札幌市豊平区の
税理士・
社会保険労務士 溝江 諭(みぞえさとし) です。
中小
会計要領の各論のうち主なものについて、
法人税法との異同を意識しながら見て行きましょう。
今回は、
経過勘定 3 短期
前払費用の2回目です。
中小
会計要領には短期
前払費用に関する定めはありませんが、中小
会計指針および
法人税法基本
通達には短期
前払費用に関する定めがあります。中小
会計要領を適用する場合もこれに準じることが認められるでしょう。
このうち、
法人税法基本
通達2-2-14の短期
前払費用に関する文章をもう一度掲げておきます。
「
前払費用(一定の
契約に基づき継続的に
役務の提供を受けるために支出した
費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない
役務に対応するものをいう。以下2-2-14において同じ。)の額は、当該事業年度の
損金の額に算入されないのであるが、
法人が、
前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける
役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の
損金の額に算入しているときは、これを認める。 (昭55年直法2-8「七」により追加、昭61年直法2-12「二」により改正)
(注) 例えば
借入金を
預金、
有価証券等に運用する場合のその
借入金に係る支払利子のように、
収益の計上と対応させる必要があるものについては、後段の取扱いの適用はないものとする。」
前回は2億1千万円強の
費用を短期
前払費用の一括
損金とした納税者が負けた事例でした。
以下の記事を参照。
http://www.ksc-kaikei.com/news/index.cgi?no=162
その判決では、次の2点を根拠として課税上弊害が生じるため、その
前払費用は重要性が乏しいとはいえず、本件
通達後段は適用されないとされていました。
① 本件各
費用の額は財務内容に占める割合やその影響が大きいものと認められる。
② 次の2点から、利益を圧縮するための租税回避が目的と認められる。
月払から年払への支払方法の変更に合理的な理由がなく、また、未払で残っている
賃借料等をそのままにしながら、今後の分を手形で支払うのは不自然である。
期末に多額の利益が見込まれたこと、また、納税者が様々な方法で同期の利益圧縮を図っていたことは、他の証拠からも明らかであること。
今回は
国税不服審判所の裁決において納税者が一部勝った事例を採り上げ、短期
前払費用についての理解を深めることにしましょう。
採り上げる裁決は、納税者である
法人が2400万円の
費用を短期
前払費用の一括
損金として申告したところ、課税庁がその
損金算入を認めず更正したため、納税者が
国税不服審判所長に対し
審査請求した事件(注1)です。
審査請求人である1月
決算の納税者は、建物を一括して賃借し、事業の用に供しており、平成3年1月31日に平成3年1月から平成3年6月までの本件建物の
賃借料6か月分(400万円×6月=2400万円)を貸主へ支払い、
法人税法基本
通達2-2-14後段に定める短期
前払費用に該当するものとして、全額を平成3年1月期の
損金の額に算入しました。本件
費用の内容は次の通りです(①から⑦の数字は筆者が追加)。
① 請求人は建物を昭和43年10月5日の新築以降一括して賃借している。また、平成3年1月31日付の建物
賃貸借契約書により、賃借の
契約更新を行った。
② 上記の建物
賃貸借契約書第3条に、「賃料は、1ケ月金400万円也とする。賃借人は、賃料を半年毎に支払うものとし、原則として毎年1月末、7月末日までに6ケ月分を賃貸人の住所に持参して支払う。」旨の記載がある。
③ 請求人は、
前払費用について、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の
損金の額に算入している。(いつから半年払とされたかについては不明ですが、本件の発生時点では継続して
損金算入されていた模様です。筆者注)
④ 本件建物の1階部分及び2階部分は請求人の婦人服等の小売の店舗に、3階部分はAへの賃貸に、4階部分は請求人の倉庫及び派遣社員の
休養室に供していることが認められる。
⑤ 1階部分、2階部分及び4階部分は請求人の事業の用に供されていることから、本件支払金額のうちこれらの階に対応する金額は、
販売費及び一般管理費の
賃借料と認められる。
⑥ 3階部分は、請求人の事業の用に全く供することなくAに転貸していることから、この階に係る賃貸借取引は営業外取引であるので、本件支払金額のうち3階部分に対応する金額は
営業外費用と認められ、また、この金額とAからの受取家賃は、明らかにひも付きの見合い関係にあることが認められる。
⑦ 複数階層の建物の各階の利用価値は、階層により異なるものではあるが、本件支払金額のうち3階部分に対応する金額は、①請求人は本件建物を一括賃借していること、②各階の床面積が同程度の面積であることから、四分の一相当額の600万円と認めるのが相当である。
以上の事実に基づいて、「重要性の原則との関連について」審判所は次のように判断しました。
「
法人税法第22条第1項において、「
内国法人の各事業年度の
所得金額は、当該事業年度の
益金の額から当該事業年度の
損金の額を控除した金額とする。」と規定し、また、同条第4項において、ある原価、
費用及び損失の額をどの事業年度に計上すべきかについて、「一般に公正妥当と認められる
会計処理の基準に従って計算されるものとする。」と規定している。
一般に公正妥当と認められる
会計処理の基準としては、原価については、それが
収益と個別に対応するものであることから、原則として
費用収益対応の原則が採られており、
費用及び損失については、販売直接費のように、
収益と個別に対応するものを除いて、原則として総体対応の原則が採られている。
また、
企業会計原則注解の注1「重要性の原則の適用について」の(2)において、「
前払費用、
未収収益、
未払費用及び
前受収益のうち、重要性の乏しいものについては、
経過勘定項目として処理しないことができる。」とされている。
通達2-2-14の後段は、この一般に公正妥当と認められる
会計処理の基準を受けて、「
法人が、
前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける
役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の
損金の額に算入しているときは、ごれを認める。」と取り扱うこととしている。
この
通達2-2-14の後段の取扱いは、
法人が一定の計算基準を継続して行う
会計処理で、その計算基準を行うことに相当の理由があり、重要性の原則に照らして課税上さしたる弊害がないと認められる場合にその適用があるものであり、
費用収益の対応関係を覆してまでその適用を認める趣旨のものではないと解される。」
その上で、本件支払額2400万円のうち、1月分400万円は平成3年1月期の
損金となるのに対して、前払いとなる2000万円の
損金算入については次のように結論付けました。
「以上から、本件金額のうち、1階部分、2階部分及び4階部分に対応する1500万円は
販売費及び一般管理費の
前払費用と認められるから、
通達2-2-14の後段の取扱いの適用ができることとなり、本件事業年度の
損金となる。
また、本件金額のうち、3階部分に対応する500万円は、Aからの受取家賃と見合い関係にあるから、
通達2-2-14の後段の取扱いの適用はできないこととなり、翌事業年度の
損金となる。」
このように本裁決では、支払額2400万円のうち、平成3年1月分400万円の
損金算入を認めた上で、残りの前払分2000万円のうち1500万円については短期
前払費用の一括
損金算入を認め、残りの500万円については基本
通達2-2-14の注を適用して
損金算入を翌年度扱いとすることにより、納税者の一部勝利という形で決着させました。
ここでは、 基本
通達にある2要件、すなわち、① 1年以内に提供を受ける継続的
役務に係るものを支払うこと、②
損金算入を継続適用すること、に該当することを検討した後、さらに、③ その
費用につき
収益計上との対応の必要性について検討し、対応不要の部分の金額については短期
前払費用として
損金算入を認め、対応を要する部分の金額については
損金不算入(翌期の
損金)としたわけです。
重要性の原則との関連については、前回の判決と同様に、この裁決でも、「課税上さしたる弊害がないと認められる場合にその適用がある」としていることから、前払分1500万円という金額については課税上さしたる弊害がないと認めたものと言えます。その具体的な根拠が示されていない点に不満が残りますが、
国税不服審判所において、5か月分で1500万円、月額300万円の一括
損金算入を認めたという事実は納税者が
会計実務を行なう上で有益な参考資料となるでしょう。
なお、短期
前払費用については、1996年8月の政府税制調査会
法人課税小
委員会における 「
法人課税小
委員会報告」の第4分冊で、次のような記載がありますので、参考までに掲げておきます。
「(1) 短期の
前払費用
(ア) 現在、地代家賃、設備のリース料等については、それが1年以内に
役務の提供がなされるものである場合には、事務の簡素化の観点から、支払時に
損金の額に算入することが認められている。
(イ) この取扱いには、継続要件があるものの、特に金額的な制限が設けられていないため、企業によってはかなりの金額について
費用の前倒し計上が可能となっている。したがって、現行の取扱いについては、何らかの制限が必要ではないかと考える。」
(下線は筆者が追加。)
前回の記事、
2億1千万円強の
費用を短期
前払費用の一括
損金とした納税者が負けた事例
http://www.ksc-kaikei.com/news/index.cgi?no=162
次回は、
固定資産 についてです。
≪中小
会計要領の主な内容 その8
固定資産≫
http://www.ksc-kaikei.com/news/
その他の『ちょっとためになる情報』は、次のサイトの「お知らせ」と「ブログ・コラム」でどうぞ!!
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See you next!
(注1) 裁決年月日 H05-11-19、コード番号 F0-2-170
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◎ 申告や納付が遅れた場合の
加算税や
延滞税、どの位の割合になるのかな?
≪えっ、そんなに高いの! 『
加算税や
延滞税』の割合は・・・≫
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◎
法人税の税務調査って、当たる確率はどの程度なのかな?
≪税務調査に当たる確率はどのくらい? ≫
http://www.ksc-kaikei.com/blog/index.cgi?no=110
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札幌市豊平区の 税理士・社会保険労務士 溝江 諭(みぞえさとし) です。
中小会計要領の各論のうち主なものについて、法人税法との異同を意識しながら見て行きましょう。
今回は、 経過勘定 3 短期前払費用の2回目です。
中小会計要領には短期前払費用に関する定めはありませんが、中小会計指針および法人税法基本通達には短期前払費用に関する定めがあります。中小会計要領を適用する場合もこれに準じることが認められるでしょう。
このうち、法人税法基本通達2-2-14の短期前払費用に関する文章をもう一度掲げておきます。
「前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下2-2-14において同じ。)の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。 (昭55年直法2-8「七」により追加、昭61年直法2-12「二」により改正)
(注) 例えば借入金を預金、有価証券等に運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、後段の取扱いの適用はないものとする。」
前回は2億1千万円強の費用を短期前払費用の一括損金とした納税者が負けた事例でした。
以下の記事を参照。
http://www.ksc-kaikei.com/news/index.cgi?no=162
その判決では、次の2点を根拠として課税上弊害が生じるため、その前払費用は重要性が乏しいとはいえず、本件通達後段は適用されないとされていました。
① 本件各費用の額は財務内容に占める割合やその影響が大きいものと認められる。
② 次の2点から、利益を圧縮するための租税回避が目的と認められる。
月払から年払への支払方法の変更に合理的な理由がなく、また、未払で残っている賃借料等をそのままにしながら、今後の分を手形で支払うのは不自然である。
期末に多額の利益が見込まれたこと、また、納税者が様々な方法で同期の利益圧縮を図っていたことは、他の証拠からも明らかであること。
今回は国税不服審判所の裁決において納税者が一部勝った事例を採り上げ、短期前払費用についての理解を深めることにしましょう。
採り上げる裁決は、納税者である法人が2400万円の費用を短期前払費用の一括損金として申告したところ、課税庁がその損金算入を認めず更正したため、納税者が国税不服審判所長に対し審査請求した事件(注1)です。
審査請求人である1月決算の納税者は、建物を一括して賃借し、事業の用に供しており、平成3年1月31日に平成3年1月から平成3年6月までの本件建物の賃借料6か月分(400万円×6月=2400万円)を貸主へ支払い、法人税法基本通達2-2-14後段に定める短期前払費用に該当するものとして、全額を平成3年1月期の損金の額に算入しました。本件費用の内容は次の通りです(①から⑦の数字は筆者が追加)。
① 請求人は建物を昭和43年10月5日の新築以降一括して賃借している。また、平成3年1月31日付の建物賃貸借契約書により、賃借の契約更新を行った。
② 上記の建物賃貸借契約書第3条に、「賃料は、1ケ月金400万円也とする。賃借人は、賃料を半年毎に支払うものとし、原則として毎年1月末、7月末日までに6ケ月分を賃貸人の住所に持参して支払う。」旨の記載がある。
③ 請求人は、前払費用について、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入している。(いつから半年払とされたかについては不明ですが、本件の発生時点では継続して損金算入されていた模様です。筆者注)
④ 本件建物の1階部分及び2階部分は請求人の婦人服等の小売の店舗に、3階部分はAへの賃貸に、4階部分は請求人の倉庫及び派遣社員の休養室に供していることが認められる。
⑤ 1階部分、2階部分及び4階部分は請求人の事業の用に供されていることから、本件支払金額のうちこれらの階に対応する金額は、販売費及び一般管理費の賃借料と認められる。
⑥ 3階部分は、請求人の事業の用に全く供することなくAに転貸していることから、この階に係る賃貸借取引は営業外取引であるので、本件支払金額のうち3階部分に対応する金額は営業外費用と認められ、また、この金額とAからの受取家賃は、明らかにひも付きの見合い関係にあることが認められる。
⑦ 複数階層の建物の各階の利用価値は、階層により異なるものではあるが、本件支払金額のうち3階部分に対応する金額は、①請求人は本件建物を一括賃借していること、②各階の床面積が同程度の面積であることから、四分の一相当額の600万円と認めるのが相当である。
以上の事実に基づいて、「重要性の原則との関連について」審判所は次のように判断しました。
「法人税法第22条第1項において、「内国法人の各事業年度の所得金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。」と規定し、また、同条第4項において、ある原価、費用及び損失の額をどの事業年度に計上すべきかについて、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする。」と規定している。
一般に公正妥当と認められる会計処理の基準としては、原価については、それが収益と個別に対応するものであることから、原則として費用収益対応の原則が採られており、費用及び損失については、販売直接費のように、収益と個別に対応するものを除いて、原則として総体対応の原則が採られている。
また、企業会計原則注解の注1「重要性の原則の適用について」の(2)において、「前払費用、未収収益、未払費用及び前受収益のうち、重要性の乏しいものについては、経過勘定項目として処理しないことができる。」とされている。
通達2-2-14の後段は、この一般に公正妥当と認められる会計処理の基準を受けて、「法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、ごれを認める。」と取り扱うこととしている。
この通達2-2-14の後段の取扱いは、法人が一定の計算基準を継続して行う会計処理で、その計算基準を行うことに相当の理由があり、重要性の原則に照らして課税上さしたる弊害がないと認められる場合にその適用があるものであり、費用収益の対応関係を覆してまでその適用を認める趣旨のものではないと解される。」
その上で、本件支払額2400万円のうち、1月分400万円は平成3年1月期の損金となるのに対して、前払いとなる2000万円の損金算入については次のように結論付けました。
「以上から、本件金額のうち、1階部分、2階部分及び4階部分に対応する1500万円は販売費及び一般管理費の前払費用と認められるから、通達2-2-14の後段の取扱いの適用ができることとなり、本件事業年度の損金となる。
また、本件金額のうち、3階部分に対応する500万円は、Aからの受取家賃と見合い関係にあるから、通達2-2-14の後段の取扱いの適用はできないこととなり、翌事業年度の損金となる。」
このように本裁決では、支払額2400万円のうち、平成3年1月分400万円の損金算入を認めた上で、残りの前払分2000万円のうち1500万円については短期前払費用の一括損金算入を認め、残りの500万円については基本通達2-2-14の注を適用して損金算入を翌年度扱いとすることにより、納税者の一部勝利という形で決着させました。
ここでは、 基本通達にある2要件、すなわち、① 1年以内に提供を受ける継続的役務に係るものを支払うこと、② 損金算入を継続適用すること、に該当することを検討した後、さらに、③ その費用につき収益計上との対応の必要性について検討し、対応不要の部分の金額については短期前払費用として損金算入を認め、対応を要する部分の金額については損金不算入(翌期の損金)としたわけです。
重要性の原則との関連については、前回の判決と同様に、この裁決でも、「課税上さしたる弊害がないと認められる場合にその適用がある」としていることから、前払分1500万円という金額については課税上さしたる弊害がないと認めたものと言えます。その具体的な根拠が示されていない点に不満が残りますが、国税不服審判所において、5か月分で1500万円、月額300万円の一括損金算入を認めたという事実は納税者が会計実務を行なう上で有益な参考資料となるでしょう。
なお、短期前払費用については、1996年8月の政府税制調査会法人課税小委員会における 「法人課税小委員会報告」の第4分冊で、次のような記載がありますので、参考までに掲げておきます。
「(1) 短期の前払費用
(ア) 現在、地代家賃、設備のリース料等については、それが1年以内に役務の提供がなされるものである場合には、事務の簡素化の観点から、支払時に損金の額に算入することが認められている。
(イ) この取扱いには、継続要件があるものの、特に金額的な制限が設けられていないため、企業によってはかなりの金額について費用の前倒し計上が可能となっている。したがって、現行の取扱いについては、何らかの制限が必要ではないかと考える。」
(下線は筆者が追加。)
前回の記事、
2億1千万円強の費用を短期前払費用の一括損金とした納税者が負けた事例
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次回は、固定資産 についてです。
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◎ 申告や納付が遅れた場合の加算税や延滞税、どの位の割合になるのかな?
≪えっ、そんなに高いの! 『加算税や延滞税』の割合は・・・≫
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◎ 法人税の税務調査って、当たる確率はどの程度なのかな?
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