、死亡退職金の受給権者に関する具体的な定めがないとしても、
従来の慣行等から具体的な退職金請求権の発生が認められる場合には、
相続財産性を肯定する余地もありますが、その受給権者の範囲及び順位が
民法の相続人のそれと異なるときは、やはり慣行等に基づいて固有の権利
として認められるものであるとして、相続財産性を否定するべきと思われ
ます。
裁判例の中には、退職金規程に、退職金は本人に支給事由が生じたときに
本人に支給するとし、本人が死亡する等して受け取ることができないときは
その遺族に支払うと規定していた学校法人の職員の事例で、退職金の受給
権者を「相続人」とせずに「遺族」としているが、受給権者の範囲及び
順位について民法の相続人のそれと異なる規定は設けられていないこと、
規定文言が本人に退職金の受給権があることを前提としており、「遺族」
とは相続人を指すと解されること等を根拠として、相続財産性を肯定して
いる(しかし、相続放棄をしているため、退職金請求権は存在しないとした)
ものがあります(大阪地裁平成22・9・10判決)。
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● 就業規則(退職金規程)の具体的規定のあり方
===================================================================
以上のように、死亡退職金の受給権者については実務上特に問題となる
ことが多く、親族間のトラブルに巻き込まれる可能性もあるので、受給
権者についてあらかじめ退職金規程で範囲及び順位を明確に定めておく
べきと思われます。
実務上は、遺族補償に関する労基法施行規則(42条~45条)に沿った
内容とする例が多く、それが望ましいと思われます。
たとえば、「従業員が死亡した場合において、その退職金は、労働基準法
施行規則第42条から第45条の定めるところに従って支払う。」という
定め方をします。
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