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【該当者へ勧告】「コロナ危険主張者」が掌を返した場合

 こんにちは、産業医・労働衛生コンサルタントの朝長健太です。
 産業医として化学工場、営業事務所、IT企業、電力会社、小売企業等で勤務し、厚生労働省において労働行政に携わり、臨床医として治療を行った複数の健康管理の視点で情報発信をしております。
 さらに、文末のように令和元日(5月1日)に、「令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を資産形成につなげる方法」を出版し、今まで高価であった産業医が持つ情報を、お手頃な価格にすることができました。
http://hatarakikatakaikaku.com/
 今回は、「【該当者へ勧告】「コロナ危険主張者」が掌を返した場合に関する対応」について作成しました。
 労働衛生の取組を行うことで、従業員に培われる「技術」「経験」「人間関係」等の財産を、企業が安定して享受するためにご活用ください。
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【該当者へ勧告】「コロナ危険主張者」が掌を返した場合に関する対応
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 厚生労働省のホームページで「クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」への対応等について」の「5月15日24時時点の状況について」により、PCR陽性者712人(うち無症状311人)、退院者653人、集中治療室等入院者4人、死亡者13人と報告されており、本コホートにおいては、PCR陽性者の死亡率は1.83%~2.39%と確定しました。さらに、約98%のPCR陽性者を死亡させない治療法(日本における日頃からの適切な医療を提供すること)も確立したといえます。
 本コホートの結果を元にすると、パンデミック重度指数(Pandemic severity index)はカテゴリー4~5になるため、重度の合併症を持つ方や適切な医療を受けられない方等も含めた様々な身体的、精神的、社会的属性を持った億単位の集団に対してアプローチを行う国際機関や行政が、事前に決めていた基準を元に対応した点は妥当であったといえます。もちろん、今後は今回の教訓を元に基準等の見直しがなされる可能性はあります。
 さて、労働の現場は2人~数十万の集団となるため、国際機関や行政のアプローチとは数や属性の面で全く異なります。また、職域でのアプローチ方法を定める責任は全て事業者にあり、労働者の身体的、精神的、社会的な健康を1つでも不合理に侵害することはあってはなりません。新型コロナウイルスを危険と主張して事業者の決断を安全側に寄せさせた労働者が、掌を返して「過剰な予防対策で精神的、社会的に健康を侵害された。」と主張(以下「後出し主張」という。)するおそれもあります。事業者人事担当者の中には企業内の様々な意見の中で、苦渋の決断をされた方もいると思いますが、その合理的な決断が労働衛生に沿ったものかをこの機会に確認してください。
 今回は、企業の財産権、労働者の精神的、社会的健康を守ることを目的とし、万が一の訴訟を予防するために、労働衛生の取り組みの見直しと、押さえておくべきポイントを提言させていただきます。また、もしリスクを抱えている事業者の方がいらっしゃいましたら、直ちに改善することを勧告します。

◎労働衛生の取り組みが十分な場合
 事業者には衛生管理体制を構築することが義務又は努めることが義務づけられており、具体的には一定の要件を満たす場合に、衛生担当者、産業医衛生委員会等を定め、実務を行わせる必要があります。
 職域の新型コロナウイルスに対して、取り組みが十分であれば、次の様な手順がとられます。
①統括担当者が、新型コロナウイルス防止措置、健康教育、その他健康保持増進措置について、衛生管理者産業医等(以下「健康専門家」という。)の指揮及び統括管理する。
②健康専門家の元、作業環境管理、作業管理、健康教育について計画を作成する。
③計画を事業者側、労働者側、健康専門家が集まる衛生委員会等で調査審議、記録、結果の周知を行う。
④計画を実行し、現場の意見を集約し衛生委員会等で確認、改善を行う。
 この手順を行っている場合、『労働者の身体的健康』と『企業の財産権、労働者の精神的、社会的健康』の双方を守るバランスの中で必要十分な対策を決定することになります。従って、コロナ危険主張者の意見も集約され、法令を遵守した合理的な決断を行うことができ、状況の変化に応じて改善することができます。さらに、科学的根拠、行政の示す根拠及び報道に基づく根拠(以下「一般的根拠」という。)についても、企業に合理的な根拠とするために調査審議することができます。
 もし、労働衛生の取り組みを十分に行っても、結果が伴っていない場合は、健康専門家や衛生委員会の能力が足りていないということなので、①の指揮及び統括管理に基づいて、放置せず速やかに改善を行うことが必要です。 

◎労働衛生の取り組みが不十分な場合の訴訟リスク
 事業者には民法労働契約法及び労働安全衛生法により、明確に安全配慮義務及び不履行時の損害賠償判例があります。従って、義務の事項を遵守していない場合は訴訟リスクがあるといえます。
 もし、後出し主張があった場合、労働衛生の取り組みが不十分な際は、次の様な訴訟リスク(一部)が考えられます。
①法令に基づく各担当者の定めていない場合、事業者は健康に関する技術的事項を十分に管理していなかったとして、後出し主張が認められる可能性があります。
衛生委員会等の開設がされていない場合、労働者が意見を述べる場を提供されていなかったとして、後出し主張が認められる可能性があります。
③取り組み自体が行われていても記録が無い場合は、事業者側が認識している事実と異なっていたとしても、後出し主張を覆すのは困難です。特に、衛生委員会等は労働安全衛生規則第23条第3項及び第4項で、周知義務、記録保存義務が課せられていることから、覆すことはさらに困難になります。
 対策の原則は、法令義務を遵守しているかの定性的確認を行う必要があります。その後、どの程度実施したか定量的な確認を行うと良いでしょう。特に、衛生委員会等の議論が成熟すると定量的が意見が衝突することが多いので、その際は、リスクアセスメント(文末に参考URL)を活用すると良いでしょう。
 なお、努力義務については、本来義務として果たすべきことに向けて、どのように努力したかを記録に残しておくと、さらに訴訟リスクを低減できることが見込めます。
 職域の新型コロナウイルス対策として、労働衛生の取り組みの見直しと、不十分な点は法令の範囲内で直ちにリカバリを行うことが必要です。
 事業者であれば、後出し主張で企業から損害賠償を得ようと考えている者がいることを想定するべきです。人の感情は時間を追って変化するものであるため、後出し主張自体は自然現象であるといえます。さらに、後出し主張を発信した者には原則記録義務が課せられていないことから、後出し主張の正当な根拠を示すことができれば法令以上の対応となり、原則記録義務が課せられている企業側がそれを覆す根拠を持たない場合は、その損害賠償は法令に基づいた正当な権利に基づく損害賠償といえます。
 さらに、企業側が一般的根拠のみで自らの正当性を主張することは、全く意味が無いこともご理解いただけると思います。
 企業の財産権、労働者の精神的、社会的健康を守るためにも、適切な対策に努めて下さい。

新型コロナウイルスから考えるリスクアセスメントと予防
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-174501/

【事例】新型コロナウイルスに対する健康管理対策
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-174674/

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令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を資産形成につなげる方法
http://miraipub.jp/books/%E3%80%8C%E4%BB%A4%E5%92%8C%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%83%8D%E3%81%8D%E6%96%B9-%E9%83%A8%E4%B8%8B%E3%81%8C%E3%81%84%E3%82%8B%E5%85%A8%E3%81%A6%E3%81%AE%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE-%E5%83%8D/

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